Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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美男美女の夫婦
遅ればせながら、東北楽天ゴールデンイーグルス、日本一おめでとうございます。


とは書いたものの、私は試合をまったく見ていない。
ネットの見出しで勝敗だけはチェックしたが、最後はどうせ「日本球界の予定調和」でジャイアンツが勝つんだろ、と思っていたから、関心率は限りなくゼロに近かった。

だから、私にとって、楽天日本一はかなり意外な結末だった。
ただ、メジャーリーグでは、今年テロに遭った地域のチームが優勝し、日本では、大震災で被害を受けた地域のチームが優勝したのは、嬉しい偶然と言えば言えた。


友人に、仙台在住のデザイナー・イトウ君というのがいる。

彼は、スキー及びスポーツジムのインストラクターからデザイナーになったという特別品種である。

彼と初めて会ったのは、8年前、家族旅行で行った先の宮城蔵王白石スキー場でだった。

「インストラクターにイケメンがいるらしいわよ!」という、どうでもいい情報を拾ってきたヨメが、「習わないと、習わないと!」と強烈なアピールをしたので、私以外の3人がスキーを習うことにした。

イケメン、とは言うが、ゴーグルをしているから、さっぱりわからないじゃねえか。
透視術のSPECを持った人だったら、わかるだろうが。

と思って、遠くから見ていたら、この男、たまにゴーグルをとって、イケメンをアピールするイヤなやつだった。
その姿を見て、ゼロコンマ2秒で、この男が嫌いになった。

ケッ!
と後ろ足で雪を蹴飛ばしたあとで、嫉妬の塊になった私は、ゲレンデをジグザグに暴れ回った。

夕方ペンションに戻って、嫉妬の塊が溶けないまま夕飯を食い、風呂に入ったあとで、ひとりカウンターバーで「嫉妬の塊」という名の酒を飲んでいた時、男が入ってきて、カウンターに座った。

男の方に目を向けたら、入ってきたのは、あのイヤなイケメンだった。

「こんばんは」と、爽やかに頭を下げられたので、こんばんみ〜、と返した。
そうしたら、「どうも、こんばんみ〜、はじめまして、ビビるイトウで〜す」とイケメンが、ビビる大木氏の真似を返してきた。
なんだ、いいやつじゃないか、と嫉妬の塊がすぐに溶けて、仲良くなった。

私が東京で、まったく売れないデザイナーをしていると言うと、イトウ君がその話に食いついてきた。
そのとき彼は、マックのマの字も知らないど素人だった。
しかし、イトウ君は、その後すぐにマックを手に入れて、独学でマックを勉強することになる。

なぜ、あのとき興味を持ったんだ、と後で聞いてみたら、「matsuさんから気負いが全然感じられなかったからですかねぇ。オレ、バリバリ働いていますってアピールする人が嫌いなんで」ということだった。

俺、バリバリ働いてますけど!
(嘘だが)

わからないことがあると、電話やメールで問い合わせをしてきたので、いつも教えすぎないように教えた。

それから一年後に、イトウ君はインストラクターの仕事を辞めて、デザイン事務所に職を得た。
30歳のときだった。

そして、どういうマジックを使ったのか、あるいは彼が特別なSPECの持ち主だったのか、就職してから一年も立たずに独立して仙台にデザイン事務所を構えた。

大丈夫なのか、と私が聞いたら、「matsuさんがやれるんだから、大丈夫でしょうよ」と答えたイトウ君。
君は、正しい。

東日本大震災のときは、2日間連絡が取れなくて慌てたが、家族全員無事と聞いて安堵した。
そして、震災を乗り越えて、結婚。

イトウ君が30歳半ばを過ぎたとき、君くらいのイケメンだと、ひとりの女性を選ぶのは大変だよね、だから結婚できないんだよな、と冗談半分で聞いたことがある。
すると、イトウ君は、大真面目に「まあ、一万人の候補者の中から一人を選ぶのは疲れますからね。福山雅治の気持ちがわかりますよ」と答えたのである。

それを聞いたとき、私は顔面制裁を加えようと右のコブシを握りしめたが、イトウ君が空手初段だということを思い出して、そのコブシをすぐに解いた。

イトウ君が結婚したのは、昨年の3月だった。
相手の写真を見せてもらったが、顔はソー・グッド! だった。

私は、地球上に美男美女のカップルというのは、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーしかいないものだと思っていたが、イトウ君夫婦もリストに入れることにした。

そして父になる。
父になったイトウ君は、先週の土曜日に奥さんと子どもを連れて、東京にやってきた。

「ずんだまんじゅう」という絶対に私が食わないと知っているお土産を得意げに持ってきたイトウ君は、奥さんと赤ちゃんを紹介してくれた。
美男美女の間に産まれたお子さんは………、ノーコメントということにしておこう。

イーグルス、優勝おめでとう、と私が言ったら、立ち上がって、「ありがとうございます!」と言ったのが、奥さんの方だった。
東京育ちだが、ご両親は宮城県のナントカいう市のナントカいう村の出身だという(聞き返すのが面倒なので確認していない)。

「だから、楽天をずーーっと応援してきたんですよ。嬉しくって、もう!」と、新宿のホテルのラウンジで立ち上がったまま喜びを表現する美形の奥様。
その姿を他の方が見ているのだが、美形というのは、人様から見られることに慣れている生き物らしく、まったく気にすることなく「嬉しくってぇ!」と全身で喜びを表現なさるのである。

イトウ君は、まるで幼稚園児が初めて水族館でイルカショーを見て興奮している姿を喜ぶ親のような顔で、そんな自分の妻を嬉しそうに眺めていた。

幸せそうだねえ、君たち、と私が言うと、イトウ君は「当たり前じゃないですか。matsuさんの一万倍、いや一億倍は幸せですよ」と言うものだから、また顔面制裁を加えるつもりでコブシを握りしめようとしたが、空手初段を思い出し、1杯600円のコーヒーに手を伸ばした。

「でも、matsuさん、あれはヒドいですよねえ」とイトウ君が、眉を寄せた。
何が、ヒドいんだ。
俺の顔か。

「まあ、それは置いといて(置いていかれたかぁ)、160球も投げた次の日に、また投げさせるなんて、あれは常識では考えられませんよ。星野監督は、どうせ今シーズンが日本最後だと思って、マー君を潰すつもりだったんじゃないですか!」

試合は見ていないが、ネットで、そのことは知っていた。
楽天田中160球完投初敗戦。
ネットの見出しの記事は、大変わかりやすかった。

そして、次の日。
楽天V 連投田中が胴上げ投手、という見出しもわかりやすかった。

つまり、「前の日に160球投げた投手が次の日も投げていいのか、それは、田中投手の選手生命を縮めるのではないのか、もし縮まったとしたら、誰が責任を取るのだ」というのがイトウ君の主張だ。

いいのではないだろうか。
プロは金をもらって投げているのだから、投げることに関してのすべての責任は自分にある。

もし、未成年のアマチュアがそれをやったら、監督の指導能力と良識を疑うが、プロが志願してやったことなら、その責任はすべて本人にある。
金をもらうとは、そういうことだ。
金をもらっていながら、責任を他人のせいにするのでは、その人は真のプロではない。

マー君は、プロ中のプロだろうから、そのプロである彼が下した判断を否定するのは、彼を否定することになる。
それは、とても失礼なことだ。

「でも、メジャーリーグでは、ありえないことですよ!」

もちろん、メジャーではあり得ないことだが、これは日本の話だ。
日本では日本の野球をし、メジャーではメジャーの野球をする。
それが、プロというものだ。

私がそう言うと、「そうですよねえ! マー君が決めたんだから、いいんですよねえ! ほらっ、私の勝ちィ!」と美形の妻が、また立ち上がって、喜びを表現した。

奥さん、ラウンジの客が見ているんですけど。

「しっかしなあ」と、まだ腑に落ちない顔のイトウ君。
そんな顔をしてもイケメンはイケメンだから、条件反射的に右のコブシを握ってしまうのだ。

だが、無邪気な美形に「マー君は大丈夫だってさ! ほらっ、勝った、勝ったぁ!」とアピールをされると、無意識にコブシを広げてしまうのは何故だろう。


しかし、そのあとで言ったイトウ君の言葉に、私は奈落の底に突き落とされることになる。

「俺、初めて、matsuさんに負けちまった。あーあ、屈辱だなあ!」


いや………、俺たちの間柄は………勝ったとか負けたとか、そういう………。

イトウ君のその言葉は、かなりの密度で、私の心にダメージを与えた。


俺のイトウ君に対するポジションって、そんなんだったっけ?


落ち込んでいたら、美形から「さすがですよねえ、うちの旦那が『俺の師匠』って呼ぶだけのことはありますよ、matsuさんって」と、右手を両手で優しく包まれた。



もちろん私は、すぐに復活した。



2013/11/11 AM 06:09:59 | Comment(2) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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