Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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パパのおごりだから
8月29日。
きっかけは、中央線だった。

午前10時過ぎ、四谷で画廊オーナーとの打ち合わせを終えたあと、中央線に乗った。

電車はそこそこ混雑していたが、座ることができた。
新宿、中野を過ぎ、荻窪駅に。
そこで、私の右隣が空いた。

そのとき、二人の母子が乗ってきて、お子様の方が私の隣に座った。
10歳くらいの男のお子様だ。
母親は子どもの前に立った。
母親の方は、40歳前後だろうか。

母親は、高級そうな服を着ていた。
お子様の方には興味がないので、服装はチェックしなかった。

しかし、このお子様。
座席に座った途端、左手に持った傘を私の膝に押し当てたのである。

四谷は降っていなかったが、荻窪近辺は降っていたのだろう。
傘は、少しだけ濡れていた。

その傘が、私の右ひざに密着して、スラックスの膝の部分に水が滲みた。
たいへん、気持ちが悪い。

しかし、お子様は、まったく平然とした態度で、私の膝に傘を押し当てたままだ。
だから私は、お子様に向かって、東京目黒なまりの正統な日本語で、「悪いけど、傘をどけてくれないかな。ズボンが濡れてしまうから」と言った。

だが、お子様知らんぷり。
母親知らんぷり。
ひざ濡れたまま。

そこで私は、1分ほど事態の改善を待った後で、もう一度、今度は東京世田谷なまりの正統な日本語で、「悪いねえ。君の傘が私の右ひざにあたって、ズボンがビチョビチョなんだ。その傘、どけてくれたら、ありがたいんだけどね」と言った。

そのときの母親の反応が、予想外だった。
「うちの子は、一度言えば、わかります!」
怒鳴ったのである。

いやいや、わかってないから、私の右ひざビッチョリなんですよ。
わかっていたら、すぐに、どかすんじゃないですかね。

母親、お子様、完全に無視。

日本語は通じているようだが、私の要望は、まったく通じないようだ。

こんなとき、大人として、どう対処すればいいのかと言えば、色々な選択肢があると思う。
しかし、私には一つの方法しか思い浮かばなかった。

私は、電車などで、両足を大きく広げて開脚角度を誇示する男が嫌いである。
だから、私は上品に、足をコブシ一個分だけ開けて座るようにしている。

だが、このとき、私の右足は、私の意思に逆らって、徐々に右の方に開いていき、お子様の陣地を侵略しはじめた。
つまり、右足だけ哀川翔氏の足になった状態だった。

最初、お子様は抵抗していたが、大人の足の力に勝てるわけがない。
その結果、お子様は、そこにいたって、やっと傘を自分で持つことを放棄し、目の前に立つ母親に預けることになった。

西荻窪、吉祥寺、三鷹。
私の濡れた右足は、徐々に哀川翔氏の角度から通常の角度へと移行していった。

お子様、無言。
母親は、ときどき私を睨みながらも無言。

そして、武蔵境駅が近づいて、右ひざビッチョリの私は立ち上がった。
入れ替わりに、私の座っていた場所に、母親が座った。

そして、私の左隣に座っていた人も立ったから、左の席が空いた。
驚いたことに、その母親は、車内はそれなりに混雑していたのに、その左隣の席に自分の買い物バッグを置いたのである。
この母子は、自分の陣地を広げることを当然の権利だと思っているようだ。

電車のドアが開いて、ホームに降りようとしたとき、母親の「なんなのよ、あれ!」という、かなりでかい罵声が、私の耳に届いた。

その言葉を聞いた「あれ」は、たいへん気分が悪かった。

母子に腹が立ったし、大人げないことをした自分にも腹が立ったからだ。


そこで、私は、どうしたかというと………。


家に帰った私は、その夜、家族に大声でこう言ったのである。

あした、箱根温泉日帰り弾丸ツアーに行くぞ、みんな支度しろ!

四方八方から文句の声が飛んできたが、お土産の購入は無制限、何を食ってもよし、俺のおごり、という言葉が私の口から放たれたとき、文句の声は「歓喜の声」に変わった。

翌日、9時台のロマンスカーに乗り、箱根湯本到着、登山電車で強羅、ケーブルカーで早運山、ロープウェイで大湧谷、桃源台、そして、芦ノ湖で海賊船。

昼メシは、芦ノ湖で、娘と私は、天ざる定食。
ヨメと息子は、カツ丼セットとそばじるこ。
旺盛な食欲だ。

「だって、パパのおごりだから」


杉並木を歩いた後で、奮発してタクシーを拾い、ポーラ美術館に。
その後、強羅の旅館で温泉に入浴。
温泉から上がった後で、刺身舟盛りを食ったが、8割をヨメと息子に強奪され、私は皆が嫌いなタコとイカをいただきながら、中ジョッキ。

「だって、パパのおごりだから」


その後、タクシーで箱根湯本に戻り、お土産屋めぐり。
私は何一つお土産を買わなかったが、他の3人の土産品漁りには、すさまじいものがあった。

3人の土産品の代金が、2万6千円ですよ。

「だって、パパのおごりだから」


欲深きものたちよ!
いつか、天罰がくだるであろう。

ロマンスカーで、娘と私は、ヒレカツサンド。
ヨメは、ヒレカツサンドとシュウマイ弁当。
息子は、ヒレカツサンドと鳥めし弁当。

よく食いますなあ。

「だって、パパのおごりだから」


かなりのハードスケジュールだったので、家族には不評かと思ったが、みな口を揃えて言ってくれた。

「思っていたより暑かったけど、こういうのも面白いよね。また行きたいよね。今度は、箱根以外にも行ってみたいよね」


「だって、パパのおごりだから」


財布は軽くなったが、全員マンゾクしたのなら、私もマンゾク。


しかし、私には強羅温泉で湯につかりながら、薄々気づいていたことがあったのだ。

9月3日までに初稿をあげなければいけない仕事が2件あったことを。

そのうちの一つは、稲城市の同業者からいただいた仕事で、かなりボリュームがあった。
ということで、今日は、弾丸ツアーのあおりを受けて、1時間半しか寝ていない。

そして、もう一つ、私には薄々気づいていたことがある。

こんなブログをアップしている暇があったら、仕事をしろよ、ということ。


はい。
します、します。


おそらく、今日明日は徹夜になると思います。



よい子の皆さん。
傘を人に押し当てるのは、やめましょう。



「だって、パパのおごりだからぁ!」



お父さんの財布が軽くなった上に、寝不足になってしまいます。





2013/09/01 AM 07:28:01 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]



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