Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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ツイッター世代
悲しいことに、年をとると一つの持病とお友だちになっただけで、体の機能が言うことをきかなくなる。

血液が正常に回っているうちは、階段を全速で駆け上がっても息切れはしないが、血流がストライキをおこすと何もしていなくても糸の切れたマリオネットになる。

たとえば、得意先での打ち合わせを終えて、駅への道を歩いていたとする。
得意先の担当者に言われたことを頭で反芻しながら、今回も仕事をもらえたぞ、これで家族四人少しは生き延びることができるぞ、と心の中でガッツポーズをした2秒後に、突然地球が回るのだ。

もちろん、地球が回るのは自転しているのだから当たり前だが、惑星の自転よりも非科学的な回転が私の脳の中に起こるのである。

すぐに、しゃがみこみたいが、歩道は私だけのものではない。
だから、人様の迷惑にならない場所を瞬時に見つけて、そこでしゃがみこむ。

地べたに座り込むとスーツが汚れるが、西友で買った安いスーツなので、汚れてもいいのだ。
そうやって回復を待つのだが、毎回のように私は日本国民の「やさしいDNA」に救われることになる。

「どうしましたか?」
「救急車を呼びましょうか」
「おうちは、どこですか?」

こんな汚いガイコツなど、放っておいてくださればいいと思うのだが、皆さんが看護師さんになってくれるのである。
そんな風に救われたことが6回はある。

歩いているときは、まだ危険度は低いが、自転車に乗っているときは危険だ。
倒れそうになる自転車と体を重力に逆らいながら立て直し、人様の迷惑にならない道路の隅まで自転車を移動させるのは、皆様が思っている以上に大変なのでございます。

なるべく自動車や歩行者の邪魔にならないところに自転車を立てかけるのだが、自転車がハーレーダビッドソンのように重く感じられて、1メートル移動するのに13秒はかかる。
なんとか、ハーレーダビッドソンを道路の隅まで移動させることに成功した私の体は、スケルトンのマリオネット同然である。

糸が切れた状態でその場にうずくまるのだが、そんなときでも高い確率で声をかけてくださる方が、必ずいらっしゃるのだ。

「どうしましたか?」
「救急車を呼びましょうか」
「おうちは、どこですか?」

もし近くに自動販売機かコンビニがあれば、ノーブランドの小銭入れを相手に渡して、申し訳ありませんが、ミネラルウォーターを買ってきていただきたいのですが、とお願いすると、皆さん必ず要望を叶えてくださる。

500ccの水を飲めば、10〜30分で、大抵はフッカーツ! する。

そうやって、何度救われたことか。

日本は、ガイコツにとって、とても住みやすい国だ。


この症状は、なにゆえ突然現れるのでしょうか、と主治医であられる優香観音様に聞くと、「初めて聞く症状なので、推測ですが、ヘモグロビンか残留鉄が限界値を超えて下がるのかもしれません」とのことだ。

では、水を飲むと復活するのは、なぜでしょうか。

「わかりません」

観音様にも、わからないことはあるのだ。

だって 人間だもの。


昨日午後4時前、仕事の打ち合わせの帰りに、中央線吉祥寺駅の階段を上った。
そして、ホームに上がって11歩進んだとき、「いつものヤツ」が来た。

しかし、私の脳には、中央線吉祥寺駅下りホームのどこにベンチがあるのかインプットされているので、宇宙遊泳をするように歩いて、空いていた右端のベンチに腰を下ろした。

おそらく私は、長い人類の歴史の中で、中央線吉祥寺駅下りホームを宇宙遊泳した初めてのガイコツになった。

ベンチのすぐそばに、飲み物の自動販売機があったが、立ち上がる力が残っていなかったので、私は弱々しい腹式呼吸を繰り返した。
これで回復することもあるのだ。

そんな風に、空気を体に取り入れていたら、「あのー、具合悪いんですか」という声を左耳で聞いた。

力を振り絞って顔を上げると、高校の制服らしきものを着た女子学生がガイコツの顔を覗き込む姿が、霞んだ網膜に入ってきた。

高校の制服を着ているからといって、女子高生とは限らない。
高校の制服を着た大学生かも知れないし、高校の制服を着た社会人、高校の制服を着た人妻、あるいは高校の制服を着たマツコデラックスさんということもありうる。

決めつけてはいけないと思う。

だから、高校の制服を着た女子高生らしき人、と表現することにする。
その高校の制服を着た女子高生らしき人が、遠慮がちに、「あのー、これ飲みますか。キャップは開けていないので、綺麗ですよ」と言ったのである。

見ると、「い・ろ・は・す」だった。

私は、普段は「図々しさ」を「りそな銀行吉祥寺支店」の貸金庫にしまっているから、図々しさとは無縁なのだが、このときは即座に、ありがとうございます、と受け取った。

りそな銀行吉祥寺支店には申し訳ないが、貸金庫から出す余裕がなかったので、SUICAで代用したのである(?)。

キャップをひねって、い・ろ・は・すを飲んだ。
そのい・ろ・は・すは、驚いたことに無色なのに桃の味がしたが、桃は嫌いではないので、一気にいただいた。

水分が喉を通るだけでも、私の体は落ち着くのだ。
5分もたつと、な〜んか、元気になった気がする〜、と体が言い出してきて、視界がはっきりしてきた。

はっきりしてきたので、左に首を回すと、い・ろ・は・すをめぐんでくれた高校の制服を着た女子高生らしき人が、左隣に座っているのに気づいた。
どうやら、私のことを心配して、立ち去らずにいたらしいのだ。

ありがとうございます、助かりました、と頭を下げた。
一度では、誠意が伝わらないかもしれないと思ったので、もう一度下げた。


そんなふうに頭を下げたガイコツに向かって、高校の制服を着た女子高生らしき人は、「ああ、気にしないでください」と右手に持ったスマートフォンを左右に4往復させた。

そして、言った。

「ちょうど、ツイッターのいいネタになったんで、まあ・・・いいかなって」
「3回、つぶやいちゃったし」

さらに、「いいことしたから、フォロワーが増えそうだわ」と言いながら、左手でガッツポーズを作った。
ガッツポーズをしたまま、去っていった。


そうですか。
体の不調をツイッターのネタにされてしまいましたか。



まあ・・・・・しかし、私はそれをブログのネタにしたのだから、この場合、「おあいこ」ですかね。


2015/11/21 AM 06:27:01 | Comment(4) | TrackBack(0) | [日記]



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