Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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リセットされるコトバ
たまに、ヨメと二人で散歩をすることがある。

武蔵境駅近くから亜細亜大学の通りを歩き、小金井北高校あたりまでの道を往復する。
往復で6キロ程度だ。
それを1時間半ほどで歩く。

途中、無人の野菜販売所がいくつかあるから、季節の野菜を買うこともある。

そして、その無人販売所の一つでは、2匹の猫と遭遇することが多い。
毎回ではないが、3回に1回くらいの割りで遭遇する。
おそらく飼い猫ではない。

二人の猫は、どちらも美男美女の部類には入らないが、愛想はいい。
私の顔を認めると、すぐに足元に擦り寄ってきて、私が体に触ると、すぐにお腹を見せる。

甘えと服従のポーズだ。

その仕草を見て、毎回ヨメが言う。

「あらあ、珍しい! ノラなのに、こんなに人懐っこい猫、初めて見たわあ」

もちろん、初めてではない。

散歩の3回に1回は、この猫ちゃんたちと遭遇しているのである。
ヨメが、毎回毎回記憶をリセットしているだけだ。

人間の脳は、何かの加減で記憶をリセットすることがあるようだが、このリセットの回数が、ヨメは人並み外れて多い。

朝出がけに、「今日は、雨が降るかしら、傘持っていったほうがいい?」とヨメが聞く。

それに対して、私は、梅雨なんだから、いつ雨が降ってもおかしくはない、と答える。

しかし、ヨメは私に問いかけはするが、私の言葉は、いつもヨメの脳には届かない。
だから、傘は持っていかない。

その結果、降られる。
そして、毎回折りたたみ傘を買うのである。

「雨が降ってきたから、傘買っちゃったぁ。安い傘を買うより、高い傘の方が長持ちするから、奮発しちゃった」

値段を聞くと、3500円だという。
そんな「高級傘」が、我が家には10本近くある。
雨に降られる度に「高級傘」を買うからだ。

私は、突然の雨のときは、百円ショップで105円の傘を買って、その場をしのぐ。
そして、それを壊れるまで使う。
今年は、2回105円の傘を買った(まだ壊れていない)。

私の感覚では、これはとても経済的なことだと思うが、ヨメの意見は違う。
「もったいない! 傘を持って行けばよかったのにぃ! こんなの買って、無駄じゃない?」

「高級傘」を10本溜め込むことは、ヨメの脳の中では、無駄ではないようだ。
105円の傘を2回買う方が無駄だと、ヨメは断言する。
つまり、ヨメは自分の都合のいいように記憶をリセットして、「もったいない」を決して自分に向けることなく、人を非難する道具として使っているのである。


羨ましいと思う。


6月28日木曜日、最近17歳になった高校二年の娘から、メールが来た。
「ロフトで文房具を買って帰るから、帰りは8時半過ぎになる。メシは食うから、用意しておけ」

娘が学校から帰る時間は、だいたい7時半前後だ。
つまり、いつもより帰宅時間が1時間遅れるということ。

だから、ヨメに、Kちゃん、帰りが1時間遅れるってさ、と私は報告をした。

ヨメは、「あら、そう」と答えた。
しかし、「あら、そう」と答えたからといって、ヨメの脳に私の言葉が届いたとは限らない。

私の報告から10分たった頃、「おかしいわねえ、Kちゃん、遅くない?」と言い出すのは、いつものことだ。

だから、私は、そうだね、とだけ答えた。

ヨメにまた、娘が遅れる事情を言ったとしても、言葉がリセットされるだけだからだ。

そして、また10分後、ヨメが言う。
「Kちゃん、遅いわねえ。ねえ、なんか聞いてない?」

いや、聞いてない。

報告の義務は、一度だけでいい。
あとは、適当に流しておいても何の問題もない。

「Kちゃん、遅いわねえ。ねえ、なんか聞いてない?」

いや、聞いていない。

そんな儀式を繰り返しているうちに、娘が帰ってくる。

ヨメが、「遅かったわね」と言う。
それに対して、娘は、ヨメの「脳内リセット事情」を理解しているので、遅かった理由を理路整然と説明したあとで、私に対してドヤ顔をつくり、右手の親指を立てるのだ。


そんな「脳内リセットの天才」であるヨメが、いつものように、私に聞いてきた。

「今度、お友だちとCOCO壱番屋でお昼をするんだけど、私COCO壱番屋は、初めてなのよねえ。どのメニューが一番美味しいの? 教えて」

私は、確かにCOCO壱番屋は、よく利用するが、ハーフサイズのポークカレー以外は、ほとんど食ったことがない。
そのことは、ヨメには、何回か説明しているはずである。

しかし、何を何回言っても、私の言葉はヨメの脳には届かない。
それは、長年の経験で理解している。

これは、どうせリセットされるんだろうな、と思いながら私は毎回言葉を発している。

言葉はコミュニケーションの手段だから、届かなくても言っておいた方がいい、と思うからだ。
過去に、おそらく4回、私は、こういうことを言った。

COCO壱番屋で、俺が食うのは、ハーフサイズのポークカレー。
そして、COCO壱番屋のカレーはレギュラーでも結構辛いんだよ。
だから辛いのが嫌な場合は、甘口にしてもらえばいい。

しかし、もちろん、その報告は、ヨメの脳に全く届かない。

仕事が忙しいときは、そんな儀式が面倒くさくなるときがある。

だから、COCO壱番屋? いや、行ったことないなあ、まあ、お友だちと同じものを食えばいいんじゃないかな、と答えておいた。

ヨメは、「あら、そう? 行ったことなかったんだ」と、それ以上は追求しない。

その点は、都合がいい。


COCO壱番屋から帰ってきたヨメが、「なに! 普通であんなに辛いなんて信じられない! もう二度と行かないから」と怒ったが、それは私の責任ではない。
COCO壱番屋さんが、悪いわけでもない。

ヨメは、和がらしやワサビの辛さは平気だが、スパイス系の辛さに弱い。
だから、我が家のカレーは、いつも甘口である。

COCO壱番屋では甘口を頼んだほうがいい、とは過去に言ったが、言葉が脳に届かないのだから、それは私が悪いわけではない。
ただ、COCO壱番屋さんが、余計な濡れ衣を着せられて不幸だな、とは思う。


こんな風に、私の言葉が全く脳に届かないヨメだが、K-POPと花のことに関しては、かなりのスペシャリストである。

K-POPの情報は、細かいことでも漏らさずに把握しようとする。
脳がリセットすることはないようだ。

ただ、私が安室奈美恵さんのプロモーション・ビデオを見ていると「あっ、K-POPの真似してる!」というのには閉口する。
倖田來未さんや加藤ミリヤさんのプロモーション・ビデオを見ていても、「あっ、K-POPの真似してる!」。
(安室先生、倖田先生は、K-POPが流行る遥か前からこのスタイルですが)

だから、ヨメが今に、ジャネット・ジャクソンやカイリー・ミノーグのミュージック・ビデオを見て、「あっ、K-POPの真似してる!」と言い出すのではないかと、私は気が気ではない。


パート先である花屋に陳列している花のこともヨメは完璧なほど把握している。

毎月、花に関する雑誌を買い、本の専門書を買って、情報収集に余念がない。

私がブックオフで仕事関係の本を買って帰ると、「その本、図書館に置いてないの? もったいないんじゃない?」と非難するヨメ。
だから、私は、ここ数年、あれほど好きだったブックオフ通いを止めて、図書館の常連になった。

私が買う仕事の本は「もったいなくて」、自分が買う花の本は「もったいなくない」という論理は、人類史上最強の鎧を着込んでいるので、この論理を覆すことは、誰にも出来ない。


そんなこともあって、私は、最近ひとつの仮説を立てたのである。

おそらく、私の言葉は、ヨメの脳の中では、アカン語かヘブライ語に聞こえているのではないか・・・・・と。

ヨメの脳の中には、アカン語、ヘブライ語を変換するソフトが入っていないので、ヨメは私の言葉が理解できないのだ。
この仮説に、私は自信を持っている。


そんなヨメが、先日、店の客に、こう言われたらしい。

「あなたの言ったとおりにしたら、庭のオリーブの木が生き返ったわよ。ありがとう。嬉しいわぁ」

そう言われて、体が震えるほど、ヨメは感動したらしい。

「この仕事やっていてよかったァ!」と、涙目で喜ぶヨメ。

そんな姿を見ると、私の言葉が、ヨメの脳に、アカン語、ヘブライ語に聞こえることなど、どうでもいいことのように思える。


しかし、昨晩寝る前のことだ。

ヨメが突然言った。

「ソーキさん(業者さん)への振込、忘れてたぁ! ああ、どうしよう! パートしているときは覚えていたんだけど、店出たら忘れちゃったァ! 明日でも、いいかしら」



はいはい。

忙しいからといって、頼んだ俺がバカでした。



2012/07/03 AM 05:40:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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