Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
[TOP] [RSS] [すくすくBLOG]








うれしい誕生日
痛風持ちの友だちが二人いる。

そのふたりが、11月22日の「いちいち痛風の日」に、私の前回のブログを読んでLINEで絡んできた。

「おまえ、バカだろ」

もちろん、自分が馬鹿なのは、小学校を入学する前に今も尊敬する亡き祖母から教えられたので、私は幼い頃から知っていた。
「いいですか。あなたは頭が良くないんだから、授業では先生の言うことをよく聞くんですよ。他のことは考えないで、先生の言葉だけを聞いていなさい。わかりましたね」

わかりました。

祖母の言いつけを守って、私は懸命に先生の言葉を聞いた。
しかし、私の小学1年、2年の成績は、体育以外は1か2だった。
ところが、3年の2学期からは、祖母の魔法が効いて、オール5を取るようになった。

きっと担任の先生は、「人が入れ替わった」と思ったはずだ。
私自身も自分が完全に生まれ変わった、と子ども心に感じたほどの変わりようだった。

・・・・・と、さりげなく自慢を織り交ぜたあとで、私は、それなぁ〜、と痛風持ちに返信した。

「それなぁ〜、じゃなくて、なんでミネラルウォーターを持ち歩かないんだ。そうすれば人に迷惑をかけることもないだろ」

それは無理だ。
俺のバッグは防水じゃないんだ。
だから、ミネラルウォーターをそのまま入れたら、水漏れをする。
原稿が水浸しになったら、仕事にならない。
それに、iPadだって水没するだろう。
ムリッ!

「馬鹿にしてるのか」

いや、からかっているだけだ。

ついでに言うが、水道水入りのペットボトルは常に持ち歩いている。
だが、500ccなんて、すぐ消費してしまうんだな。
俺のバッグは、2本入れられるほど大きくはない。
空気の詰まったペットボトルでは、俺を救うことはできないんだよ。

わかったかな。
高尿酸血症で苦しむ人よ。


あれ? 返信がない。
既読は確認した。
もしかして尿酸値が悪化したのかな。


痛風といえば、極道コピーライターのススキダだ。

ススキダは、12年ほど前、仕事のストレスから暴飲暴食を重ねた結果、痛風になったことがあった。
しかし、元看護師の奥さんが指導した綿密な食事療法と有酸素運動、平均体温を0.5度上げる入浴療法を取り入れて、一年足らずで痛風を克服したのである。

顔と頭が悪くて意志の弱いススキダだから、一人では絶対に克服できなかっただろう。
元看護師の奥さんがいたから、彼はカタギになることができた。
ススキダは、実に悪運の強い男だ。

その悪運の強い男が、私の目の前にいた。
もちろん、元看護師もいた。

「いい夫婦の日」が過ぎたある日、夫婦で、私のおんぼろアパートに押しかけてきたのである。

「寒くなったな」とススキダが言った。

悪かったな。
おんぼろアパートは風通しが良すぎて、外気がまともに入ってくるんだ。
寒くて・・・ごめんね、ごめんね〜(むかし少し流行ったような?)。

寒くて我慢できないなら、ドアの外に灯油のタンクがあるから、近所のスタンドで給油してきてくれ。
灯油を切らしちまって困ってるんだ。

そう言ったら、本当に夫婦でタンクを持って出て行きやがった。

冗談も言えないじゃないか。
(実は我が家は灯油の宅配を頼んでいるのだ。だから、わざわざ買いに行かなくてもいい)

帰ってきた「いい夫婦」は、灯油のタンクを2つ抱えていた。
外に置いたタンクは一つだったはずなのに、もう一個増えていた。
美女と野獣は、手品が得意なのかもしれない。

「一つでは効率が悪いだろうから、スタンドで一つ買ってきた。これも使ってくれ」

いくら払えばいい、と聞いたら、「お前から金を取れるかよ」と言われた。

じゃあ、体で払う、と言ったら、元看護師が、「クククケケケ」と身悶えしながら笑った。
融通のきかないススキダは、「バカ」と眉間にしわを寄せた。

なかなかの「いい夫婦」ではないか。

灯油のお礼に、パエリアを食うかと聞いたら、「食べる」と言われたので、前日作りすぎて冷凍しようか迷っていたパエリアを温めて出した。

ススキダが、「本格的じゃないか」とけなしたので、「それなぁ〜」と答えた。

しかし、おまえは重大なことに気づいていない。
このパエリアは俺らしくないとは思わないか。

「普通に美味かったが」とススキダ。

それは、どうもありがとうございます。
だが、このパエリアの意味がわからないとは、おまえも悲しい男になったものだな。

私がそう言ったとき、元看護師が、「はい、先生!」と手を上げた。

ススキダ夫人に発言を許します。

「心がねじ曲がったM先生は、料理をするとき、必ずアレンジを加えて常識的な味から外れたものを作ります。でも、このパエリアは全く普通のパエリアです。これを作ったとき、M先生はとても疲れていてアレンジを加える気力がなかったのかもしれません。つまり、これはM先生にとって失敗作ということです」

はい、正解です。
このままセカンドステージまで進んでください。

「ワーイ!」

頭が、水で戻す前の高野豆腐並みに硬いススキダには理解できなかったようだ。
頭の上に、はてなマークが7つ見えた。

「しかし、何でわかったんだ?」と元看護師に聞くススキダ。

「それは簡単ですよ。Mさんは、ひねくれていますけど、ヒネクレの角度がほぼ一定なんです。だから、その角度さえ頭に入れておけば、答えを導くのは簡単です」

流石ですな。

ご両親は香港在住の中国人。
そして、元看護師は中学卒業後、日本にやってきて、お寺の住職さんの養子になった。
同時に日本国籍を取得し、専門学校を優秀な成績で卒業して、日本で看護師になるという子どもの頃からの夢を実現させた。

つまり、人間としての「純度」が違うのだ。

五流大学を卒業したゴキブリと比べるのは失礼というものだ。
そして、瀕死のガイコツとも根本的な素養が違うのである。
下等なゴキブリとガイコツたちの歯が立つ相手ではない。

私は元看護師にひれ伏したが、ゴキブリはプライドが邪魔したのか、不貞腐れたままだった。

丸めた新聞紙で叩いてやろうか。

・・・・・と思ったが、ゴキブリが「おまえの自転車、もう危ないんじゃないか。何年乗っているんだ」と聞いてきたので、相手をしてやった。

天才・芦田愛菜ちゃんの誕生日を知っているか。

「知るわけないだろう」

教えてやろう。
2004年6月23日だ。

ちなみに、6月24日は、俺の娘の誕生日だ。
憶えておけ。

「憶えてるさ」

それは、ありがとうございます。

つまりだな。
芦田愛菜ちゃんが生まれた日の翌日。
娘の9歳の誕生日に、俺は自転車をプレゼントしたのだよ。

そして、そのどさくさに紛れて、自分の自転車も買ったのだ。
だから、もう11年使っていることになる。

「まわりくどい話だな」

ごめんね、ごめんね〜。

話が脱線したのを力ずくで戻すように、元看護師が「では、Mさんの誕生日プレゼントに自転車というのは、いかがでしょうか」と言った。

「サイクルベースあさひ」が、ここから約1.6キロのところにあります。
26インチのシティサイクル、LEDオートライトが16,800円で販売中ですが、いかがでしょうか。
それがお高いようでしたら、「ケイヨーD2」で8,980円のママチャリもございますが。

有無を言わさず、サイクルベースあさひに連れて行かれ、27インチの外装6段変速24,980円を買っていただきました。

ほんとうに、いいのか?

「乗るたびに、俺たちのことを思い出すんなら買ってやる」

ありがとうございます。
もう決して、ゴキブリを丸めた新聞紙で叩き潰すことはいたしません。

私がそう言うと、元看護師が「うちはゴキブリが出ないんですよね。ゴキジェットとか用意しているんですけど、一度も使ったことがないんです」と無邪気に言った。

いつもの私なら、ゴキブリならすぐそばにいるから、使う機会はいくらでもあるでしょう、と言うところだが、24,980円の恩があるので、使わないにこしたことはありませんよねえ、と愛想笑いをした。

そんな軟弱な自分が、私は大嫌いだ。

しかし、24,980円のmade in Japanの自転車は大好きだ。



あれから、用もないのに、自転車に乗って世間を徘徊することを繰り返している。


私は、そんな自分が大好きだぁ!



2015/11/28 AM 06:30:58 | Comment(3) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

ツイッター世代
悲しいことに、年をとると一つの持病とお友だちになっただけで、体の機能が言うことをきかなくなる。

血液が正常に回っているうちは、階段を全速で駆け上がっても息切れはしないが、血流がストライキをおこすと何もしていなくても糸の切れたマリオネットになる。

たとえば、得意先での打ち合わせを終えて、駅への道を歩いていたとする。
得意先の担当者に言われたことを頭で反芻しながら、今回も仕事をもらえたぞ、これで家族四人少しは生き延びることができるぞ、と心の中でガッツポーズをした2秒後に、突然地球が回るのだ。

もちろん、地球が回るのは自転しているのだから当たり前だが、惑星の自転よりも非科学的な回転が私の脳の中に起こるのである。

すぐに、しゃがみこみたいが、歩道は私だけのものではない。
だから、人様の迷惑にならない場所を瞬時に見つけて、そこでしゃがみこむ。

地べたに座り込むとスーツが汚れるが、西友で買った安いスーツなので、汚れてもいいのだ。
そうやって回復を待つのだが、毎回のように私は日本国民の「やさしいDNA」に救われることになる。

「どうしましたか?」
「救急車を呼びましょうか」
「おうちは、どこですか?」

こんな汚いガイコツなど、放っておいてくださればいいと思うのだが、皆さんが看護師さんになってくれるのである。
そんな風に救われたことが6回はある。

歩いているときは、まだ危険度は低いが、自転車に乗っているときは危険だ。
倒れそうになる自転車と体を重力に逆らいながら立て直し、人様の迷惑にならない道路の隅まで自転車を移動させるのは、皆様が思っている以上に大変なのでございます。

なるべく自動車や歩行者の邪魔にならないところに自転車を立てかけるのだが、自転車がハーレーダビッドソンのように重く感じられて、1メートル移動するのに13秒はかかる。
なんとか、ハーレーダビッドソンを道路の隅まで移動させることに成功した私の体は、スケルトンのマリオネット同然である。

糸が切れた状態でその場にうずくまるのだが、そんなときでも高い確率で声をかけてくださる方が、必ずいらっしゃるのだ。

「どうしましたか?」
「救急車を呼びましょうか」
「おうちは、どこですか?」

もし近くに自動販売機かコンビニがあれば、ノーブランドの小銭入れを相手に渡して、申し訳ありませんが、ミネラルウォーターを買ってきていただきたいのですが、とお願いすると、皆さん必ず要望を叶えてくださる。

500ccの水を飲めば、10〜30分で、大抵はフッカーツ! する。

そうやって、何度救われたことか。

日本は、ガイコツにとって、とても住みやすい国だ。


この症状は、なにゆえ突然現れるのでしょうか、と主治医であられる優香観音様に聞くと、「初めて聞く症状なので、推測ですが、ヘモグロビンか残留鉄が限界値を超えて下がるのかもしれません」とのことだ。

では、水を飲むと復活するのは、なぜでしょうか。

「わかりません」

観音様にも、わからないことはあるのだ。

だって 人間だもの。


昨日午後4時前、仕事の打ち合わせの帰りに、中央線吉祥寺駅の階段を上った。
そして、ホームに上がって11歩進んだとき、「いつものヤツ」が来た。

しかし、私の脳には、中央線吉祥寺駅下りホームのどこにベンチがあるのかインプットされているので、宇宙遊泳をするように歩いて、空いていた右端のベンチに腰を下ろした。

おそらく私は、長い人類の歴史の中で、中央線吉祥寺駅下りホームを宇宙遊泳した初めてのガイコツになった。

ベンチのすぐそばに、飲み物の自動販売機があったが、立ち上がる力が残っていなかったので、私は弱々しい腹式呼吸を繰り返した。
これで回復することもあるのだ。

そんな風に、空気を体に取り入れていたら、「あのー、具合悪いんですか」という声を左耳で聞いた。

力を振り絞って顔を上げると、高校の制服らしきものを着た女子学生がガイコツの顔を覗き込む姿が、霞んだ網膜に入ってきた。

高校の制服を着ているからといって、女子高生とは限らない。
高校の制服を着た大学生かも知れないし、高校の制服を着た社会人、高校の制服を着た人妻、あるいは高校の制服を着たマツコデラックスさんということもありうる。

決めつけてはいけないと思う。

だから、高校の制服を着た女子高生らしき人、と表現することにする。
その高校の制服を着た女子高生らしき人が、遠慮がちに、「あのー、これ飲みますか。キャップは開けていないので、綺麗ですよ」と言ったのである。

見ると、「い・ろ・は・す」だった。

私は、普段は「図々しさ」を「りそな銀行吉祥寺支店」の貸金庫にしまっているから、図々しさとは無縁なのだが、このときは即座に、ありがとうございます、と受け取った。

りそな銀行吉祥寺支店には申し訳ないが、貸金庫から出す余裕がなかったので、SUICAで代用したのである(?)。

キャップをひねって、い・ろ・は・すを飲んだ。
そのい・ろ・は・すは、驚いたことに無色なのに桃の味がしたが、桃は嫌いではないので、一気にいただいた。

水分が喉を通るだけでも、私の体は落ち着くのだ。
5分もたつと、な〜んか、元気になった気がする〜、と体が言い出してきて、視界がはっきりしてきた。

はっきりしてきたので、左に首を回すと、い・ろ・は・すをめぐんでくれた高校の制服を着た女子高生らしき人が、左隣に座っているのに気づいた。
どうやら、私のことを心配して、立ち去らずにいたらしいのだ。

ありがとうございます、助かりました、と頭を下げた。
一度では、誠意が伝わらないかもしれないと思ったので、もう一度下げた。


そんなふうに頭を下げたガイコツに向かって、高校の制服を着た女子高生らしき人は、「ああ、気にしないでください」と右手に持ったスマートフォンを左右に4往復させた。

そして、言った。

「ちょうど、ツイッターのいいネタになったんで、まあ・・・いいかなって」
「3回、つぶやいちゃったし」

さらに、「いいことしたから、フォロワーが増えそうだわ」と言いながら、左手でガッツポーズを作った。
ガッツポーズをしたまま、去っていった。


そうですか。
体の不調をツイッターのネタにされてしまいましたか。



まあ・・・・・しかし、私はそれをブログのネタにしたのだから、この場合、「おあいこ」ですかね。


2015/11/21 AM 06:27:01 | Comment(4) | TrackBack(0) | [日記]

サプライズがドラゲナイ?
今回は、忘年会も兼ねた飲み会にしましょうよ。
そのほうが効率的だと思いますよ。

恒例の同業者との飲み会で、先日そう提案したのだが、みんなから「忘年会には、まだ早い」と拒否された。
さらに、「忘年会と新年会は、きちんとやりましょう。行事って、そういうもんなんだから」と全員に合唱された。

堅苦しくて、肩が苦しくなったわ。
どれも同じ飲み会じゃないか。
形式ばる意味がわからない。

今年の忘年会と来年の新年会は、パスしますかね。

ひとり文句をたれながら、ハムカツを食い、中ジョッキを飲んだ。

中ジョッキを飲んだ?

「え? ビール飲んでもいいんですか!」と人類史上最も馬に激似の「お馬さん」にヒヒンと言われた。

そうです。
一ヶ月限定だが、ビールを1日1本飲んで(休肝日を2日とるから一週間に5本)、血液の数値がどう変わるか、「試してみる時期かもしれません」と、主治医であられる優香観音様から命令されたのだ。

私は美人の命令は素直に聞くタチなので、「ありがたや」と観音様に向かって手を合わせた。

ついでに、お馬さんにも手を合わせた。
(お馬さんが早く人間になれますように)

その私の拝みポーズを見て、同業者のバンドウさんが、「Mさん、違うでしょ。五郎丸のポーズはこうですよ」と意味不明のことを言った。
悪いが、無視した。

久しぶりに飲んだビールは、一番搾りの味がした。
その芸術的な味を一日たりとも私は忘れたことがなかった。
一口目を飲んだときの鼻に抜ける香りと喉を通る液体の上品なコクが、私の脳細胞全体に恍惚感を与えた。

食欲が進みますわー。

ハムカツの次は、串揚げ盛り合わせ。
次に、揚げ餃子。
そして、舞茸の天ぷら。

脂っこいものばかりだが、太宰治も「富嶽百景」に著していたように、「一番搾りには脂っこい食い物がよく似合う」(嘘です)。

アホな同業者どもは、ルールを知りもしないラグビーの話題から、次にはドラマ「下町ロケット」の話で盛り上がっていた。

「Mさんも、もちろん見てますよね。『下町ロケット』」と、同業者の中で最長老のオオサワさんに聞かれたので、安心してください。一話の途中まで見ましたよ、と答えた。

阿部寛さんは、相当にいい役者さんなので、期待を込めてレコーダーに予約し、後日大学2年の娘とともに観た。

しかし、一話の半分を超えたところで、二人揃ってリタイヤした。

かつての「半沢直樹」と同じで、出てくる男の俳優さんの誰もが、血管が切れそうなほど力んだ演技をしていて、馴染めなかったからだ。

私は、男だけが、「会社を救う」「家庭を守る」「日本を守る」と咆えるドラマや映画、小説が苦手である。
そんなに力まなくても、会社は救えるし、家庭は守れるし、日本は沈没する。

もちろん、ドラマだから、大げさにやらなければ万人好みの作品にならないというのは承知している。
だから、好きな人は観ればいいと思う。

しかし、私のように血の薄い人間には、熱血は無理だ。

ただ、この種のドラマが持つ意義に関して、私は否定しない。
世間で、熱血ドラマが好まれるのは、昔のマンガ「巨人の星」からすでに立証されている。

そういう人は、きっと血管が強いのだろう。
血圧あがりっぱなしが心地いいのだろうな、と羨ましく思うだけだ。

私は頑張っても血圧が上がらない体質なので、申し訳ありませんが、その話題はパスです。

さらに、「なんとかジャパン」という名の野球チームの話になったのだが、これもパスした。
野球シーズンをすでに過ぎているのに働かせるのは、私の感覚では「ブラック企業」だ。
このあたりの対応を見ると、さすがにメジャーリーグ機構は、選手の体のケアがよくできているな、と感心する。

大切な商品を価値のあるまま守るのが、有能なプロフェッショナル組織というものだ。
シーズン中、懸命に働いた人たちに休んでいただこうという発想がないことに、私はたいへん驚いている。

私は、アスリートの体は、「適度な鍛錬と完璧で効果的な休養」で作られると思っている。
アスリートの体を配慮するなら、鍛錬が万全なシーズン中にやる方が合理的だ。
体を休めるシーズンオフに、無理やり世界一を決める必要はない。

・・・・・といつもながらの文句をたれながら、オオサワさんに、さりげなく賄賂を渡した。

「え? 何ですか、これは?」と眉間に皺がよるオオサワさん。
人は、突然のプレゼントには、どう反応していいいかわからなくなるようだ。

仏頂面のまま、包装を解いた。
中には、プレゼントの引換券が入っている。

それを見たオオサワさんが、「な、な、なんですぅ〜」と語尾をフェイドアウトさせた。

「初孫、おめでとうございます!」

ささやかなサプライズ。

同業者全員でお金を出し合って、環境にやさしい木工の三輪車を注文したのだ。
出来上がるのは、2週間後だが、こういうものは初孫誕生の熱気があるうちに、渡しておいたほうがいい。

「オオサワさんは絶対に泣かないだろうね」という意見がほとんどだったが、私ひとりが泣くと予言した。
貧相な預言者が予言したとおり、オオサワさんは、鼻をピクピクさせたあとで、オイオイオイと泣いた。

そんな風に泣くカピバラ似のフレンチブルドッグの姿を見て、まわりのお客さんが驚き、ドン引きの空気が店内に蔓延した。
お騒がせして申し訳ありません。

そして、締めのプレゼントは、ちょっと高価なシャンパンだった。

吉祥寺の居酒屋、店長代理の片エクボさんが、「おめでとぅーござぁいまぁ〜す」と言って、シャンパンを開けてくれた。
このシャンパンはメニューにはないものだが、片エクボさんに無理を言って取り寄せてもらったのである。

しつこいとは思ったが、また「おめでとうございます」と乾杯をした。
オオサワさんの泣き笑いの顔が、とても良かった。

もちろん私はシャンパンは毒なのでパスです。


そんな喜びの空気に包まれた空間で、一人寂しくペリエを飲んでいた私の左肘が、異次元の強い力で引っ張られ、私は店の隅にある取り調べ用のテーブルまで連行された。

目の前には、片エクボ刑事が、目を釣り上げて私を凝視していた。

俺、なにか悪いことした?

小用のあと、手を洗わなかったことくらいしか、思い浮かばないが。
まさか、それを見られていたのか?

「別に、白髪の旦那に報告しなくてもいいと思ったんだけど、聞いてくれる?」

報告しなくてもいいことなら、聞かない。

「き・い・て!」

聞きましょう。

「聞いても、軽蔑しないでね」

する。

「し・な・い!」

何なんだ、このコントは。
いつまで続くんだ。

そう思っていたら、片エクボさんが、「ちょっと左の耳を貸してくれる?」と声を落として言った。

返してくれるのなら、貸す。
返してくれるというので、左耳を貸した。

片エクボさんは、思いやりのある人だ。
私の右耳が聞こえないことを覚えていて、左耳に囁いてくれたのである。

「あのね・・・・・妊娠した。入籍した。もう彼と一緒に住んでいるの。今年いっぱいで店やめるの」


(永遠の思考停止)


「どうしたの? 白髪の旦那、聞こえたの? 表情がないよ。生きてる〜?」
顔の2センチ前で両手を振られた。


人は、本当に驚くと、反応ができなくなる生き物のようだ。


まことにドラゲナイことで。
(意味も分からずに使ってみました。もう古いとか?)


2015/11/14 AM 06:33:01 | Comment(1) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

自由人のウソ
大学時代の友人・カネコからランチの誘いがあったので、吉祥寺の焼肉屋に潜入した。

芋洗坂係長と見間違うほどのデブは、肉が大好きだった。
大学時代は、175センチ、60キロの痩せ型で、180センチ、64キロの私より華奢に見えた。

しかし、今は・・・・・私は当時と比べてマイナス7キロだが、カネコはプラス40キロに華麗に変身した。
35年間、肉を食い続けたら誰でも確実にこうなる、という見本だ。

40キロの肉を体に貯蓄するには、どれだけの牛、豚、鶏、羊、猪、ワニ、恐竜を食わなければいけないのだろうか。
そんな計算ができるアプリがあれば、購入してもいいのだが。

ただ、カネコの場合、肉ばかり食っているわけではない。
それと同じ量の野菜も摂取しているのである。

カネコは、「なんで焼肉屋に来て野菜を食わなきゃいけないんだよ。バッカじゃねえの」などという白痴的なことは絶対に言わない。
彼は、バランスのいい賢いデブなのだ。
そこは認めてもいい。


バランスデブ、カネコが肉を頬張りながら言った。
「伝えたいことは2つ。まず、簡単なことから済ませよう」
そう言って、テーブル越しに賄賂を渡してきた。

袋を開けてみると、リボンの付いた賄賂だった。
開けると、箱の中で大きな財布が自己主張していた。
色は明るいブルー。
箱にはブランドっぽい名前が印刷されていた。

私は、ブランドは「しまむら」と「ユニクロ」しか知らないので、それは、その他大勢のブランドということになる。
だから、値段はわからない。

「ショウコがな、5月に会ったとき、おまえの財布があまりにもボロっちかったので、いたく心を痛めたらしいんだな。だから、誕生日には財布を恵んでやろうと半年間考えていたんだとよ」

ショウコというのは、カネコの子どもで、26歳、ふたりの子持ち、夫あり、職業は翻訳家。
ショウコが6歳のときから、私たちは友だちづきあいをしていた。

一緒に風呂に入ったこともあるのだ(人妻になる前の9歳ごろだったから、全然セクシーではなかった。いまもセクシーではないが)。

「俺も半分出したから、これは俺とショウコからのプレゼントということになるな」

じゃあ、半分に切ろうか。
俺は、ショウコのだけでいい。

「冗談だろ?」

俺は、冗談が嫌いだ。
だから、これは嘘だ。

「そういうところなんだよな。俺が、おまえを羨ましいと思うのは。
馬鹿なことを平気で言えるのは才能の一つだって、この間、オオクボ先輩と話をしたんだ」

カネコは、新宿でコンサルタント会社を経営しているバッファロー・オオクボのことを「先輩」と呼ぶ。
なぜなら、大学で2学年上だったからだ。

しかし、同じ2学年上の私のことは、「おまえ」である。

後輩思いの私が大昔に宣言した、先輩後輩を忘れて、友だちとして付き合おうぜ、という言葉をカネコは真っ正直に受け止めた。
さすがに、20代半ばまではカネコにも可愛らしい遠慮があったが、私が「あっち向いてホイ」を5回連続で負けたときから、タメ口をきくようになった。

あれから私は、「あっち向いてホイ」をしていない。


「ここからが重要な話なんだが」と芋洗坂が居住まいを正した。
デブは得である。
どんなブサイクな男でも、背筋をピンと伸ばせば、威厳が生まれる。

私が、そんなことをしても、ガイコツが標本らしい格好をしているとしか思われない。

「俺、会社やめることにしたんだ。
これは、女房にも伝えたし、ショウコにも言ってある。反対の声はなかった」

あっ、そう。

「反応が薄いな」

だって、もうショウコから聞いているし、オオクボからも聞いた。
ついでに、ノナカからも聞いた。
ノナカが東京で展開する高齢者向けミニパソコン塾を、おまえが全面的に引き受けるって話だよな。

カネコは大学卒業後、自己啓発セミナーや、ビジネス書、ビジネス手帳を出版する、いかがわしい会社に勤めた。
その会社は、今では人材派遣業を主流にしていて、カネコは千葉支部長にまで上り詰めていた。
つまり、ちょっとした成功者だったのだ。

今より確実に年収が減るのに、なぜ転職をしたいと思ったのか私には理解できないが、どっちみち他人の人生だから、私は干渉はしない。

だから、あっ、そう、としか言い様がない。


ただ、あっ、そう、だけでは字数が少ないので、ついでに、おまえの人生だ、と私はカネコに言ってやった。
さらに字数を増やすために、好きにすればいいさ、も付け加えた。


「そう、俺の人生だ。
俺は、おまえみたいに自由に生きる」

俺みたいに?
俺が自由に見えるのか、おまえには?

「ああ、オオクボ先輩やノナカ先輩とも話したんだが、結局、おまえが一番羨ましい生き方をしているんじゃないかって」

俺が羨ましい?
低収入で、持ち家もなくおんぼろアパート暮らし。低スキルで心と血の貧しい俺が羨ましいだって?
おまえ、俺に喧嘩売ってんのか?

顔をペロペロしてやろうか!

「ほら、そういうところだよ。
俺たちが、羨ましいと思うところは。
俺たちは、絶対にペロペロなんて言えないからな」

簡単だろうが。
舌を出して、それを上下左右に動かせばいいだけだ。
生後101日のワンちゃんにだってできる。

「・・・・・・・・・・」

(随分、沈黙が長いな。その間にトイレにでも行っておこうか)

トイレから帰ってくると、カネコが「8種の肉盛りあわせ」を追加して、肉と同化しているところだった。
どっちが食われているか、わからない光景だった。

肉を頬張りながら、カネコが言った。

「とにかく俺たちは、おまえが羨ましいんだよ。
だから、少しだけでも近づきたいと思って、俺は会社を辞めることにした。
俺は、自由になりたいんだ」

まあ、自由になるのは自由だが、自由になりたいのなら、もう少し痩せることだな。
デブは、四方八方どの角度から見ても、幸せにしか見えない。

俺みたいに痩せ細っていたら、人は「ああ、可哀想だな。でも、こいつとは関わりたくないから、こいつはこのまま放牧しておこうか」と考えて、柵を取り外してくれるんだ。

おまえ・・・今のようにデブのままだと、飼い慣らしたほうが得だと思って、一生柵から出してもらえないぞ。
美味しそうな姿は、自由には似合わない。
利用されるだけだ。

だから、痩せろ。

「本当か?」



嘘だ!



自由人は、焼肉を奢ってもらうためなら、平気で嘘をつく人種なんだ。



実は、それも嘘だが・・・・・。


2015/11/07 AM 06:26:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



(C)2004 copyright suk2.tok2.com. All rights reserved.