Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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誕生日にヒツジの夢
今年もあと、ひと月と少し。

家族4人が食っていけるだけの仕事を与えてくださった方々に、ただ感謝。
忙しい、などと言ったら罰が当たる。


しかし、いっそがしいなあ。


3件、締め切りが重なったら、眠れませんよ。
1件でも、締め切りをずらしてくれたら……などと言ったら、罰が当たりますよね。

締め切り……遅らせてくれないかな。

そんなことを思っていたら、「締め切り、一日早めたいんだけど」と言われた。

はい、喜んで!

徹夜をさせていただいた。
寝不足だから、化粧のノリが悪いですわ。


11月25日。
そんな嵐の三日間が過ぎ去って、久しぶりのオフ。

「最近、ビール泥棒が来ないんですけど」という中央区京橋のイベント会社社長・ウチダ氏からのメールに導かれて、京橋のウチダ氏の事務所に潜入することにした。

忙しかったので、足が遠ざかっていた。
7ヶ月ぶりだ。

カードキーを預かっているので、いつでも潜入は可能だ。

東京都中央区京橋の裏通り。
20畳はあろうかという広い事務所には、デスクが一つと壁に書棚、あとは40インチの液晶テレビ、応接セットだけ。

そして、簡単なキッチンスペースの奥には、600リットルの冷蔵庫。
その中には、クリアアサヒとスーパードライがギッシリ!
他に、チーズが各種!
さらに、なぜかキャビアの缶詰!

数万円はするだろうといわれるキャビアの缶詰は大変魅力的だが、私のアンテナが、これは何かの罠だろうという危険なシグナルを感知したので、一度だけしか泥棒はしていない(キャビアのどこが美味いんだ? しょっぱいだけじゃないか)。
普段は、カマンベールチーズか、ときどきブルーチーズを泥棒するだけだ。

いつも忙しくベーエムヴェーというタケコプターで飛び回っているウチダ氏は、ほとんど事務所にいない。
だから、事務所の家賃が無駄だろう、とビンボー人らしい意見を述べたとき、ウチダ氏はイケメン顔で、「事務所があるなしで、信用が全然違うんですよ。特に中央区辺りに事務所を持っていた場合の信用度は絶大ですね」と言った。

それは、わかる。

ただ、うらやましすぎて、泥棒をしたくなるだけだ。


応接セットに横になって、靴下を脱いだ。
私の場合、靴下を脱がないと心の底からくつろぐことができないのである。
これは、子どもの頃から変わらない私の習慣だ。

付き合い初めの頃、ヨメから「なんですぐ靴下を脱ぐの?」と聞かれたことがある。

だって、いきなりパンツを脱ぐわけにいかないだろ。

「ああ、それもそうねえ」とヨメは、すぐに納得してくれた。
それ以来、ヨメから靴下に関してのクレームはない。

応接セットのテーブルに、まずはカマンベールチーズとスーパードライ。
そして、家から持ってきた「安堂ロイド」のブルーレイ。
2話までは見たが、3話から先を見ていなかった。

折角、大画面のTVがあるのだから、見ないわけにはいかない。
オフには、安堂ロイドだ!

我が家にメシを食いにやってくる高校3年の娘の友だちに、「安堂ロイドって面白いの? 私は1話の15分くらい見て、展開についていけなくてリタイアしちゃったんだけど」と言われた。

柴咲コウ様が出ているから面白い!
他に何が必要だ!

そう言ったら、娘のお友だちは「ギャフン!」と言って黙った。
完全勝利である。

他のドラマだったら、この睡眠不足状態なら、完全に爆睡しているところだが、柴咲コウ様が出ているドラマを見て、眠るわけにはいかない。
3話、4話を見終わって、5話目に突入。

そのとき、ピンポーン。

来客だ。
しかし、私はただの泥棒だから、テレビドアフォンに出るわけにはいかない。
応答してしまったら、泥棒だということがバレる。

警察に通報される。

それは、避けたい。

しかし、出てしまったのである。

このビルのセキュリティは、しっかりしている。
高級マンションによく使われているようなオートロックシステムだ。

ビル内に入ると、ドアを開けるための装置がある。
それに、暗証番号を打ち込むかカードキーをかざすか、指紋認証させないとドアが開かない。
そして、室内に入るためには、カードキーを読み込ませないと入れない。

暗証番号とカードキーで、完全セキュリティ。

だから、泥棒さんは、私以外は入れない。

その泥棒が、来客に応対をした。
来客は20歳半ばと思われる女性が二人。

おそらくウチダ氏の愛人だろう。

「明日がお約束の日でしたが、一日早くイベント・コンパニオンのリストが揃いましたので、お持ちしました」

何人のイベント・コンパニオンを愛人にしようというのだ。
元気過ぎるだろう。

モニターの解像度が高いので、二人の女性の顔がハッキリとわかった。
まあまあ……だな。

コートを着ているので太ももが見えない。
10点満点の3点。

申し訳ないが、私はウチダ社長ではない、と言った。

「ああ、社員の方ですか?」

社員というより、僕(しもべ)ですね。

「ああ、シモベさんですか。ウチダ社長様は、いつお戻りでしょうか」

名前だと思ったようだ。

ウチダ社長は、大変忙しい人なので、アポイントメントなしの面会は無理です。
今日は両国国技館、明日はニューヨーク・ヤンキース、明後日はマンチェスター・ユナイテッドというように、世界を飛び回っています。
アポを取ってから、また起こしください。

私がそう言うと、「この人、なんか変よ、気味が悪いわ」という声が聞こえて、画面が真っ暗になった。


気味が悪い人は、安堂ロイド第5話を、もう一度最初から見直しはじめた。
すると、13分後にiPhone 5sが震えた。

「Mさん、ビールとチーズ泥棒はいいけど、俺の信用を落とすことだけはやめてくれませんか!」
ウチダ社長様からだった。

それは、シモベさんのことを言っているのか?
彼は、もう帰った。

「まったくなあ! 困った人だよ。通報しますよ」

大丈夫だ。
指紋は消していくし、食い散らかしたものは持って帰る。
ドアフォンの通話履歴も消していく。
何の痕跡も残さないよ。
俺は、プロだから。

「でも、この通話は記録していますよ」

本当か?

「嘘です」

だよね。

「ただ、防犯カメラには記録が残るでしょうね」

壁天井を見回してみた。
防犯カメラはなかった。

「わかりやすいところに防犯カメラを置くわけないでしょ。
本棚の真ん中当たりに、ヒツジのぬいぐるみがあるの、わかります?
あの目に仕掛けてあるんですよ」

本当か?

「嘘です」

というような会話を交わしていたら、突然ドアが開いて、ウチダ氏が姿を見せた。
その後ろには、さきほどの女性が二人。

すぐそばに、いらっしゃったようだ。

ソファに横たわり、靴下を脱ぎ上着も脱いで、くつろいだ姿の私を指さして、ウチダ氏が言った。

「ああ、シモベさんは、お帰りになられたようだ。
ここにいるのは、私の大学の先輩で頭脳明晰な大先生です(照れまんがな)。
顔は貧相で酒臭い男ですが、私は大変尊敬しています(酒臭くてゴメン)。
今日、この方に会うことができた、あなた方はとてもラッキーなひとだ。
さあ、では、MARUZENのカフェで、お話を伺いましょうか」

そう言って体をターンさせたウチダ氏であったが、顔だけを戻して「ああ、Mさん、ハッピー・バースデー!」と敬礼をした。

そして、3人は手品のように、いなくなった。


ひとり残された間抜けな泥棒は、安堂ロイド第5話を見るのをやめて、帰り支度を始めた。

食い散らかしたものをレジ袋に格納し、指紋をすべて消し、ドアフォンの通話履歴も消した。
そして、信じられないことに、冷蔵庫のスーパードライが、4本勝手にバッグの中に入ってきた。

防犯カメラは、ないはずだ。

しかし、一応念のためにヒツジちゃんのぬいぐるみを確かめてみた。
手に取ってみると、頭のあたりに固い感触があった。
さらに指で形を確かめてみると、レンズっぽい感触が。

慌てた泥棒は、ヒツジちゃんの向きを壁側に向けた。

そこには、HAPPY BIRTHDAY SATORU のカードが!

同時に、ヒツジのぬいぐるみが、なぜかバースデイソングを奏でた。



昨日の朝、何万匹ものヒツジが私を祝福している夢を見た。



すばらしい誕生日を演出してくれたウチダ氏に感謝。




(ちなみに、同じく11月25日が誕生日なのは、椎名林檎様。畏れ多いことでございます)





2013/11/27 AM 06:09:59 | Comment(2) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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