Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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居酒屋談義
最近の密かな楽しみといえば、10日に1度、東京調布のバーミヤンでW焼き餃子を食いながらビールを飲むことと、その日の仕事が終わった後に、クリアアサヒを飲みながらネットで動画を見ること。

動画は、ボクシングだ。

最近の動画ではなく、中量級の黄金期といわれた1980年代のものである。

トーマス・ハーンズ、マービン・ハグラー、シュガーレイ・レナード、ロベルト・デュランなど。

驚異的な身体能力のハーンズ、一撃必殺のハグラー、華麗なレナード、タフなデュラン。
知らない人には、何じゃそりゃ、だろうが、人間の、とりわけ黒人のアスリートの機能美に、嫌らしい意味ではなく(私はその方面の趣味はないので)目が釘付けになる。

当時無敗同士だったハーンズとレナードの緊張感あふれるファイトは、どんなによくできた映画や劇よりもドラマチックで、これは最高の舞台演劇だと言っていい。

これを見ると、完全に眠気が覚める。
アドレナリンが出まくって、眠るのが嫌になる。

……とはいっても、目をつぶったら眠ってしまうのだが。

いつも感動させてくれる彼らのファイト。
彼らは、紛れもなく歴史の中で、時代を刻んだ男たちだと思う。

しかし……である。

では、彼らが今のボクサーよりも凄いかといえば、私は、そうは思わないのだ。
いまのボクサーには、凄い人がたくさんる。

マニー・バッキャオ、マヌエル・マルケス、オスカー・デ・ラ・ホーヤ(既に引退)なども、一時代を築いた偉大なアスリートだと言っていいと思う。
そして、個人的な感想だが、おそらくこの人たちの方が、1980年代のチャンピオンたちよりも私は強いと思っている。

昔の人は、その時代では偉大だったが、強さという点では今の人に敵わないというのが私の持論だ。

トレーニングの質は、日々進歩し続けている。
栄養面のサポートも30年前と今とでは、クォリティが断然上がっていると思う。

つまり、劣る要素がない。

昔の人の実績は尊重し尊敬しつつ、私は、今の方がスゴいんだよ、と絶えず主張している。

しかしである。

30歳から61歳のバカな同業者どもは、恒例の飲み会で、こうおっしゃるのである。
「サワムラ投手だったら、今の時代でも軽〜く30勝は、してるぜ!」

私は見たことも会ったこともないので、そのサワムラ投手というのをよく知らない。
年長者のオオサワさんによると、戦前の選手だという。

そのことは、薄々知っていた。

じゃあ、この話はシャレの類いだろう、と私は判断した。
戦前の選手が、今の時代で30勝?
漫画じゃあるまいし。

だから私は、景気よく50勝ではどうですか、と言った。

そうしたら、「Mさん、茶化さないでよ」と怒られた。

本気だったらしいのだ。

一気に白けて、喋る気がなくなった。

たとえば、陸上競技の短距離で、戦前の選手の方がボルトよりも早いですよ、と言ったら普通は笑われる。
しぶとい人は、「昔の選手が今の時代に来て、今のトレーニングをして今のスパイクを使用したら、ボルト並みです」と言うかもしれないが、そんな仮定なら何とでも言える。

陸上のタイムは、計測機器こそ進歩の度合いで異なるが、その記された記録は公式のものである。
タイム差は歴然としている。
過去の世界記録保持者を無理に時間旅行させるという、そんなおとぎ話とも言える仮定は、滑稽すぎて笑う気にもならない。

一番端的なのは、たとえば、昔の体操ではウルトラCが難度の高い技だったが、今は遥かに進んでG難度というのがある。
東京オリンピック時代のウルトラCでは、今や高得点は望めないらしいのだ。

要するに、昔はCカップで巨乳と言われたが、いまではGカップでないと巨乳ではないというのと同じだ。
違う?


驚くほど技は、進歩してきている。

その時代で、オリンピックでメダルを取った人や世界記録を作った人は、無条件に優秀なアスリートだったと思う。
尊敬されて当たり前の存在だ。

マラソンで言えば、オリンピックで2連覇を果たしたアベベ・ビキラや金メダル、銀メダルを獲得したフランク・ショーターは、その時代では傑出したアスリートだと断言していい。
スゴい選手だということは、実績が証明している。
その点で、彼らを否定する要素は1パーセントも見当たらない。

しかし、彼らと今の選手を比較して、アベベだったら、あるいはショーターが今の時代にいたら、などと言う「おとぎ話」に付き合う気には、私はならないのだ。

もちろん、誰もがそう思っていて、そんなおとぎ話を真剣に語る人などいるわけないが。

だが、こと野球になると、おとぎ話が存在するらしい。

バカどもは、真面目な顔で、「サワムラの前では、ダルビッシュなんか霞むよね。マー君なんて足下にも及ばないよ。ナントカのストレートがリトルリーグ並みに見えるよ。ナントカの球なんか、サワムラと比べたら、スローボールだな。ナントカは、話にならないね」と言うのだ(ナントカの部分は、初めて聞く名前なので忘れた。話の流れで、ジャイアンツの選手でないことはわかった)。

みんな目が血走って見えるほど真剣。

それだけ言うのなら、そのサワムラに関して相当詳しいのかと思ったら、誰も見たことがないのだという。
それは、そうだろう。
ここにいる最高齢のオッサンでも戦後7年以上経って生まれてきたのだ。

見たことがないのが当たり前。

それが、真面目な顔で、「サワムラ、サワムラ」と言っている。

バカじゃないか。

伝説を尊重し尊敬するのは、人として当然のこととしても、いま現在のアスリートを貶めて、「昔の人の方がスゴい」という論理は、真面目に語れば語るほど浮世離れし過ぎて、本来美味しいはずの酒さえも貶めているように思える。

面倒くさいこと極まりないが、一応バカどもに聞いてみた。

で………もちろん、今のジャイアンツのピッチャーの皆様もサワムラ様の前では霞むし、足下にも及ばないし、まるでリトルリーグで、スローボールで話にならないんですよね。

「いや……それは……」
「中には、同じくらいのピッチャーも……」
「ほら、サワムラは右だけど、ジャイアンツにはスゴい左ピッチャーが多いし」
「今は、先発だけじゃないからねえ」
「サワムラはスゴいけど、うちのピッチャーだって………ねえ……」


居酒屋談義では、何を言っても許されるのが、いいところだ。


お馬さん(人類史上最も馬に激似の男)が言う。
「『巨人の星』は、面白かったよね。あれに勝る漫画はないね。今のマンガは、全部ダメ!」
「そうそう」


この愛すべき酔っぱらい、愛すべきバカたち……………。


2013/05/27 AM 05:57:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

お姫様だっこ
嬉しいことが一つと珍しいことが一つ。

一つは、桶川の得意先のフクシマさんから電話があったことだ。

フクシマさんは、正真正銘のおバカだが、真面目なおバカである。
その真面目おバカ・フクシマさんが、東日本大震災後に、宮城県出身の社長の手助けをして、震災ボランティアにハマり込むことになった。

震災2ヶ月後の被災地に足を踏み入れたフクシマさんが、そこで何を見たのかは、想像するしかない。
おそらく想像以上のものを見たのだと思うが、私がフクシマさんにそれを聞いたことはない。

仕事をしながら、週末にボランティアに向かうフクシマさんを見て、「すごい人だ」と見直したが、それはいま考えると他人事の感想だった。

大変だなあ……、頑張るなあ……程度のものである。

フクシマさんの歯車が徐々に狂いだしたときも、「疲れたんだな」という軽い気持ちで彼を見ていた。

しかし、徐々に会話が少なくなり、顔から表情が消えていくフクシマさんを見ているうちに、私の背筋を寒いものが走ることが多くなった。

大丈夫? と私が聞くと、焦点の定まらない目で「あの……」としか答えなくなったフクシマさん。

私は完全なる部外者だったが、彼の会社の社長に、フクシマさんを休ませてあげてください、と失礼で唐突なお願いをした。
私より遥か先にフクシマさんの異変に気づいていた社長は、「俺もそう思う」と言って、フクシマさんを休職扱いにしてくれた。

「気長に直せばいいさ。おまえの椅子は、ずっとこのまま残しておくから」

それが、1年7ヶ月前のことだ。

フクシマさんの家族は、奥さんと子どもが2人。
子どもは、5歳と3歳だ。

それ以上の情報は知らない。

医者に通い、カウンセリングと薬物治療を受けているというのは、奥さんから聞いた。
それ以外は、知らない。

ただ、3ヶ月に1回程度、私の方から電話をかけて、私の声をフクシマさんに聞いてもらうということだけは、した。
それが、医学的にいいことかはわからないが、奥さんが何も言わずに取り次いでくれるので、悪影響はないのだと勝手に思って続けている。

しかし、フクシマさんの声は返ってこない。
たまに、くぐもった声で「あの……」という声が聞こえたような気がしたが、ただ息を吐いただけかもしれない。
私が、そう思いたいだけ、ということもあり得る。

1年7ヶ月、フクシマさんの話す声を聞いていない。
それは、私にとって長過ぎる時間だったが、フクシマさんと奥さんにとっては、もっともっと長い時間だったかもしれない。

そのフクシマさんが、私に電話をしてきた。
それも「Mさん、元気?」だ。

昔のおバカモードではなく、抑揚のない言い方だったが、その声は間違いなくフクシマさんのものだった。

私は嬉しくなって、元気元気、元気すぎて疲れるくらいだよ、と答えた。

しかし、答えはない。
それは、そうだろう。

そんなに簡単に全快するわけがない。

まだ……闘病中。

こちらから、元気? 大丈夫? 頑張ってる? などと聞くほど私は無神経ではないつもりだ。

だから、自分のことだけを喋った。

最近、油断をしてると知らない犬に顔を食べられるんだよね、という話や、知り合いの仕事場で寝ていたら、目が覚めたとき、自分の仕事部屋に戻ってたんだ、俺って瞬間移動のSPECがあるみたいなんだよ、というおバカ話。

「元気……だ……ね」
また抑揚のない声。

そのあと、奥さんに変わった。

今年になってから主人が、自分から家族に話をするようになったんです。
そして、突然、自分からMさんに電話をかけるって言ったんですよ。
よくピクニックに行くんですよ。
最近は子どもにも、たまに話しかけます。
子どもたちは、まだ戸惑っていますけどね。

そんなことを聞いているうちに、目から水が出てきた。

よかったですね、というたびに目から水。

また声を聞かせてください、というのが精一杯だった。

ひとり密かに、バーミャンで祝杯を上げた。


次は珍しいこと。

二日間、ほぼ徹夜という仕事をして、燃え尽きた。
だから、当たり前のように眠かった。

睡眠不足を取り返さなければいけない。
しかし、オンボロアパートで昼間眠るのには、抵抗がある。

一番いいのは、小金井公園で眠ることだが、最近の私は外で寝ていると、知らない犬に顔を食べられるという災難に遭遇することが多い。

だから、荻窪在住のWEBデザイナー・タカダ君(通称ダルマ)の仕事場の片隅を借りて眠ることにした。
ここなら、犬に顔を食べられる心配はない。
ダルマのガキに食べられるかもしれないが、あとでお仕置きのカンチョーをすればいいだけのことだ。

「師匠、仕事手伝って…………」というところまでは聞こえたが、その後は爆睡。

途中で、DEEP PURPLEの「Highway Star」が大音量で聞こえたような気がしたが、気のせいかもしれない。

午前10時21分頃お邪魔して、目が覚めたのが、午後5時41分。
7時間、眠っていたことになる。

しかし、目が覚めて、すぐに私は異変に気づいたのだ。

ここって……俺の仕事場じゃん!

どういうこと?

俺は、ダルマの仕事部屋で寝ていたはずだ。
それは、安倍内閣の支持率より高い確率で自信がある。

なんで、それが自分の部屋に?

俺は、知らないうちに、瞬間移動という高度なSPECを身につけていたのか。
テレビに出られるぞ。

これって、メンタリストDaigoさんより、凄いんじゃね!(古い?)
テレビに引っ張りだこになったら、どうしよう。
仕事やっている暇ないぞ。

こりゃあ、困った。

……などと思っていたら、iPhoneが震えた。
ダルマからだった。

「ああ、師匠、起きましたか。
いやあ、参りましたよ。声をかけても体を揺さぶっても、大きな音で音楽を流しても全然起きないんですもん。
だから、トモちゃん(ダルマの奥さん)と二人で、師匠を車に乗せてアパートに連れ帰ったんすよ。
それでも起きないんだから、よっぽど疲れていたんですね。
何時に起きたんですか? え! じゃあ、あのあとまだ1時間以上も寝ていたんですね。
よく眠れますね、そんなに」

そうか、それはご苦労であった。
申し訳ござらん。
ご迷惑をおかけした。

しかし、どうやって俺を運んだんだ。

「俺が、抱っこしたんですよ。師匠、軽いんで楽でしたよ」

アパートの階段は、つらかったんじゃないか?

「いや、思いのほか楽でしたね。
抱っこしたまま、上れましたよ」

抱っこ?
つまり、お姫様だっこ?

き…………気持ちが悪い。

「なに言ってるんですか、師匠! ガイコツだっこでしょうよ! ガイコツ! 俺の方が気持ち悪いですよ、ガハハハハァ!」

てめえ!

「ああ、師匠。師匠の大好物の銀河高原ビール1ダース置いておきましたから」



それは、どうも…………ありがとうゴザイマス。


2013/05/22 AM 05:52:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

アソウ副総理とノダ元総理
水曜日は、今年2回目のオフ。

しかし、家でノンビリすることは許されないので、午前10時過ぎに、営業を装ってオンボロアパートを出た。
目的地は、小金井公園。

三畳敷きのレジャーシートとクリアアサヒの500缶を3本。
特大のおにぎり1個、おにぎりの中には、激辛の麻婆ナスがギッシリと詰まっている。

今回の休日に関しては、特別面白いことも楽しいこともなかった。
寝て起きてクリアアサヒを飲み、おにぎりを食う。
そして、また寝て起きて、クリアアサヒを飲む。

それの繰り返しだった。

面白いことと言えば、午前中に一度、顔を生暖かいザラザラした感触で触られて目覚めたことだろうか。
目を開けるとコーギーが私を食べようとするところだった。
そして、午後の2回目の睡眠のとき、やはり生暖かく少し生臭い感触で目覚めた。
ミニチュアシュナイザーが、私を食べようとしていた。

犬にとって私は、相当おいしいご馳走に見えるらしい。
こんなに骨ばかりなのに………。
いや、骨だからこそ、彼らにとっては、美味しいのか。

こんな風に、今回の私の休日は、いたって普通だった。

だから、ここからは、違うことを書こうと思う。


高校2年の少年に、お説教を食らったという話。

ヨメのお友だちの息子が、パソコンを習いたいというのだ。
しかし、この少年は大変頑固で、「俺にはパソコンなんて必要ないよ。あれは堕落の元だ」というポリシーを持っているという。

その考え方は、嫌いではない。
自分の意志で言っているのなら、大したやつだと思う。

しかし、彼の母親は、「パソコンは、今の時代には空気と同じで、人間生活に必須」という考えを持っている人だから、自分の息子の将来を憂いて、強制的にパソコンを習わせようとした。

そこで、私のヨメに相談。
ヨメは、いつものごとく、私に相談することなく、「うちの主人に教わればいいじゃない」という軽いノリで話を進めた。

先方の「お金払うから」という申し出に、「なに言っているの。友だちなんだから、お金なんかいらないわよ」という、私には永遠に理解不能のオバさん的会話で、すべての話が決まり、私が頑固な少年を教えることになった。

オレ、とても忙しいんだけどね。
偏屈な少年のお相手なんかする暇ないんだけど……ね。

しかし、偏屈な少年を決して嫌いではない私は、結局ヨメの思惑通り、昨日の午後、彼にパソコンを教えることになった。

会ってみたら、少年は小さくて可愛かった。
後で聞いたら、158センチだという。

「中学2年で、成長が止まったんだ」と笑顔で言っていた。
しかし、その顔は笑っていたが、目は笑っていなかった。

ちょっと、不気味。

そして、少年は、最初から試合放棄。
「俺、パソコンなんて覚える気はないからね。ママも無駄なことするよなあ。本当に無駄」と、舌打ちしながら自説を述べた。

私は、人に無理に何かをさせるというのが嫌いなタチなので、彼の意見を尊重し、来たばかりだったが、じゃあ、俺、帰るわ、と言った。
相手が無駄と言うなら、それは間違いなく無駄な時間だ。
もともと気が進まなかったし、家に入ったときから、居心地の悪さを感じていたのだ。
ここは、早々に帰るべきだ、とビンボーなケツを上げた。

しかし、少年に止められた。

「いま帰られたら、ママがうるさいからさ。一応教えてもらったというアリバイを作りたいんだよね。だから……ちょっと、いてよ」

ママが怖いのかよ。
だらしないやつだな。

と思ったが、世の中の少年の99パーセントはママが怖いものなので、彼の顔を立てて、一時間ほど、いてやることにした。
私は、優しい大人なのだ。

しかし、居心地が悪い。

その居心地の悪い原因はわかっていた。
豪邸に足を踏み入れた途端目に入った、玄関に貼った自民党議員のポスター3種。

おそらく、少年の父か母が、彼の後援会に入っているのだろう。
それだけならまだ我慢できたが、少年の部屋に入った途端目に飛び込んできた東京ジャイアンツの選手の写真の数々。
(私は、ジャイアンツの選手のことはまったく知らないのだが、ユニフォームの胸にGIANTSとあったから、それはおそらくジャイアンツの選手なんだと思う)

私は、勘違いしたジャイアンツファンがよく言う「アンチジャイアンツの人ってさ、本当はジャイアンツのことが気になってしようがないんだよね。気になるから文句を言うんだよ」という傲り高ぶったご意見に反発して、ジャイアンツにはまったく興味を持たないようにしてきた。
だから、ジャイアンツの選手のことは、まったく知らない。

部屋に貼ってある写真の主が誰なのか、まったくわからない。
わかりたいとも思わない。

少年の部屋の壁に充満したジャイアンツの選手の写真。
そして、その横に、自民党議員のポスター。

高校2年の少年の部屋に、自民党議員の選挙用のポスターですよ。
ミスマッチにもほどがある。

たいへん居心地が悪い。

私には、三大アレルギーがある。
自民党アレルギー、ジャイアンツアレルギー、そして、演歌アレルギーだ。

少年の部屋に入る前に、トイレをお借りしたのだが、トイレの壁には、ジャイアンツ選手の写真の他に、氷川きよしさんの写真が数枚貼ってあった。
(他に演歌歌手らしき人の写真も貼ってあったが、誰やねん!)

氷川きよしさんファンには申し訳ないが、用をたしているとき、寒気がした。

2つだけならまだ我慢できたが、三大アレルギーの素すべてが揃ったら、私の思考能力はゼロに近くなる。

少年が「Aさん(国会議員)に連れられて、よく東京ドームに行くんだよね。あっ、もちろん、入場料も食事代も全部自分で払ってるから」という、こちらが聞きもしない情報を盛り込んで、ジャイアンツ愛を熱く語った。
(選挙運動になるので、政治家の名は伏せる)

しかし、私は、少年の話に対して、あっそう、としか答えない。

オレ、アンチジャイアンツなんだよね。
アンチ自民党なんだよね、などと宣言するのは、少年に対してあまりにも大人げないので、あっそう、としか言えないのだ。

あっそう、の連発。

「誰それは、チャンスに強いんだ」
あっそう。
「誰それの年俸は、5億円以上なんだよ!」
あっそう。
「誰それは、すぐに日本を代表するエースになるよ」
あっそう。

そんな風に、36分間、あっそう、ばかり言っていたので、飽きた私は違うことも言ってみようと一大決心をした。

「Aさんがね、原監督は絶対に政治家になっても通用するって言ったんだ」

あっそう、あっそう、アソウ副ソーリ。

軽いノリで言ったつもりだったが、少年の顔色が、わかりやすいほどに変わった。
顔が赤くなり、目が吊り上がったのだ。
そして、唇を震わせながら言った。

「何を言ってるの! ふざけるにもほどがあるでしょ! 政治家をバカにするなんて! アンタ、それでも日本人かよ!」

いや、あなたも正当な日本人なら、いくら腹が立ったとしても大人に対してタメグチは慎んだ方がいいんじゃないですかね。

それに、私はどこから見ても正真正銘の日本人でしょうが。
まあ……55番を背負っていた頃は、デレク・ジーターとも仲がよかったから、よくニューヨーカーに間違えられたものだが……。

とは思ったが、さっきの言葉は、自分でも程度の高い冗談とは思えなかったので、とりあえず謝っておこうと思った。
少年の心を傷つけたのは確かだからだ。

だから、誠心誠意謝った。


悪かった、悪かったのだ、悪かったノダ元ソーリ。

そう言ったら、少年は、「ガハッ」と笑いやがった。


なんだ、こいつ!

2013/05/17 AM 05:59:00 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

久しぶりの勝利
前回の話の続き。

23分遅れでやってきた極道コピーライターのススキダは、「悪いな」とだけ言って、目の前の椅子に座った。

吉祥寺のビアホール。
ススキダは、怖い顔にもかかわらず、酒が飲めないので、私はわざとビアホールを選んだのだ。

遅い! 23分も待たせやがって、今日は、お前の奢りだからな。覚悟しろよ。

「俺には、お前に、いつも奢っている記憶しかないんだが」

はて、何のことでしょう?

あまりにも待たされたので、ジョッキを2杯と串揚げ(関西では串かつ)を大量に頼み、口のまわりを油でギトギトにしながら、私はトボケた。

その風貌に似合わないオレンジジュースを飲みながら串揚げを食うススキダ。
彼と一緒のときは、彼の極道スタイルを敬遠して、まわりに人がやってこないから、人の圧力を感じないで酒が飲める。

気分上々。
ススキダ様々である。

そのススキダに、神田のイベント会社での出来事を話した。
すると、鼻で笑うという形容詞そのままに、鼻で笑われた。

「フンッ!
そりゃあなあ、お前が悪いんだよ。
お前がダメだから、客もダメになるんだ。
というより、お前が、ダメな客を選んでいるんだな。

俺の客には、そんな失礼なのはいないぞ。
いいか、客を教育するのもフリーランスのテクニックのひとつだと思っておけ。
俺が思うに、お前の「テキトー」さが、客に伝染ってしまっているんだよ。

テキトーなやつには、テキトーな客しかつかない。
今回のは、半々というより、9:1でお前が悪いな。
あきらめろ。
もう、そこからは仕事は来ないだろう。

自業自得だな」

この野郎!
神田川に沈めてやろうか・・・・・と思ったが、私の殺気を覚ったのか、ススキダに睨まれた。

迫力ある顔だ。

ただ私は、ガリガリに痩せたホネホネ白髪おやじではあるが、身体能力は、173センチ、80キロ弱のススキダより、遥かに上を行く。
ススキダなど簡単に捻りつぶすことができたが、毎晩枕元にススキダの亡霊に立たれたら楽しすぎるので、今回だけは下手に出ることにした。

ハイ!
師匠の言うとおりです。
すべては、私が未熟者だからです。
反論の余地もありません。
申し訳ありません。

両手をテーブルにつき、額がテーブルに触れるくらいに頭を下げた。
まわりからは、極道の兄貴分に怒られている弟分に見えただろう。

そんな私を見て、ススキダは、大きな舌打ちをした。
それは、「これぞ、舌打ち」という見事な舌打ちだった。

その舌打ちに反応したのが、4メートル41センチ先のテーブルに座っていた労働者風の男二人だった。
あまりにも怯えた目をしていたので、常識人である舎弟の私が、頭を下げた。
しかし、目をそらされた。

その1分後に、男二人は席を立って、逃げるようにレジに向かった。
これは、広義の意味で「営業妨害」になるのでは? と思ったが、ただ食い終わったから席を立った、と見ることもできるので、気にしないことにした。

串揚げを小指を立てて食うという、吐き気がしそうなススキダの姿を見て、私も席を立ちたくなったが、奢ってもらう側の仁義として、それでは不誠実だと思い、懸命に吐き気を堪えた。


「輸入雑貨屋の小冊子やらカタログの仕事があるんだが、やらないか」
小指を立てながらススキダが言った。

ススキダの知り合いが、横浜で輸入雑貨の店をやっているという。
そこの店に置く、説明書を兼ねた小冊子、そして商品カタログ。
商品は輸入物が多いので、説明書が英語書きである。
そのため、日本語に訳したものが必要になる。

極道ススキダは、日本語は極道言葉しか知らないが、英語と北京語が話せる。
特に英語は、かなりのハイレベルだ。
ススキダにとって、英語の説明書の翻訳など、朝昼晩メシ前だろう。

しかし、極道仕事に忙しいススキダは、カタログなどの編集まではやっていられない。
そこで、私に………ということらしい。

ありがとうございます。
喜んでやらせていただきます。

私がそう言うと、ススキダは小指を立てたまま、「バカ!」と私を褒めた。

はい、ありがとうございます。

「おまえ、真面目な話のときは、真面目に受け答えしろよ」と、ススキダが、また褒めた。


だったら、おまえも真面目な話のとき、小指を立ててオレンジジュースを飲むんじゃねえよ!
吐き気がするだろ!


ススキダが、自分の小指を見つめた。
そして、高速で指を収めた。

これで、真面目に仕事の話ができる。
極道を相手にすると、疲れてしょうがない。

仕事は、月に1〜2回あるらしい。
それは、輸入雑貨の納入時期によって決まるらしい。
将来は、ネット通販もやりたいらしいが、そのときはHPの管理を任せる、とも言われているらしい。

まあ、悪い仕事ではない。
ススキダは遣り手だから、少しでも怪しいと思ったら、割のいい仕事でも必ず断る。
だから、彼の持ってくる仕事は、安心できる。

その辺が、何につけても「テキトー」な私との大きな違いだ。


やってもいいが、それはまったくの新規なのか。
フォーマットのないゼロからの仕事なのか。

「いや、フォーマットはある。今までは、他に頼んでいたんだ」と下を向くススキダ。

なんで、今回は、その人に頼まないんだ?

「いや………それは………まあ、あれだな」
言いにくそうである。

本牧ふ頭に、沈めたのか。
それともコンテナに監禁したとか。
あるいは、にっぽん丸のマストに縛り付けたか。

「バカな!」
ススキダが、頭を左右に強く振った。

まあ、だいたい想像はつく。
ススキダは、仕事に対して、決して妥協はしない男だ。
他人に厳しく、自分にも厳しい。

きっと、デザイナーさんに対して、容赦のない要求をしたのだと思う。
そのため、積もり積もったストレスが爆発をして、デザイナーさんがパンツを脱ぎ、ススキダに対して「お尻ペンペン」をした。
おそらく、それが正解だろう。

で………どんな風な「お尻ペンペン」だったんだ。

「いや、黙って俺に頭を下げ、事務所を出て行っただけだが…」

なんだよ!
つまり、今日の俺と同じじゃないか!

おまえも、イベント会社の社長と同類かい!


なんて日だ!


断ってもよかったのだが、今回からは、忙しいススキダに代わって、ススキダの奥さん(75パーセント小泉今日子さん似)が間に入るというので、仕事を請けてやった。

それなら、なぜ、今日奥さんを連れてこないのだ、と私が言うと、2杯目のオレンジジュースを、性懲りもなく小指を立てて飲んでいたススキダが、「まあ………あれだ」と言って私から目をそらした。

喧嘩したんだろ、奥さんと。
今日遅刻した理由は、それなんだな。

「………………………………………………」

図星だったようだ。

仕事に、夫婦喧嘩を持ち込むなよ。
なに考えてるんだ、おまえは!

萎れるススキダ。

その姿を見て、勝ち誇る私。



勝った、勝ったーーー!
久しぶりに、ススキダに勝った。


なんていい日だ!



2013/05/12 AM 07:48:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

透明人間の怒り
仕事をしていて、初めての経験。

世の中には、面白いが迷惑な人がいる。
昨日、神田のイベント会社で打ち合わせを行なったときのことだ。

こことのおつき合いは5年以上になるが、担当者が2年おきくらいに変わって、今は3人目。
担当者が変わってから、不思議なことにトラブルが続いている。

ただ、だからといって、その担当者が悪いかと言えば、そうではない。
もちろん、私も悪くない(と思う)。

たとえば、イベントが、会場側の都合でキャンセルになったことがある。
会場案内図を三つ折りに指定していたのに、二つ折りで納品された(業者のミス)。
都内が大雪だったためイベントが中止になった。
夏祭りで使う団扇の企業名が微妙に間違っていた(担当者の勘違い)。
社長の親戚筋の横柄なオッサンが、担当者の部下になって、不愉快な思いをした。

そんな風に色々あったので、今回の打ち合わせも「何かが起こる予感」がした。

事務所の端っこの応接セットに座って、担当者の説明を受けていた。
担当者の疲れた顔は気になったが、10分経っても何も起きなかったから、今日は無事に過ごせそうだな、と油断をした。

油断をして全身の力を抜いていたとき、老人が突然やってきた。
70歳くらいの背の低い温和な表情をした人だ。

その人が言った。
「Nくん、ちょっとエミナに電話してくれんかなあ」

担当者は、勢いよく立ち上がって、「いや、社長。いま打ち合わせ中なんで、後ではダメですか」と直立不動の体勢をとった。

社長?

それなら、私も立ち上がって挨拶をするのが礼儀だろう。
だから、立ち上がって頭を下げた。

しかし、社長は、それを見事に無視。

この場合、頭を下げただけで、私の義務は果たしたと思われるので、それ以後の私は透明人間に徹することにした。

社長は、私の存在を無視したまま、担当者のNさんに、「できれば、いまして欲しいんだがねえ」と腰を折り、右手を顔の前で拝むようにして、頭を下げた。

その仕草は、意外と可愛かった。
その可愛らしい仕草に負けたのか、担当者は一度私に頭を下げた後で(よかった、私は存在していたみたいだ)、社長の携帯電話を受け取った。

エミナ、というのは、キャバクラのお姉さんかな、と変な想像を働かせた。
「エミナちゃん、今日は出勤かい? ボクちゃん、今日行ってもいいかな?」という電話を自分からはできないので、社員にさせるのを日課としているのかもしれない。

うん、そうに違いない。

しかし、透明人間である私の想像は、外れたようだ。
私は、人様の電話の内容には全く関心がないのだが、この状況では、心を無にしても否応無しに耳に入ってきてしまうのだから、これは不可抗力と言っていい。

エミナというのは、社長のお孫さんらしく、そのお孫さんが、最近お祖父ちゃんである社長を避けているようなのだ。
そこで、Nさんが恐縮しながら、エミナさんに、その理由を電話で聞いたということ。

話の流れから推測すると、今年の3月にエミナさんの高校の同級生が、父親の転勤で転校をするため、送別会の場所を自宅にしようと提案したところ、祖父である社長が反対をしたため、できなかったというのだ。
それを孫のエミナさんはいまだに怒っていて、お祖父さんを避けているらしい。

「そ、そんな•••つまらないことで」と社長は言ったが、もちろん、エミナさんにとって、それは「つまらないこと」ではない。

だから、お祖父さんと口をきかなくなった。
つまり、話は単純である。

しかし、自分に非がないと思っている老人ほど、たちの悪い生き物はいない。

「なんだよ! そんなことなのかい! つまり、お小遣いをアップすればいいだけのことだろ!」と見当違いのことを、ジイさんは、眉間に皺を寄せて言ったのである。

いやいや、ジイさん、これは、そんな話ではないと俺は思うぞ。
小遣いで話がまとまると思っていたら、見当違いだ。
そんなことをしたら、余計に溝を深くするのではないですかね。

透明人間は、そう考えた。

しかし、透明人間のことは初めから眼中にない社長は、「なあ、Nくんよお、孫へのお小遣いってのは、どれくらいが相場なのかねえ」と、Nさんの顔に、萎れた顔を近づけたのだ。

その顔に向かって、Nさんは果敢にも「いや、社長、俺にはお祖父さんはいないし、孫もいないですからね、そんなの、わかりませんよぉ」と言った。

それに対して、皺まみれの社長は怒ることなく「アハハ、そうだよねえ、君にはわからんよねえ、アハハ、それは、そうだよねえ」と、顔を皺まみれにして言った。

だから私は、この会話は、ここで終わったのだと判断した。

しかし……ですよ。
社長の行動は、こちらの想像を超えて、担当者Nさんの横にケツを落ち着け、電話をかけはじめたではないか。

どうやら、社長の同年輩のお友だちに、孫へのお小遣いの相場を聞くことにしたらしいのだ。
しかし……そんなことは、ご自分のご立派な社長室に行ってすればいいだろう。

この場所で、することはなかろう!

何を考えてるんだお前は!

この無礼者が!

…………と思ったが、もちろん、そんなことは言えるはずもなく………。

なが〜い、なが〜い、社長の携帯トークショー。

透明人間である私は、これを我慢しなければ、仕事を失うことは明白だ。
だから、我慢した。

10分以上、我慢した。

担当者は、こんなことに慣れているのか、のんびりした動作で立ち上がって、私のために2杯目のコーヒーを持ってきてくれた。

どうも、ありがとうございます。

もう終わるか、いつ終わるかと、待っていた。
今でしょ! という私の願いは、20分近く経っても叶えられず、私はもう2杯目のコーヒーを飲み干してしまった。

担当者を見ると、明らかに戦意喪失状態。
オレ、これから極道コピーライターのススキダと会う約束してるんだけどな。

ススキダは怖いやつだ。
人を消すことを何とも思っていない男だ。
待ち合わせ時間に1分でも遅れたら、確実に私は本牧ふ頭に沈められるだろう。

それは勘弁していただきたい。

蒼ざめた私は、いくつかの選択肢を用意した。

まず、この長電話が終わるのをいつまでも待つというもの。
しかし、ススキダが怖い。
次に、社内の他に場所を移して打ち合わせを再開するということ。
だが、戦意喪失した担当者は、私の目配せに答えてくれなかった。
三番目は、会社の外のマックに行って打ち合わせをするということ。
これが一番いいかもしれない。

だから私は、担当者の方に身を乗り出し、小声で、マックに場所を、と言った。
しかし、戦意喪失した担当者は、4回小さく首を横に振って、拒絶の意思を表した。

となると、このまま待ち続けるという選択肢しかない。
だが、ススキダが怖い。

本牧ふ頭の海は、まだ冷たいだろうなあ………。
今日は海パンを忘れちまったしなあ。
誰か、ダイビングスーツ貸してくれないだろうか。

などと思っていたら、目の前の社長が、透明人間である私に気づいたらしく、しわクチャのあごをクイっと横に振って、手でコップの形を作ったのである。
そして、明らかなるドヤ顔。

つまり、私に何か飲み物を持ってこいと?
社員ではなく、部外者の私に?

そのドヤ顔を見た私は、無言で身の回りのものを整理し、無言で頭を下げ、颯爽と退社した。


誰か、あのジジイに、礼儀を教えてやれ。

まったく、腹が立つ。

腹を立てたまま、ススキダとの待ち合わせ場所に行った。
約束の時間の10分前ピッタリ。
これなら、本牧ふ頭を泳がなくてもすむ。

ゆったり気分で、おいしいコーヒーを飲んだ。

しかし、ススキダの野郎、23分も遅刻しやがった。



なんて日だ!



2013/05/08 AM 06:16:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

頼みもしないのに(おねだり男)
サブマシンとして使っているMacBook3.1。

使い始めてから5年になる。
一度も故障せず、快調に動いている。

これは、5年前に、私が急性胃炎と急性気管支炎(あとで栄養失調も判明した)を併発して19日間入院していたときに、テクニカルイラストの達人・アホのイナバが「Mさん、入院生活は退屈でしょ。これ使いなよ」と言って、頼みもしないのに持ってきてくれたものである。

アホのイナバは「使い古しで悪いんだけどさ」と言ったのだが、どこから見ても、それは新品そのもの。

後で調べたら、発売して二ヶ月くらいしか経っていなかった。

その新品には、イラストレータのCSが入り、フォトショップも入っていた。
書体もダイナフォントの書体が、百種類近く。

その当時、アホのイナバは、イラストレータは使っていなかった。
彼が使っていたのは、フリーハンドとペインターというドロー・ソフトだった。
それに、彼が使うのは、基本的に欧文書体だったから、ダイナフォントの日本語は不要のはずだ。

要するに、私のためにカスタマイズしてくれたということ?

そのMacBookは、アホのイナバが、「返せ」と言わないので、今も私の手元にある。
イナバは、「返せ」とは言わずに、「ノートの調子はどう?」とだけ聞いて、私がゼッコーチョーと言うと「ああ、よかった」と笑うのである。

そんなイナバから、「ペンタブレットの調子がおかしいんですけど」という電話がかかってきた。

イナバは、相当なアホだから、説明が下手だ。
幼稚園児ほどの説明能力しかない。
彼の説明を聞くより、現場に出向いて現象をみた方が手っ取り早い。

現象には必ず理由がある。

私は、大変忙しい時間を過ごしていたのであるが、友の窮状を聞いたら駆けつけないわけにはいかない。

イナバは、アホだが、その心はピュアで汚れがない。
アラフォーとは思えないほど、「純」な部分をその心に持ち続けている「奇跡の人」だ。

私は、そんなイナバの性格をオンボロアパートの庭に住み着いた野良猫「セキトリ」と同じくらいに愛している。

だから、4月30日に行ってきた。

送り迎えは、イナバの愛車・ベンツだ。
楽ちんだった。


不調の原因は、簡単だった。
アホのイナバは、イラストを描かせたら達人のくせに、機械に極めて弱い。

ペンタブレットが認識されない、と慌てていたので、詳しく聞いたら、USBハブを最近取り替えたという。
Mac本体に周辺機器をたくさん繋げているためポート数が足りない。
だから、USBハブを活用していたのだが、ハブが故障してもいないのに、気まぐれで「何となく」新しいものに替えてしまったというのだ。

ハブとUSBは、相性があるようだ。
ある機種だけを認識しない場合がある。

そこで、私は、ハブに繋げていたペンタブレットを本体のUSBポートにつけ、ほかの機器をハブに繋げることにした。
すると、簡単に認識した。

それを見たイナバは、「マジック!」と驚いていたが、こんなものがマジックだったら、誰だって手品師になれる。

12分ほどの作業が終わって、仕事部屋で寛いでいたところに、イナバの奥さんが顔を出した。

「サラダスパゲッティを作ったんですけど、食べません?」

食べまする。

リビングの立派なテーブルセットで、サラスパを食った。
パスタにブロッコリースプラウト、ナス、キュウリ、トマト、エビを乗せ、オリーブオイル、バジル、粗挽きコショウ、岩塩で和えたシンプルなものだった。

シンプルだが、一つ一つの素材が生きていて、うまい。

エビ以外の具材は、イナバの奥さんが、家庭菜園で作ったものだ。
その家庭菜園で作った季節の野菜、果物を奥さんは、私が頼んだわけでもないのに、年に数回、送ってきてくれる。

ありがたいことである。

アホのイナバの奥さんは、大富豪だ。
イナバと結婚したときは、ただの富豪だったが、奥さんのお父上が亡くなって、その遺産が入ってきてからは大富豪になった。

もともと家庭菜園が趣味だった奥さんは、市民農園が近くにあるというだけで、東京日野市に一戸建てを買った。
大富豪になった今は、家から600メートルほど離れた農地を買って、毎日そこまで原チャリで出かけ、5時間以上農作業に勤しんでいるらしい。

「でも、最近は、農地のそばの土地も買って、そこを駐車場にしてるから、たった600メートルの距離をランドクルーザーで往復してるんですよね」と、アホのイナバ。

ベンツ、ランドクルーザー、そしてもう一台が、ステップワゴン。
自分のための家庭菜園、それに隣接する駐車場所有。

これを聞いて目まいがしない人が、いるだろうか。

私は完全なる酸欠状態に陥りました。
それと同時に、オンボロアパートが、愛おしくなってきましたよ。

ビンボー、バンザ〜〜イ!

まだ酸欠状態が解消されていなかったとき、アホのイナバが「原チャリ、もう一年近く使っていないんですよ。子どもたちもまだ乗れる年じゃないし、俺は原チャリ苦手だし・・・なんか、もったいないですよね」と呟いた。

それは、ただの呟きだった。

だから、私は「ああ、今は原チャリ、乗ってないんだ〜」と、イナバと同じトーンで呟いたのである。

繰り返すが、私は、ただ呟いただけだ。
その呟きには、裏の意味は何も付加されていなかった。

そのあと、イナバの奥さんが、「Mさん、畑で何か作って欲しい野菜とかフルーツあります?」と聞いてきたので、エダマメ、ソラマメ、海ぶどう、と答えた。

海ぶどうは、もちろん冗談だが、それにアホのイナバが反応した。

「えー! 海ぶどうって、畑でできるんですかぁ!?」

さすが、アホだ。

君は、沖縄石垣島に別荘を持っているではないか。
言ってみれば、海ぶどうの原産地にいるんだから、それくらいわかるだろう。
アホ過ぎるぞ、イナバ!

アハハアホホ、と笑うアホのイナバ。


ところで、アホでピュアなイナバは、その石垣島の別荘に「来い来い」と私をしつこく誘うのを日課としている。
「家族連れで来てくださいよ。なんなら、往復の運賃も出しますから」

そんなことを夫が言った場合、普通は、奥さんが「そんなことを言ったら失礼でしょ」と嗜めるものだが、イナバの奥さんは、アホに同調して、「そうですよ、ぜひ」とおっしゃるのだ。

5泊6日石垣島アホのイナバ別荘無料ツアー。

しかし私は、過剰な愛情を受けた場合、本能的に「エイヤッ!」と身をよける習性があるので、そのありがたい申し出を受けたことはない。

私は、謙虚な常識人なのだ。


アホな3人が、アホな会話に没頭すること2時間弱。
重厚なキャビネットの上に置かれた数万円はしそうな時計を見ると、時は3時過ぎ。

じゃあ、帰って仕事をしなければいけないので、とビンボーなケツを持ち上げたホネホネ白髪おやじ。

「ああ、ジャックダニエルがあるんですけど、もって帰ります?」と頼んだわけでもないのに、アホのイナバが言う。
それに続けて、同じく頼んだわけでもないのに、奥さんが言った。
「トマトがたくさんあるの。持って帰ります?」

はい、じゃあ、遠慮なく。

イナバが立ち上がって、ジャックダニエルを取りにいこうとしたとき、奥さんが、「ビリーくん、ステップワゴンにしてね」と言った。

アホのイナバが、なぜ奥さんから「ビリーくん」と呼ばれているのかは知らない。
まさか、イナバ・ビリーという名ではないと思うが・・・。

由来を聞けば教えてくれると思うが、聞く趣味がないので聞かない。
理由は、面倒くさいから。

奥さんが、さらに言う。
「ビリーくん。原付を乗せるのを忘れちゃダメよ」


ここは、ハッキリしておきたいところだが、私は「ああ、今は原チャリ、乗ってないんだ〜」とは言ったが、「原チャリ、欲しいな〜」とはひと言も言っていないのだ。

「ああ、今は原チャリ、乗ってないんだ〜」と、普通に感想を述べただけだ。
物欲しそうな顔をしなかったことに関しては、自信がある。

しかし、アホのイナバは「ああ、持ってってもらいましょうかね〜」と言うのである。
うなずく奥さん。

この申し出を断るほど、私は厚かましくないし、礼儀知らずでもない。

「普通に」いただいた。




名義変更をしていないので、まだ原チャリには乗っていない。

しかし、原チャリを見るたびに、顔がニヤケるのを止められない私。


久しく自分の顔を鏡で見ていないので自信がないのだが、もしかしたら、私の顔には「おねだり男」という刻印があるのかもしれない。


2013/05/03 AM 08:23:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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