Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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あんらまあ! の朝
胸騒ぎというほど大げさなものではないが、私の脳細胞の一部に、何かが来た。

だから、朝の8時過ぎだったが、電話をした。
WEBデザイナーのタカダ君(通称ダルマ)の携帯にである。

私は、基本的に夜の9時から朝の9時までは、よそ様に電話をしないというポリシーを持っている。
なぜなら、私がその時間帯に電話をされたら、キレるからである。

非常識なことをするな、このバカちんが!

私の知り合いは、そんな罵倒を何度か受けているから、その時間に用があるときは、必ずメールでお伺いを立ててくる。
そこまで教育するのに、かなりの時間を要した甲斐もあり、最近では無礼者が少なくなった。

喜ばしいことだ。

しかし、今回、そのルールを私みずからが破って、ダルマに電話をしてしまったのだ。
2月6日午前8時6分。

胸騒ぎの腰つき〜〜〜〜がしたからだ(チョットわかりづらいでしょうがサザンです)。


電話に出るなり、ダルマが、「ああ、師匠! もう4時間です」と泣いた。

主語と述語を無視して、いきなり数詞ですよ。

4時間と言われて、皆様は、何を思い出すだろうか。

私には、今年の正月開けに、静岡の得意先に年賀の挨拶に行ったとき、下腹の痛みに耐え、挨拶を終えて静岡駅のトイレに駆け込んだが、どれもふさがっていたので、我慢しながら新幹線に乗り、新幹線のトイレに駆け込もうとしたら、生存競争に負けて、さらにトイレの前で20分待たされたあと、やっとこさで用を足した、あの長い4時間のことしか思い出せない。

つまり、ダルマは、あの4時間のことを言っているのか?

おそらく、そんなことはない、と思う。

ダルマが言う。

「今朝の4時前から、もう4時間ですよ。まだ、産まれません!」


やはり…………。


予感は当たった。
2人目をご懐妊した、ダルマの奥さん、微笑みの天使・トモちゃんの目出たいニュースが、テレビやネットのニュースで、まったく報道されない。
おかしいと思っていたのだ。

もう、産まれてもいいはずなのに……。

パンダやキリンや象、カピバラの出産のニュースは、すぐ報道されるのに、トモちゃんの出産が報道されないなんて、日本のマスメディアはいつからこんなに偏向したのだ。

けしからん!

ずっと、そう思っていた。

君たち……生命の価値は、平等なのですぞ。
なぜ、トモちゃんの出産を報道しない?
バカちんが!

と思っていたら、とうとう来ましたか。

「師匠! いつ産まれるんですか! どうしますか! どうなんですか!」

声が上ずっていて、狂気を含んでいた。
だから、落ち着かせるために、囁くように言った。

「俺が行った方がいいのか! どうなんだ?」

0コンマ1秒の沈黙もなく、「お願いします」というダルマの声が聞こえた。

可愛い弟子のために、私は東京武蔵野吉祥寺の産院まで、辺りに気を配りつつ、自転車を高速で走らせた。
8時43分に到着して、受付でダルマの名前を出したら、受付の方に「4分前に、産まれました」と言われた。

な、難産でしたか? と聞いたら、「そうでも、ありません」という冷静な答えが返ってきた。
拍子抜けして脱力したまま、分娩室前のソファに座った。

ダルマ・ジュニアの泣き声が微かに聞こえた。
その他に、変なオッサンのみっともない泣き声も聞こえた。

天使の泣き声と妖怪の泣き声。

悪魔の館に迷い込んだような錯覚に陥った。

気を落ち着かせるためにiPhone 5sの待ち受け画面を見た。
アオコブダイが、悠然と泳いでる画像だ。

間抜けなオッサン面に、癒された。
私も、こんな間抜けなオッサン面になりたいものだ(もうなっているという噂もあるが)。

そんなことを考えていたら、アオコブダイよりも遥かに間抜けなオッサン面が、分娩室から出てきた。
普通、こんなときの涙というのは、美しく感じるものだが、アオコブダイ以下の生物の涙は、美しくなかった。

こんなオッサンには、なりたくないと思った。

その醜いオッサン面が、「師匠! お、お〜んなの子です!」と言って、私の両手をつかんだ。

そ、そうか………もちろん、奥さん似であろうな。
そうでないと……オッサン面の女の子など、あらかじめ20万ドルの入札金を払わなければ、人間界にポスティングされないぞ。

「だ、大丈夫です。トモちゃん似です。俺に似ているのは、毛深いところだけです」

それは、それで可哀想な部分も………。


分娩室前のソファで、ダルマに呪いの言葉、いや祝いの言葉をかけているとき、看護師さんが、早足で通りかかった。
「あら、おじいさまですか。中でごらんになったらいかがですか?」

お、おじいさま?
若干白髪染めの効力は落ちてきたとはいえ、一昨日得意先の新人君から、本当の年齢より12歳若く見られたばかりだ。
あれは、夢だったのか。

だいたい、私とダルマは19歳年が離れているが、見た目は6歳離れているようにしか見えない、といつも言われてきた。
たしかに、19歳差の親子は、掃いて捨てるほどいるだろうが、こんな男の父親にはなりたくない。
トモちゃんの父親に間違われるなら、我慢できるが。

だから、こう答えた。

こいつとは、何の関係もありません。
ただの通りすがりのものです。
お気遣いは無用です。

看護師さんは、「あんらまあ!」と口をO(オー)の形にしたまま、分娩室に入っていった。

陣痛が始まった妊婦さんが来たことを医師に知らせにきたようだ。


どうやら、私の役目は済んだようなので、私は立ち上がった。

タカダ君、おめでとう。
お祝いはまたの機会にするとして、今日は、父親の気分をタップリと味わいたまえ。

「えっ? トモちゃんと赤ちゃんには、会わないので?」


俺は、君のその幸せそうな(ブサイクな)顔を見ただけで、充分だよ。


私がそういったら、ダルマは、アオコブダイ以下の顔を私の肩に押しつけて号泣した。

そのとき、分娩室のドアが開いて、先ほどの看護師さんが、その異様な光景を凝視。

そして、口をO(オー)の形にして、「あんらまあ!」。


帰り道、自転車に乗っている間中、「あんらまあ!」が、耳から離れなかった。





何はともあれ、ダルマ、おめでとう(号泣)。




2014/02/07 AM 08:42:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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