Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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恐怖のウナ重
どうでもいい、と思われるかもしれませんが、前回の続きです。

大学時代の友人、オオクボの事務所で、京橋のウチダ氏と遭遇したという話。

ウチダ氏とは、10年ほど前、得意先の新橋のイベント会社で知り合った。
その会社では、彼が、外注に仕事を割り振りする担当だった。

しかし、その会社は、まもなく倒産。

途方に暮れたウチダ氏だが、奥さんが株で得た金を資本にして、ウチダ氏は、東京都中央区京橋でイベント会社を立ち上げた。
5年ほど前のことだ。

ウチダ氏は携帯電話を3台駆使して、一人で事務所を切り盛りし、高級スーツを着こみ、高級車トヨタクラウンを乗り回す毎日だ。

儲かっているかどうかは、知らない。
ただ、東京の一等地、京橋の事務所の家賃を払い続けているということは、それなりの稼ぎがあると想像していいと思う(イヤなやつだ)。


ウチダ氏とは、最初から気が合った。
まるで大学時代からの友だちのように、打ち解けて話をすることができた。

ヒネクレ者で人見知りの私としては、それは、とても珍しいことだった。

だから、私は、その繋がりを大事にしようと思った。
ウチダ氏は、私より5歳年下だったが、総合力で完全に私を凌駕して、完成された「大人」の佇まいを身につけた尊敬できる男だった。

ただ、ひとつだけ難点がある。
このイケメン社長は、独立して5年、私に2回しか仕事を回さないケチな男なのだ。

なぜ、俺に仕事を出さない? と聞くと、「俺は仕事のできるやつにしか出さないんだ」と胸を張る。

そこまでキッパリ言われると、納得するしかない。
清々しい気さえする。

ウチダ氏と私の関係は、茶飲み友だちのようなものだった。
ウチダ氏が話す仕事の悩みを年上の私が聞かせていただく。
私の意見など、何の役にも立たないだろうから、私は聞くだけで、意見や忠告の類いは、ほとんどしない。

私の役割は、ウチダ氏の事務所の冷蔵庫に、大量に常備されているスーパードライかクリアアサヒを消費するだけだ。

まったく色っぽい関係ではない。

2ヶ月に1回程度だが、ウチダ氏の事務所の鍵を預かっているので、ほとんど事務所を空けているウチダ氏の代わりに、クリアアサヒを飲みながら、私が店番をしてやることもある。

いい気持ちになって家に帰ると、ウチダ氏から電話。
「今日は、4本飲みましたね。何か嫌なことでもありましたか?」

成功者の事務所の雰囲気を味わっていたら、なんか腹が立ってきて、ヤケになって飲んだ。

「カマンベールチーズも食べましたね」

チーズ好きの私のために、冷蔵庫には、絶えず数種類のチーズが常備してある(時にキャビアの缶詰が置いてあることがあるが、これは罠だと思って、一度も食ったことがない。ただ・・・一度だけ、高級食好きの息子とヨメのために持って帰ったことはある)。
チーズだけは、食わないともったいないので、食ってやっている。

ブルーチーズを食わなかっただけでも、有難いと思え。

「言っている意味がわかりませんが・・・」

俺の言葉に意味があると思っているなら、君は、まだまだまだまだ未熟だな。

「未熟だからこそ、Mさんみたいな男と付き合ってられるんですよ。成熟した男なら、匙を投げているでしょう」

確かに。

というような会話が、最近の私は面倒くさくなったので、半年前に、私は成熟した男であるオオクボをウチダ氏に紹介したのだ。

仕事の悩みは、専門家に任せるに限る。
何で、そのことに今まで気づかなかったのか、私は自分の愚かさに呆れたものだ。

オオクボとウチダ氏は、生真面目同士だから、むしろ合わないのではないかと危惧したが、二人とも「大人」なので、すぐに信頼関係を築くことができたようだ。

それ以来、ウチダ氏は、私に愚痴をこぼすことがなくなり、私はウチダ氏がいない頃合を見計らって、京橋の事務所に忍び込み、クリアアサヒとチーズを消費する、ただの泥棒に成り下がった。

ウチダ氏は、オオクボの会社に、月に1回か2回程度、相談に来るらしい。

要するに、今回私は、運悪く「その日」に遭遇してしまったということだ。

私に構わず、ステーキ弁当を食いながら雑談をする「大人」ふたり。


なんか、仲が良さそうだなあ。


孤独感を抱きながら、ああ、空きっ腹に、スーパードライが沁みるぜぇ! とヤケ気味にスーパードライを呷るホネホネ白髪おやじ。

もちろん、二人は、そんな私を無視。

しかし、ここで、酒に侵された私の頭に、ひとつの疑問が浮かんだのである。

なぜ、ウチダ氏は、ステーキ弁当を買ってきたのか?
Why Does Mr. Uchida have bought a steak lunch?
打ち合わせの度に、ステーキ弁当を食っているから?
Time of meeting, because he eat a steak lunch?

いや、そんなことはないはずだ。
ウチダ氏は、骨の髄までの成功者だから、京橋の事務所にいるときは、弁当だったら三千円もする「すき焼き弁当」か「和牛焼肉弁当」しか食わないはずだ。

彼の頭の中には、580円のステーキ弁当など、目の端の隅っこのゴミにさえも見えないはずである。

ということは・・・・・。

親密な雰囲気で雑談をしている二人の会話に、私は嫉妬混じりで、無理矢理に入り込んだ。

おい、オオクボ! おまえ、俺が来たことをウチダに知らせただろ?

それに対して、オオクボは、「何だとぉ!」と目を剥いて、私を睨んだ。
迫力のある顔だ。
怖いぞ、こいつ。

ああ、悪かった。
そんなわけないよな。
そんなわけ・・・・・(完全に気後れしている)。

「電話したに決まってんだろ! 今ごろ気づいたのかよ」

はぁ〜ん?

向かいの椅子で、ニヤけるウチダ氏。

いつ電話した。

「それくらいチョッと考えれば、すぐにわかるだろ。おまえが受付で下らんコントをしているときに電話したんだよ。いつも思うんだが、あれは余計だな。ちっとも面白くない」

それを聞いて、自己嫌悪に陥った俺に、今度はウチダ氏が追い打ちをかけた。

「オオクボ先輩は、Mさんのノリ弁も買って来いって言ったんですけど、俺が『やめましょう』って言ったんですよ」

ん?

ちょ、ちょっと待て、なぜ「オオクボ先輩」なんだ?

「おい! とうとう脳が退化したか? ウチダさんは、俺たちの大学の後輩だからに決まってるだろ」

だ、大学の後輩?
ウチダがぁ?

初耳でござる。

そうなのか、ウチダ?

含み笑いをして、頷くウチダ氏。

「まあ、5歳下だから、当然俺たちとは接点はないのだけどな。しかし、おまえ、知らなかったのか。俺は最初に聞かされたぞ」
勝ち誇った顔のオオクボ。

こいつ・・・ドヤ顔をすると、中尾彬に似てるな。

いや、そんなことはどうでもいい。

なんで、俺に言わなかったんだ、ウチダさんよ。

すると、ウチダ氏は、子どものように口を尖らして、「だって、Mさんに向かって『先輩』って言うの嫌だったんだもん!」。

そ、そんな理由で・・・・・・・(絶句)。

「『さん』をつけてくれるだけでも、ありがたいと思うんだな」と、さらにドヤ顔のオオクボ。

まあ、それは、確かに有難いことだが・・・と納得されかけたとき、オオクボの片腕が帰ってきた。

「弁当を買ってきました。これ、私の奢りですから、お代は結構です」
こいつもドヤ顔で言いやがった。
こいつ・・・幸薄そうなところが、ドランクドラゴンの鈴木拓に似てるな。

ありがとう、と言って、袋(なんで、すき家の持ち帰り袋なんだ?)から弁当を取り出すと、そいつは「うな重」。

「奢りです」と、またドヤ顔で強調する片腕。

それを見て、固まるオレ。

ウナ重・・・・・・・かよぉ。
ウナ重って、高級食だろ?

よりによって、ウナ重・・・・・。

しかし、ここで、断るのもなあ・・・。

しかし、ああ・・・しかしなあ。
(思い切って言おう)


せっかく買ってもらって、申し訳ないんだけど、オレ、ウナギ嫌いなんだよね。


そう言ったら、「おまえ、人の好意を無にするのか!」と、オオクボ、ウチダ氏にユニゾンで怒られた。
また5歳下の後輩から「おまえ」呼ばわりですよ(泣)。

中尾彬と坂口憲二に怒られて、反論できるやつは(おそらく)いない。


仕方なく、ウナギをビールで喉に流し込んだ。
(味なんか、わからねえよ)


そんなわけで、その日の夜から次の日の昼まで、トイレ通いが続いたホネホネ白髪おやじでした。





高級食を食うと腹を壊す、この貧乏体質は、おそらく死ぬまで治らない。



2012/07/10 AM 05:40:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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