Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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キャイーンを5回
少し前に、ヤホーのトップニュースで、爆笑問題の田中裕二氏が、ネットで人の容姿を「劣化」と断じることに怒りを感じている、というニュアンスの見出しを見た。

残念ながら本文は読んでいないのだが、見出しだけでも田中氏の言わんとすることは、私には頷けた。

私もネットを閲覧していて、どこかに迷い込んだとき、ツィッターで「誰々が劣化」というような中傷文を読むことが稀にあった。
その種のつぶやきは、上から目線で人を「劣化」と得意げに断じて、本人がそのことで悦に入っているさまが透けて見えるから、私には不快だった。

きっと彼らは、永遠に年を取らない「サザエさん」や「ドラえもん」、「名探偵コナン」のキャラクターたちを愛しているのだろう。
「2次元」のキャラクターたちは劣化しないですからね。

しかし、「サザエさん」も「名探偵コナン」も昔と比べると、微妙に顔もスタイルも変わっているのだが、それは「劣化」のうちに入らないのだろうか。
まあ、これは論点のすり替えだから、自分でも上等だとは思っていないが。

はっきり言えるのは、3次元に生きる人間の多くは上手に年をとっているだけで、決して劣化はしない、ということ。

たとえばだが、有名人たちの年月を刻んだシワを「劣化」と断じる人は、鏡で自分の顔を見て明らかなシワを認めたとき、「劣化! 劣化!」と自分を罵倒するのだろうか。
あるいは、底意地の悪い表現をすると、自分の祖父母やご両親が年をとった様を見て「劣化」と罵るのだろうか。

ちょっと性格の悪い表現で、申し訳ありません。


何が言いたいのかというと、私の身近にも大変いい年のとり方をしている人がいるということを知ってもらいたいための、これは「前振り」なのでございます。

9年前から仕事をいただいている横浜元町の企画会社の「松雪泰子似の美女」という方に、以前何度かこのブログに登場していただいたことがあった。

ただ、登場していただいた、とは言っても私の勝手な一方通行で文章にしただけである。
今は先方からの「あまり私のことは書かないでください」というクレームを素直に受けて、書かないようにしている。

「松雪泰子似」とは言っても、本当に女優の松雪泰子さんに似ているわけではない。
私の中で、美女と言って真っ先に思い浮かぶのが松雪泰子さんだったので、そう表現しただけだ。

3年前に、私のいま大学2年の娘が偶然松雪泰子似に新宿駅で遭遇して声をかけられたことがあった。
大分前のことだが、恥知らずにも過去2回ほどこのブログに娘を含む家族写真を晒したことがあった。

恐ろしいことに、それを松雪泰子似が憶えていて、娘に声をかけたのである。
「お父さんには、いつもお世話になっています」

そのとき、娘は松雪泰子似を「愛しさとせつなさを心強くしたような美女」と表現した。
つまり、娘は彼女のことを雰囲気が篠原涼子さんに似ていると感じたらしいのだ。

娘が感じる美人の典型は篠原涼子さん。
私は松雪泰子さん。

この場合、冷静に考えると娘の第一印象の方が当たっていると思う。
当たっているとは思うが、私はブログを書くときに、人物を特定されて当人に迷惑をかけないために、いつもフィルターをかけている。

だから、特定されないために「松雪泰子似」と表現したのだ。
このブログでは多くの場合、本人に迷惑がかからないように苗字の一部を変えたり、カタカナ表記でフィルターをかけることにしている。

そうすれば、人物を特定される危険が多少減って、私の後ろめたさも軽減されると思ったのだ。
ただ、極道コピーライターのススキダと人類史上もっとも馬に激似の「お馬さん」に関しては、フィルターをかけていないので、彼らを特定するのは容易かもしれない。

それは、彼らが世間から罵られても私の心が全く痛まないから、そうしているのである。


話が脱線。
松雪泰子似と仕事で知り合って、いま9年目が過ぎたところだ。

松雪泰子似の年は知らない。
おそらく33から36歳の間ではないかとゲスに推測している。

だが、この9年間で、松雪泰子似が人生の坂を上手に上っているのは、いくつもの四季を経て見てきた私には間違いないことだと胸を張って言える。
もちろん年齢は重ねたが、それは「劣化」ではないと断言できる。

人間力が増した、と私は思っている。

その松雪泰子似、娘の目では篠原涼子似から仕事の依頼が来た。
そこで、爆弾低気圧が通り過ぎたあとの新宿に行ってきた。

松雪泰子、篠原涼子似(ややこしい?)は、以前は横浜元町の本社勤務だったが、3年前に結婚したこともあって、彼女の住まいに近い新宿支社に昨年転勤になった。
支社といっても、社員は松雪泰子似だけだ。
松雪泰子似が責任者となって、アルバイト7人を手足のように使っているらしい。

彼女の手足になれるアルバイトどもが羨ましい。

という本気の冗談は置いといて、仕事はMacのkeynoteを使ってのプレゼンテーション資料作りである。
その中には動画も入るので、デジカメで撮った動画を編集するのも私の仕事だ。

10時から2時間、細かい打ち合わせを終え礼をして帰ろうと立ち上がったとき、松雪泰子似が言った。
「お昼をご一緒にいかがですか。もちろん、割り勘ですけど」

そのお言葉を聞いて、私は「キャイーン」と鳴いた。
つまり、「嬉しゅうございます。お供いたします」という意味だ。

支社は、新宿と新大久保の間にある関係からか、まわりに多国籍料理の店が多かった。
「スンドゥブはお嫌いですか」と聞かれたので、お好きです、と答え、韓国料理屋に入った。

スンドゥブ、900円(ライス付き)。
ランチといえばワンコイン以下しか知らない私にとっては贅沢すぎる金額だが、ここでミミッチイ男をアピールしても何の得にもならない。
だから、やっすいですわ〜、と見栄を張った。

美女と食うスンドゥブ。
実を言うと、松雪泰子似とランチを食うのは、恥知らずにも3回目である。
3回目となると落ち着いたものだ。

レンゲは2回しか落とさなかったし、豆腐をこぼしたのは、たったの1回だけだ。
レンゲの揺れは、いつもより控えめだったと思う。

食べている間に世間話をしたのだが、もちろん何を話したのかは憶えていない。
松雪泰子似が、どんな洋服を着ていたのかも思い出せない。
ただ、隣の席の51歳から63歳に見えるオバちゃん二人組が「新大久保って、新宿だったんかいな〜」と大きな声で言ったことだけは憶えていた。

食い終わって立ち上がろうとしたとき、松雪泰子似が、「赤ちゃんができました」と透き通るような白い肌を紅潮させて唐突に言った。
そして、「まだ、身内以外には誰にも………会社の人にも言っていないんですけど」と、なぜか私の目を見て4回うなずいた。

私の口からは、当たり前のように、「キャイーン」という言葉が発せられた。
それは、「おめでとうございます。では、お祝いの意味も込めまして、ここは私が払わせていただきます」という意味だ。

私がバッグからボロボロの財布を取り出して、身振りで私が払いますと伝えたとき、「いえ、申し訳ないですから、ここは割り勘で」と両手を顔の前で振りながら、松雪泰子似が先程より10パーセントほど増量して顔を赤らめた。

3回目の「キャイーン」。
それは、「私がお役に立てるのは、こんなおめでたいときに900円を払うことだけですから」という意味だ。

「では、お言葉に甘えまして」
立ち上がって、深く頭を下げる松雪泰子似。

途中まで、松雪泰子似と並んで歩いた(幸せやわ〜)。
そのとき、松雪泰子似に言われた。

「Mさんって、本当に面白いですよね。
赤ちゃんができたって言ったら、普通の人は今何ヶ月で、出産予定日はいつかとか聞くはずなのに、絶対に聞かないんですよね」

それこそが、私が純粋な変人の証です。
興味がないわけではないですが、聞いても聞かなくても、胎児は母親のお腹の中で大きくなっていくものです。
産まれた、という最高の結果が得られればいいのであって、いつ生まれるのかをいま聞くことに、意味があるとは私には思えないんです。

だから、お腹の子とご自分の体をお大事に、としか私は言いません。

「そこは『キャイーン』ではないんですね。真面目に答えるんですね」と笑われた。


キャイーーーーン!


これは、「健康な赤ちゃんを産んでください。そして、いいお母さんになってください」の意味である。


「キャイーン」
小さな声で、松雪泰子似が恥ずかしげにうなずいた。



その厳かなお姿を拝見して、いい年のとり方をしているな、と私は確信した。



2015/10/03 AM 06:35:11 | Comment(1) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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