Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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ものすごく有名な偉人
歩いていると、ジーパンがずれ落ちてくる。
脱げそうになる。

安心してください。
はいてますよ。

怖くてずっと逃げていたのだが、3ヶ月ぶりに、むろんOMRONの体重体組成計に乗った。
体重57キロが54キロに。
体脂肪率10.1が9パーセントに下がっていた。

1日のカロリーは、最低2100キロカロリーは摂っているはずだ。
デスクワークが主な中年のオッサンには、十分なカロリーだ。
痩せる意味がわからない。

オー・マイ・ガッド!
そう叫んだら、吉祥寺の馴染みの居酒屋で、人類史上最も馬に激似の男「お馬さん」が、「Mさん、病気なんじゃないですか」と心配してくれた。

安心してください。
病気ですよ。
血が、すこぶる貧しいんです。
それが何か?

「じゃあ、たくさん栄養のあるものを食べてください。
今夜は俺がMさんの分、払いますから」

以前から薄々気付いていたのだが、馬というのは、優しさと思いやりのある生物のようだ。
「奢る」と言わないで「払う」という言い方に心を動かされた。

串焼きの盛り合わせと馬刺しを頼もうとした。

「え? 馬刺し?」
お馬さんの顔から血の気が引いていた。

安心してください。
この店に、馬刺しはありませんから。
ホッケを追加で、いただきましょうか。

「よかった」
血の気が戻ったようである。

「はい、お待ちーっ!」

威勢のいい声とともに運ばれてきたホッケ。
なかなかルックスのいい肉付きのいいナイスバディのホッケだった。

そのナイスバディをテーブルに置いたとき、居酒屋の店長代理・片エクボさんが、私に思わせぶりな目を向け、さらに目を細め、「ちょっと白髪の旦那を借りますから」と同業者たちに宣言した。

え? え? え? という煩わしい好奇の目を背中に感じながら、貧血オヤジは、店の一番奥の2人席のテーブルまで拉致された。

真向かいには、推定年齢24歳から28.5歳の片エクボさんが、いつもより多い瞬きを繰り返しながら座った。

緊張で便意を催しそうになったが、我慢した。

間近で見る片エクボさんは、色が浅黒いのは好みが分かれるところだろうが、水泳で千メートルを泳いだ後のようなマーメイドっぽい色っぽさがあった(ちょっと伝わりづらい表現)。
要するに、世の男性の誰もが憧れる童話の人魚的な艶めかしさがあったということ(伝わったかな?)。

そのとき、居酒屋の店長代理・片エクボさん・本名シモコーベさん・ミドルネーム・マーメイドさんが、彼氏にプロポーズされたことを7月のこのブログで載せた記憶が、私の皺だらけの脳みそに蘇ってきた。

きっと、その答案用紙を私に見せたいのだと思う。

百点か零点か。
いや、50点ということもアリエルか。

片エクボさんが大きく息を吸った。
54キロの体が吸い寄せられたような気がした。
あと4キロ体重を増やさないと、このままでは吸い込まれてしまうかもしれない。
早くホッケを食って太らなければ。

「仕事中だから、簡単に言うね。
プロポーズは保留しました。
待たせるのは彼に悪いと思ったから、もしだらだら続くのが嫌だったら会うのはやめましょうって言ったの。
そうしたら、待つって言ってくれて、でも、いいのかなあ、私の一方的な都合で待たせても、と悩んでいるところ」

50点でした。

厨房が気にかかるせいか、厨房を振り返りながらの話だから、語尾がフェイドアウトして聞きづらかった。
ただ、相当彼氏に悪いと思っていることだけは、はっきりした形の困り眉から伝わってきた。

人の結婚など、どうでもいいのだが、何かを言わなければ納得しないだろう。
だから、私はこう言った。

ものすごく有名な偉人が、こんなことを言っていたんだ。
恋愛や結婚の形式は、人類の数ほどある。
決まったルールなどはない。

だから、「待ちたい」と彼氏が言って、シモコーベさんが、「待たせてやる」という形式があっても不思議ではない。
彼氏がどれくらい待てるかはわからないけど、飼い主の指示で犬がエサを待つ時間よりは長いだろうから、待たせてやってもいいのではないだろうか。

「ちょっとぉ! 『待たせてやる』なんて言ってないんだけどぉ!」
逆八の字眉で睨まれた。
呪いのマーメイド顔。

彼氏にもこんな怖い顔をするのだろうか。
もしこの顔を見てビビらないとしたら、私は彼を尊敬する。
結婚する価値はある男だと思う。

「まあ、いいわ! ところで、その『ものすごく有名な偉人』ってのは、誰?」

あなたの目の前にいます。

シモコーベさんの上半身が、崩れるようにテーブルに突っ伏し、両手がテーブルを勢いよく叩いた。
ドン! ドン!

そして、高速で上体を起こし、息を大きく吸った。
また吸い込まれそうになった。

「久しぶりに、グーで人を殴りたくなったわぁ〜」
本当に左手でグーを作りやがった。
(シモコーベさんは、サウスポー)

「神の左」から逃れるために、私は飛ぶように、お馬さんの隣席に着地した。

ヒッヒ〜〜〜ン?

着地の勢いでジーパンが脱げそうになったが、安心してください。はいてますよ。

早く太らないと、若い子に脅かされるたびに、ジーパンが脱げそうになることを繰り返すだろう。
食わねば。

串焼き盛り合わせ。
ホッケ。
揚げギョーザ。
サイコロステーキ。
焼きおにぎり2個。
焼き鳥・ぼんじり。

逆ダイエット、逆ダイエット・・・・・とつぶやきながら、一心不乱に食い物にかぶりつく白髪のガイコツ。

同業者の呆れ顔に囲まれながら、ガイコツは42分間立て続けに食い物を口に入れることを繰り返した。
呆れたのは、同業者だけではなかった。
片エクボさんも厨房入口から小走りにやってきて、私の顔を覗き込んだ。

逆ダイエット、逆ダイエット・・・・・。

食い終わった私が、追加注文をしようとメニューに手を伸ばしたら、全員にすごい勢いで手を押さえられた。

有名なスターか全国指名手配の極悪人ならいざ知らず、一般のガイコツがこれほど多くの人から手を押さえられることなど、一生に一度あるかないかだろう。

私は、貴重な体験をしたのかもしれない。

わかりましたよ。
わかりましたから、手をお離しくださいませ。

同業者の手が離れ、最後に片エクボさんの手が残った。
そのとき、初めて気づいたのだが、片エクボさんの爪は短くて、マニュキュアも塗っていなかった。
料理をするから、仕事中はマニュキュアを塗らないのか、と思った。

私が、爪を見つめているのに気づいた片エクボさんが、浅黒い顔を赤く染めながら、「彼がマニキュアが嫌いだから」と聞いてもいない、どうでもいい情報を誇らしげに私に告げた。

そうですか。
では、いいことを教えて差し上げましょう。
ものすごく有名な偉人が、こう言いました。
「マニュキュアが嫌いな男は、待つのが下手な最低な男だ」と。

突然、左足の指たちに激痛が走った。
何か重いものが落ちてきたのだと思う。

いたっ!

「いた?」
お馬さんが、長い顔をかしげ、熱い鼻息を撒き散らした。

いた、板垣死すとも、自由は死せず!

「はあ? なんですか、それ?」

あのね、君たち。
いい年のオッサンが、板垣退助の岐阜遭難事件を知らぬのか。
自由民権運動を知らぬのか。
たった133年前のことなのに。

「はぁ〜? ぎふそうなん〜〜〜じけん〜? じゆう〜〜〜?」

明治は、そんなに遠くなったのか。
じゃあ、いいわ。

さて、次、何たのもうかな。

メニューを取ろうとしたら、また押さえ付けられた。


面白いから、このコントを続けようとまたメニューを取ったら、誰も相手をしてくれなかった。
すこぶる寂しかった。


安心してください。
泣いてますよ。



2015/09/26 AM 06:38:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

バチあたりな3人
久しぶりに、朝の目覚めが良かった。

5時間に足りない睡眠だったが、もう常連さんになった感のある「立ちくらみ」もなく、朝の清々しさが体中を満たしていた。
朝食の野菜たっぷりのタン麺もうまかったし、そのあとのトイレもキレのあるでっかいのが出た。

オンボロアパートの庭のダンボールに住み着いたセキトリ(猫)に、薄味の牛丼を振舞ったら、18秒で間食したあとで、感謝の眼差しで見上げられた。
「うまかったぜ。ありがとうよ」

どういたしまして。

すべてが、心地よかった。

だが、人生というのは、こんなときこそ不幸が忍び寄ってくるという真理もある。

昔の人は、味のあることを言った。
禍福はあざなえる縄のごとし(これは来年の入試に出るので、受験生の方たちは予習をしておいてください)。

災いと幸せは、背中合わせ。
人の一生は、すべて同じバランスで移ろい過ぎていくものだ。

iPhoneが震えたとき、私は、その人生のバランスを痛感した。
ディスプレイに表示されたのは、「ススキダ」という、おぞましい文字だった。

この瞬間、朝の清々しい時間は飛び去り、災いが私の頭に降りかかってきた。

極道コピーライターのススキダが言った。
「兄貴が死んだ。くも膜下出血だ。いま俺は病院にいる」

わかった。
通夜は無理だが、葬儀には参列させてもらう。

「悪いな。疲れているのにな」

気にするな。

ススキダの兄貴は、今年還暦(60歳)になるはずだ。
60歳になったのか、59のまま人生を終えたのか。
それはわからない。

ススキダの兄貴とは、10数回しか会ったことがない。
すべてが、ススキダの横浜の事務所でだった。

ススキダの兄貴は、日本人の父親と中国人の母親の間に生まれた。
だから、もちろんススキダも日中の混血である。

ススキダの場合は、日本人として、ごく普通の名前を親から与えられたが、兄貴の方は、なぜか中国人を連想させるような名前を親に授かった。
おそらく、それが兄貴の人生を少し捻じ曲げたのだと思う。

小学校、中学校で、そのことで兄貴はイジメにあった。

人は、異質なものを排除する傾向にある。
善悪のわからない子どもなら尚更だ。

この社会では、たとえ異質なものであっても強いものは排除しないが、弱い者は徹底的に排除することが力学的な法則になっていた。
ススキダの兄貴は弱かった。
だから、いじめられた。

高校生になって、環境が変わればイジメはなくなるかと思われたが、それなりに偏差値の高い私立高校でも彼は排除された。
いつの時代もそうだが、教師は何の力にもならなかった。
だから、高校一年の夏に、彼は退学した。

彼に、わずかでも幸運があったと思うのは、親が少しだけ裕福だったことだ。
彼の父親は、本職は普通の会社員だったが、新宿歌舞伎町にビルを持っていた。
父親が、そのビルの管理をする会社を子どものために立ち上げ、16歳の彼が、そのビル管理会社を取り仕切ることになった。

もちろん、社長はススキダたちの父親だったが、実質的に運営をしていたのはススキダの兄貴だった。
それからずっと、ススキダの兄貴は、そのビル管理会社の責任者であり続けた。

そして、責任者のまま、死んだ。

人付き合いが下手なススキダの兄貴は、結婚はせず子どももいなかった。
ビル管理会社の責任者だから、報酬はかなりのものだったと思うが、彼の暮らしは質素で、住まいは東京府中の古い賃貸アパートだった。
車も持っていなかった。

ススキダの兄貴の趣味といえば、種々の資格を取得することとランニングだった。
資格は、大検や不動産鑑定士、司法書士など50種類以上を持っていたという。
しかし、それを活用することは生涯なかった。

ランニングが趣味だということだけで、私との小さな接点が生まれた。

「今度、東京マラソンを一緒に走りましょうよ」とススキダの兄貴から何回か誘われたことがあった。
結局それは叶わなかったが、ススキダに、「兄貴が自分からそんなことを言うのを初めて聞いたよ。おまえのことを気に入ったのかもな」と言われた。

日陰者。
おそらく、ススキダの兄貴は、私に同じ日陰者の匂いを感じたのだと思う。

そして、実は私も同じことを感じていたのである。
私はいじめられたことはなかったが、絶えず多数派から距離を置いて、強いものに反発し楯突くことを繰り返していた。

俺は異質なんだ、とずっと思っていた。
いまも思っている。

ススキダの兄貴は、そんな私の日陰の部分を感知して、心を開いたのだと思う。
今更、確かめようがないが。


葬儀は、友だちのいない兄貴にしては参列者が多かった。
多いといっても20人弱だったが、それなりに形にはなったと思う。
ススキダの同業者と歌舞伎町のビルのテナントの人がほとんどだった。

「家まで送ろう」
東京府中の斎場から武蔵野のおんぼろアパートは、車なら15分程度だ。
だから、送らせてやる、と答えた。

だが、その前に湿っぽい空気は飛ばそうぜ。
吉祥寺のカフェでランチしようか。

私の提案を聞いて、ススキダが無言で方向を変えた。
助手席にいたのは、ススキダの奥さんだった。
兄貴のお骨は、奥さんが持っていた。

吉祥寺のカフエに入った。
白い壁、白い調度品。
普段なら、唾をかけたかもしれないが、葬儀帰りには、その白づくしは悪くなかった。

メニューを見ていたススキダがメニューの一点を見つめていた。
そして、目から水が溢れた。

店のBGMには、ビリー・ジョエルの「ニューヨーク・ステイト・オブ・マインド」が流れていた。

私は、人を慰めることができない人格破壊者なので、放っておいた。
ススキダの涙は、次の「マイ・ライフ」で突然止まった。
時間にしたら4分程度かも知れない。

「悪いな。兄貴の思い出をたどるのに3分もかからないことに気づいて、哀しくなってな。兄弟なのに薄情なもんだな」
ススキダが涙で腫れた目に老眼鏡をかけてメニューを確かめたが、メニューで悩むのが嫌いな私は、ウエイターを呼んで勝手に注文した。

ススキダ夫妻は、ボンゴレ・ビアンコとアイスミルクティー。
私はツナサンドとホットコーヒーだ。

ススキダの苦笑い。

いつもは、ススキダの13倍は喋る奥さんが、今日は静かだった。
だが、ススキダの笑いを見て安心したのか、水を一気に飲んだあとで口を開いた。

「ボンゴレ・ビアンコと言えば、今年の春に、横浜の事務所で作ってくれましたよね。あれは、ニンニクが適度に効いていて美味しかったです。ここのは、どうでしょうかね?」

まあ、俺が食うわけじゃないから、美味くてもまずくても関係ないですけどね。

「その言い方。Mさんにしては、ひねくれ度が足りませんね。
普段は、もっとねじ曲がったお答えが返ってくるのに、お疲れなんじゃないですか?」

苦笑するしかなかった。
ススキダと10歳離れた奥さんは、顔の表情と声で判断すると30代といっても通用するほど若々しかった。
そして、頭の回転が早かった。

「美女とゴキブリ」

これも目に見えない誰かが、バランスを取っているのかもしれない。
そうでなければ、ススキダにこんな幸運が巡ってくるわけがない。

喪服に似合わない笑顔で、ススキダの奥さんが言った。
「でも、忙しいのに、なんで料理なんかしようと思ったんですか。睡眠時間を削ってまで、ご家族のお弁当を作ったりして」
無邪気な笑顔だった。

負い目ですかね。

「負い目?」

妻には、俺なんかが夫で申し訳ない、という負い目。
子どもには、俺なんかが父親で申し訳ない、という負い目。
母には、俺なんかが息子で申し訳ない、という負い目。

だから、俺の妻になってくれてありがとう、俺の子どもに生まれて来てくれてありがとう、俺の母になってくれてありがとう、という感謝の気持ちを忘れないために料理を始めたんですよ。
そうしたら、料理は科学だということに気づいて、ハマってしまったというところですか。

ボンゴレ・ビアンコとサンドイッチが同時に運ばれてきた。

話を中断して、食うことに専念した。
ツナサンドは、塩加減が絶妙でオイル臭さを感じさせない完璧なサンドイッチだった。
プロフェッショナルを感じさせる味と言って良かった。

ボンゴレ・ビアンコは?
「不味くはないですけど、平均的な味ですね。もしかしたら、人に対する『負い目』が足りないのかもしれませんね」
ススキダの奥さんが、片頬にスパゲッティを含んで首をかしげた。

「いや、これは『負い目』よりも『感謝』が足りないのかもな」
ゴキブリが得意げに鼻を膨らませた。
そして、話を続けた。

「さっきの話が本当なら、俺が友だちだということにも、おまえは感謝しなきゃいけないってことだよな。つまり、俺にも負い目を感じているってことか?」

確かにな。
昔はゴキブリが大っ嫌いだったが、今では冷静に彼らの生き様を観察することができる。
そのことに関しては、感謝しているよ。


それを聞いて、手を叩いて喜ぶ喪服の美女。


おそらく、これでススキダの兄貴の供養はできたはずだ(と思う)。



エステマに取り残されたススキダの兄貴。

バチあたりで申し訳ない。



2015/09/19 AM 06:28:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

チャーシューからスペアリブへ
デブとのデートは、「おふろの王様」だった。

いつもなら、チャーシュー・デブ、スガ君とのデートはラーメン店というのが恒例だった。
しかし、今回は、デブと裸の付き合いという気持ち悪い状況になった。

おそらくスガ君は、ダイエットしたボディを私に見せびらかしたかったのだろう。
何を思ったのか、3か月前からライザップに通い、「結果にコミットした」デブは、130キロの体を115キロに落とすことに成功した。
それがあまりにも嬉しくて、裸になることを決意したに違いない。

「あたし、脱ぐわ!」

ただ、15キログラム結果にコミットしたとはいっても、まだ私の倍の体積はありますがね。

しかし、これ以上、男の裸について語っても誰もときめかないだろうから、男の裸は今回のテーマから外すことにします。


なぜ、今回はラーメン・デートではなかったのか。
そのことを湯上りに、施設内のレストランで遅い昼メシを食いながら聞いてみた。

スガ君は、十割とろろそばとミニいくら丼、ミニねぎとろ丼、いかげそ唐揚げ、味噌汁。
私は、十割そばと焼きおにぎり。

そんなに食ったら、「結果にデブっとする」ぞ、と思ったが、スガ君が余りにもメシを美味そうに食うので言えなかった。

食い終わって、水を何杯もおかわりするチャーシュー・デブ。
その大量の水分の摂取がトラブルのもとだったと言われて、はあん? と首をかしげた。

今年の夏も、スガ君は、58杯以上のラーメンを胃袋に放り込んだ。
そして、大量の水も放り込んだ。

食べる前に水を飲み、食べている最中も水を飲み、食べ終わったら、もっと多くの水を飲んだ。
そのことは、私が知っているスガ君がラーメンを食うときのルーティンだから、これは崩しようがない。
デブは汗かきなので、水を飲まないと死んでしまうのだ。

しかし、この夏、そのことで3軒のラーメン店から文句を言われたというのだ。

「お客さん、水飲みすぎだよ。そんなんじゃウチの自慢のスープが薄くなっちゃうよ」
「本当は、水なんか出したくないんだよね。味がわからなくなるからね」
「ラーメンを食べに来たのか、水を飲みに来たのかわからないね」

何様だ、こいつら!
それが客に言う言葉か!

私は、そう思った。

そして、普段は温厚な175センチ、体重115キロ、柔道三段のデブも、そう思ったのだという。
スガ君は、体のどこを切っても「温厚」と書いてあるほど、天然記念物的な金太郎飴のような「温厚マン」である。

そのスガ君が、店の「黒Tシャツはちまきマン」に腹を立てた。

商売というのは、お客様に最高の技術を見せるのはもちろんだが、あなたたちが得る報酬の中には、お客様を心地よくさせる「おもてなし」の価格も入っているんですよ。
それが入っていない店は、ただの自己満足で金をぼったくっていると言われても仕方がない。

それなら、俺は大学や高校の学園祭の屋台の焼きそばのほうが、はるかに価値は高いと思う。

どんな商売でも、お客様は千差万別です。
だから、すべてのお客様に味を合わせろとは言わないが、「おもてなし」だけは誰に対しても同じクォリティのものを提供できるはずだ。

店が客を選ぶんじゃない。
客が店を選ぶんだ。

俺は、そう思って仕事をしてます。
何か間違ったこと、俺、言ってますか。


そんな風に喧嘩を売ったらしい。


しかし、ラーメン店の店主というのは、つくづく唯我独尊タイプが多いようだ。
3軒の店主が、「もう次からは、来ないでくださいよ」と言ったというのだ。


もう一度言わせていただく。
何様だ、こいつら!

店名を曝そうかと思ったが、スガ君に「Mさん、ダメですよ。いつも『ネットの暴力は嫌いだ』って言ってるじゃないですか。ここは我慢してください」と言われて、冷静になった。

よかった。もう少しで、ネット暴力団に魂を売るところだった。
(スガ君は、心が広いなあ)

しかし、スガ君にとって、その事件はかなりショックだったらしく、その仕打ちを受けて「ラーメンを食べる気力がなくなりました」と、太い首を左右に振って、悲愴なため息を漏らした。

かつて静岡で4年半ほどラーメン店を経営し、今は年間5百杯以上のラーメンを食うスガ君が、もう2週間以上ラーメンを食べていないというのは異常だ。異常気象だ。
こんなラーメン愛に満ちた男に、たかが水でクレームをつける、その驕り高ぶった姿に、私は怒り心頭に発し、それを冷ますために、思わず生ビールを注文しようとしたほどだ。

「待って待って待って! Mさん、ドクターストップ! ストップ!」
スガ君が止めてくれなければ、私はこのまま地獄まで堕ちたに違いない。

危ないところだった。

「完全にラーメンに対する熱が冷めたわけではないですけど、少し距離を置こうかな、と思ってるんですよね」
「今は、うどんにはまってましてね。手打ちうどんの看板が出ているところには、お昼を食べたあとでも、条件反射的に入ってしまうんですよ。Mさん、うどんって、美味しいですよね」

ラーメン業界は、つまらないプライドを振りかざしたことで、VIP級の顧客をなくそうとしている。
(私の心の声をお届けします。もてなしの心も知らないで、プライドを煮込んだスープ作ったって、そんなの、ただの自己満足じゃねえか!)

「でも、ここでソバを食べて思ったんですけど、ソバも美味しいですねえ。日本人なのに、早く気づくべきだったなあ。他にも日本には美味しいものたくさんあるんですよねえ。和食は無形文化遺産ですからね。これを機会に、色々食べ尽くしてみようかな」
結果にコミットした男に、いつもの活力が戻ったようだ。


しかし、そうNARUTOですね・・・・・スガ君。
困ったことに、君のことをチャーシュー・デブと呼べなくなってしまうんだなあ。

うどん・デブではインパクトがない。
ソバ・デブなんか言葉の響きが弱すぎて使おうって気にもならない。

パスタ・デブ、カレーライス・デブ、おにぎり・デブ、焼肉・デブ、餃子・デブ、たこ焼き・デブ。
まったく響かない。

そう思っていたら、スガ君がナイス・アシストをしてくれた。

「この間、家内がスペアリブを作ってくれたんですけど、感動するほど美味しかったなあ。感謝のしるしに、家内のことを抱きしめたら、あれ以来、夕食に週2回はスペアリブが出るようになったんですよ。それが楽しみで楽しみでっ!!」


はい!

スペアリブ・デブ。

いただきました。







ところで、先ほど5時50分頃、東京武蔵野揺れました。
お気を付けください。


2015/09/12 AM 06:23:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

野ブタの結婚
9月になったからというわけではないが、高熱を出した。

ただ、今はもう回復している。

38.7度の熱など、2年前までの私だったら、鼻で笑って平気で仕事をしただろう。
しかし、今はある事情があって、風邪による脱水症状が命取りになることもある、と観音様から脅されていることもあって、一日だけ安静にしていた。

私は人に弱みを見せることが、無理やりな安全保障関連法案の次に嫌いな人格破壊者なので、仕事部屋にテントを設営して、まる一日そこで眠った。
夕方、家族のメシを作ったときだけ、人間界に姿を見せたが、あとはずっとテントに籠っていた。
アクエリアス2リットルとゆで卵4個で栄養を補給した。

そうやって優等生の生活を送っていたら、次の日の朝、あら不思議、熱が37度まで下がった。
体も気のせいかもしれないが軽く感じた。

体は軽かったが、点滴をした方がもっと回復は早いだろうと考え、かかりつけの医院に行った。
しかし、主治医の優香観音様は、その日は欠勤日で、オネエ疑惑のある若い医者に裸を見られた。
そして、血を採られた。

最近では、血液中のヘモグロビンの数値は10分も待たずに検査結果が出るから楽だ。
オネエ医者に「これは、どうかしらねえ。ちょっと感心しない数値だわよね。いま点滴してあげるから、家に帰ったら鉄剤を2倍飲んでね」と甲高い声でクネクネと言われた。

あんたの喋るのを聞いたら、誰でもめまいがするわい。

点滴してもらって、完全復活。
家に帰って、通常の倍の鉄剤を飲んだあとで、仕事を再開した。

浦和のドラッグストアのチラシの2校だ。
週末セールの商品を4箇所差し替えて、他に価格を変える箇所が11という比較的簡単な校正だった。
1時間もかからずに終わった。

やや遅い昼メシのアジフライ、サーモンフライ、エビフライを食っていたら、iPhoneが震えた。
荻窪のWEBデザイナーのタカダ君(通称ダルマ)からの電話だった。

出たくはなかったが、エビフライ、アジフライを食っていたら、シッポがあまりにも美味だったので、気分がよくなって反射的に出た(シッポは上手く揚げると美味しいんですよ)。

「ああ、師匠! ショックじゃないですかぁ! 大丈夫ですか? 落ち込んでないですかぁ?」
いきなりネガティブな問いかけをぶっ込んできやがった。

だから私は答えた。
ああ、ショックだね。大丈夫じゃないね。すこぶる落ち込んでるね。

「ああ、そうですよねぇ! やっぱり、そーですよねえ!」
ダルマが嬉し気に、鼻息荒く声に力を込めた。
そして、こう言ったのだ。

「堀北真希が結婚するなんて、俺もショックでしたよ。全然油断していましたね。だから、師匠もショックを受けてるんじゃないかと思ったんですよ」

さあ、話がわからなくなってきたぞ。
堀北真希さんの結婚情報は、少し前にヤホーのトップページの見出しを見ていたから知っていたが、ショックを受けたというほどではなかった。

ご結婚、おめでとうございます、としか思わなかった。
つまり、これは、いつものダルマの早とちりの勘違いということになる。

タカダ君。
申し訳ないが、私は堀北さんとは、縁もゆかりもないのだが。

「縁もゆかりもなくても、ファンだったじゃないですか」

はて、その情報は、どこから仕入れたものであろうか。
俺は一度もそんなことを言った覚えはないが。

「何をとぼけているんですか、師匠! イケメンパラダイス、面白いって言ってたじゃないですか!」

何年前の話だよ。
面白いとは言ったが、堀北さんを好きだと言った覚えはないぞ。

「え? え? え? え? え? え? え? え? えーーーー!」

俺、病み上がりだからさ、切るぞ。
いたずら電話になんか付き合っている暇ないんだよね。

「いや、師匠は、ショックだって、さっき言ったじゃないですかぁ」

タカダ君が正確に主文を語らないから、テキトーに答えただけだ。
君ももうアラフォーなんだから、言葉の最初に主文を語る訓練をしたほうがいいぞ。
そうしないと、言葉がただの雑音になって、コミュニケーションが取れなくなる。

ようするに、あれだろ?
堀北さんが結婚した、という悲しみを俺と共有したかったんだろ。
「野ブタをプロデュース」からのファンとしては、現実を受け入れたくなかったんだろ。

「そうなんですよ。堀北真希の結婚を聞いてから、生きる気力が湧いてこないんですよねえ」
湧いてこなくてもいいんじゃないか。

「食事をしていても、よく味がわからないんですよ」
じゃあ、食わなければいい。

「これから何を楽しみにしたらいいのか」
楽しみなんかなくても、空気と水があれば人は生きていける。

「絶対に結婚なんかしないと思っていたのに!」
結婚していないと思い込めばいいんじゃないか。

「夜も眠りが浅くて、俺、病気になりそうです」
君が眠らなくても朝は来るし、病気になったら医者が儲かるから、君は役に立っているってことだ。

「むかし買った写真集を開く勇気がありません」
オークションで売り払えばよかろう。

「もうダメです。俺、立ち直れません!」
立ち直らなくても大丈夫だ。
君の奥さんのトモちゃんは、早速若い男を見つけて再婚するだろうから。

「・・・・・・・・・・・・・・(不気味な無言が続いたぞ)」


「師匠!
俺のこと、嫌いなんですか!
そんな意地悪なことばっかり言って!」


いや、大好きだけど。


「・・・・・・・・・・・・・・(また不気味な空白が)」


(泣き声で)「師匠は、どうしていつも、そんなに優しいんですかぁ?」

はて? 優しくした覚えはまったくないのだが、これもダルマの勘違いか。

「要するに、俺に早く立ち直れってことを言ってるんですよね。お前には家族がいるんだから、現実の家族を大事にしろと言ってくれているんですよね!」

うん・・・・・・・まあ、そうだよね。
そういうことにしておこうか。


最後に、ダルマが私にこんなことを聞いてきた。

「もしもですけど・・・師匠が、結婚してショックだと思う有名人って誰ですか?」

そのことに関して、私は躊躇なく答えることができた。

芦田愛菜ちゃんだね。
あとワカメちゃんも。
武蔵野市境2丁目に住む4才の愛栞(あいり)ちゃんが、いま結婚したらショックでゼッタイに俺は寝込むな。


iPhoneからの応答が突然途絶えた。


国際宇宙ステーション!
応答せよ!



2015/09/05 AM 06:26:03 | Comment(1) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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