Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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武蔵境の妖怪
仕事の打ち合わせが終わって、東京駅から中央線の下りに乗った。

午後2時半頃だったせいか、車内はすいていた。
目の前に、筋肉の塊のような白人が座っていた。
ただ、顔は、ムキムキの体には不釣り合いなベイマックス顔だった。

申し訳ないが、ちょっと笑った。

新宿駅で、20歳前後の男が二人乗ってきて、私の左隣に座った。
そのとき、アナウンスがあった。

「武蔵境駅でバッグが挟まった影響で、下りの電車に遅れが出ています。お急ぎのところ、申し訳ありません」

新宿駅をやや遅れて発車。
中央線は、事故が多い路線だが、バッグが挟まった程度なら軽いものだ。
遅れたとしても、3分程度だろう。

たいしたことはなかろう、と首をゴキゴキと鳴らした。

そのとき、隣のふたりの会話が耳に入ってきた。
「なんだよ! また人身事故かよ! 武蔵境なら、どうせ亜細亜大の学生が飛び込んだんだろうよ。ツイートしてやろ」
「ああ、やってやれよ!」

顔は見えないが、左隣の男がスマートフォンを取り出して、指を動かし始めた気配を感じた。

なかなか、面白い想像力を持った若者だ。
バッグが挟まって電車が遅れるというアナウンスが、「人身事故」「亜細亜大生飛び込み」に変換できる頭脳というのは、相当変換能力が秀でているか、相当悪意を持ったバカか、どちらかだろう。

そのツイッターを見た人は、もちろん、その文章を真に受けて、「武蔵境駅で人身事故」と思い込むに違いない。
受け取る側は、ツイートした人間の頭脳の優劣をいちいち想像しない。

だから、彼らの中では、それが事実になる。

ツイッターというのは、本当に面白い道具だ。
こんなふうに、アカウント主のバカが、平然と空気中を浮遊できるのだ。

こんなツイートをしていたら、毎日が楽しいだろうな、とも思う。
彼らには、真実を伝える気はさらさらないのだから、何でもありだ。
羨ましくて仕方がない。

偶然隣りに座り、私と同じ武蔵境駅で降りた、名前も顔も知らない、妖怪さん。
その想像力溢れた頭脳で、これからも世界を歪ませてください。
期待しています。


電車は、2分遅れで武蔵境駅に着いた。
そして、私は、猛烈に腹が減っていた。
朝メシは、フルーツグラノーラを食っただけで、そのあとは、何も食っていない。

家に帰れば、カップラーメンが待っていてくれるが、今日は、カップラーメン君には申し訳ないが、待ちぼうけを食らわせようかと思う。
それほど、腹が減っていた。

今すぐ食えるものは何か、と考えたら、「すき家」が思いうかんだ。
牛丼は誰もが食っているだろうから、ポークカレーがいい。

武蔵境駅北口のスキップ通りを抜けた斜め前の「すき家」に入ろうとした。

しかし、店の手前2メートルほどのところで、声をかけられた。

「M先生じゃないですかあ!」

その声の主に思い当たった私は、違います、人違いですと答えた。
そして、相手の顔も見ずに、店に入ろうとした。

すると、「ちょと待てちょと待て」と、首から下3センチのところを這うナメクジのようなジメっとした声で、左肩から18センチ下の二の腕をつかまれた。

その20代後半の男の顔と声は覚えていたが、名前は忘れた。
ただ、住所とメールアドレス、携帯電話の番号は知っていた。

なぜなら、2か月前に、「Mac出張講習」で、家にお伺いしたからだ。
西東京市の8階建て高級マンションの4階のどこかの部屋で、私はその男にMacを教えた。

「Macは、以前結構やっていたんですけど、気が変わってWindowsに変えたんですけど、Windowsはもう大体把握したんですけど、Macをもう一度やり直そうと思っているんですけど・・・・・」

言ってることが、わからないんですけど。

とは言いながらも、教えて欲しいという申し出を拒む選択は、私には許されていないので、1日3時間を2日続きで教える約束をした。

しかし、信じられないことだが、初日の講習が終わったあとに、男が「大変勉強になりました。だけど、講習料、千円まけて欲しいんですけど」と言ったのである。
そのとき、私は右手でグーを作った。
さらに、「来週の土曜日、彼女とデートなんで、少し現金を残しておきたいんですけど」と言われたときは、左手もグーになった。

だが、暴力は犯罪である、ということを1才の頃から祖母に教え込まれた私は、すぐにグーをパーに変えて、約束は約束。たとえば、あなたは小田急センチュリーホテル・レストラン・トライベックスでフィレステーキを食ったあとに、レジで「負けてくれ」と言えますか、と冷静に訪ねた。

「いや、それとこれとは違うんですけど」

メールでやり取りしたときに、こちらの金額を提示しましたよね。
それに対して、あなたは、わかりました、と返事をした。
そこで、契約は成立しているんですよ。
それは、レストランのメニューを見て注文したのと同じことです。

わかりますか? 違わないんですよ、ちっとも。

すると、男がアッサリと言った。
「ああ、じゃあ、明日はもう来なくていいです。お金がもったいないんで」

家に帰って、メールアドレスの下に得意げに載せていた男のツイッターのアカウントを開いたら、「あんなケチ初めてだぜ」と褒めてくれた文章を見つけた。

私は「アンナ」という名前ではないのに「あんな」呼ばわりされた。

そんな男が「ちょと待てちょと待て」と言いながら、首から下3センチのところを這うナメクジのようなジメっとした声で、私の左肩から18センチ下の二の腕をつかむなんて、こんな悪夢があっていいわけがない。

2か月前の経緯を思い起こしたら、男の方が、バツが悪いはずだ。
それなのに、声をかけてくるなんて、天使の私には、「妖怪の所業」としか思えない。

妖怪嫌いの私は、あっ、やばい! ここに自転車を停めてはいけなかったんだぁ〜、と叫びながら、店の横に置いた自転車に颯爽と飛び乗り、すき家前から逃走した。


家に帰って、寿がきやのカップラーメンを食いながら、男のアカウントを開いたら、「シラガのおっさん必死の逃走(笑)」だってさ。


男の姓名と住所、電話番号、メールアドレス、ツイッターのアカウントをコピー&ペーストしたい衝動に駆られた。

しかし、日本国には個人情報保護法、というものがある。


助かりましたね、オカダさん(笑)。



2015/05/26 AM 06:25:06 | Comment(4) | TrackBack(0) | [日記]

2分で消滅
おバカが帰ってきた、という話を以前このブログでエントリーしたことがあった。

フクシマさん、というおバカ偏差値99の男がうつ病を克服して帰ってきたことは、今年一番の嬉しい出来事だった。
そのフクシマさんの奥さんから、先週末に電話をいただいた。

「ご迷惑をおかけしたので、お礼の意味も兼ねまして、外でお食事でもいかがでしょうか」

私は、フクシマさんに迷惑をかけられたおぼえはまったくないのだが、ご馳走してやる、という人様の好意を踏みにじるほど極悪人ではない。
ただ、ご馳走になるにあたって、偉そうだとは思ったが、二つの条件を出させていただいた。

一つは、桶川の会社でフクシマさんと同僚だった麻生久美子似の元事務員を呼ぶこと。
そして、二つ目は、高級な食い物を食うと腹を壊す私のために、食い物は庶民的なものにして欲しい、というもの。

「では、ガストにしましょうか」と言われたが、私の希望としては、いま猛烈な逆風を浴びている「マクドナルド」か「すき家」が望ましい、とお願いした。

そのことはきっと、私と同じように、少数派、逆風が大好きなフクシマさんや麻生久美子似にも絶対受け入れられるはずです、と熱弁した。

その結果、すき家では長話はできないだろうということもあって、場所は新宿駅西口のマクドナルドに決定した。

お昼時間を過ぎていたし、逆風を浴びているから空いているに違いない、と予測したが、店内は意外と混んでいた。
本当に逆風を浴びているのか、これなら同じように逆風を浴びている「ワタミ」にすればよかった、と後悔した。

なんだかなあ〜、期待はずれだったなあ、と妊娠9ヶ月の麻生久美子似と愚痴をこぼしあった。
麻生久美子似のお腹は、だいぶ目立って、マクワウリをまるごと飲み込んだみたいに膨れていた。
お腹を触りたい衝動を抑えるのに、全身全霊を使ったので、疲れた。

しかし、麻生久美子似は、相変わらず大物だった。
「触っていいですよ〜」

触らせていただいた。
何でもないときにこんなことをしたら、明らかに犯罪だが、今回は幸運にも前科がつかずに済んだ。

幸せな胎動を感じて、体が震えた。

しかし、可哀想なのはフクシマさんだった。
同じように、腹に手を伸ばしたら、「あんたはダメ!」と、奥さんと麻生久美子似から、頭を叩かれていた。

触ったら、純正のおバカが伝染る、と本気で心配されたらしいのだ。

そのフクシマさんに対する扱いを見て、フクシマさんが、本当に帰ってきたことを実感した。
それを見て、両目から水が出そうになったが、右目だけで抑えておいた。
右目は、著しく視力が衰えているので、涙くらい流させてやらなければ可愛そうだと思ったのだ。

頼んだメニューは、全員が違うものだった。
なぜなら、ひとと同じものを食いたくない、という大人気ない4人が集まったからだ。

私が何を食ったかって?
それは、内緒です。

ちょっとしたいたずら心で、フクシマさんが頼んだチキンフィレオに、いつも持ち歩いているビタミンB群の錠剤をふた粒、密かに混入させた。

ゴリッ!
「あれ! なんか変なものが入っていたぞぉ! なんだこれは?」

「安定剤じゃないの。店が気をきかせたのよ」とフクシマさんの奥さん。

「ああ、そうか。じゃあ、食べても大丈夫だね」
何事もなかったように、完食したフクシマさんだった。

信じられないでしょうが、こんなおバカが、この世界には存在するのですよ。

大阪都構想や橋下市長、行列ができる法律ナンタラの話をしたあとで、唐突にマーチの話になった。
フクシマさんの奥さんが、私の大学の後輩だということが、発覚したのである。

「ああ、では、全員がマーチなんですね」と麻生久美子似が、マクワウリのお腹をさすった。

MARCH、とは、東京の大学の頭文字で、早稲田慶応上智国際基督教大学ほどは、優れた知能を持たない中途半端な位置に甘んずる大学の総称だった。

我々3人が、マーチだったことは知っていたが、フクシマさんの奥さんまでマーチだったとは。

「では、この会合を『マーチの会』と名づけましょうか。これからは、定期的に『マーチの会』を開きましょうよ。いいと思いませんか?」
フクシマさんが、近所迷惑を顧みず、立ち上がって宣言した。

「いいね、いいね!」、と一度は、話の流れに乗って、全員が、それを受け入れた。

しかし、2分後に、全員の顔が曇った。

そして、誰もが思い浮かべたことを、私が代弁した。

俺たちって、少数派が大好きで、絶対に派閥を作らないのを生きがいにしてきたんだよね。
ここで「マーチの会」なんか作ったら、そのポリシーを覆すことになるよね。
それは、俺たちが一番やってはいけないことじゃないだろうか。

全員の首が、縦に振られた。

フクシマさんが、アイスコーヒー。
フクシマさんの奥さんが、ホットミルクティー。
麻生久美子似が、野菜生活。
そして、私がプレミアムローストコーヒー。

各自違う飲み物を飲みながら、全員が互いの目を見ながら、頷きあった。

一時間程度だったが、とても楽しい時間を過ごした。

そして、帰り道。
全員が、中央線沿線の住民だった。

中央線の快速下り。

我々は、当たり前のように、ホームに散らばった。

フクシマさんが、4両目。
フクシマさんの奥さんが、5両目。
麻生久美子似が、6両目。
そして、私が、7両目。

窓の外の景色は同じだとしても、違う車両に乗るという行為が、妙な安心感と満足感を我々に与えて、4人は満ち足りた気分で車窓を眺めた。

車窓を見ながら、関係ないことを思った。
私は、橋下市長の手法が好きではないが、大阪都構想は、いいな、と思った。
新しい時代の匂いが、プンプンした。

余計なお世話かもしれないが、新しい時代を切り開けない民意は、既得権という過去の亡霊をのさばらせただけではなかったか。

大阪市、という名前だけが残ることに、大きな意味はあったのか。
「変革の機会」を逃した代償が、いつか重くのしかかるときが来るかも知れないとも思った。

中央線の車窓とは、何のつながりもないけれど……………。


あれから二日。

三人からは、メールは来ず連絡もない。
こちらからも、する気はない。



その居心地の良さは、わかる人にしかわからないかもしれない。



2015/05/20 AM 06:46:15 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

カープ、銭湯、剣道
たいへん面白い話を3つ。

以前のブログで、同業者二人の仕事がアベノミクス・スパイラルによって激減したことを書いた。
業績のいい取引先が、外部に出す仕事を調整して、同業者のところまで仕事が降りてこないようになったという話だ。

一流デザイナーのニシダ君は、全盛期に比べて仕事が半減。
初めての「冬の時代」を過ごしていた。

そんなニシダ君に、僭越ながら五流デザイナーのガイコツが、アドバイスをした。

取引先から仕事が来ないなら、取引先の担当者にお願いして、関連会社の仕事を回してもらうように、ダメもとでお願いしてみたらどうだろうか。

素直なニシダ君は、私のお節介を間に受けて、本当にお願いしてみたらしい。
すると、あら不思議。
それなりに割のいい仕事を2件いただいたという。

「センセイ、ありがとうございます」と弾む声でお礼を言われた。

そして、ついでに「俺、ジャイアンツファンやめましたから」と話が飛躍した。
ニシダ君の出身は広島。
高校まで広島で過ごしたニシダ君は、そのときは当たり前のようにカープファンだった。

しかし、東京の大学に出てくると、そこにはカープファンは少数派で、アホなジャイアンツファンばかり。
アホなジャイアンツファンは、基本的に「長いものには巻かれろ派」だ。

西田くんも同じように「長いものには巻かれろ派」だった。
当然のように、アホなジャイアンツファンの仲間入りをした。

それ以来、ずーっとアホを貫いていた。

しかし、今年は、「事情が変わったんですよ。僕の『カープ愛』を掘り起こす強烈な出来事が起きたんです。黒田投手の復帰です。そして、大勢のカープ女子の存在。ここで『カープ愛』を持たなければ、僕は何のために広島に生まれたのか、わからないじゃないですか!」と熱弁するのだ。

どちらにしても、長いものに巻かれている状態は、変わりませんがね。
きっと、黒田博樹氏が引退したら、またジャイアンツファンに戻るのが既定路線と言っていいでしょう。

ただ、いっときだけでも、アホの集団から抜け出せるのなら、よしとしましょうか。


そして、もうひとり、仕事が激減したのが、東京稲城市の同業者だ。
5年前に知り合った稲城市の同業者は、極度の人見知りで、奥さんと子ども以外の人とは、まともにコミュニケーションが取れなかったが、なぜかガイコツとは普通に取れた。

そんな人見知りくんから、昨年の春までは、私の方が仕事を貰いっぱなしだったが、今はこちらが出す側になった。
つまり、今は私が彼に恩を返している状態だ。

今回も、恩を返すために、稲城市の同業者の事務所に、自転車でお伺いした。

すると、人見知りくんに「Mさん、俺の方が仕事貰う立場なんですから呼びつけてくださいよ。俺が、そちらに行くのが筋だと思いますよ」と怒られた。

しかし、我がオンボロアパートに人を招くのは、気が引ける。
これが、極道コピーライターのススキダや死神・尾崎なら同じようにオンボロだから、家に入れても景色に同化するからいい。

しかし、人見知りくんは、この景色には似合わない。
それに、私は同業者の事務所に行く途中にある長い「多摩川原橋」を自転車で風を切りながら渡るのが好きだ。
さらに、同業者の事務所から1.5キロ離れたスーパー銭湯「季乃彩(ときのいろどり)」に行くという楽しみもある。

俺の楽しみを奪わないでもらいたい。
私がそう言うと、人見知りくんが両手で膝を叩いた。

「ああ、そうだ! これから、季乃彩に行きませんか。俺、2年くらい行ってないかもしれません。車を出しましょう。一緒に行きましょう。裸の付き合いをしましょう。いいと思いませんか」

裸の付き合い?
なんという気持ちの悪い響き!
一気にテンションが下がった。

しかし、人見知りくんは、行く気満々だった。

困ったぞ、と体が寒気に支配されていたとき、iPhoneが震えた。
ディスプレイを見ると、杉並の顔デカ社長からだった。

「ごめん、今いいか? パソコンの調子がおかしいんだが、今から来れないかな。特急料金を大幅に上乗せするからよお」

はい、わかりました。
すぐに、お伺いします。

このときほど、顔デカ社長が愛おしく思えたことはない。


最後は極道の話。

ススキダから「ランチを奢るぜ」と脅された。

断る!
ゴキブリに奢ってもらうほど、俺は落ちぶれちゃいない。
ゴキブリ仲間を探すんだな。

「そうか、俺もそろそろ仕事に飽きてきた頃だから、白馬あたりで居抜きのペンションを手に入れようと思うんだ。そのときは、おまえをシェフとして雇うつもりだが、勉強のために、質の高いビストロの味を経験しておくのもいいと思ったんだがね」

はい、行きまする。

新橋5丁目の狭いビルが林立する中の5階建てビルの2階に、そのビストロはあった。
狭いビストロだ。
キャパシティは、50人程度か。

ランチを快適に食うには、店内が少し暗い。
ススキダの醜い顔がぼやけて見えるのはいいことだが、これでは料理の微妙な色合いがわからないだろう。

所詮はシロウトの遊びか! と罵った。

「悪いな、シロウトで。これは俺がプロデュースした店だ。去年の9月オープンだから、まだ8ヶ月も経っていない。ただ、結構、繁盛してるんだがな」
鼻を膨らませるススキダ。

鼻にハバネロを詰めてやろうと思ったが、残念ながら、今日は財布にハバネロを入れてこなかった。
命拾いをしたな、ススキダ。

勝手に運ばれてきたランチは、「スズキの香草パン粉焼き、白味噌酒蒸しソースのせ」という気取ったものだった。
そして、3種類のパンが食べ放題。
それに、ヤングコーンとほうれん草のサラダが付く。

ケッと思いながら食ったが、たいへん美味かった。
舌だけではなく、鼻と目でも味わうことのできる上品な味だった。
ススキダの醜い顔が目の前になければ。もっと気品を感じたのではないか、とゴキブリを激しく呪った。

食い終わった頃、シェフ兼オーナーが白い前掛けをつけたままやって来た。
少しナヨっとしたオーナーだった。
年の頃は、29歳から47歳くらいだろうか。

そして、ススキダが、私を紹介した途端、オーナーが「ススキダさん、いいですね。この人の雰囲気。この店のフロア・マネージャーにピッタリじゃないですか。俺が夢見ていたマネージャーの姿そのままですよ」とナヨっとした声で言われた。

あん?
フロア・マネージャーだと?

はあん?
なに、ボケかましとんねん。

ススキダの顔を睨むと、わざとらしい薄ら笑いを作ってオーナーと握手をしていていた。

その姿が癇に触った私は、オーナーに失礼だとは思ったが、「美味かったです。ごちそうさま」と言って、席を立ち、そのまま店を出た。
ススキダは、追いかけてこなかった。

そのあと、日を置いて2回、ススキダからメールが来た。
「オーナーが、お前のことを気に入って、年俸・片手五本で雇いたいと言ってるぞ。良かったな」

無視をしたあとの2回目。
「おまえの値が上がったぞ。片手五本に、さらに二本プラスするらしいぞ。もう決めちまえよ」

気になったことがあったので、ススキダに電話してみた。

あのオーナーのことなんだけどな。
もしかして「男しか愛せない男」か。

すると、ススキダが即答。
「ああ、よくわかったな。そっち側の人間だ。やっぱり、おまえも、そっち側だったか」

ということは、おまえも言い寄られたんだよな。

「そうだ」

要するに、俺をおまえと同じ被害者にしようとしたわけだな。

「・・・・・・・・・・・・・・」

おまえ、俺がボクシングをしていたことを忘れたか。
至近距離から、得意の右フックをお見舞いしてやろうか。

「おまえ、俺が剣道三段だったことを忘れたか? 棒を持てば俺の方が強い。だから、抱かれちまえよ」


その日から、密かに、ご近所の元警官、剣道五段のご老人に剣道を習い始めた私だった。

メ〜〜〜〜ン!



2015/05/14 AM 06:21:02 | Comment(1) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

お馬に助けられた
「お馬さん」(人類史上最も馬に激似の男)から、ヘルプコールが来た。

メインで使っているMac Proとサブで使っているMac Bookの調子が悪いというのだ。
Mac Proは頻繁に落ちて、Mac Bookは起動さえしないという。

お馬さんは機械が苦手なので、Macの調子が悪くなると、「直してくださいませ」といきなり宅配便で送ってくることがあった。
専門の修理に出したほうがよろしかろう、と私が言うと、お馬さんは、「いや、俺はMさんの方を信頼していますので」と、私の弱点を突くキラーフレーズを言うのである。

そんなことを言われたら、直さざるを得ませんよね。

しかし、今回は、一気に2台である。
専門家に頼んだほうがよかろうに、と私が言ったら、またも「俺、Mさんを信頼していますから」と鼻息荒く言われた。

そして、「悪いんだけど、俺んちに来て直してくれないですか。急ぎの仕事が溜まってるので、ちょっと困ってるんですよ」と言われた。

お馬さんが住む、さいたま市のメガ団地は、私が5年前まで住んでいたところだ。
しかし、私は15年間住んでいたその団地に、いい思い出がない。

正確に言うと、14年間は楽しかったが、最後の1年で地獄に落ちた。
だから、今その団地を思い出すことはまったくない。

その団地を抹消したいとは思っていないが、6.24秒のバズーカで掃射したいとは思っている。

そのことは、お馬さんも承知のはずだ。
そんなこともあって、遠慮がちに「武蔵野まで車でお迎えに行きますので、お願いしますよ。Mさんに迷惑はかけませんから」と懇願するのである。

私は、面倒くさいやりとりが嫌いなので、じゃあ、浦和まで迎えに来てよ、と答えた。
浦和には得意先があるので、浦和まで行くことには抵抗がない。

浦和駅前で待っていたら、「Mさんですか」と声をかけたのは、背の低い小さなミニな男だった。
要するに、お馬さんの長男だった。

「馬二世」だが、「お馬さん」ほど馬臭くはない。
「人間」と言っても通用するだろう。

「父がいつもお世話になっています」と言われたので、「俺、動物が好きだからね」と答えた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(沈黙)。

「眠っていてください。着いたら起こしますので」

お言葉に甘えて、眠った。
そして、爆睡の真っ最中に揺り起こされた。

駐車場を夢見心地で歩いたから、5年ぶりの団地の風景はまったく目に入ってこなかった。
エレベーターの中でも宇宙遊泳の気分だった。

半分眠ったまま、お馬さんちに引きずり込まれた。
「ご苦労様です」とお馬さんに頭を下げられたので、「ごちそうさまです」と答えた。

私は、時候の挨拶やお互いの近況報告、天気の話題、菅義偉官房長官の話が苦手だし、エーケービー、ジャニーズ、エグザイルの合計人数を知らないので、すぐに作業に移った。

結論を先に言うと、Macは、壊れていたわけではなかった。
Mac Bookは、電源アダプタが断線していただけだった。
Mac Proは、ファンクションキーを打つと落ちる現象が出たが、キーボードを予備のものに変えたら、落ちなくなった。

だから、電源アダプタを取り寄せるべし、と言った。
「どこで?」と聞かれたので、アマゾンで、と答えた。

「アマゾンでないと、ダメですか」と言うので、別にユニゾンでも、クリムゾンでも、三方一両損でもいいけどね、と言った。

「サンポウイチリョウゾン?」
馬一世と馬二世が、ヒヒーンと首をかしげた。

三方一両損を知らぬとは、なんという無教養。
あなたたちは、江戸南町奉行・大岡越前守忠相殿を知らぬのか。

え〜い、頭が高い。控えおろう!
目の前のこのコーモンが目に入らぬか!

「コ、コーモン??」

いや、これはですね。
いま大学2年の娘が幼稚園の頃、志村けん師匠の水戸黄門コントで、「このコーモンが目に入らぬか!」のフレーズを間に受けて、つい最近まで、それが正しいと信じきって覚えていたんですよ。
可愛いじゃないですかぁ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(沈黙)。

えーと………じゃあ、私の役目も終わったので、帰ることにしましょうか。

「ええ! もう帰るんですか?」

これ以上、この団地の空気を吸ったら、私のコーモンは開きっぱなしになって、パンツが何枚あっても足りなくなるでしょう。
さらばじゃ!

「ああ、それならワインを持って帰ってくださいよ。いいワインが2本あるんです。Mさん、毎日1杯のグラスワインなら平気なんですよね」

グラスワインではなく、グラスアイーンですがね。

「グラスワインとして飲むには、ちょうどいいワインですから」
(アイーンを見事なほどスルーしましたな)

「ワインを持って電車に乗るのは大変でしょうから、俺が車で武蔵野まで送りますよ」
お馬さんが鼻息荒く言った。

断る理由がなかったので、お言葉に甘えた。

埼玉臭い駐車場を歩いているとき、一人のご老人に声をかけられた。
「あんた、Mさんじゃないかね」

私の記憶に間違いがなければ、その平たい顔は、ある一人の老人の悪意ある創作話を間に受けて、私の悪い噂を団地内に拡散したご老人だ。
当時70代後半だったから、今は80歳半ばにはなっているだろう。

何か言ってやろうと思って、足を一歩踏み出そうとしたとき、お馬さんに、サングラスを渡された。
「ほら、クドウさん、これ忘れてますよ。早くかけないと、紫外線は毒ですから」

言われるままに、品もセンスもないサングラスをかけた。
「ああ、さすが、背が高い人はサングラスが似合いますねえ。クドウさん、きまってますよ」

お馬さんの意図を察した私は、Thank You. You are most similar horse to human と答えた。
(ありがとう。君は人間に一番近い馬だね)

「オー、サンキュー! ミスター、クドウ」

そんな茶番のあとで、お馬さんの愛車ボルボに押し込められた。

サイドミラーを見ると、平たい顔のご老人が立ち尽くす姿が映っていた。

お尻ペンペンをしなかったことを少し後悔した。
いや、お尻ペンペンなどしたら、コーモンが開きっぱなしになってしまうだろう。
パンツが何枚あっても・・・・・・・・・・・。
(下品でスミマセン)



ただ、私は、幸せな気分も感じていた。

お馬さんが、懸命に私を守ってくれたからだ。

お馬さんに感謝しつつ、私は穏やかに眠りの世界に入った。


志村コーモン様が夢に出てきた気がしたが、それは気のせいかもしれない。



2015/05/08 AM 06:27:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

ゴミクズの呪い
ゴールデンウィーク前は、ありがたいことに、いくつか仕事をいただいた。

大急ぎではないが、休み中に進めておかなければ後で後悔を悔いるので、大まかなスケジュールをたてて、ゴールデンウィーク中に処理していこうと思っている。

しかし、そんな矢先に、明らかに邪魔な電話がかかってきた。
しかも、朝の8時前だ。
こんな非常識なことをするのは、荻窪のゴミクズだろうと思ったら、「当たり」だったので、笑った。

説明しよう。
荻窪のゴミクズとは、WEBデザイナーのタカダ君(通称ダルマ)のことだ。

WEBの中だけでしか生息できず、現実世界では何の役にも立たないし、何もできない。
仕事をして生計を立ててはいるが、パソコンの前を離れたら、お掃除ロボットに吸い込まれるのがお似合いなほど、ゴミと同化している。

「師匠! 一大事です! トモちゃんのお父さんが入院で、トモちゃんが子供を連れて実家行きです。誰もいません。カップラーメンは飽きました。俺、どうしましょ」

朝8時に聞いて楽しい内容ではない。
テンションが下がる。
だから、切ろうかと思ったが、哀れなダルマの顔を想像すると、心は全く痛まないとはいえ、このままゴミ箱に捨てるのは忍びない思いもある。

いま、ある食材を言ってみよ。

「米と卵だけです。あとはカップヌードル、カレーヌードル、シーフードヌードル、あと・・・・・」

ご馳走が作れるじゃないか。
具なしチャーハンとスープがわりにカップヌードル。
そして、チャーハンには目玉焼きを乗せよう。

豪華フルコースじゃないか。

「でも、俺、チャーハン作ったことないから! それに、具のないチャーハンは、チャーハンじゃありませんよ!」

具のないチャーハンとは言っても、一流のシェフが作れば、鉄人チャーハンになる。
贅沢を言うと、月にかわってお仕置きよ。

というわけで、お仕置きをしに、荻窪のダルマの事務所まで行ってきた。

悲愴な顔で迎えられたので、空気を和らげようと投げキッスで応えたら、「人の気も知らないで!」と怒られた。

私は常識人なので、ひとの気は知っているが、ダルマの気は知らない。
吐きそうになりながら投げキッスをしたのに、人の気も知らないで!

などとじゃれあいながら部屋に侵入し、すぐに冷蔵庫を開けた。
確かに、卵以外にあるのは、牛乳とコーラなどの炭酸類、ビールだけ。
あの料理上手のトモちゃんの冷蔵庫が、こんなに寂しいことになっていたなんて。

まさか、ダルマは捨てられたのか。
あるいは、食材を買うこともできないほど貧窮してしまったのか。
とうとう私と同じ「貧民族」の仲間入りか。

・・・・・などと考えながら、キッチンを動き回っていたら、キッチンストッカーと外国製と思われる野菜ストッカーを見つけた。
開けてみたら、キッチンストッカーには、調味料やパスタ類、レトルト食品がマンザイ、いや満載だった。
野菜ストッカーには、タマネギ、キャベツ、ナス、トマトなどが仲良く出番を待っていた。

いくら料理をしないとは言え、こんなにわかりやすいところに食材があるのに気づかないとは、ゴミクズの判断力はゴミクズ以下に成り下がったと思われる。

しかも、キッチンストッカーの目立つところには、「ダルちゃん。悪いけど、しばらくはこの中のレトルトを温めて食べてね。お惣菜はコンビニかルミネで買ってください」という貼り紙があった。

こんな目立つ貼り紙にも気づかないとは、ゴミクズは目もゴミクズ以下になってしまったのか。

ダルマに、このことを問いただすと、「だって、男子厨房に入らずって言うじゃないですか。俺、男子ですから!」と口を尖らせた。

確かに生物学的には人間の男子かもしれないが、ゴミは厨房に限らず、どこにでも入ってくるものですよ。
我が家には、よくサーキュレーターに付着していますが。

・・・・・と、どS的にいたぶるのも可哀想になってきたので、ダルマのために、朝メシを作ることにした。

レトルトは使わない。
野菜も使わない。

卵とご飯だけでチャーハンを作る。
調味料は、鶏がら粉末、塩コショウ、醤油、マヨネーズ。
スープは、鶏がらでダシを作り、塩コショウ、醤油で味を整え、よく溶いた卵を回しかけるだけ。
チャーハンに目玉焼きをのせようとしたが、卵がもったいないので省略した。

2人分の量のチャーハンをダルマは、2分5秒で完食した。

しかし、食ったあとの「美味い」のリアクションがない。
ごちそうさま、さえも言わない。

こんなゴミクズに育てたおぼえはないんだが。

と思っていたら、ダルマがiPhoneを取り出して、どこかに電話をかけ始めた。

そして、「トモちゃ〜ん」と叫んだ。
「いま、師匠が来てるんだ。ものすごく美味しいチャーハンを食べさせてくれたよ! トモちゃんのチャーハンも美味しいけど、師匠のはシンプルなのに深い味がして、すごく美味しいんだ。師匠に、味付けを聞いてみたら?」

ダルマが、iPhoneを差し出したが、私は断った。
トモちゃんがつくるチャーハンの方が、美味いに決まっている。

ダルマは腹を減らしたゴミだから、何でも美味く感じただけだ。

iPhoneから61センチ離れたところから、トモちゃんが一番! と叫んで、私はダルマの事務所から逃亡した。

そのあと、ダルマから「師匠、なんで怒ってるんですか」という留守番電話が2度あったが、無視した。


怒ってなんかないですよ。

ただ、突然、持病の不整脈が舞い降りてきたので、どこか静かなところで、心臓のブレイクダンスを抑えようと思っただけだ。

10分ほどおとなしくしていたら治まったので、小さなブレイクダンスだったようだ。

しかし、なぜ突然不整脈が舞い降りたのか。

きっと私がダルマのことを「ゴミクズ」「ゴミ」などと表現したせいだ。

どんなゴミにだってホコリはあるだろう。
そして、ゴミクズだって、人を呪う能力は持っているナッシー。

油断をしてはいけない。


だから、これからは尊敬の念を込めて、ダルマのことを「ゴミクズ大王」と呼ぶことにする。



2015/05/01 AM 06:27:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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