Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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ブログ作法(ネタばらし)
私のルール。


ブログを書くときに、決めていること。

たとえば、私が、稲城市の同業者、と書くとき、彼のことを私は知っているが、皆さんは知らない。
これは、人物を特定化されて、彼に迷惑がかかるのを防ぐため、名前は記さず、稲城市の同業者、と書いているのである。

大学時代の友人は、身体的特徴で表現する。

ハゲ、出っ歯、カツラなど(幼稚な表現だが、一番わかりやすいと思うので)。

京橋のウチダ氏は、俳優の坂口憲二氏からワイルドさを取ったイケメン、と表現することが多いが、これはウチダ氏が、本当に坂口憲二氏に似ているからというわけではない。
本当に似ていたら、知っている人が見たら、ウチダ氏のことを特定できて困る。
彼に迷惑がかかる。

この場合、私の基準では、坂口憲二氏からワイルドさを取ったら、究極のイケメンになると想像できるので、相当なイケメンであるウチダ氏のことを、そう表現している。

松雪泰子似の美女、というのも、彼女が松雪泰子さんに似ているから、というわけではない。
同じレベルの美女である、と表現したいので、そのように書いている。

だが、これが「極道コピーライターのススキダ」と書いた場合、ススキダは、自分の風貌が極道に見えるのを自覚していて、むしろ自分からそれを強調するファッションで身を固めているので、彼の場合は、そのままである。

彼が、人様から、「極道」と後ろ指をさされ、石をぶつけられたとしても、私には関係ないので、そのままを書いている。

同業者の「お馬さん」も、そのままである。
彼の顔を見たら、10人中11人が、「ウマ!」と思うだろうから、お馬さん、と呼ぶ。
どうせ家に引きこもって仕事をするだけの男だから、人の目に触れる確率は低い。
迷惑はかからないと思う。

馬だからといって、彼にはシンボリルドルフ、ディープインパクトほどの名声はない。
世間が彼を見つけても、馬が歩いている、としか思わないだろうから、「お馬さん」でいい。
その存在が特定されても、私は困らない。

また、アホのイナバ、と書くと、どんな人物を想像するだろうか。
馬鹿っぽい男を想像するのではないか。

しかし、イナバの外見は、少しもアホに見えない。
むしろ、端正な顔立ちをしていると言ってもいい。
ホテルのフロントに立っていても何の違和感もないほど、彼の外見は「まとも」に見える。

だが、話すと一般常識を知らず、敬語が使えないから、私にとって、彼は「アホ」なのである。
それなのに、外見は、至ってまとも。
だから、「アホのイナバ」と書くと、世間の方が、彼のことを特定することが難しくなる。
そこを狙っている。


たとえば、このブログでは、知人の名前を片仮名で書くことが多い。
これは、茶化した内容の話を書くとき、相手が特定されないように、気を使って、そうしているのである。

天才WEBデザイナーのタカダ君、と書くと、彼を知っている人が、それを特定する確率は、若干だが低くなる。
たいていの場合、人は、相手のことを「漢字でイメージしている」からだ。

しかし、わかる人には、わかる。
だから、私は、さらにもう一つ、名前にセキュリティを掛けている。

実は、タカダ君の本当の苗字は、タカダではない。
「タカ●」なのである。

要するに、一文字だけ変えている。

この方式は、他の人にも使っている。

同業者のオオサワさんは、「オオ●ワ」さん、カマタさんは、「カ●マタ」さん、ニシダ君は、「●シダ」君。
大学時代の友人、オオクボは、「オ●クボ」(オギクボではありません。念のため)、桶川の得意先のフクシマさんは、「フク●マ」さん。静岡在住のチャーシューデブ・スガ君は、「●ガ」君。

こんなふうにセキュリティを掛け、私の文章が、相手に迷惑を及ぼさないようにしている。


だから、中身はノンフィクションだが、名前に関して言えば一部フィクションだ。

名前がフィクションなら、それは既にフィクションだろう、という論理をぶつけられたら、「ハイ、そうです」と答えるしかない。
言い訳は、しない。


なぜ、そんなややこしい方式を取るのか。

それは、本当のことを深刻に書いて、お叱りを受けたことがあるからだ。

実の姉のこと。
そして、義母のことを、ありのままに書いたら、ブログ経由でお叱りのメールを数多くいただいた。
(いまは、ブログ経由で来るメールのほとんどが文字化けをするので、読めないが)

「完璧な人間などいない。おまえに、お姉さんを悪く言う資格はない!」
「お姉さんも苦しんでいるんです。それをなぜわかってあげられないんですか!」
「お年寄りをもっと大事にしろ。非常識だ!」
「何があっても受け入れる覚悟があるから、おうちに引き取ったのではないですか。それなのに文句を言うなんて、人間として最低です!」
などなど・・・。

すべてのご指摘が納得のいくものだったから、私はかなり凹んだ。

俺が本心を言ったら、お叱りを受ける。
つまり、俺が、ここで本当のことを包み隠さず書くことは、非常識なことなのかもしれない。

地上から1メートル81センチ沈み込みながら、私は、そう思ったのだ。
そして、打たれ弱い私は、こう考えた。

だったら、文章にセキュリティを掛けたら、どうだろうか、と。

本当のことを深刻ぶらずに「嘘臭い表現」で書く。
自分の体験したことを、まるで他人事のように、距離を置いて表現する。

それなら、お叱りを受けることは、なくなるのではないだろうか。

本当のことを「嘘」ではなく「嘘くさく」書けば、「真実」に薄いカーテンが掛かる。

狡いとは思うが、その方式を取り始めたら、ブログを書くのが、少し楽になった。
免罪符を得たような気になった。


ただ、本当のことを「本当に」表現したくなるときが、たまにだが、私にもある。

茶化さないで、自分の感情を思いのままに、伝えたいときがある。
自分の内面と真剣に向き合いたいときがある。

それをしたい場合、俺は、どうしたらいい?

悩んで出した結論が、「小説的な表現」を使う、というものだった。

小説的な書き方をしたら、読む側は「これって、フィクションだよな」と思ってくれるかもしれない。

フィクションだと取ってくれたら、照れがなくなる。
それは、むしろ私にとって都合がいいことだ、と思った。
(実際、フィクションだと思ってくれた人が、多くいた)

さらに、気分が軽くなった。

ブログを続けることが、苦ではなくなった。
だから、今も続けていられる。


以上が、私のブログ作法。



カラクリをバラしてしまったら、興ざめで読む気がしなくなる、という人がいると思う。

それに対しては、ご免なさい、と謝るしかない。

そして、読みたい人だけが読んでくだされば、と思う。

読者が、ゼロになることはない・・・・・と思うが・・・・・。




大学時代の友人、カネコの娘、ショウコは、毎回欠かさずに私のブログを読んでくれているという。

以上のことは、そのショウコから「サトルさん。誤解されている部分もあるから、説明しておいたほうがいいよ」と言われたので、気は進まなかったが、書いた。
(私はショウコと自分の娘の言うことだけは、素直に聞くのだ)


ネタばらしをしてスッキリした部分もあるが、書かなくても良かったのでは、という思いも、まだ残っている。


まあ、しかし・・・・・書いちまったものは、仕方がない。




ところで、もうお気づきかと思いますが、カネコの娘、ショウコは、「カネ●の娘、●ョウコ」です。



ちなみに、私の名「サトル」は、本当。
漢字では、「暁」と書きます。







明日から、夏休み。

ウキウキWAKUWAKU。




2012/09/25 AM 06:08:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

オレ、営業には向かない人なんだよね
先日、友人から「お前のブログは、嘘なのか本当なのか、わからないな」と言われた。
そのことは、他の人にも幾度となく言われたことがある。

本当のことを深刻ぶって書くと照れる。
頭にウジが、わいた気分になる。

だから、嘘臭い表現を使って、物事の本質を伝える。

私には、そういう書き方しかできない。

たとえば、昨晩の出来事を「嘘臭い表現」を使って書くと、こうなる。



私が銀メダル級のビンボーなのは、私に能力がないからだ。
決して、日本の政治や社会が悪いからではない。

そのことは、4、5回このブログに書いてきた。


遅い夏休み(9月26日から)を取る前に、同業者との恒例の飲み会に出席した。
「Mさんが休みの日に会いましょうよ」と言われたが、私には休みの日に同業者に会う趣味はないので、休み前にしてもらった。
(休みの日に同業者に会ったら、仕事を思い出してしまうではないか)


場所は吉祥寺。
有名な居酒屋チェーン店。

待ち合わせ場所に行ったら、私が一番会いたくない男が、立ち上がって手を振っているのが見えた。

蜃気楼か、と思った。

それとも場所を間違えたのか。

休み前の高揚した気分が一気に冷め、回れ右をして店を出ようと、右足を後ろに引いた。
しかし、「Mさん、久しぶり!」というダミ声が、喧騒の店内に無神経にも響き渡り、周りの客の目がこちらを向いたので、私は回れ右を諦めた。

ダミ声の隣で、同業者のカマタさんが、オイデオイデをしていた。

そういえば、カマタさんは「ダミ声社長」に、仕事を出しているんだった。
その関係で、カマタさんが彼を連れてきたのだろう、と推測した。

こいつが来ていると知ったら、来なかったのに・・・。

テーブルに近づくと、「3年ぶりくらいかね」というダミ声。
そして、「元気だった? ちょっと痩せたようだが」と、含み笑いのダミ声。

こんなとき、「別に・・・」と答えられたら、俺は打たれ強い女優になっていたに違いない。
「痩せましたけど、それが何か?」と答えられたら、俺は市長になれたかもしれない。
「バカを言うんじゃない!」と威圧的な態度ができたら、知事にもなれたな・・・。

しかし、私が取った態度は、「お久しぶりです」と6.6度の角度で頭を下げるという、最も面白みのないものだった。

ダミ声に、彼の隣の席を勧められたが、聞こえないふりをして、斜め向かいに座った。
(本音を言えば、はるか離れた他のテーブルに座りたかった)

さいたま市の印刷会社社長。
よくこれほどの文句が言えるな、と呆れるほど、彼が垂れる文句は、あらゆる世界を巻き込んで、その口からは勘違いの毒舌が放たれ、彼の周囲は絶えず腐臭(独りよがりの屁理屈)にまみれていた。

埼玉にいた頃は、彼の会社の大型インクジェットプリンタを貸してもらう代わりに、パソコン音痴(無知?)の彼のために、パソコンのメンテナンスをしていた。

しかし、ダミ声は、いつもこう言うのである。

「プリンターを使うのとメンテナンスでは、全然釣り合わないよね。Mさんのが、全然オイシイじゃん!」

Mac5台すべてを年間サポート契約していたら、いくらかかるとお思いですか?
2ヶ月か3ヶ月に1回、A1サイズのプリントを1枚する代わりに、俺は毎月必ず5台のメンテナンスをしに来てるんですよ。
俺がメンテナンスをしに来て6年、一度だって、パソコンが壊れたことがありますか。
それは、メンテナンスのおかげだとは、考えないんですか?

「だって、最近のパソコンは、頑丈だから壊れないんじゃない? 俺んちの洗濯機なんか、10年以上も故障知らずだよ。メンテナンスなんか、したこともないよ。パソコンのメンテナンスなんか、本当はいらないんじゃないの?」

(愚か者! パソコンは、一日に何時間も使うだろうが! しかも、どれも化石みたいに古いMacじゃないか! 洗濯機は1日に普通は1回だ。比べる対象が違うんだよ。比較の対象が違ったら、比べる意味がないって、幼稚園で習わなかった? ・・・習うわけないか)

馬鹿馬鹿しいので、メンテナンスするのをやめたら、パソコンは途端に不調になり、泣きついてきたので、直した。
しかし、感謝の言葉は、ひとつもなし。
(他にも一人、まるで双子のように、同じ思考回路を持った印刷会社の社長を私は知っているのだが、多少なりとも恩義があるので、その人のことは書かない)

感謝の言葉の代わりに、「Mさん、プリンター使わせてやるよ」とダミ声で言われたときは、絞め殺そうかと思った。

だから、武蔵野に越してくるときも「ダミ声社長」に挨拶はせず、黙って引っ越した。
(それが、のちの災いを招くことも知らずに)

その男が、私の斜め向かいに座って、絶えず私に話しかけてくるのが、とても鬱陶しくて、私の全身は鳥肌が立ちっ放しだった。

ダミ声のために、愛想笑いはしたくないし、相槌も打ちたくない。
(ワタクシは、器の小さい男でございます)

ダミ声の横に座ったカマタさんに、「社長がどうしてもMさんに会いたいって言うから、特別に連れてきたんだよ。懐かしいでしょ」と言われたときには、絞め殺す対象が1人増えて、自分が殺し屋になった気がした。

心の中で、「別に」「それが何か?」「バカを言うんじゃ」と罵って、ジョッキを飲み干した。

ジョッキ、お代わりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ〜!

私が相手をしないので、ダミ声社長は、方向性を変えて、同業者に向かって演説を始めた。


政治、民主党、自民党、橋下新党、アメリカ、中国、韓国に対する批判、悪口、勘違いの罵倒。


その腐臭にまみれた演説に嫌気がさしたのか、ダミ声を連れてきた当のカマタさんが、「俺、腹が痛いんで、トイレに」と言って、20分以上帰ってこなかった。

おそらく、みんながトイレに立ちたかったに違いない。

そんな腐臭、毒ガス男のお相手をしたのは、同業者の中での長老、そして人間として最も器の大きいオオサワさんだった。


「はいはい」「そうですよねえ」「おっしゃるとおりです」
「鋭いことをおっしゃる」「それは気づきませんでしたな」
「そういう考え方もあるんですね」「勉強になりました」


オオサワさんが、可哀想になってきた。
(年上の方に、『可哀想』は失礼だと思ったが)

腐臭を放つ言葉の攻撃に、全員が憂鬱になって誰の顔からも表情が消えたとき、ダミ声社長お得意の「バブルの頃は良かった。外車を2台持っていたしね」というバブル自慢が始まった。

そして、「今は、バブル期の10分の1の売上ですよ」という嘆き節が続いたのである。
(3年前は、バブル期の5分の1と言っていたが、さらに沈没したということか)

「全盛期の社員の数は32人。今はたった3人ですよ。こんなに真面目に働いているのに、まったく日本の政治家は何を〜」
(3年前は6人だった社員が、3人に減りましたか。しかし、まだ3人いるのだから、それは、ある意味、奇跡と言っていい)

ダミ声社長の前に置かれた料理を見ると、ほとんどが手付かずで、梅サワーも半分以上が残っていた。
口から腐臭を放つことに懸命になりすぎて、食べるのを忘れているらしい。
その姿からは、腐臭を放つチャンスを逃してなるものかと、全身に力が入る様子が見て取れた。

「いや〜、もうこれ以上生活の程度を下げることはできませんよ。どれだけ庶民を苦しめたら気が済むんでしょうかね。政治家、役人、東京電力、大会社、マスコミは!」


その耐え難い腐臭に嫌気がさして、まだ一時間も経っていなかったが、オオサワさんが「今日は、これでお開きにしましょうか」と、誰もが考えていることを口に出してくれた。

トイレから帰ってきたカマタさんも、その提案に、すぐに同意。

みんなが、大きく頷いた。

しかし、ダミ声が勢いよく立ち上がって、「何を言ってるんですかぁ! まだ言いたいことの10パーセントも言っていませんよ。みなさんだって、そうでしょ。ここで、お開きなんて、何のために集まったのか! そうでしょ、皆さん!」と、身振り手振りを交え、ドヤ顔で叫んだ。
(おまえは、某大阪市の某橋下市長か!)

言いたいことは、ございません。
ただ、みなさんは、あなた様の話を聞きたくないだけでございます。
あなたから、逃げたいだけなんです。

しかし、場の空気を読めない人というのが、世の中には確実に存在するようだ。

ダミ声は、立ち上がったまま、「わかりましたぁ。ここは割り勘ですが、次の店では俺が奢りましょう。どこに行きますか? カラオケですか? クラブですか?」と全員を見回して言ったのである。

全員の顔には、「お前がいないなら、行く」と書いてあったが、みんな優しい人間なので、下を向いて無言。

普通なら、その態度を見たら、ある程度の察しはつくだろう。

しかし、世の中には、そこまで来ても、察しがつかないお方がいる。

ダミ声は、「さあ、行きましょう。Mさん、どこのカラオケがいいですか? Mさんがいい、と言うところに行きましょう。教えてください!」と私に詰め寄るのだ。


同業者の視線が集中する中、わたしは、話題を変えてこう言った。

で、Kさんは、いまだに、営業には行かないんですか?

「はぁ・・・・・・・?」
ダミ声の太い眉が、分かりやすいほどに下がった。

ダミ声社長は、バブルの頃から、一度も営業に出たことがないことを自慢にしていた。

バブルが過ぎ、売上が5分の1に減っても、ダミ声は、会社から外に出ることなく、座ったまま仕事が舞い込んでくるのを待った。
要するに、電話番。

私が、仕事がないなら営業に行ったらどうですか? と聞くと、「だって、営業を雇うと金がかかるでしょ」と答えるのである。

いや、社長が営業に出るんですよ、と言うと、毎回「え? なんで? だって、俺って、営業に向かない人なんだよね」と答えた。

仕事が入らないなら、社長自ら営業に出れば、少しは仕事が増えるんじゃないですかね。

「いや、だから・・・さ。俺、営業に向かない人なんだよね」


たとえば、ですよ、社長・・・・・俺さあ・・・・・パソコンやデザインに向かない人なんだよねえ、って俺が言ったら、確実に明日から仕事は入ってこなくなりますよ。

いま、社長は、それと同じことを言っているんですよ。
わかりますか?

「なに馬鹿なこと言ってんの? 俺とMさんとじゃ、立場が違うだろ。俺は、営業に出なくても、今まで仕事が入ってきたんだし」

しかし、今は、仕事量が減っている。
バブルの5分の1に減っているわけですよね。

そんなことを言っている場合じゃないんじゃないですか?

「だからさあ・・・・・俺は、経営者だからね。Mさんとは違うの。座っていただけで、一応、仕事は入ってきたわけだから」
(もちろん、私と社長の立場が違うことは、わかっている。しかし、経営者たるもの売上が落ちたら、何らかの手は打つべきだろう。ただ電話を待っているだけの社長を見て、社員は、どう思っただろう?)


この会話の虚しさ。愚かしさ。


その当時(3年と2ヶ月26日前)のことを思い出して、私の背中にはマイナス133度の悪寒が走った。


で・・・・・いま・・・・・営業は?


「だから・・・・・さ、俺って、営業に向かない人なんだよね」
そう言いながら、自分ひとりが立っていたことに気づき、ダミ声は、勢いよく音を立てて座った。

ガタン!

思いがけない音の大きさに、周りの客が眉をしかめて、ダミ声を睨んだ。


私は、言葉を投げ出すように、座して死を待つ、ということですか、とダミ声に聞いた。

そうすると、ダミ声が「なに、それ? どう言う意味? それ、日本語? Mさん、ときどき、わけのわからない日本語、言うよねえ。Mさん、いったい、なに人?」とあざ笑うように言うのである。

私が、詩人、と答えると、ダミ声は「ハハハ、なんだ、それ? バッカじゃねえの! そんな風だから、夜逃げするんだよ」と言うではないか。



この野郎!

私が、埼玉から夜逃げした、というデマを流したのは、やっぱりお前だったんだな!

そして、今日は俺の落ちぶれた姿を期待して、見に来たんだな。
もし私が『家なき人』になっていたら、大満足だったんだろ!



それからは、取っ組み合いですよ。

結果については、お叱りを受けるかもしれないので、ナイショです。

悪しからず。



(1分18秒で店員の方々に羽交い絞めされたので、テクニカルノックアウトまでは・・・。
恥知らずなことをしました。お店にも迷惑をおかけしました。今は反省しております)

(同業者は、誰ひとりとして止めようとしなかった。なぜだろう?)

(痛めたのが左手首でよかった、右だったら、仕事にならないところだった。
しかし、右を使っていたら、絶対に・・・・・)

(いや・・・・・本当に、反省をしておりますので)



  ――――――――――― 2012年9月20日  ジョージ居酒屋事件



2012/09/21 AM 06:07:17 | Comment(1) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

ながら食い
息子が、埼玉・松伏町の友だちの家に先週末に、泊まりに行った。

最初は、金土日の予定だったが、相手のご家族に気に入られたのか、「もう一日泊まっていきなさいよ」と言われ、月曜日も泊まらせていただいた。
(息子は、穏やかで優しくて生真面目な性格。だからなのか大人たちの受けはいい。その性質は、私には1ミリも備わっていないものだ。いったい誰に似たのだろう?)

息子は、大学四年なので、就職活動中。
残念ながら、内定は、どこからもいただいていない。

そして、お友だちも、内定はまだである。

だから、就職の情報交換も兼ねて、合宿気分で泊まりに行った、ということらしい。


よそ様の家に泊まりに行って、息子が一番驚いたこと。

その家では、絶えずテレビのスイッチがオンになっていて、エアコンが絶えず稼働していたこと。

朝起きたら、すでにテレビとエアコンがついていて、朝メシ、昼メシ、晩メシのときもテレビがつけっぱなしだったという。

我が家では絶対に見ることのない、朝の連続テレビドラマ、笑っていいとも、年寄りが出ている(?)日曜朝のニュース、サザエさん、笑点、大河ドラマ、相撲、プロ野球中継、NHKニュースなど。

そして、友だちには大学一年の妹がいるのだが、食事中ずっと携帯電話をいじっていて、そのため食事が2時間近くかかっても、親から何も言われなかったことも驚きだったらしい。

父親も食事中、新聞を見、テレビを見、ときにイヤホンを耳にさし、競馬中継を聞いていたというから、その家では「ながら食い」が当たり前なのかもしれない。

ちなみに、食事中、家族間の会話は、ほとんどなかったという。


我が家では、食事中はテレビをつけない。
家族の会話以上に面白いテレビ番組がない、というのが最大の理由だ。

携帯はヨメが、たまにいじることがあるが、子ども達と私は全く触らない。

携帯電話は、何でもかなえてくれる秘密のアッコちゃんのコンパクトではない。
少なくとも、子ども達と私は、そのことをよく知っている。

携帯電話をいじったからといって、バブルの時代に戻れるわけではない。
白髪が黒くなるわけでもない。

だから、メシを食うときは、メシと会話に集中する。

それは、とても真っ当な考えだと思うのだが、我が家の常識が、よそ様の家の常識、というのは極めて稀だということは、私もよく知っている。

「スーパーで買った惣菜が、普通に発泡スチロールの器のまま出されたのには驚いた。そのことに関して、誰も文句を言わないしね。
ビールは缶のまま飲んでいるし、お茶はペットボトルのまま飲んでいる。
何飲むって聞かれたんで、烏龍茶って言ったら、烏龍茶のペットボトルが、そのまま出された。コップは無し。
うちでは父親が料理をするって言ったら、え? お父さん、料理人って聞かれた。
違います、料理が趣味ですって言ったら、変わってるねって言われた。
あー、やっぱり、うちが変わってるんだって思って、ちょっとヘコんだ」

高校2年の娘と私にとって、「変わり者・変態」と言われるのは勲章だが、真面目な息子には、それは納得できないことらしい。

しかし、だからと言って、これから心を入れ替えて、よそ様と同じ家庭を築こうとは思わない。
息子には悪いが、しばらくの間、泣いてもらうしかない。


ところで、埼玉在住の同業者「お馬さん(人類史上もっとも顔が馬に激似の男)」が、昨日、用事があって三鷹駅に来たので、会うことになった。
こちらは会いたくはないのだが、「お昼を奢りますので」と殊勝なことを言うので、気は進まなかったが、会ってやった。

「何が食べたいですか」と聞かれたから、安いもの、と答えたら、遠慮していると思われたらしく、「ホテルのレストランのランチって言われたら困りますけど、それ以外だったら大丈夫ですから」と、ヒヒ〜ン顔で言われた。

じゃあ、大戸屋、と答えて、大戸屋に行ったら、混雑していたので、入るのをやめた。
ガスト、と言ったら、「ああ、ガストは、冷房がきついんで、勘弁してください。俺、冷房が苦手なんですよね」と言われた。
(まあ、馬だからね)

バーミヤンはどう? と言って、行ってみたら、また満員。
待つ? と聞いたら、「俺、行列苦手なんです」と言われた。
(馬だからね。ヒヒ〜ン!)

面倒くさい(私は何を食うかで悩むのが嫌い)ので、絶対に行列のできないだろうと思われる店を探し当て、ここじゃなきゃ嫌だ! と駄々をこねた。

三鷹のメインストリートから外れること、38メートル。
間口狭し。
店内薄暗し。

レストランと書いてあるが、田舎の喫茶店では、ありませんかね。
テーブルの右サイドが浮いて、テーブルが傾いていますが・・・。

ランチは1種類。
鮭の粕漬けと筑前煮、ご飯、味噌汁。
880円。

定食屋か!

店には、漫画本が壁際の棚に大量に置いてあり、新聞、雑誌もあった。
お馬さんは、早速、競馬情報誌を手に取り、真剣にページをめくりだした。

オイオイ、あんたは、自分で走るんでしょうが(トゥインクル・レース!)。
それとも、兄弟でも探していらっしゃるんですか?

お馬さんが、幼少期、離れ離れになった兄弟を必死のヒヒ〜ン顔で探しながら、「Mさん、漫画とか読まないんですか」と聞いてきた。

読みません。
俺は、メシを食うときは、メシを食う。
本を読むときは、本だけを読む。

何かを読みながら(見ながら)メシを食うなんて、料理を作ってくれた人に対して、失礼じゃないですか。

「でも、店に置いてあるんだから、読んでもいいってことですよね。店の人公認じゃないですか。ヒヒ〜ン!」

そうなんですよ。
私が一番理解できないのは、一所懸命作った料理を、雑誌や新聞を読みながら食ってもいい、という料理人の心理なのだ。

俺が料理人だったら、自分が作った料理を食いながら、少年ジャンプなんか読んでいる奴を見つけたら、頭の毛を一本残らず毟り取ると思う。
相手がツルッパゲだったら、頭に熱したフライパンを押し付けるであろう。

俺が一所懸命作ったんだから、あんたも同じように一所懸命食えよ。
これは、俺の腕と、あんたの舌との勝負なんだからさ。

そう思うのだが、場末のラーメン屋には漫画が置いてあり、場末の喫茶店には雑誌が置いてある。
そして、客は、漫画8割、ラーメン2割、雑誌7割、カレーライス3割の配分で、食事をしなさるのだ。


それを許容してしまったら、その料理人のプライドは、いったい?


お馬さんは、料理が運ばれてきても、競馬情報誌をめくるのをやめず、ご飯を食い、鮭を食い、味噌汁を飲んだ。
まるで、それが当たり前のことのように。
(食い物屋に漫画本などが置いてあるのは、料理が出来るまでの暇つぶしのつもりだと思うが、多くの人は、そう思っていないようだ)


そんなんで、おまえ、味、わかるのか?

それに対して、私はメシを食うのみ。

鮭、うまし。
筑前煮、うまし(鶏肉、柔らかぁ!)。
ご飯、普通。
味噌汁、具が少なくて、うまし(私は具だくさんの味噌汁が苦手。具はネギかワカメだけでもいい)。

92点! 合格!

心の中で、オヤジィ、いい腕してるじゃねえか! 店に雑誌なんか置かないで、味で勝負しろよ、と褒め称えた。

それくらい、馬勝った(うまかった)。


店を出てから、お馬さんに、ごちそうさま、と言って軽く頭を下げた。

「いえいえ、お粗末さまでした」と、ヒヒ〜ン顔。

そして、軽くいななくように人間様の言葉を発した。

「なんか、味、変じゃありませんでした? 肉じゃがなのに、鳥が入っていたし、ゴボウやレンコンの入った肉じゃがなんて、俺、初めて食べましたよ。鮭の『味噌漬』の方は、まあまあ、美味しかったですけどね」
(ジャガイモの入っていない肉じゃがは、肉じゃがではなく別の食い物である、という疑問は持たないのか? それに、お前には、粕と味噌の区別もつかないのか! このカスが!)




奢っていただいて、こんなことを言うのもアレですが・・・・・。


そのヒヒ〜ン顔に、ニンジン、ブチ込んでやろうか!





2012/09/16 AM 06:04:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

おそ〜い夏休み
去年の9月は、11日間の遅い夏休みを取らせていただいた。

私の心のメーターがMAXに振り切れていたこともあって、休みが必要だと思ったからだ。
その11日間は、私にとって、とてもいい休養になった。


今年は、8月が独立して以来の忙しさで、肉体が悲鳴を上げた。
そして、心も少し・・・。

しかし、今年は昨年と同じように11日間の休みを取るのは、どう調整しても無理な状況。

でも、最低3日間の休みが欲しいな。

いや、5日間、取れないだろうか。

細かく得意先や同業者と折衝を重ね、何とか5日間の遅い夏休みを9月26日から取れることになった。


わーい!  \(^o^)/


だが、昨年の長い夏休みは、ヨメに事前に報告をしたが、今年はしないことにした。

なぜかというと、我がヨメは、私が休んでいると、最初不安になり、最後は不機嫌になることがあるからだ。

私が仕事をしていないと、即「一家が路頭に迷う」と思い込んでいるからかもしれない。

要するに、それは私の仕事、あるいは私自身が、あまり信用されていないということなのだろうか。

だから、今年は、ヨメに内緒で休むことにした。


4年くらい前から、心身を完璧に休めるため、私は休日は営業に行く格好をして、ビジネスバッグにレジャーシート(3畳敷)を入れ、保冷袋に冷やしたクリアアサヒと特大オニギリ1個を詰め込んで、出かけることにしていた。

営業に出る格好さえしていれば、ヨメの精神が安定するからだ。

大抵は公園に行って、寝っころがり、貪るように睡眠をとる。
埼玉にいたときは、大宮第三公園。
武蔵野に越してきてからは、小金井公園か野川公園だ。

ただ、これは春、夏、秋だけのことである。

寒い冬や、雨の降った日は、死を覚悟しなければいけないので、そんな無謀なことはしない。

そこで、荻窪に仕事場があるWEBデザイナーのタカダ君(通称ダルマ)か浦和の一流デザイナー・ニシダ君の仕事場の1角をお借りして、お仕事の邪魔にならないように、まるで卑屈なジャック・スケリントン(ナイトメア・ビフォア・クリスマスの主人公)のように、静かに眠りを満喫していた。

武蔵野に越してからは、家から近いので、必然的にダルマの仕事場オンリーになった。


ダルマの奥さんである微笑みの天使・トモちゃんは、たいへんよくできた人で、こんなガイコツのためにスウェットの上下を用意して下さり、私の大好物である銀河高原ビールまで、めぐんでくださるのである。

そして、私専用の毛布まで用意して、「師匠、ごゆっくり」と言って、かけてくださるのだ。

恐れ多いことでございます。

だから、ついつい、そのご好意に甘えることになる。

きっと年に5回はお邪魔しているのではないかと思う。


だって、居心地がいいんだもん!


ダルマご夫婦には、確実に疎まれているとは思うが、行くところがないので、この白髪頭に免じて許してくだされ。

微力ではありますが、お子様のお世話もさせていただいております。
仕事のお手伝いも「気が向いたら」させていただいております(気が向くことは滅多にないが)。

そして、私が死んだら、生命保険から0.05%支払います、と遺書に書き残してありますので(嘘だが)。

ただ、今年の9月末は、雨が降らない限り、私の居住空間は、きっと小金井公園になるはずである。
(iPad2とiPhone4、iPhone用小型スピーカー、レジャーシート、災害用毛布、クリアアサヒがあれば、私は何時間でも公園に潜んでいられる。ホームレス・デザイナーですから)

だから、タカダ君、トモちゃん、安心してください。
(しかし、突然気が変わって、銀河高原ビールが飲みたくなるときがあるかもしれないので、くれぐれも油断はなさらないように)


ところで、休みの調整をするために、稲城市の同業者のところに挨拶に行ったときのことだ。

「Mさん、忙しい思いをさせて申し訳ありません。俺の出した仕事のせいで、休む暇もなかったということで」と深く頭を下げられた。

いやいや、フリーランスは仕事があってナンボ。
仕事をいただくのは、大変ありがたいことですから、頭を下げられても困ります。

むしろ頭を下げるのは、私の方です。

しかし、強烈な人見知りの同業者は、さらに2度頭を深く下げて、「俺たちだけノンビリ過ごさせていただいて」と、恐縮した柴犬のような顔をして言うのである。
(柴犬が恐縮している姿を私は99回見たことがある)

たくさん働いた人は、休みを取る権利がある。
だから、堂々と休めばいい。

誰に、遠慮することもない。
(私は遠慮しているが)


恐縮する柴犬顔の同業者をなだめて、帰ろうとした。

すると、同業者が「Mさん、これ」と言って、封筒を差し出したのである。

ん?

「江ノ島水族館の入場券です。4枚ありますから、ご家族で行ってきたらどうですか」
(あのね・・・江ノ島水族館ではなく、新江ノ島水族館ですよ。念のため)
照れくさそうに、少し頬を赤らめながら、人見知り柴犬同業者が言った。

以前のブログで、私が水族館オタクであるにもかかわらず、ここ5年以上、水族館に行ってないことを書いたのを読んで、きっと気を利かせたのだと思う。


弱ったな。


俺は、もう水族館には行かないつもりだった。

一度我慢したら、最後まで我慢を貫くのが、俺なりの意地の通し方だと思っているからだ。

しかし、もちろん他人には、そんな私の意地など通用しないことは、わかっている。

そんなことを言ったら、変わり者だと思われるだけだろう。
(変わり者だということは、なぜか世間に知れ渡っているが)


だから、ありがとう、と頭を下げて受け取った。

4枚の水族館の入場券。
同業者の好意を無にしないためには、家族で水族館に行くべきだ。

そのことは、私にもよくわかっている。


しかし、行かない。


稲城市の同業者には大変申し訳ないが、その4枚は、我が家に頻繁にメシを食いに来る女子高生たちにあげた。


失礼なことをしたのだから、それに対しては謝るのが、一般人の常識というものである。

電話では失礼だと思ったので、また稲城市の同業者のところまで出かけた。


ごめんなさい、あの水族館の券、人にあげてしまいました。

そう言うと、同業者は、泣きそうな顔で「ああ、オレ、無神経なことしましたね。家内には余計なことはするな、と言われたんですけど、ついつい・・・・・・」と、うな垂れながら140度の角度で頭を下げられた

まさか、そんなに落ち込むとは思わなかった。

いや・・・・・あ・・・・・好意を無にしたのは俺なんだから、俺が悪いんですよ。
頭を下げられても困ります。

「いや、Mさんの気持ちを考えもしないで、勝手に押し付けて、本当に申し訳ない」
またも深く頭を下げる柴犬顔同業者。

私も頭を下げようと思ったが、ここで頭を下げてしまったら、私が一番嫌いな「堂々巡りの儀式」になってしまう。

この状況を変えるには、別のことを提案すればいいと思った。

だから、言った。

じゃあ、今度、そちらの家族と我が家で、メシを食いに行きませんか。
今まで一緒にメシを食ったことはなかったですからね。

それを聞いた柴犬の嬉しそうな顔。

「ああ、喜んで。ハイハイ、そうしましょうよ。うん、そうしましょう。家内とも相談しますから」

そして、上気した顔で言うのである。
「俺が奢りますから、何でも好きなものを食ってください」

いやいや、ここは俺が・・・・・などということは、私は口が裂けても言わない。

ごちそうになります、とだけ答えた。


柴犬顔同業者の嬉しそうな顔。

「よかったぁ! Mさんに嫌われたら、オレ、どうしようかと思いましたよ。ほ、ほ・・・・・・・・・んとに、よかったぁ!」

その場に、ヘタリこんでしまったのである。



この柴犬さんは、稀に見る良犬だと思った。

血統書をつけて、ショーケースに飾りたいと思った。




2012/09/12 AM 05:52:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

完敗を認めたくない男
大人気ないとは思ったが、本気で怒鳴った。


高校2年の娘のお友だちが、たまに晩メシを喰いに来る、というのは以前書いたことがあると思う。

カレーライス、ハンバーグ、シチュー、餃子パーティのときが多いが、たいして面白みのない食事のときでも、やって来ることがある。

多いときで5人。
少ないときで1人。

昨日、餃子パーティのときには必ずやってくるシホちゃんが、ボーイフレンド同伴でやってきた。
友だちとカラオケに行く予定が、他の2人にドタキャンされたらしい。
2人では盛り上がらないので、バカ家族の家に来たということだ。

あらかじめ来ることは、メールで通知があったので、2人分のメシを慌てて追加した。

お客さん。
当店は、同伴は禁止でございますが、と言ったら、シホちゃんは、大口を開けて笑ったが、男は、無表情。

緊張しているのかな、と思ったが、「はじめまして」の挨拶も「おじゃまします」の挨拶もない。

緊張していたって、最低限のマナーは、あってしかるべきではなかろうか。

ただ、世の中には、私のように、ゴキブリにも人見知りをしてしまう、極度の人見知りもいる。
これだけで判断するのは可哀想だ。

だから、マクドナルドの店員のようなマニュアル通りの笑顔で、ようこそ、いらっしゃいませぇ〜、と言って出迎えた。

スマイルは、ゼロ円だぜぇ〜。

シホちゃんには受けたが、男は、スルー。

まあ、自分でも、あまり面白いとは思わなかったので、気にしてはいないが(チックショー!)。


本日のディナーは、サーモンフライのタルタルソースのせと、塩麹を使ったバーニャカウダ、オニオングラタンスープだ。

我が家族4人とシホちゃん、男の子の6人で、食事を始めた。

男は、娘とシホちゃんとは会話をしていたが、まるで我々の存在を無視するかのように、彼の視線は一度も私たちに向くことなく、いただきます、も言わずに食い始めようとした。

さすがに、シホちゃんが、それを咎めて、「いただきます、言おうよ」と言ったとき、男は、初めて私の目を見たのだが、まるでハシビロコウ(動かない鳥と言われている)のようにガラス玉を思わせる目で私を見ても、彼の口は開かなかった。

その澱んだ空気感に耐えられなくなった娘が、「お前は、何もんだ!」と冗談交じりに、男を詰(なじ)った。
しかし、男は、それを無視して無言でメシを食い始めたのである。


アララララ・・・・・・・、根性あるぞ、こいつ。


慌てたシホちゃんが、「おい! ショウタ、なんだ、その態度」と、私たちの顔色を伺いながら、男をたしなめた。

楽しい食事の場が、修羅場に変わるのだけは免れたかった私は、まあまあ、まずはメシを食おうぜ、と言って、オニオングラタンスープを一気に啜った。
(アチかった)

みんなも眉間にしわを寄せるようにして、食事を始めた。

無言で食う男。
ハシビロコウ。

男は、無言で食いながらも、シホちゃんの顔色は絶えず窺っていた。

我々家族は、見事なほどの沈黙。
我が家の夕食が、こんなに静かなのは、1年7ヶ月と14日ぶりだぞ。

まさか我が家に、こんな珍種が入り込んでくるとは・・・。

長生きは、するものである。

うつむいて、メシを口に運ぶだけのMさんち。

自分で作ったものだが、サーモンフライって、こんなにまずかったっけ?
バーニャカウダ、塩辛すぎねえか。

クリアアサヒも、まずいぞ。

ここは、思い切って、テーブルをひっくり返すべきではないのか。

我が家に代々伝わる、秘伝のチャブ台返し(嘘だが)。

そんな風に、両手が、ひっくり返したくてムズムズしていたとき、ハシビロコウが、突然カラの飯碗を持って、立ち上がった。

そして、炊飯ジャーまで歩いていき、ご飯を装(よそお)うとしたのではないか。

え? 初めての家に来て、その家の人に断りもなく、勝手にご飯を装(よそ)う?

私は、思わずシホちゃんの方に目を移して、WHY? というように、肩をすくめた。

シホちゃんの顔色が変わって、突然立ち上がり、ハシビロコウの肩を強く叩いた。

「ショウタァ!」

それに反応して、ハシビロコウが「なんだよ!」と、吼えた。

そうか、ハシビロコウでも吼えることがあるんだ。
珍しいぞ。
これは、生物学者に、報告すべき事例かもしれない。

しかし、気の強いシホちゃんも負けてはいない。

「ここは、あんたのうちじゃないんだよ! お代わりが欲しいんなら、Kのお父さんか、お母さんにお願いするのが普通だろ!」
顔を真っ赤にして、ハシビロコウを睨み、ハシビロコウが左手に持っていた飯碗をひったくった。

まあ、そこまで強くハシビロコウの行動を否定することはないとは思うが、シホちゃんは、ハシビロコウを連れてきた手前、そうせざるを得なかったのだろう。
責任感の強い子なのだ。

しかし、このハシビロコウは、本当に根性のあるやつだ。

「じゃあ、いらねえ!」

見事なほど、ジコチューな啖呵を切って、自分の席に座り、本当のハシビロコウになってしまったのである。
つまり、不動の姿勢。

なんだかわからないが、面白いぞ。
これほど、わかりやすいオコチャマに久しぶりに出会った。

何が気に食わないのかわからないが、何かが気に食わないのだろう。

場がシラケるのも構わずに、自分の感情を露わにするハシビロコウの原始的な姿は、呆れるのを通り越して、アッパレと言いたくなるほど、その生態は珍種そのものだった。

我が家族は、沈黙のまま、食事を終了。

息子は、食い終わったらすぐに自分の部屋にこもり、ヨメは洗い物を無言で始めた。

娘は、普段の2.5倍ほどの大きな声で「ゴッチソーサマァ!」と叫び、そのあと、普通のトーンに戻って、シホちゃんの耳に口を寄せ、顎でハシビロコウを指し、「悪いけど、連れて帰ってくれる?」と、ハシビロコウに聞こえるように言った。

ハシビロコウは、場の空気が大きく変わったことを察知できたのか、できなかったのか。
見事に無言だった。
不動だった。

しかし、ハシビロコウの前にある食器の状態を見ると、ほぼ完食。

食い物に関しては、気に入ってくれたようである。

まあ、それだけでも、よしとしようか。

目くじらをたてることも、なかろう。
私は、某国と某国の領地争いのような幼稚な対応をせず、大人の対応をして、シホちゃんとハシビロコウを玄関の外まで見送った。

シホちゃんは、「パピー、本当にごめんね。こいつには、よく言って聞かせるから・・・。悪い奴じゃないんだよ。アタシの兄貴の中学時代の後輩なんだけど、兄貴には、とても丁寧な言葉で喋れるんだけど・・・・・今日は、なんでかなあ・・・」と、頭を下げた。

ドント・ウォーリー・ベイベー。

完璧なクイーンズ・イングリッシュで慰めたのだが、シホちゃんは、泣きそうな顔をして、私を見上げるだけ。

また、おいでよ。
俺のゼロ円のスマイルは、不滅だぜ〜。

「アハ」と笑って、シホちゃんは、もう一度頭を下げ、ハシビロコウの腕を強く引いて、私に背を向けた。


何となくではあるが、そこで彼らが去るのを立ち止まってみていたら、ハシビロコウの声が私の耳に届いた。

「汚ったねえアパートだったな。最初、見たときに、もう〜、一気にテンション下がっちまって、口を開く気になれなかったよ。あるんだな、いまだに、あんなボロいアパート」


ボロいアパート?

築24年。

確かに、ボロいとは思うが、なんだ、その言い方。
昨年の震度5強の震動にも雄々しく耐えた、このアパートを、お前は馬鹿にするのか?

私がブログで、このアパートをオンボロと表現するとき、それは歪んだ愛に満ちたものである。
愛おしくて愛おしてくて仕方ないから、愛を持って、けなす。

私の場合、ボロ、イコール、好き、のことなのだ。

しかし、ハシビロコウの表現は、軽蔑に満ちていた。
だいいち、その言い方は、このオンボロ・アパートのオーナー様に対して、失礼ではないか。

だから私は、これ以上空気が吸えなくなるまで深呼吸し、オーナー様に成り代わって、心の底から声を解き放った。


てめえ! ボロいとは、何だァ! 数々の無礼、許さん! 成敗してくれるゥ!


突然の大声に驚いたハシビロコウとシホちゃんは、劇的なほどの素早さで後ろを振り返り、走り寄る白髪おやじの顔を見て、顔を引きつらせた。

ハシビロコウの引きつった顔は、見ものだった。

鼻の両穴が大きく開き、目が見開かれ、唇が小さく震えていた。

そんなハシビロコウを捕まえるのは、簡単だと思った。
肩をつかもうとした。

しかし、よけられた。
そして、背を向けて、逃げる態勢に入ったハシビロコウ。

上等じゃねえか。
俺から逃げられると思っているのか

俺は骨だらけのオヤジだが、走るための筋肉だけは無くしちゃいねえんだ。

逃がすもんか、この野郎!


しかし・・・・・・・・。

アレ、アレ、アレレ?

逃げられてしまったんですな。


50メートルほど走ったが、最初1メートルだった差が、3メートル以上に開き、ハシビロコウは、角を曲がるとき、華麗なコーナーワークを見せて、私の目の前から消えてしまったのです。

オヤオヤ・・・。

悲しげな顔をして、シホちゃんに助けを求めるホネホネ白髪おやじ。

シホちゃん・・・・・どういうこと?

「あいつ、兄貴の中学時代の後輩って言ったけど、うちの兄貴、サッカー部。ショウタもサッカー部なの。高2なんだけど、学校で、先生も含めて、一番足が早いんですよね。あいつに勝ったやつ、アタシ、見たことないかも」

ホォー・・・・・どおりで、いい走りですこと。


まあ・・・・・しかし・・・・・あれですな・・・・・今日の俺は、慣れない大声を出して、きっと疲れたんだな。
きっと肺がびっくりしたに違いない。

それに、サンダルというのは、足が滑るもんなんですよ。
足に力が入らないんです。

そうだな。

そういうことにしておこう。



疲れていなければ・・・サンダルじゃなければ、俺が負けるなんてことは。

(見苦しい・・・ですか?)




2012/09/08 AM 07:12:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

おバカなやつら
わがヨメが、私の言うことをまったく聞いていない、というのは、しつこいくらいに書いてきた。

大事なことさえ聞いていないのだから、笑うしかない。

だから、最近の私は、ヨメには、センテンス(短い一続きの言葉)で伝えるようにしている。


たとえば・・・・・・・、

Kちゃん(高校2年の娘)、病院、貧血、血液検査、点滴、ビタミン剤。

先週の土曜日、大きめのポストイットに、このように書いて、ヨメのノート・パソコンの画面上に貼っておいた。

これだけでは、わけがわからないだろうが、どうせ聞いていないのだから、これで報告の義務は果たしたことになる。
これは、有効な時間の使い方である、と私は自画自賛した。

ただ、何が何やらさっぱりわからん、という方のために、一応説明はしておきます。

娘が、最近立ちくらみが頻繁に起きるので、先週の土曜日、私は嫌がる娘を土下座しながら強引に病院に連れて行った。
病院では問診のあとに、血液検査を行った。
その後、点滴をしてもらった。
薬は、ビタミン剤を処方してもらったが、貧血薬は、検査の結果によって、処方を決めると言われた。
夏バテということもあるので、とりあえず、十分な睡眠とバランスのいい食事を心がけてください、とまるで医者のようなことを言う医者に、そう言われた。

この程度のことを説明するのに、普通は1分もかからないと思う。

しかし、ヨメは、この1分さえも聞いてはいられないので、結局、私はセンテンスだけ説明することにしたのだ。


たとえば、むかし、こういうことがあった。

このときは、娘の頭に湿疹ができて痒くて眠れない、と、我慢強い娘が、珍しく泣き言を言うほど重い症状だった。

しかし、私と同じ医者嫌いの娘は、「医者は行かん! 学校を休むのもいやだ!」と駄々をこねた。

ただ、首やわきの下にも湿疹が広がったため、どうか、病院に行ってください、と娘に土下座をして頼んだら、「行ってやらんこともない」と言われたので、嬉々として、私は娘を病院に連れて行った。

診てもらうと、熱が38度以上あるというので、すぐに点滴をしてもらい、血液検査もした。
薬をもらって、医者の言うとおり、丸一日安静にしていたら、アラ不思議、湿疹が軽くなり、熱も下がった。

めでたし、メデタシ。

というようなことをヨメに説明しようとしたところ・・・・・。

朝、Kちゃんを病院に連れていったけど・・・。

「ああ、あの病院ね。あの病院の近くにケーキ屋さんがあるんだけど、パスタも美味しくて、カルボナーラは絶品なのよ。
コイケさんの奥さんと行ったんだけど、コイケさんったら、オーナーにレシピを熱心に聞いていたわ。それくらい美味しかったってことよね。
そうそう、パスタといえば・・・」

そのあと延々とパスタの話が続いて、娘の病院通いの話に軌道修正できたのは、10分以上経ってからだった。

点滴をしてもらったのだけど、看護師さんが、とても感じが良くて、いまどき珍しいくらいキレイな日本語を話す人でね・・・・・。

「ああ、私がこの間会ったスガワラさんも丁寧で礼儀正しい人だったわ。
お友だちの個展を見に行ったときに、お友だちに紹介されたのだけど、品がよくて、絵の知識も豊富で、話していて飽きないの。
絵と言えばね、武蔵小金井に絵画教室があるらしくて、その個展を開いた人の弟子がやっているのだけど・・・」

この話も、10分以上続いたので、私は、娘の病院通いの報告を諦めた。

そのあと、もし、そのときの娘の湿疹の症状を説明したら、話を中断して、むかし自分が湿疹でどれだけ苦しんだかを力説する確率は、98%。
病院に払った治療費の話をしたら、モッタイナイと嘆き、今月はピンチだ、と叫ぶ確率は99.9%。

このように1分以内で終わる話を何回も中断させられるのは、時間の無駄である。

1分で終わる話を説明するのに、4回も5回も中断させられたら、私の脳は百キロの渋滞を起こして、目的地に行くのが嫌になる。

だから、センテンス方式が一番いい、と自画自賛はしたが、冷静に考えると、それは自慢するほどのことでもないということに、昨日の夜気づいた。


なぜなら、娘が自分でヨメに報告をすれば、話が中断することなく正確に伝わるからだ。
(ヨメは、子どもたちの話は、話を遮らずに最後まで聞く)


娘に、それを指摘されたとき、私は頭を抱えて、悶え狂った。

タワシとタコトシが(私としたことが)!

なんで、そんな簡単なことに、気づかなかったのか!


「バーカ! バカオヤジィ! ボケたか! シラガじじい!」

素晴らしく美しい日本語で、娘に褒められた。


しかし、元気だな。
「たくちらみ」は、もう治ったんじゃないか。

私がそう言うと、娘が突然うずくまって、「たくちらみがぁ!」と、頭を抱えた。

私も、それに合わせて、たくちらみがあ!


しかし、私の話す言葉には、いつも無反応だが、この種の言葉には異常に反応が早いヨメが、「たくちらみじゃないでしょ! 立ちくらみでしょ!」と、某国並みの素早さで、強く抗議した。


娘と私の間では、「立ちくらみ」は、たくちらみ。
「エグザイル」は、エクセル。
「富士山」は、オジサン。
「ジョニー・デップ」は、デニー・ジョップ。
「そんな馬鹿な」は、ばんなそかな。
「ももいろクローバーZ」は、くろいろモモーバーZ(ファンの方、怒らないでください)。
(ほかにも色々ありますが、割愛させていただきます)


馬鹿じゃねえか、という罵倒が聞こえてきそうな予感・・・。



ハイ、おバカなやつら・・・と、お笑いくださいませ。





ところで、番外編だが、先日、録画しておいた「高校生クイズ」を、ヨメと夜中に観ていたときのことだ。

CMを飛ばし、内容のないコメンテーター、パネラーの話を飛ばしながら、3時間近い番組を半分にダイエットして観ていた。

ヨメは、高校生たちの超人的な頭脳に、「スゴイ! スゴイ!」と呆れながら感心していた。

だが、最後に、ヨメが言った恐ろしい言葉。
番組終了間際に、その言葉は、突然のように発せられたのである。


え! これって、「高校生クイズ」だったの!?


番組が、ほとんど終わる直前に、ヨメは自分が観ていた番組が「高校生クイズ」だということが、わかったらしいのだ。

では、いったい、それまでの強烈なほどの感心の根拠は、何だったのだろう。

「神がかっているわよねえ。なに、あの知識!」
「なんで、そんな細かいことまで知っているのかしら、高校生なのに!」
「いかにも勉強が出来そうな顔してるわね。やっぱり、頭の良さは、顔に出るのよ!」


そのインパクトに満ちた感想が、今まで観ていた番組名に繋がらないヨメの思考回路って、いったい?


それは、ある意味、高校生の超人的な頭脳よりも、スゴイことかもしれない。

(念のため書き記しますが、ヨメは、高校生クイズを毎年欠かさず観ているのです。それなのに・・・・・)




2012/09/04 AM 06:03:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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