Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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来年の課題
杉並の建設会社の顔デカ社長から仕事をいただくようになって、5年目の後半が過ぎた。

最初の1年は、世間話なんてとんでもない、という空気だった。
とにかく、毎日嵐が吹き荒れるのである。

社員を容赦なく怒鳴る。
叱り飛ばす。
出入りの業者に対しても怒鳴り散らすのだ。

その怒りの風圧に怯えた私は、いつもチビっていた。
だから、顔デカ社長に会うときは、紙おむつが欠かせなかったほどだ(嘘ですよ)。

このままの関係では、楽しく仕事ができない。
今までのデザイナーと同じく一年もしないうちに、サヨナラを告げることになるかもしれない。
そう思った私は、2年目に意を決して世間話から入ってみた。
最初は、まったく話が弾まなかった。

だが、どんな猛獣だって、スキンシップを繰り返せばある程度は人に懐いてくれるはず。
私はそう信じて、打ち合わせの前に必ず世間話を振った。

その粘り強い交渉術が効いたのか、徐々に話題は広がり、最近のニュースに反応を示してくれるようになり、それからは政治、経済、国際情勢などの話題を社長自ら振ってくるようになった。

そして、中年男のエロトークなども。
「女は胸だよな」
何をおっしゃいますか。太ももですよ。これは絶対に譲れませんね。

和気あいあい、というほどではないが、仕事だけの味気ない話題から外れた時間を共有することが日常になった。
つまり、私のペースで会話をすることができるようになったということだ。

ただ、最初から気づいていたことだが、顔デカ社長と私の意見は「真逆」である。
それは、同じヒトとしての遺伝子を持つ生き物とは思えないほど、見事に違う。

顔デカ社長は、基本的に「独裁こそが正義」という人だ。
すべてのことは独裁者のトップダウン方式で決定し、下々のものはひれ伏して独裁者の命令に従うことが強固な国家、会社を形作る、という考え方だ。

それに対して私は、独裁者のすべては臆病者である、という考え方だ。
彼らは、自分の立ち位置にしか興味がないから、政策やビジョンを持っていない。

己の地位を守るため、すべてに疑心暗鬼になって、政策よりも弾圧で部下や国民を縛るさまは、まるで天空を綱渡りしているかのようだ。

そして、彼らはその綱渡りに、いつも怯えきっているから、罪もない部下(あるいは国民)を断罪することで心の平衡を保っている。

権力の一極集中は民主主義の国でもあるが、独裁ということになると、最後は権力が独裁者のオモチャになる。

たとえば、とある国の頂点を極める「金を正(まさ)に恩とする人」や「くまのプーチンさん」のように、国民を見ずに武器だけを見ている人は、所詮は殺人兵器だけしか頼るものがない。

国民が持つマンパワーと殺人兵器が持つ物理的なパワーの力関係が逆転したとき、独裁者はいつも哀れな末路を辿る。
ほとんどの独裁者は、偶像としての存在を抹消されて、ただの犯罪者に成り下がる。

その私の意見に対して、顔でか社長は、「まあ、俺が思う独裁は、あいつらではないわな」と苦笑いで首を振った。

だがな、と言葉を続けた。
「権力は一つ強力なものがあればいい。仲良しの馴れ合いなんて決断が遅くなるだけだ。下っ端の政治家や国民には、事後承諾でいいんだよ。そうしないと、くだらねえ意見が幅を利かすことになる。そんな意見はゴミだ」

ゴミの中にだって、お宝は隠されているかもしれない。
しかし、社長は「ゴミの中のお宝は、所詮はゴミだ」と断定する。
「だって、気づかなかったら、ゴミのままだろ」


それを聞いて、私は少々視点を変えた意見を述べた。

以前、民放の討論番組を見ていたら、強面の元政治家がこんなことを言っていた。

「ニワトリが先か、卵が先か、という例えがある。
それに合わせて、国が先か国民が先か、ということを言うバカがいる。
国民が先だというやつは、バカだ。
国民の代わりはいくらでもいるが、国の代わりはない。
国こそが重要だ」

それを聞いて、小さい男だなと私は思った。
そんな風に近視眼的な見方しかできないから、ただ声がでかいだけの拡声器にしか見えないのである。

宇宙があるから銀河系がある。
銀河系があるから太陽系がある。
太陽系があるから地球がある。

その地球には水と空気があるからヒトがいる。
ヒトがいるから国がある。

最初から国があったわけではないのだ。
ヒトが、上に記したように「宇宙内の物理的な法則」に則って国を作ったのである。

この星では、ヒトが必然的に生まれ、必然的にヒトが集落を作った。
だが、国は必然的に生まれたわけではない。
集落が偶然いくつかの国になっただけだ。

全ての始まりは、ヒトが主体だ。


たとえば、視点をもう一つ移してみる。

いま地球上には72億を超える人が暮らしている。
その人たちに当たる太陽のことを考えてみよう。

72億の人がいたとしても、同じ緯度、同じ経度、同じ角度で太陽の光があたっている人は絶対にいない。
わずかではあるが、みな違う位置角度で光があたっている。

そのように、この星に暮らす人は誰もが皆、それぞれ独自のポジションを持って暮らしている。

そして、その集合体が、「自分の意志で」国を形作っている。
その集合体がなければ、国は成り立たない。

「国ありき」ではなく「ヒトありき」なのだ。

宇宙を見ることもできず、地球を見ることもできず、ただ地図上の縄張りしか見えない男に、国家を語る資格はない。

だいたい、おつむのキャパシティが小さい政治家は、でかい声でそのキャパシティを埋めようとするものだ。
話の中身ではなく、声のデカさだけで人を圧倒しようとする。
彼はきっと、派閥のボスから、声を大きく張ることと怖い顔を作ることだけを命令されて、盲目的に従っているだけだったのだろう。

これは、ネットの世界でも同じだ。
おつむのキャパシティの小さい人は、他人への誹謗中傷で足りないキャパシティを埋めようとする。

そして、相手の少し怯んだ姿を見たとき、勝ち誇ったように溜飲を下げる。
まるで自分が、的を射た意見を言ったように勘違いするのである。

本人だけが、それが「虚勢」「妄言」であることに気づいていない。


そんな風に得意げに主張した私に、顔でか社長が恐るべきことにウィンクをした。
背中がブリザードに襲われた気がした。

そして、片頬で笑いながら、顔でか社長が言った。
「そのおつむのキャパシティの小さい、でかい声だけが取り得の男ってのは、俺のことかぁ?」


しまった!
墓穴を掘ったか!

怒りの嵐が吹き荒れるか!

しかし、私には、顔でか社長との5年近い付き合いで得た尊い経験値があった。
社長をいなす方法はガイコツの体に染み込んでいたのだ。

だから、迷わずに言葉を変換させた。

「しまったぁ!
おケツを掘られたかあ!」


2秒の沈黙のあと、我々の会話を聞いていた男性事務員の2人が、「プッ」と笑った。

さらに4秒後に、社長が苦笑い。
「あんたの汚ねえケツなんか掘れるかよ」

「それに」と社長が言葉を繋げた。
「あんたみたいな男とは絶対に友だちにはなれんわな。
ただな・・・・・話を聞いているだけなら、面白い」

ありがとうございます。
身に余るお言葉でございます。


和やかなうちに、世間話は終わった。

ただ、一人だけ和やかでないお人がいた。
40代の女性事務員である。

このお人は、いつも私に敵意を抱いていた。
「だって、Mさんだけ社長に怒られたことないんですもの!
不公平じゃないですか!」


もしかしたら、社長をてなずけるより、このお方をてなずける方が難しいかもしれない。


だから、それを私の来年の課題にしようと思っている。



2015/12/12 AM 06:27:00 | Comment(1) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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