Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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相棒ではなくAIBO
「今年は創立20周年のパーティを大々的に開こうと思ってよぉ」
杉並の建設会社の顔デカ社長が、でかい顔を乗り出して言った。

そして、続けて「実は、去年が20周年だったんだが、占い師がな・・・・・俺の運勢が悪いって言うんで、記念式典を一年伸ばしたんだ」と言った。


はい?
占い師?
私の聞き間違いか、空耳か。


占い・・・・・師ですか?

「ああ、占い師だよ。おかしいよな」
背筋に寒いものが走った。
なんと、顔デカ社長が照れ笑いをしたのである。

場所は、会社のいつもの応接セットではなく、近くの料理屋の個室だった。

「酒を飲んでもいいぜ」と言われたので、お言葉に甘えて、生ビールを注文した。
メシは、さんまのピリ辛焼きと焼きおにぎりである。
顔デカ社長は、アルコールはなしで、海鮮丼の大盛りとタコの酢の物を注文した。

つまり、いつもとはシチュエーションがまったく違った。

ケツが痒くなった。
でも血は出なかった(手術が成功したから)。

「会社のやつらには内緒なんだけどな・・・会社を立ち上げるときも、その占い師の意見通りにやったんだよな」

占い師は、いま60歳すぎの男の人だという。
占いを本職にしているわけではないが、見込んだ人には、とことんサービスをするらしい。
金銭も受け取らないという。

20年前に、会社を立ち上げるにあたって、方角のいい場所や会社名などのアドバイスを受けた。
社員の採用も占い師の意見を聞いて合否を決めたらしい。

奥さんと結婚するときも占い師にお伺いを立てた。
(奥さんは、6年前に家を出てしまったが)

子どもの名前も占い師に決めてもらった。
(子どもとは5年以上会話がないらしいが)

「当たるときもあるが当たらないときもある。
当たり前だよな。
でも、そいつは俺の背中を押すのが上手い奴でな。
俺は気分よく背中を押されているのさ」


そのあとで、顔デカ社長はこちらを仰天させるようなことを言った。
「あんたのイニシャルSMだよな。
占い師から、イニシャルSMの相棒を探せって、ずっと言われていたんだよ」

息苦しくなってきた。

私の一番苦手な展開ではないか。

だから、努めて軽い口調で、まあ、サド(S)でマゾ(M)っていうのはなかなかいませんからねえ、と逃げを打った。

すると、顔デカ社長がでかい顔を近づけて、「その占い師が言うにはな、緊迫した場面で軽口を言う奴ってのは、瞬間的に色々なことを考えて、その中で一番波風の立たない言葉を選ぶらしいんだな。俺んちの社員なんてのは俺が何か聞くと俺の気に入りそうな答えしか出さねえから、軽口が飛んでくることは一切ない。要するに、あいつらは考えてねえんだな。だが、あんたは色々なことを考えた上で軽口を叩いている。それは才能の一つなんだと俺は占い師に教えられたよ」と言ったのだ。

珍しくセンテンスの長い会話だった。

しかし、私はメシを食うことに専念した。
場の空気を変えようと思ったのだ。

味噌をからめた焼きおにぎりが美味かった。
外側のパリパリ感と中の米の弾力感が合わさって、口の中に米と味噌の旨みだけが充満した。
今度我が家でも作ってみることにしよう。

季節はずれのさんま(もちろん冷凍)だったが、ピリ辛にすると身が引き締まった感じがして、味が濃厚に感じられた。
旬のさんまを手に入れたら、我が家でもやってみようかと思う。

頷きながら食っていたら、「そんなにさんまが美味いか」と、またでかい顔を近づけられた。

近すぎまする、お代官様。

「話を戻すとな」

いえ、戻さなくてもいいのではないかと・・・・・。

「戻すとな! あんたは相棒としては、うってつけだって占い師が言うんだよ」

しかし、わたくしは、その占い師さんとはお会いしたことがございませんが。

「会わなくてもわかるのが、占い師じゃねえのか。常人とは違うんだからよ!
ああ・・・でも、あんたみたいなタイプは占いなんてのは信じないんだよな」

よくご存知で。
私は占い師と肉、肉、肉! と叫ぶ人、オレオレオレと詐欺する人は苦手なのでございます。

「まあ、そんなことはどうでもいいんだが、俺はその占い師を信じている。
文句はねえよな!」

はい! 文句はありません!

「じゃあ、もう一杯、ビールを奢ってやる」

はい! ありがとうございます!
(一日2杯ルールだから、今日はこれで終わりだ)

「で・・・ここからが本題なんだが、6月の記念パーティーで、あんたにスピーチをやってほしいんだ」

そうくるだろうな、とは思った。

顔デカ社長にしては、回りくどい話になった。
おそらく占い師のことを語らずには、本題に入れなかったからだろう。

しかし、顔デカ社長が占い師のお告げを信じるとは意外だった。
私のように、「目に見えないものは信じない」人だと思っていた。
ただ、本当かどうかわからないが、政治家や大会社の社長が占い師のお告げによって進路を決めるのは、珍しいことではないらしい。

だから、顔のでかい人が占いを信じたとしても不思議ではない。
シャーマニズムは太古の昔からあるのだから、きっとでかい顔の中に、そのDNAが詰まっていたのだろう。

「で・・・やってくれるのかい? どうなんだい?」
ギロリと睨まれた。

それも占い師さんが?

「いや、これは俺の一存だ。何でもかんでも占い師に聞くわけじゃない。
占い師に聞くのは、重要な案件だけだ。
スピーチも重要ではあるが、会社の行く末を左右するようなもんじゃないからな。
だから、気軽にやってくんねえかな」

私はスピーチの素人だ。
おそらく、5、6、7、8、9回程度しかしたことがない。

頼んだ方に失礼だとは思うが、あらかじめ原稿を書くことはしない。
すべてアドリブである。
その日の気分で内容を決める。

そして、時間は2分以内と決めている。
人を感動させるようなことは意地でも言わない(言えない)。
つまり、何の役にも立たない。

もしかしたら、パーティーをぶち壊すかもしれません、と私は震えながら言葉を返した。

「いいじゃねえか。
アクシデントがあったほうが、パーティは盛り上がるだろ。
ぶち壊すつもりでスピーチやってくんねえか」

そして、間近にでかい顔をズームさせて、顔デカ社長が正面から私の両肩を叩いて言った。

「なあ、AIBOよお!」


おお、AIBOですか?
そう言えば、友人がAIBOの第1世代と第4世代を持ってました。
しかし、友人はバカなので使いこなせず、結局私が喜びの感情やら芸を教えたんですが、バカな友人は2体とも壊してしまいましてね。
50万円がパーですよ。
まったくモッタイナイ。


私のスローペースな会話に舌打ちをしながら、顔デカ社長が、再び顔をズームさせて、江頭2:50師匠になった。

「お〜い! どうなんだよ〜! や〜るのかよ〜、や〜らないのかよ〜!」


はい! やらさせていただきます・・・ワン!



壊れかけのAIBO・・・・・・なんちって(RADWIMPS)



2016/03/19 AM 06:27:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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