Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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持っていない男
パイ生地を使わないで作る、ほうれん草、パプリカ、アスパラとベーコンのキッシュ。
それに、オニオングラタンスープとミートボールのバジル風味トマトソース煮込みを付ける。

卵を割ったら、双子の黄身が出てきた。
初めての経験だ。

なんか嬉しくなって、もう一つ割ったら、また双子。

これは、レアではないだろうか。

2回連続で、双子ちゃんに当たったのだ。
期待を持って、三つ目を割ってみたら、普通の卵だった。

しかし、双子の黄身が連続で出る確率は、相当低いに違いない。
勝手な想像だが、1パーセント以下ではないだろうか。

嬉しくなって、誰かに報告したくなった。

一番近くにいたのは、ヨメである。

しかし、我がヨメは、私の話を聞かないことを信条としている「鉄の女」だ。
いつも私は最初の18文字程度の言葉しか言わせてもらえず、あとはヨメが繰り広げる「長台詞」に翻弄されるだけである。

だから、言うのをやめようかと思った。

だが、双子の黄身が出現する確率は1パーセント以下(おそらく)。
それに対して、ヨメが私の話を聞く確率は、百回に一回はある。
つまり、1パーセント。

その高い確率の方に賭けるべきだ、という悪魔の囁きが私の耳に届いた。

その結果・・・・・・・・・・

2回連続で、双子の黄・・・。

「ああ、清水さんの奥さん、双子の男の子を産んだわよ。可愛かったわぁー。そう言えば、私のおばあちゃんは、双子だったって話したよね。双子って隔世遺伝だって言われてるから、私も双子で生まれる確率は高かったのよ。でも、双子じゃなかった。だから、娘が双子を生む確率は高いんじゃない? あ・・・・・でも、これはパパの方の遺伝子が『使いもの』にならなかったら、意味はないんだけど・・・。ああ・・・『使いもの』にならない可能性が高いかあ!」
(これは脚色ではなく、本当にヨメは、人の心を鋭く抉るような強烈なフレーズを何の迷いもなく言うのですよ)

結局、私の言葉は、10文字以下しか生き延びることができず、私のささやかな喜びは、消滅しかけた。


消化不良の喜び。


消化不良のまま、私は、高校2年の娘の部屋のドアの前に立った。

きっと娘は、友だちと「線」という名のアプリでコミュニケーションをとっているに違いない。

邪魔をしては悪いと思ったが、エイトビートでドアをトントンした。


なんと! 双子の卵の黄身が2連チャンで出ましたあ!


しかし、娘から「いい年をした大人が、卵の黄身が双子だったからといって、普通、喜ぶか? キモいぞ、おまえ! いや、いっそ哀れと言ってもいいな。バカなこと言っていないで、早くメシを作れ、シッシッ・・・・・」と、犬並みの扱いを受けた。

キャイ〜〜〜〜〜〜〜ン


だが、ここでメゲないのが、ホネホネ白髪おやじのいいところである。

WEBデザイナーのタカダ君(通称ダルマ)のことを思い出したのだ。

ダルマは、6回生まれ変わっても返せないほどの恩を私から受けている。
彼は、私の奴婢と言ってもいい存在である。

彼なら、私と喜びを共有してくれるに違いない。

電話をした。

気持ち悪い声が、左の耳に届いた。

悪寒を抑えながら、「連続双子黄身事件」を報告した。

しかし、ダルマのテンションは、私のさらに上を行ったのである。

「師匠! 師匠は2回ですよね。でも、うちのトモちゃんは、1パックのうち5個も双子の黄身だったんですよ!」

ちなみに、トモちゃんというのは、ダルマの奥さんのことである。
私は、彼女のことを「微笑みの天使」と呼んでいる。

笑顔が満点の爽やかな女性なのだ。

それに対して、ダルマのことを私は、「道端の犬のウ○コ」と呼んでいる。

実に、正確な喩えだと思う。

そのウ○コが、興奮して言った。

「うちのトモちゃん、持ってますよねえ! ホントに持ってます! だから、嬉しくなって、トモちゃんを抱きしめてしまいましたよ!」


ん?・・・・・・・・ウ○コが、天使を抱きしめる?


気持ち悪いことを想像しそうになったので、電話を切った。


結局、「いいこと」は、人には報告せずに、自分の胸だけにしまっておいたほうがいい、というのが今回の教訓であった。



ところで、1パック全てを割ってみた結果、4つが双子ちゃんだった。

トモちゃんより、1個少ない。


俺は、「持っていない男」だということを確信した日だった。





2013/03/28 AM 08:04:10 | Comment(1) | TrackBack(0) | [日記]

冷酷すぎる男
義兄がいる。

ヨメの兄・長男だ。

もし、家を建てた人間を「成功者」と呼ぶなら、義兄は間違いなく「成功者」に入る人と言っていい。
なんせ20代後半で、埼玉の外れに一戸建てを持ったのだから。

しかし、この「成功者」は、仕事運だけは悪いらしく、勤め先がよく倒産をした。

再就職の度に、私は保証人になるのだが、この「成功者」から感謝の言葉を聞いたことがない。
「成功者」は、頭を下げるのが苦手のようだ。

この義兄には、子どもが3人いる。
3人とも男だ。

義兄の30を過ぎた長男は、子どもの頃、我が家によく遊びに来た。
私は、ブランドには全く興味がないのだが、家に来るたびに、ブランド品の洋服をおねだりされるから、言われるままにジーパンやパーカーを買って与えた。
2万円近いラジコン・カーを与えたこともあった。

私は、自分の子ども、他人の子どもを分け隔てなく扱うことができる、マザー・テレサのような人間なので、それが当然のことだと思っていた。

だから、義兄の次男の面倒も見た。
この次男は、問題児で、学校を停学になったり家出を繰り返すという、楽しい男だった。

家出先は、ほとんど私の家。
10日間くらい我が家で過ごし、家に連れ戻されても二日もするとまた家出をしてくる、ということを十回以上繰り返す面白いやつだった。

彼は長男とは違って、私に何かを買って、と要求することはなかったが、呆れるほどメシを食って、飽きるほどゲームをして私の家で暮らした。
そして、たまに私がお小遣いを上げると、泣く真似をして受け取る可愛い奴だった。

それに対して、三男は、長男と次男が我が家と密接な関係にありすぎるのを嫌ったのか、あるいは、遠慮したのか、あまり我が家に近づこうとはしなかった。

ただ、正月には、必ず笑みを浮かべて訪問してきた。
それが何を意味しているかは、賢明な方なら、お分かりかと思う。

この三バカ兄弟は、今はみな仕事を持ち、長男、次男は結婚して子どももできた。

めでたいことである。

私は、当然のことながら、それを喜んだ。

しかし、我がヨメは、お怒りである。
「なんだ、あいつら! あんなに私に世話になったのに、私の子どもにお年玉もお小遣いも一回もくれたことないじゃないか! 恩知らずが!」

と、上品な言葉で、いつも彼らを褒めている。

そして、彼らから一度もお年玉を貰う恩恵を受けなかった高校2年の娘も、それに同調して言う。
「そうだ! 恩知らずめ! 犬だって、三日飼えば恩を忘れないって言うぞ! おまえらは、犬以下か! 地獄に落ちろ!」

実に美しい言葉だ。


私が、彼らの面倒を見たのは、彼らを可愛い存在だと思ったからだ。

そして、それ以上に、彼らの面倒を見ることによって、自分が気持ちよくなりたかったからだ。

おそらく、いい大人、話のわかる大人だと彼らに思われたかったのだと思う。

その目的は達成されて、私は気分よく、いい大人の振りができたから、そのことに関しては、ほとんど不満はなかった。


義兄の長男、次男の結婚式に呼ばれなかったことを、ヨメは美しい言葉で罵っていたが、私は結婚式に出てまで「いい大人の振り」をするのは面倒なので、むしろ有難いと思ったほどだ。

呼ばれはしなかったが、お祝いだけは贈った。
ヨメは、「呼ばれてもいないのに、お祝いを贈るなんて、あいつらなら、皮肉としか取らないわよ」と彼らを最大限に褒めたが、お祝いを贈るという行為は、私にとって気持ちのいいものだったので、ヨメの反対を押し切って、贈った。

もちろん、お礼の返事は返ってこなかった。

それでいい、と思った。


数年前のことだが、義母を引き取ることになったとき、ヨメのファミリーから感謝の言葉が聞けることはないだろう、と私は思っていた。
冷淡なままでいい、とさえ思った。

しかし、義兄の奥さんだけは、「申し訳ないけど」と言ってくれた。

それを聞いたとき、なぜかわからないが、私はものすごく居心地の悪さを感じた。
違和感があった。

私の心に、気持ち悪さだけが残った。

何故だろう。

マザー・テレサも、人から褒められることを望んでいなかったから?

いや、おそらく私が偽善者だからだろう。

偽善者は、人から感謝されると、居心地の悪さを感じるものらしい。
(後ろめたさがあるから)


そんな偽善者と義兄ファミリーとの繋がりが、薄くなりかけた日(もともと薄いが)。

今週の月曜日のことだが、義兄の長男から電話があった。
そして、昨日の金曜日に義兄の次男から電話があった。

内容は、ほぼ同じだった。

「すみませんが、お金を貸してくれませんか」

偽善者は、いつも通り、いい大人の振りをして、どうしたんだ? と聞いた。

返ってきた答えは、二人とも同じだった。

「失業してしまって・・・」


ざまあみろ、などという気品あふれる言葉を、私は使わない。

その代わりに、私は、こんなことを聞いた。


で・・・いま、体重は、何キロだ?


「え? 73キロ・・・かな?」(長男)
「75〜6キロ?」(次男)


悪いな、俺は、54.8キロだ。

電話を切った。


こんな私は、冷酷すぎる男だろうか。





おまえらなあ!

俺の姉が死んだことを知ってるんだから、最初にまずお悔やみを言えよ。

金の話は、そのあとだろうが!



まったく・・・・・おまえらの親の顔が見たいよ!

(男マザー・テレサの心の声)



2013/03/23 AM 07:43:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

真面目で面白い話
先月の姉の葬儀の日は、杉並の建設会社の社長と打ち合わせをする予定を組んでいた。

しかし、さすがに、この日の打ち合わせは無理なので1日延期して欲しい、と電話でお願いをした。

社長は、ぶっきらぼうに、ただ「わかった」とだけ答えた。

約束に関しては、自分に対しても他人に対しても厳しい人だから、約束を破ったということで怒ったのかもしれないと思った。

次の日の午後、約束の時間に会社に行った。
まずは、とにかく約束を違えたことを謝ろうと思った。

そんな決意を胸に秘めて、社長の前に出て頭を下げようとしたときのことだ。
社長が、滅多に人には見せないであろう悲しみをたたえた沈痛な面持ちで、「何と言っていいか・・・・・うまく言えないんだけどよお」と言って、頭を下げたのである。

面食らった。
まさか、そんな顔をして頭を下げられるとは、思っていなかった。

そして、こうも言ったのだ。
「もっと延ばしてもよかったんだぜ。これから、やることは、いっぱいあるだろうよ。俺んところは、チラシの1回くらい飛ばしたって、別にいいからよ。どうせ、頼むのはあんたのところしかないんだから、俺は、あんたの体が空くまで、待ったって構わなかったんだ」

その言葉を聞いて、こみ上げてくるものがあった。
しかし、よそ様の会社で目から水が出る姿を見せるわけにいかない。

それは、醜態だ。

だから、私は、「ありがとうございます」と小さな声で答え、うつむいた。

目から水が出るのを懸命にこらえた。

そんな私の姿を見た社長は、「ああ、悪いな。朝から腹を壊しちまってよお。トイレ行ってくるわ。俺のクソは長いから、まあソファに座って、休んでてくんな」と言って、トイレに駆け込んだ。

おそらく、気を使ったのだと思う。

感謝と申し訳なさと安堵と。

ソファに座って、うつむいている私に、事務員さんがコーヒーを運んできてくれた。
聞くところによると、この会社でコーヒーを飲む習慣の人はいないという。
社員は、百パーセント日本茶。

客には、少し高価なお茶を振舞うという。

しかし、私の場合は、アルコール以外はホットコーヒーしか飲まない、という迷惑な習慣を持っていた。
3年前に、この会社の仕事をし始めたとき、相手は当然それを知らないから、私の前には毎回お茶が出された。

だが、私は飲まない。
(相手に気を使って飲む、ということが私にはできないのだ。飲みたくないものは飲まない)

最初は、遠慮して飲まないのかと思ったらしいが、数ヶ月した頃、社長が「茶、嫌いなのか」と突然聞いてきた。
いつも茶を残すことに気づいていたらしいのだ。

すみません、私はホットコーヒーしか飲まないんですよ、と答えた。

「生意気な野郎だ」と怒られるかと思ったら、「なんだよ、早く言えよ。俺んところは、誰もコーヒー飲まないからよ。気がつかなかったぜ。じゃあ、缶コーヒー、買ってこさせようか」と言われた。

いや、オレ、缶コーヒーもダメなんですよ。

今度こそ怒られるかと思ったが、「こだわりってやつかい?」と、社長はでかい顔を近づけて、「おもしれえな」と、笑いながら私を指差した。
そして、事務員さんに、「悪いが、コーヒーを買ってきてくれるか」。
そう言いながら、私に向かって、「豆がいいのかい? それともインスタントでもオーケーかい?」と聞いた。

豆だったら、それなりの機具が必要になる。
それでは申し訳なさ過ぎるので、インスタントを、と答えた。

それ以来、私にだけコーヒーが振舞われることになった。

そのインスタントコーヒーの入ったカップを私の前に置きながら、事務員さんが、納得いかない顔を浮かべた。
「不思議なんですよねえ。なんで社長は、社員や業者に対する態度とMさんに対する態度が、極端に違うんでしょうねえ。昨日なんか、取引先の銀行さん相手に、怒鳴り散らしていましたよ。感じのいい行員さんなんですけどねえ」

そんなことを言われても、私にわかるわけがない。

ただ私は、昔から「怒りがいのない男」とは言われてきた。
子どものときから、そうだった。

怒られると、一応口先だけで謝りはするが、目は相手を睨んでいた。
先生や先輩、近所の大人たち。
誰に対してもそうだった。

己の感情を爆発させたいためだけに、相手が理不尽に怒ってきたことがわかった場合は、謝ることもしない。
睨むだけである。
そして、黙る。
いつまでも黙る。

そんな風に、今も昔も気持ち悪いくらい、不気味な男。

要するに、可愛げがない。

当然のことながら、そんな性格破綻者のことを理解してくれる人は、1パーセント以下しかいない。

だから、理解者が少ない。

しかし、不思議なことに、一度私の性格を把握してくれた人で、心の広い人は、私のことを気に入ってくれるらしいのだ。


おそらく、社長も、そんな理解者の一人なんだと思う。

などということを事務員さんに言っても、伝わらないだろうから、まあ、似た者同士だからじゃないですかね、と答えた。
すると、事務員さんに、「またまたぁ、全然似ていませんよ! ぜ〜〜んぜん、似てない!」と断定された。


苦笑いしながらコーヒーを飲んだら、目から水が出る気配はなくなった。

その後、トイレから出てきた社長と打ち合わせを1時間と少し。
「まあ、細かいところは、いつもどおり任せるからよ。何だかんだで遅れそうになったら、遠慮なく言ってくれよな」

頭を下げて、立ち上がろうとしたとき、私のテーブルの前に、封筒が置かれた。

香典。

「失礼かとも思ったけどよ・・・・・何ができるって言ったら・・・俺にできることは、これくらいしか思いつかないんだよな。失礼を承知で出すんだが・・・・・受け取ってくれるか」

また、目から水が出そうになった。

自分の顔が歪んでいくのが、自分でもわかった。

しかし、そんな私に、社長は、でかい屁をかましたのである。

「ああ、悪い悪い。ダメだわ、今日は本当に腹が腐ってるぜ。またクソしてくるから・・・・・・悪いな」
ケツを押さえて、トイレに駆け込んでいった。

笑うしかなかった。

笑いながら泣いた。

その姿を事務員さんに見られたが、事務員さんも泣いていた。


少し嬉しい一日だった。





真面目な話は疲れるので、おまけで、またまた面白い人の話を。

晩メシを作っていた。
鉄火丼だ。

当然のことながら、プロの職人さんには負けるが、マグロを薄く切り花びらの形にあしらってメシの上に盛り、その周りに万能ネギを散らして、さらにその上に刻みノリを盛大に振りかけた見栄えのいい鉄火丼だ。

それを見た我がヨメが言ったのである。
「あら、今日はネギだけなのぉ!」
さて・・・・・どういうことだろう?
万能ネギは使っているが、刻みノリに隠れて、おそらくその存在は見えないはずだ。

このあと、茶碗蒸しとホタテの貝柱、アサリのむき身を使った潮汁を作る予定だが、これにネギは使わない。
つまり、キッチンのどこにもネギは存在しない。

それなのになぜ、「あら、今日はネギだけなのぉ!」となるのだろうか。

理解に苦しむ。

その理由を聞いてもいいのだが、どうせ「だってネギに見えたんだから!」という答えが帰ってくるに決まっている。

マグロの赤身がネギに見える人って、この世界にいるんですかね。
(ちなみにヨメは、色盲ではないし、極端に目が悪いわけでもない)


同じ日のことだ。
CS放送で、小栗旬さん、長澤まさみさん主演の「岳-ガク-」を見ていた。
遭難のシーンだった。

それを風呂上がりに通りかかったヨメが見て、言ったのだ。
「あらぁ、ソフトバンクのお父さん、映画にも出ているの?」

もちろん、出ていない。

それどころか、画面に救助犬さえも出ていない。
しかし、ヨメは映画のワンシーンを見て、「ソフトバンクのお父さん、映画にも出ているの?」と言うのである。

いったい、何を間違えた?

遭難シーン、イコール、救助犬という概念があるからか。

あるいは、「南極物語」と間違えたか。

タロ・・・・・ジロ・・・・・お父さん?

断言するが、その画面には犬は出ていないのだ。


理由を聞けばいいのだろうが、ここまで来ると、私には、とても理由を聞く勇気が出てこなかった。






2013/03/18 AM 05:54:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

完全なるクレーマー
どうしようもなく心のこもっていない人というのがいる。

だから、私は感情を爆発させてしまったのだ。


米寿の老人の一人暮らし。

軽い認知症があるとは言え、私は、母の環境について最善の注意を払っているつもりだった。

しかし、一応おとなのマナーとして、ご近所に挨拶回りに行かなければいけないと思った。

そこで、母の住むマンションの自治会長さんに、真っ先に挨拶に伺った。

その一部始終を(私の無様なうろたえぶりも含めて)正確に記したいと思う。


自治会長さんは、50歳前後の女性。
他からの情報だが、夫婦で会計士事務所を経営しているらしい。
二人とも公認会計士。

要するに、成功者、と言っていい部類の人だ。

その成功者である自治会長さんが、私の顔を見ていきなり言う。

「お母さんを引き取るんですよね! 老人の一人暮らしは危険ですからね。他にも大きな迷惑を及ぼしますから! で、いつ引き取るんですか!」

想定外の言い分である。

「迷惑!」と強い口調で言われるとは思ってもみなかった。
まったくの初対面の人に。

少し腹が立ったが、説明すればわかってもらえると思ったので、母親の現状を詳しく語った。

認知症と診断(要支援1)されはしたが、自分の名前や生年月日、住所、電話番号、そして今日の日付などは、間違えずに言える(本当は、日付をたまに間違えるときがある)。
足は、歩くスピードはかなり遅いが、杖なしで300メートル離れた主治医のところに、2週間に1回薬を自分でもらいに行っているから、歩行困難というほどではない

電話をかけたり、取ったりも普通にできる。
だが、念のため、緊急通報システム用として、ケアセンターに繋がるペンダントを持たせるつもりなので、急に具合が悪くなった場合の対応は、そちらの方でしてもらえる。

携帯電話は、見守りphoneというのを持たせて、私のiPhoneとケアセンター、主治医の携帯電話に繋がるように設定してある。
母の和室にWEBカメラを設置し、私のパソコンから様子を見られるようにもしてある。

買い物と洗濯は、ヘルパーさんにお願いしているが、料理と掃除は自分でできる。
布団の上げ下げは力がいるので、ヘルパーさんにお願いしている。

行動範囲は健常な人よりは、かなり狭いが、日常生活に支障はない。
肺に持病を持っているが、ここ3年近くは、平衡を保っている。
耳が少し遠くなってきたが、大きな声で話せば、内容は全てではないが理解できる。

今は、本人が一人暮らしを望んでいるので、無理に同居を強いるのは、主体性を奪うことになるので、したくない。

・・・・・そんなことを説明した。


しかし、相手は、途中から聞く耳を持たぬという態度で、顔は完全に横を向いて、壁のシミの数を数えているような無関心な空気感を醸し出していた。

そして、横目で私の方を睨むように見て、「それって、あなたが、そう思いたいだけなんでしょ!」と言ったのである。
さらに続けて、「老人に、万全はないの! 万全というのはね! 息子のあなたが、引き取って面倒見ることなのよ! 私の言っていること、わかる?」と子ども扱いだ。

私は、おそらく自治会長さんより年上である。
なんたって、ホネホネ白髪おやじですから。

しかし、そんなことはお構いなしに、会計士でもあられる自治会長さんは、「親を引き取るのが、そんなに嫌なの?」とまで強い口調で、おっしゃるのだ。

すさまじい攻撃力だ。

会計士より検事の方が向いているのではないだろうか。

防戦一方の私は、心の準備が出来ていなかったせいか、咄嗟に言葉を返すことができなかった。
大型動物に追い詰められた小動物という状態だった。

そんな反論できない私を見て、自治会長さんは、勝ち誇ったように「親が年を取ったら、子供が面倒を見る。それが人としての道理だと思わない? 88歳の一人暮らしなんて、姥捨て山より悪質よ。お母さんを見捨てる気なの? あなた!」と畳み掛ける。


私が今この手に、畳針と畳糸を持っていたら、私は彼女の口を縫っていただろう。

地団駄を踏むほど、私は追い詰められていた。
(彼女の言うことにも一理あるとわかっているから、私は引け目を感じていたのだと思う)

しかし・・・・・いくらなんでも言い方というのが、あるのではないだろうか。
初対面の年上の男に向かって、言いたい放題。

マナーもなにも、ありゃしない。


そう、私は、そのとき、マナーというのを考えてしまったのだ。

普通、まともな大人なら、人ひとりが亡くなったら、まずお悔やみの言葉を述べるのが礼儀ではないだろうか。
私だったら、まず真っ先にお悔やみを言う。

しかし、自治会長さんの口からは、罵倒する言葉は聞こえたが、姉に対するお悔やみは最後まで聞くことはできなかった。

この人は、客には優しい言葉を使っても、金にならない人にマナーを使うのは勿体無いと思う人種なのかもしれない(偏見ですが)。


ここから、私の性格の悪さが出るのであるが、私は、自治会長さんに聞いてみたのである。

あなたのご両親は健在ですか。

私の問いに、自治会長さんは、あからさまに渋面を作って、投げやりに言った。
「私の両親はもう他界してます。しかし、夫の両親は健在です」

それが、何か? という風に顎を少し上げて、私を睨んだ。

ご主人は、長男さんですか。

「そうですけど」

では、もしご両親のどちらかが亡くなったら、親を引き取る予定なんですよね。

私の問いかけに対して、自治会長さんは目を細め、警戒するように間を空け、息を大きく吸った。
そして、言った。

「何ですか! そんな立ち入ったことを聞いて・・・失礼だと思わないの・・・あなた!」

もちろん、失礼だと思っています。
しかし、あなたは、その立ち入ったことを、失礼なことを、私にさっき言ったんですよ。
もう、忘れてしまいましたか。

自治会長さんの口が、O(オー)の形になって、固まった。

そして、顔を赤くして眉を吊り上げ「なに言ってるの! 全然意味が違うじゃない! 馬鹿にしてんの!」と言いながら、勢いよくドアを閉めたのである。
素早すぎるほどの幕引きであった。


私の目の前には、木目調のドアが、すべてを拒絶するように無表情に立ちはだかっていた。

もし私が、ダーティハリー師匠から譲り受けた44マグナムをこの右手に持っていたら、ドアに向かって最低2発は噴射していたに違いない。


Go Ahead. Make My Day.
(やってみろよ。俺をワクワクさせてくれ)


つまり、礼儀として訪問したことが、結果的に無礼になってしまったというお粗末な結末。

自分にも非があることは、わかっているし、筋違いの言い分だということもわかっているが、私は、マンションの管理会社に、事の一部始終を報告してしまったのである。


完全なるクレーマー。


だって、オレ、それくらい腹が立ったんだもん!


しかし、私のクレームに関して、管理会社は、冷静だった。

「当方では、個人の生活状況に関しては、たとえご高齢ではあっても立ち入らないことにしておりますので、悪しからず」だってさ。


まあ・・・・・そうですよね。

責任は持ちたくないですもんね。

要するに、自治会長さんも、責任は取りたくない、ということを言いたかったんでしょう。

金にならないお悔やみを言うより、とにかく責任放棄。

それを宣言したかったのでしょう。



ハイ、わかってますよ。

何があったとしても、責任は、すべて俺にあります。


私は大人ですから・・・・・大人のクレーマーなんですから。



2013/03/14 AM 05:52:55 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

アレ・・・・・は疲れる
期待しない方が、いい場合もある、というお話をまず。

姉の初七日に、花を盛大に飾ろうか、という話をしていたとき、花屋でパートをしているヨメが、「私が作る」と言ってくれた。

しかし、初七日当日、パートから帰ってきたヨメが私の顔を見て言ったのだ。
「あーっ、花束を持って帰るの忘れた。せっかく作ったのに、店に置いてきたァ!」

この展開は、予想しておくべきだった。
50パーセント期待していた私がバカだった。

「でも、二七日の日も行くよね。そのときは絶対に作ってくるから!」

しかし、当日・・・「忘れたァ! 店に置いてきたァ! ガハハハハ!」

このときは、98.9パーセント期待していなかったので、落胆はなかった。

ただ、残り1.1パーセントを信じた俺は、相当な人格者だと自分でも思っている。
自分を、愛おしいやつだと思っている。


他にも、ヨメは、むかし頻繁に財布を失くすという楽しいことをした。

たとえば我々が財布を落としたとき、ヨメは容赦ないほど「どうすんのよ!」と罵声を浴びせかけるのだが、自分が落としたときは、「落としちゃった、ガハハハハ」と笑って済ます、愛すべき性格をしている。

だが、ヨメが財布を落としたときは、我々とは比べ物にならないくらい損害が大きくなるので、ある日私は、これからは小銭入れを使うことにしようよ、と提案した。

ヨメは、珍しくその提案を素直に受け入れて、財布はバッグにしまったまま、必要な金額だけを小銭入れに移動して、支払いを済ますという合理的な方法を選んだ。

しかし、その小銭入れもヨメは失くすのだ。

2日前も失くして、「でも、700円しか入っていなかったし、ガハハハハ」と笑ったが、そんな問題ではない。
この2年間に6回小銭入れを失くしているのだ。

もっと反省していただきたい。

う〜〜〜〜〜〜〜ん、無理・・・・・かなぁ。


面白い話は、まだある。

ヨメは週に4日、朝早く花屋のパートに出かけている。
水曜、金曜、日曜日が休み。

その水曜、金曜の昼、ヨメはお友だちとランチに行く習慣がある。

水曜の朝、ヨメが「ホシさんとお昼ご飯食べるんだぁ。美味しいお蕎麦屋さんをホシさんが見つけたらしいの。1時の約束なの」と、こちらが聞きもしないのに言った。

まあ、うまいランチを食ってきてくださいよ。

そう思いながら、私は仕事をしていた。

そして、1時前、腹が減ったので、カキフライとサーモンフライ、マイタケのフライをドンブリメシに溢れ出るほどに盛った昼メシを食おうとしていたときだ。
階下から、音が聞こえた。

そのとき、私は、ああ・・・・・アレだな、と思った。

念のため、階下に降りていくと、ヨメが意味不明の鼻歌を歌いながら、腰をブリブリ動かしているところだった。
念のため、お友だちとのランチの約束は? と聞いてみた。

すると、「あっ! 今日は、私、休みの日だったよね。確か、ホシさんと約束していたよね」と、ブリブリしながら言うのである。

1時にランチ、と私は言った。

「ああ! 行かなくちゃ、行かなくっちゃ!」

時刻は、すでに1時4分になっていた。
常識的に考えて、遅刻ですわな。

しかし、それほど慌てることなく、ヨメが支度を始める。

私の場合、着ていく服が季節ごとに一着しかないので、迷うことはない。
だから、1分で出かけることができる。

高校2年の娘は、出かけるとき、前の日から準備しているから2分で出かけることができる。

しかし、ヨメが、その日、家を出たのは2時過ぎ。
大幅な遅刻である。

果たして人は、1時間以上の遅刻を寛大に赦してくれるものだろうか。
(そもそも、その時間に蕎麦屋が店を開けているかどうか)

結末を聞いていないので、その謎は、いまだに謎のままだ。


さらに、面白い話は続く。

これは昨日の話である。

姉が死んで、私の実家は、米寿の母の一人暮らしということになった。

これは、不便なことだと思う。

だから、私は川崎市が提供する、一人暮らしの老人用「緊急予報ペンダント」を申し込もうと思った。
これがあれば、本人が突然の不調に陥ったとき、ボタンを押すだけで各機関に助けを呼ぶことができる。
たいへん、便利なシステムだと思った。

別に相談しなくてもいいのだが、このことを、なぜか私はヨメに相談してしまったのだ。

「緊急予報ペンダント」を申し込もうと・・・・・(このあとに大事な話を続けようとしたのだが)。

言ったあとに、シマッタ! と思った。

ヨメは、いつものように、私の話を最後まで聞かず、自分の知人の今年77歳になる一人暮らしのオオシマさんが同じようなものを持っていて、結局2年以上その機能を使うことをせず、今では薬箱の中に入れたままで、まったく役に立っていないことを15分以上かけて語ったのである。

「無駄だと思うわよ、私は・・・・・だって、オオシマさんが使っていないんだもん!」

77歳と88歳では、緊急性の密度が違うと思うのだが、ヨメは、そんなことは斟酌することなく、1つのサンプルを基準に「ムダ!」と言い切るのだ。

結局、いつも通り、私の話は途中で遮られ、ヨメの主張だけが時間を占領し、私は尻切れトンボの会話を自分から終わらせるしかなかった。

私は強く確信した。
私は、これからもきっと、自分の主張を最後まで言わせてもらえずに、18文字程度の最初の言葉だけを空中に霧散させたまま、口が貝になってしまうに違いない。

どうせ貝になるなら、世界で一番大きいと言われる「オオシャコガイ」になりたいものだが・・・。


最後に、漫画のような、コントのようなお話を。

今朝のことである。

土曜日は、子どもたちは休みであるが、ヨメはパートの日だ。

「あーあ、明日は私だけが仕事かあ。働く女はつらいわよねえ〜」というお決まりの言葉を、ほとんど年中休みなく働いている私に向かって金曜日の夜に言うのが、ヨメがパートをし始めたこの7年間の我が家の決まりごとになっていた。
(おそらく、大変だね〜、と言って欲しいのだと思う。このことに関して、あまり自信はないのだが、私は、俺の方が大変なのではないか、と密かに思っている)

朝4時半に起きて、ヨメの朝メシを作る。
花屋の朝は早いので、ヨメは5時25分頃家を出る。

平日朝の私は、ヨメを送り出し、高校2年の娘を送り出し、大学4年の息子を送り出す。
その姿を見ている近所のヒマ人が、「ああ、あの家のご主人は、きっとプータロウね」と、ほとんど確信的な口調で、噂をばら撒くから、私は一躍「プータロウ伝説」の人になった。

まあ、今さら、どうでもいいことだが。


平日はそのまま仕事だが、ヨメを送り出したあとの土曜日だけは、私はもう一度眠ることにしていた。

1時間程度の睡眠だが、この1時間は貴重である。
これを取るのと取らないのとでは、週末の疲労感が確実に違う。

チャーシューメンに、3枚のチャーシューが乗っかっているのと、6枚のチャーシューが乗っかっているくらいの違いがある。

だから、その日もすぐに目をつぶった。
私の場合、目をつぶると5秒以内に眠りが訪れるという、気象庁の桜の開花予想より遥かに正確な現象が、否が応でも出現する。

眠った。
すぐに眠った。

しかし、63パーセント眠りの世界に浸っていた私の耳に聞こえてきたのは、斉藤和義の「罪な奴」。

私は、仕事先からの呼び出し音はQUEENの「We will Rock You」にしているのだが、家族からのコールは、「罪な奴」にしているのである。

OH! 泣くんじゃない!
そうは言っても、オギャー、オギャー!
OH! 泣くんじゃない!
それが仕事さ、オギャー、オギャー!

夢うつつの中で、娘は休み、息子も休み、だということを考えた。

そうすると、この電話は、アレ・・・だな、と寝ぼけながらも思った。

覚醒度65パーセントの中で、iPhoneを手にとった。

そして、聞こえてきた声。

「ねえ! 私、携帯、忘れてこなかったぁ!」


やはり・・・・・アレ、だった。


覚醒度65.1パーセントの中で、私はiPhoneに向かって言った。

聞きたいんだけど・・・今、何を使って、電話をかけているのかな?

すると、ヨメは「ああ、そっかぁ」と言って、すぐにプツン!


おそらく、中央線武蔵境駅から立川駅までの間で、ヨメは寝てしまったのだろう。
そして、携帯電話を置いてきた夢を見た。

そこで、焦って、私のiPhoneに電話をしてきた。

自分の携帯で・・・・・。


いつものこととは言え、面白すぎる。

だから、そのあまりの漫画的な面白さに、覚醒度100パーセントになった私は、眠るのを諦めた。

眠るのがもったいなくなって、今このブログを書いている。


実に、面白い。




ただ、アレは面白いが、アレ・・・・・・は、たいへんに疲れることだけは、世界中の皆様方に、アレして、わかっていただきたいと思う。


2013/03/09 AM 07:02:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

1日5食でリベンジ
なーんだ、結局、食い物だったのかぁ〜、というお話を。


昨年の7月に、ポニーテール・ランニング女性と知り合ったことを、このブログに書いた。

彼女は、中学3年間を陸上の中距離選手として過ごしたが、高校に入って陸上部の上下関係に馴染めず、走るのをやめた。
そして、約6年ぶりにランニングを再開したばかりの7月に、横浜根岸森林公園で、ホネホネ白髪おやじと出会ったのである。

細かい経緯に関しては、今までのブログと重複するので、省略。


実は、私は、昨年の9月から、ずーーーーーっと、屈辱感を胸に秘めて生活をしていた。

昨年の9月、ポニーテールさんと根岸森林公園でランニングをした。
5.2キロ。

ありえないことに、私はポニーテールさんに負けてしまったのである。

5.2キロを23分で走ったポニーテールさんに、ついていけなかったのだ。

嘘だろう、と思った。

21分で走ったとしても、余裕でついていける距離である。

ポニーテールさんと私は30歳以上年が離れているが、キャリアが決定的に違う。
私が昔、短距離を得意にしていたとしても、最近のメインは10キロ前後の長距離だ。

しかも、調子が良ければ、15キロくらいまでなら、私は5キロ20分半くらいのペースで走ることができる。
それに対して、ポニーテールさんは、5キロ22分20秒が、いっぱいいっぱいだと言うのだ。

百パーセント負けるなんてことはない。
そう確信していた。

しかし、負けた。

その現実に直面して、私は、絶望的なほど落ち込んだ。

それからの日々、奈落の底に落ち込みながら、私は、その負けた原因を絶えず探求していた。

そして、ひとつの結論を得るに至ったのである。


要するに、「ガス欠」だったのではないか・・・・・と。


このブログで何度か書いたが、昨年の7月から9月の私は、独立して初めてと言える忙しさを体験した。

眠る時間がない。
メシを食う時間もない。

そして、私は根本的に、メシを食う時間があったら、10分でもいいから眠っていたい、と思う男である。
食うことに興味がない。
メシを食わないで済むなら、一生食わなくても我慢できる男だ。

グルメ?
行列ができる店?

ケッ!

・・・という男である。

そんな私だから、7月から9月にかけて、決定的に栄養が足りていなかった。

180センチの私は、基礎代謝が高いこともあり、一日2400キロカロリーを必要とすると言われていた。
しかし、その頃の私は、おそらく一日1000キロカロリー程度しか摂っていなかったと思う。

要するに、栄養失調。
その体で走るのは、無謀というものだ。
5.2キロだったから良かったが、20キロ走っていたら、死んでいたかもしれない。

危ないところだった。
死ななくてよかった。

そんな危機感に直面した私は、突然、栄養の重要性に目覚めたのである。
食うことは嫌いだが、それを避けて通ったら、私の体重は、53.4キロのままで朽ち果ててしまうだろう。

そう。
180センチ、53.4キロ。

気がついたら、私は、そんな情けない体になってしまっていたのだ。
私は、自分の体を鏡に映して見るという気色悪い趣味はないので、自分がどんな体をしているのか、知らない。

しかし、相当気持ち悪いことになっているだろう、ということは想像できる。

だから、食おう、と思った。


食う、ということの重要性。
生まれて初めて、そのことに気づいた。

それからの私は、朝、娘の弁当を作りながら、握り飯を食い、そのあとの朝食はドンブリメシと具だくさん味噌汁。
昼は、家では揚げ物がメインのおかずにドンブリメシ。
外食の場合は、大盛りカレーか立ち食い蕎麦屋で、かき揚げそばに海老天をトッピング、握りメシ1個。
夜は、以前は料理をしながら適当につまみ食いをしただけで満足だったが、今は家族と同じものを食うことにしている。
そして、夜食は餅(磯辺巻き)か、お稲荷さん、あるいはコロッケを食って寝る。

つまり、一日5食。

炭水化物がメインだが、動物性タンパク質と植物性タンパク質も効果的に摂っている。

豚肉の生姜焼きや豚ヒレのステーキ。
豆腐ステーキや豆腐ハンバーグなど。

ただ、私は、胃下垂なので燃費が非常に悪い。
食ったものが消化されずに、ほとんど出てしまうのである。

しかし、出てしまうからといって、何も食べなければ、エネルギーを供給することはできない。
だから、食べまくった。

姉が死んだ日は食わなかったが、次の日は、それを取り戻すように、1日6回食った。
自分でも呆れるほど、私には冷たい血しか流れていないようだ。

先日の初七日には、姉の仏壇の前に雛飾りを出して、室内を桃の花と氷結(チューハイ)で埋めつくしてやったぜ〜〜。
その前で、桃の花に囲まれて、オリジン弁当の「ミックスフライめんたい弁当」を食ってやったぜ〜〜。
非常識だろ〜〜〜(もう古い?)。


体重は、まだそれほど増えていないが、以前よりは、体に力が漲ってきた感覚はある。

今なら・・・・・今なら、絶対にポニーテールさんに勝てる。

そう思った私は、ポニーテールさんに、挑戦状を叩きつけた。

小金井公園で10キロの勝負。
もし、この勝負を逃げたら、親代わりの特権として、彼氏と付き合うことを禁止する。

いざ、勝負!


「べつに・・・・・いいけどぉ・・・・・」


軽くあしらわれた。

そ、その・・・・・いいけどぉ、は、勝負してもいい、という意味か、それとも彼氏と別れてもいいという意味か。

「キリンおやじ、アホか! 勝負に、決まってるだろうがあ!」

はい、スミマセン。
怒らないでください。
(最近、ずっと強気のタメグチですよ。女は怖い)


決戦当日、姿を見せたポニーテールさんの後ろには、彼氏の姿が。

「車で送ってもらったんだ。川崎から小金井公園は、遠いからね」
後ろで、好青年顔の彼氏が、腰を90度に折って挨拶をしていた。

相変わらず、いいやつだな、おまえ。

などという儀式のあと、お互い簡単なウォーミングアップをして、走り始めた。

「キリンおやじ、死ぬなよ」

ヘッ! 俺は、5ヶ月前の俺ではないのだよ。
今の俺は、エネルギー満タンさ。
エンジンもボディも生まれ変わったんだぜ。

廃車寸前の軽自動車からチューンナップしたフェアレディZに変身したんだよ。

負けるわけがない。

最初の5キロは、ポニーテールさんのペースに合わせて23分程度で走ったが、そこからはエンジン全開。
後半の5キロは、19分40秒で走りきった。

ポニーテールさんは、頑張っても22分20秒前後。
最後は500m以上の差をつけて、圧勝だった。

ど〜〜〜〜んな、もんだい!

胸を張ってポニーテールさんの到着を待っていたら、ポニーテールさんは、私の存在を完全に無視して、彼氏の胸に飛び込んだ。

それを優しく受け止める彼氏。

な〜〜〜んて、美しい光景でしょう。

ケッ!

俺の完全なる勝利が、見事に霞んでしまったではないか。
おかしいなあ・・・・・もっと嬉しいはずだと思ったのに、あんまり嬉しくないぞ。

なんでだ!

俺・・・・・勝ったんだよな。
ウィンナーだよな(ウイナー?)。

主人公だよな。

なんか・・・・・存在感が薄くないか?

そんな風に、勝利の意味を探していたとき、ポニーテールさんが彼氏に体を預けたまま言った。

「キリンおやじ。さあ、帰ろうか。車、乗ってくだろ?」

くるまぁ! そんな軟弱なことができるか!

俺は、いつも走って帰ることにしているんだよ。
俺のことはいいから、二人で仲良く帰りなさい。
(大人の対応)

「いえ、キリンおやじさん」と、彼氏。

(おまえに、キリンおやじ、と言われる筋合いはねえ!)

「キリンおやじさんが、串揚げが好きだというので、新宿の串揚げ屋を予約してあるんですが、行かないんですか?」

「そうだよ、行くだろ、キリンおやじ!」



はい! 

もちろん、行くに決まっているでゴザイマス。


最近の俺は、食い物に・・・・・弱い。




2013/03/04 AM 05:55:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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