Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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お好み焼きとゴハンとキリンおやじ
よく話題になることだが、お好み焼きをおかずにして、ご飯が食えるか、というのがある。

一昨日の日曜日も、同業者との飲み会の席で話題になったのだが、私には、なぜそれが話のネタになるのか、未だに意味がわからないのだ。

お好み焼きとご飯、味噌汁。
それのどこに問題点があるのか、と思う。

私は大阪生まれではないし、広島生まれでもない。
東京生まれ東京育ちのホネホネ白髪おやじだが、お好み焼きとご飯に関しては、何の違和感もない。

「だって、炭水化物同士でしょ」と決まり文句のように言う人がいるが、なぜ炭水化物を同時に摂取してはいけないのだろう。

ランチで、ガーリックトーストのあとに、ボンゴレスパゲッティあるいはカルボナーラ、ボロネーゼを出す店を私は知っているが、その店は毎回、お客様からクレームをいただいているのだろうか。

「炭水化物と炭水化物は、おかしいですよ」
そうやって、非難されているのだろうか。

しかし、スパゲッティの量が、レギュラーでも大盛りということもあって、その店はいまも大変繁盛しているようだが。

そんな風に「炭水化物to炭水化物」のことを否定する男が、居酒屋で海鮮チヂミを食ったあとで、鮭のオニギリを食うのは、矛盾していないか。

居酒屋で、サイコロステーキを食った後で、豚肉の生姜焼きを食うという「動物タンパク質to動物タンパク質」が許されるのに、なぜ「炭水化物to炭水化物」はいけないのか。

シーザーサラダを食ったあとで、お新香の盛り合わせやキュウリの浅漬けを食う「野菜to野菜」に、なぜ文句を言わないのか。


胸を張って言うが、私はお好み焼きやたこ焼きを食いながら、ご飯をかき込むことを何の恥とも思っていない。
これに、油揚げとネギ入りの味噌汁がつけば、盛大なご馳走だ。

本当に美味しいお好み焼きと、本当にうまく炊けたご飯を食うとき、私は日本人に生まれてよかったと、いつも両親とお百姓さんに感謝しているくらいである。

お好み焼きとご飯は、関東人が関西人を揶揄するための道具として使っていると思うので、一種のシャレと言っていい。

しかし、シャレなのに、「お好み焼きに、ご飯、味噌汁を食う関西人って」と、大真面目に関西人否定論を展開する人を見ると、興ざめする。

それは、某バカな同業者たちのことを言っているのだが・・・・・。
(おまえたち、関東人ではなく、出身は名古屋、広島、福井だろうに)


炭水化物同士がダメなら、焼きそばパンも許されないのか。
力うどんもダメ。
お前らがよく食う「山田うどん」(埼玉のローカルなチェーン店)のカツ丼セットは、カツ丼とうどんだぜぇ〜。

うどんとお稲荷さんは、どうなの?
市販の弁当に、ご飯とスパゲッティ、コロッケが同居しているのを見たことがありますが。
東京のラーメン屋でよくお目にかかる、半ラーメン半チャーハンをどう説明する?

そして、私には、チキンラーメンを食ったあとに、そのスープにご飯を投入して「超絶うまい!」と感動する知り合いが(私も含めて)数人いるが、それも、いけないのか?

似非(エセ)関東人が関西人を揶揄するなら、もう少し「ましなシャレ」を用意しないと、シャレのわからない、ただのクレーマーに成り下がる。

理論武装が中途半端だと、結局、その意見は、誰かの真似をした「他人任せの理論」になる。
要するに、それは、他人の意見に流されて、勢いだけで言う「モノマネ意見」。

海鮮チヂミのあとに鮭オニギリを食ったその口で、「お好み焼きにご飯なんて、信じられませんよぉ!」と大真面目に言いながら、さらに焼きそばを頼む、人類史上もっとも顔が馬に激似の同業者。

顔が、馬の偽物なら、意見も偽物。

偽物だらけで恥ずかしくないのか、と罵ったら、最年長のオオサワさんから嗜められた。

「それは、言いすぎですよ。酒の席の一つの話題として取り上げただけなんだから、そこまで怒らなくても」

いや、怒っちゃいないんですけどね。
彼が、過去に、広島お好み焼きを食ったあとで、デザートにもみじ饅頭を食うと言っていたことを思い出して、完全に理論破綻しているな、と思っただけです。

「いや、それはデザートだから、いいんじゃないですかね」とオオサワさん。

そうか、デザートならいいのか。

しかし、ざるそばを食いながら、イワシの握り寿司を食っているオオサワさんは、「お好み焼きとご飯」に、異を唱えることができるのだろうか。

そう言ったら、「いや、イワシの握り寿司は、ご飯が主役じゃなくて、イワシが主役ですから」と涼しい顔をしておっしゃった。

では、お好み焼きのほかに、ご飯に生マグロのぶつ切りをのせて、お茶漬けにしたら、許されるんですか。

「いや、生マグロのぶつ切りは、そのままの方が絶対に美味しいでしょう。それにお茶漬けは、完全に炭水化物です」

いい加減な理論ですね。

「いや、いい加減な理論じゃないですよ。炭水化物の摂り過ぎは、糖尿病などの成人病の引き金になるからです。お好み焼きのカロリーが高いの知ってました?」
(身長163センチ、推定体重80キロのオッサンが、高カロリーのことを、身長180センチ、体重55.2キロのホネホネ白髪おやじに言うか?)

まあ、知っていますがね。
しかし、それは、広島お好み焼きとデザートにもみじ饅頭を食っても同じでしょう。

私が、そう言うと、オオサワさんは、「あの人のことは、放っておきましょうよ」とお馬さんを指さした。

形勢が悪くなると、放っておくようだ。

「僕が食べているざるそばは健康食ですよ。カロリーは、お好み焼きの半分くらいじゃないですかね。それに、イワシの握り寿司は、酢飯だから、ヘルシーです。お好み焼きとご飯とは、比べものになりません」

しかし、その他に「鉄板ぎょうざ」「なんこつ唐揚げ」「豚串2本」「茄子の天ぷら」を食っていたら、ヘルシーとは言えないのでは?

それに、オオサワさんは、最近お気に入りの丸亀製麺でうどんを食うとき、必ず「おむすび」か「いなり」を注文すると聞きましたが、それは確実に炭水化物to炭水化物だと思いますが。

そのとき、お馬さんが、私とオオサワさんの話に、割り込んできた。
「だって、うどんだけじゃ、お腹がすくでしょうに。おむすびを追加しないと、腹持ちがしませんよ。俺は、おむすびだけじゃ足りないんで、サツマイモの天ぷらをトッピングします」

おーーっと! 自分から理論を破綻させてきたぞ。

うどん、おむすび、サツマイモの天ぷら。

炭水化物ばかりやないか〜い!

もういいや、この話題。
結局、こいつらに、ポリシーなんてものは、1ミリもないのだ。

こんな話題に乗っかった、俺がバカだった。
(某新聞社所有の野球集団の話題よりマシだと思ったが)時間の無駄だった。

黙ってジョッキを飲み、ピザを上品に食っていたほうがよかった。


そう思っていたら、iPhoneが震えて、メールが届いたことを知らせた。

以前のブログで書いたことのある、21歳のポニーテールさんからだった。

「お好み焼きとチャーハンを作って食べてま〜す ('∀`) 激ウマ (^ム^)」

お好み焼きとチャーハンの画像付きだった。

旨そうだ。
若い子は、炭水化物to炭水化物など、気にしないのかもしれない。


そこで、私は同業者の写真を撮って返信した。

添えた文の内容は、こうだった。

馬とブルドッグ、カピバラ、テングザルと一緒に、動物園で。


すぐに、返信が来た。
「キリンさんが、いないんだけど」

キリンさんって?

「白髪おやじのこと。だって、首の長さが人間離れしているから」


キリンさん・・・・・かあ。

ホネホネ白髪おやじより、インパクトに欠けるなあ。

「じゃあ、ホネホネ白髪キリンおやじで、どう?」

それじゃ、長いだけだ。

「だって、キリンの首は長いよぉ〜」

ああ! それは、うまい!

「じゃあ、ホネホネ白髪キリンおやじで決定 ヽ(*´∀`)ノ 」

いや、それは、却下。

「ショボン (´・ω・`) キリンおやじめ (;´Д`) 」

キリンおやじなら、許す。

「ワーイ (*´∀`*) 」


結局、同業者との会話より、21歳のポニーテールさんとのメールのやり取りの方が楽しかった、キリンおやじでした。




さて、昨日突然、3つの急ぎの仕事が舞い降りてきたので、本日から、オリンピックとは無縁の生活になる。
(ダルマ、稲城市の同業者、我がオンボロアパートのオーナー・・・俺を寝かさないつもりだな)


選手の皆さま、私が応援しないからといって、手を抜かないようにお願いしますよ(偉そうに)。




2012/07/31 AM 08:29:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

オレを責めるな
イチロー氏は、マリナーズでMLBの生涯を終えるものだと思っていた。

しかし、考えてみると、MLBでは、幸福な形で選手生活を終えた人は稀である。

ヤンキースのような常勝球団にいるデレク・ジーターやマリアーノ・リベラなどの、ごく限られたエリートだけが、おそらく同一球団でアスリート人生を全うすることができる。

イチロー氏の野球人生の終焉も、その偉大なキャリアを、ただ消耗させた形で終わるのかと思うと、心が痛む。

巨大化したアメリカのスポーツビジネスは、偉大なアスリートの晩年を、まるでジェットコースターのように急降下させたままエンディングを迎えさせる。

イチロー氏には、新たな地ニューヨークで、緩やかに上昇し緩やかに下降する、デパートの屋上にあるジェットコースターのような終焉を迎えて欲しいものだ。

スポーツ界の巨大ビジネスの象徴であるヤンキースでは、無理かもしれないが・・・・・。



ところで、話し変わって・・・。

お中元、お歳暮は、日本の美しい慣習である。

だが、その美しい慣習を、私は3年半前からやめている。

まず貰う側として、考えてみた。
友人のチャーシューデブ・スガ君からは、毎年洒落た高級調味料の詰め合わせをもらう。

私は、食材は低コストのものを使うが、調味料だけは安いものは使わない。
調味料まで安いものを使ったら、料理が安っぽくなる。
常日頃から私がそう言っているのを知って、スガ君は、厳選した調味料を贈ってくれるのである。

感謝。

天才WEBデザイナーのタカダ君(通称ダルマ)からは、いつも高級そうなインスタントコーヒーの詰め合わせをいただく。
極道コピーライターのススキダからは、スーパードライをワンケース。
浦和の一流デザイナーのニシダ君からは、外国製ビールの詰め合わせをもらう。

感謝。

もちろん、全てが嬉しいのだが、ある日突然、私はパターン化していないか、もらうのが当たり前になって感謝の気持ちを忘れていないか、と考えたのである。

次に、自分が贈る側として考えてみた。

お中元は、缶ジュースの詰め合わせかカルピス。
お歳暮は、ほとんどが洋菓子。

これこそ、パターン化して、感謝の気持ちのない惰性で送る贈り物。

それなら、感謝の気持ちを込めて贈ればいいではないか、と言われるかもしれないが、贈って感謝されているかどうかもわからない贈り物に誠意を込めるのが、そのときの私は面倒くさく思えたのだ。

私の場合、お中元やお歳暮をいただいたら、必ずお礼のハガキを送る。

しかし、私は今までに一度も贈った先から、お礼のハガキをいただいたことがない。

だから、お中元やお歳暮を贈っても、本当に感謝されているか、わからない。

俺は、無駄なことをしているのではないか。

無駄なことをするのは、いまエコが声高に叫ばれている時代に逆行していないか。
そう思った私は、3年半前、突然宣言した。

俺、お中元とお歳暮やめる。
贈るのもやめるし、貰うのもやめる。

そこんとこ、ヨロシク。

ダルマから貰うインスタントコーヒーの詰め合わせは、大変重宝したし、スガ君の調味料も料理好きの私には大変ありがたかった。
ススキダやニシダ君からのビールの贈り物も、アル中の私には、最高のギフトであると言えた。

それを断るのは、道端に落ちている百円玉を見逃すくらいの悔しさがあったのだが、贈るのをやめる以上、貰うのもやめないとフェアではない。

ただ、得意先には、あらためてお中元、お歳暮をやめます、と宣言したわけではなかった。
何も言わずに、贈るのをやめた。

先方は、おかしい、と思ったかもしれないが、どこからもクレームは来ず、仕事も今まで通りいただいている。

お中元、お歳暮をやめたことで、私の仕事に何の影響もなかったことは幸いである。

ダルマたちも、聞き分けよく、贈るのをやめてくれた。

結局、あまり意味のない慣習だったのだな、と私は結論づけたのだが、ただ一社だけ、印刷をお願いしている東京の会社だけは、毎年お中元、お歳暮を贈ってきた。

いただいて、お礼のハガキを書くとき、感謝の言葉とともに、次回はご遠慮いたします、と毎回書き添えるのだが、それでも贈ってくる。

一回や二回なら、まあ、いいか、で済ませられるが、毎回贈ってこられると、心に波が立つ。

だから、昨年の夏、その会社の事務の方に、申し訳ありませんが、お中元等の風習はやめておりますので、と直接言ったことがあった。
その場では了解されたが、昨年も、その会社からは、お中元、お歳暮が贈られて来た。

こんなとき、多くの人が、まあ、一社くらいいいだろう、と思うはずである。
目くじら立てることもあるまい・・・・・と。

だが、私は、この程度のことでも、チェッ、約束事くらい守れよ、と思うタチなのだ(面倒くせえ男)。

相手が、わかりました、と一度でも答えた以上、それを守らないのは、不誠実であると思ってしまったのだ。


ということもあって、私は、今年から印刷会社を代えた。

4年半のお付き合いだったが、迷いはなかった。

それを聞いた同業者からは、「そんなことで代えるの!」「可哀想じゃないか!」「印刷屋さんに同情するね!」「相手は、精一杯誠意と感謝の気持ちを見せてるのに、何ですか、その仕打ち!」と、やかましいほどの非難を受けた。

非難囂囂(ヒナンゴウゴウ)とは、このことかと思った。

そんな風に、嵐のような激しさで言われると、自分が、ものすごい人でなしに思えてくる。


俺は、ひとでなし・・・・・。


気分が、井戸の奥深くまで沈み込んでスネていたら、その印刷会社から、今年もお中元が来た。

いつもなら半年に2〜4回頼む仕事が来ないのだから、先方も、「ああ、他に頼んでいるな」と思うのが普通だろう。
もう贈る必要はないだろう、と考えるのではないか。

しかし、来た。

紅茶パックの詰め合わせを目の前にして、ホネホネ白髪おやじは、どうしたもんかなあ、と頭の毛が白くなるほど悩んだ。
食事が喉を通らず、体重が30グラムも減ったホネホネ白髪おやじ(痩せすぎて、減るべき体重が数グラム単位しかない)。

さらに、中央線で寝過ごしてしまい、武蔵境駅で降りるはずが、終点の高尾まで行くくらい激しい寝不足の中で考えた、ホネホネ白髪おやじ。

そして、結論が出た。

いただいたお中元を、お礼状を添えて、お返ししよう。

そして、いま手がけているオーガニック・レストランのポイントカード兼割引券の印刷をお願いすることにしよう。

自分でも、単純な出来事を複雑なものにしているとは思うのだが、いらないものはいらない、という意思表示だけは、しておきたい。

そこだけは、はっきりしておきたい。
そうでないと、全体のバランスが取れない。


お中元をお返しし、新たに仕事をお願いする。

相手は、快く了解の意思を示してくれたから、これで一件落着のはずだったが・・・うるせえのが、同業者どもだった。

「なんか、余計なことしてませんか!」
「最初から印刷会社を代える必要は、なかったんじゃないですかね!」
「非常識! 非常識! 非常識!」


ああ、うるせえ! うるせえ! うるせえぞ! ボケッ!




それ以上責めると、オレは、泣くぞ!

家出するぞ!

青春18きっぷで、旅に出るぞ!

(ああ・・・・・それも、いいかも・・・)




2012/07/26 AM 07:08:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

生誕の瞬間
昨日は、ほとんど一日中、祝杯をあげ続けた。

今朝の私は、二日酔いではないが、気分がややハイである。
きっと支離滅裂なことを書くと思う(支離滅裂は、いつものことですが)。

だから、ゴメンナサイと先に謝っておきます。


インターネットの記事は、ヤホーやゴーのトップページの見出しだけをいつも見る。

記事を読んでいる暇はないので、見出しを読んで、瞬間的に内容を想像する(想像したことと事実が合っているかは不明)。

ただ、たまに何かの加減で、記事のページを開いてしまうこともある。
そういうときは、読むときもあるし、飛ばすこともある。

一昨日の朝は、前者だった。

米国で、人命救助した21歳のライフセーバーが、その行動を理由に会社から解雇を言い渡されたという記事だ。

ライフセーバーが、溺れた男性を助けたのだが、そこは市から請け負っている監視区域のエリア外だったため、その行為が契約違反と判断され、人命救助したのに、持ち場を離れたという理由で解雇されたというのである。

さすが契約社会、アメリカ。
見事なほど杓子定規だな、と感心した。

感心はしたが、私が興味を持ったのは、それとは違うところだった。
読み進んで一番下まで行くと、コメント欄がある。

そこに、こういうコメントがあったのだ。

「理由はともあれ人命優先! 日本の民主党みたいに冷酷な会社だな」

私は、関係ない出来事を何でも民主党に結びつける偏執狂的なコメントに同意する人が、あまりにも多いことに驚いたのだ。

記事の真意を読み取る能力がない。
あったとしても、興味の行き着く先が歪んでいるから、結論が固定観念でがんじがらめに縛られている。

このような人たちは、どのような日本語を書けば、理解できるのだろうか。

アメリカのライフセーバーが、人命救助をして解雇されましたが、そのアメリカの会社は日本の民主党の真似をしただけなので、本当に悪いのは日本の民主党です、と書けば納得するのだろうか。

また、大津のいじめ事件では、すべての事実が明らかにされたわけでもないのに、ヒステリックに魔女狩りを始めるという事態に陥っている。

試験で言えば、すべての問題文を読んだわけでもないのに、思い込みだけで答えを書いている状態だ。
(早とちりの元大統領夫人は、自分のことを正義の使者だと勘違いしているようだ)
(早とちりのマスメディア、ネット住民もスクープ合戦に血眼だ)

教育委員会と警察、検察、裁判官が当てにならない人種だということは、私も否定はしないが、だからと言って、プライバシーを尊重できない人が、無責任に、ひとを裁くことには賛成できない。

集団ヒステリーが、事実を正確に追求した試しが、はたして過去にあったか。

怒りにまかせて行動する人は、結局は加害者と同じ船に乗っていて、海に向かって、加害者同様、闇雲に弾を打ち込む人だと私は思っている。
そして、打ち込んだ弾が、何の罪もない人に当たったとしても、正義があれば許されると思っている人たち。

無能・保身の教師、教育委員会を弾劾するには、正確な情報だけが判断アイテムになる。
正確な情報で、教育委員会等関係者を追求するのは、大いに賛成だが、根拠のはっきりしない情報で正義を振りかざすのは、ただの「煽り」である。

集団ヒステリーが行き着く先は、正義を隠れ蓑にした「公開処刑」だ。

それでは、中世ヨーロッパの暗黒時代と変わらない。
(ただ、もちろんのことだが、中世ヨーロッパ・ルネッサンス期と今の時代を同一に扱っているわけではない。異端弾圧と今回の事件を同一視しているわけでもない。公開処刑と電波媒体による弾劾を比喩的に表現しているだけである)

犯した罪を償わせたいなら、正当な手続きが必要だ。
感情論で弾劾するだけでは、裁判が結審する頃には、人々は今までと同じように、熱が冷めたら事件の存在すら忘れてしまうに違いない。

そんなことになったら、亡くなった中学生の無念さ、親御さんのやりきれなさだけが、宙に浮く。


だから、ヒステリックに、今だけ騒ぐな。
人の意見に流されるな。
事件を忘れるな。


今も、新しい命が、親たちの愛情と期待をその全身に受けて、この世に誕生している。

その尊い命を守るためには、「いじめ」という「凶悪犯罪」を見過ごさないシステムを作ることこそが最優先課題だと、私は思っている。


というようにイラついていたら、iPhoneが震えた。

ショウコの夫、マサからだった。

「先輩! ショウコが、先輩に来て欲しいと言っています! お忙しいとは思いますが、来ていただけませんか」

なぜ、私が行かなければいけないのか。

それは、民主党が悪いからか?

「え? みんしゅとう〜〜〜!」

それとも、フジテレビが悪いからか?

「ふじてれびぃ〜〜〜?」
マサの声が裏返っていた。

自分以外は、クソでキモくて、終わっているからか?
(インターネットの世界では、クソ、キモい、終わっているというのが、他人を弾劾する常套句だということを、最近、高校二年の娘に教えられたばかりなので、使ってみた)

「いや、先輩、そうではなくて、ショウコが生まれるんです!」

ショウコは、すでに生まれているだろう。
生まれ変わるということか?

つまり、リインカーネーション。

「いや、カーネーションではなくて、ショウコです、先輩」

さっぱり、わからん。

が、生まれるらしいので、行くことにした。

車で迎えに行きましょうか、と聞かれたが、何が生まれるかわからないが、もし生まれるのなら君は持ち場を離れないほうがいい、八王子なら、ここから徒歩と電車で41分6秒で行けるから、と言って電話を切った。

産院に行ったら、まだ生まれていなかった。

で、何を生むんだ? とショウコの夫のマサに聞いた。
すると、マサが生真面目な顔をして、「ショウコが人間の赤ちゃんを産みます」と答えた。

(まあ、それしかないですわな)

で、オヤジのカネコは、どうしたんだ? と聞いた。

「お義父さんは、仕事が忙しくて、すぐには来られないそうです」

ショウコの父親のカネコは、大学時代の2年後輩だが、先輩の私のことを「おまえ」と呼ぶ、非常識で芋洗坂係長に激似の男である。

カネコとショウコの間には、血の繋がりはない。
カネコが結婚した相手に、6歳の子どもがいて、それがショウコだったのだ。

ショウコは、カネコが父親になった当初は、むしろ私の方に懐いていた。

6歳のショウコは、私に向かって、「ねえ、サトルさん、何でサトルさんがパパじゃなかったの?」と聞いて私を困らせたものだ。
それに対して、私は、君のお母さんの旦那はカネコだが、君のパパは俺だと思っていいんだよと、いい加減に答えた。

ショウコは「わかった」と答えた。

だから、ショウコは、私の娘同然である。

ショウコには、勉強を教えた。
宿題も手伝った。
一緒に風呂にも入った。
テニスを教えた。
旅行に連れて行ったこともある。

私の二人の子どもと同等の愛情を注いできたつもりである。

だから、ショウコが大学一年のとき、マサと結婚したというのを聞いて、私は完全に「花嫁の父」状態になった。

最初の報告は、カネコを通して受けたのだが、大宮駅のホームで、電話でそれを聞いたとき、私の体は、糸の切れたマリオネットのように、体が立つことを拒否し、近くのベンチに座ったまま、泣いた。

なんで、あらかじめ教えてくれなかったんだ、と後で聞くと、ショウコは「だって、事前に教えたら、サトルさん、ショックを受けて、みっともないくらいに泣くよね」と言われた。

いや、どっちにしたって、俺は泣いたさ、というと、「ヒャハハ、確かにィ!」と大声で笑われた。

それからのマサとショウコは、私の真似をして、結婚式は挙げずに、親しい人たちだけを呼んで、ささやかな披露宴を催した。
(俺は泣き顔を見られたくなかったので、披露宴の参加を拒否した)
そして、新婚旅行は、宮城の秋保温泉。

私たち夫婦の新婚旅行も秋保温泉だった。
ショウコは、「なんで、秋保温泉?」と聞いた。

あ、で始まるところに行ってみたかったんだ。
日本では、あ、が始まりだからね(英語でも爍甅瓩始まりだが)。
なんでも始まりは、縁起のいいもんさ。

「じゃあ、アラスカでもアルゼンチンでもアゼルバイジャンでも、秋田でも青森でもよかったんじゃない?」

そうだね。
明石に本場の明石焼きを食いに行こう、という案を出したが、それは見事に却下された。

秋保温泉にした理由。
それは、おそらく誰も新婚旅行の行き先として秋保温泉を選ばないからかな。

「ハハハ、バカだね」と、ショウコ。

しかし、マサとショウコは、秋保温泉に二泊三日の新婚旅行に行き、毎年結婚記念日前後に、秋保温泉まで一泊の旅行に行くのだという。

つまり、バカは、うつるらしいのだ。


そんなショウコは、大学2年のときに、一人目の子どもを産み、大学院2年のいま、二人目を出産するという生き急いだ人生を疾走している。


白衣の女性に呼ばれて、マサが分娩室に消えた。
6分後に出てきたマサが、私にハイタッチを求めた。

つまりは、無事産まれた。

我ながら気持ち悪いと思ったが、マサと抱き合った。
マサの体が、異様に熱かった。

ゴツゴツした体の感触は思い出したくもないものだったが、その喜びは全身で感じ取ることができた。

「先輩、男でしたよ。男。ショウコそっくりのイケメンです」
そして、「先輩、ショウコが呼んでるんですけど・・・」

な、何で俺を呼ぶ?

「赤ちゃんを見て欲しいって、そして、褒めて欲しいって言うんです」

やだ!

それはマサとカネコ、ショウコの母親の役目だ。

自分の子どもの出産には、二回とも立ち会ったが、今回の俺には、資格がない。

オレは・・・・・・・ふさわしくない!

そう言ったら、マサが、「ショウコは、いつも言っているんですよ。私には、3人の父親がいる。実の父親と私を育ててくれたパパ、そして、色々なことを教えてくれたホネホネ白髪おやじだって」と言ったのだ。

こいつ、俺を泣かせるつもりだな。

私がよく使うフレーズの「ホネホネ白髪おやじ」は、ショウコが言い始めたことである。

だから、私は、この表現がとても気に入っている。
それは、娘だから許せる表現だと言っていい。

娘が呼んでいるのなら、行かないわけにはいかない。

大きく深呼吸をしてから、分娩室に入った。

ショウコは、すぐに私の存在を認めて、「ああ! ホームレスのホネホネ白髪おやじだぁ!」と言った。

両手で、産まれたての赤ん坊を抱えていた。

紅潮した顔。
そして、これ以上ないほど、満足感を湛えた顔。

まるで、神が宿ったような神々しい顔をしたショウコ。

自分でも訳がわからない問いかけだと思うのだが、私は、いま何時だ? と聞いていたらしい。

「11時23分」というマサの声が聞こえた。

そして、何日だ? と聞いた。

マサが「7月20日ですけど・・・」と、声に戸惑いを浮かべて、私を凝視した。

オレ・・・・・混乱しているみたいだな。

「ほら! サトルさん、褒めて褒めて!」
ショウコの声が、掠れていた。

それは、死闘の後を物語る、尊い崇高な声だった。

私も声を掠れさせながら言った。

ショウコ、君はいま世界で一番強くて美しい女性だ。
ただ眩しすぎて、俺には君の姿がぼやけて見えるんだ。

そんな私の言葉に対して、ショウコは、「だって、サトルさん、顔、ひどいよ。涙でグシャグシャだよ」と、女神の顔で笑った。

申し訳ござらん、と思ったとき、芋洗坂係長に激似のカネコが到着した。

マサが「お義父さん、男でした、男でしたよ!」と、巨漢のカネコにぶつかって、気持ち悪い抱擁をした。
カネコは、出っ張った腹にマサを乗っけて、豚のダンスを始めた。

そして、「おとこー!」と叫んだ。

それを見て、俺の出番が終わったことを悟った私は、待合室に戻り、みっともないほど涙に濡れた自分の顔を両手でゴシゴシと拭いた。

しかし、涙は止まらなかった。




聖なる母の体内に、長い期間守られていた一つの命が、いま誕生した。

この子の命を守りたいと思った。

どんなことをしても、守りたいと思った。



俺の両手と俺の命は、そのためにあるのだと、俺は、自分に強く言い聞かせた。



2012/07/22 AM 06:21:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

沈黙は最強の抵抗
若い子とメールアドレスを交換したことを前回書いた。

ただ、メールアドレスを交換したからといって、それは儀礼的なもので、本当にメールをするつもりはないだろう、というのが常識的な考え方だと思う。
しかし、そうは思ったが、一応ポニーテールさんに、宣言をしておいた。

俺は病的な面倒くさがりなので、メールをマメにしたり、すぐに返信したり、というような芸当はできない。
俺は、メール劣等生なんだよね。

すると、ポニーテールさんは、「ああ、ワタシも! メールもらって3日後に返信して怒られたことは、しょっちゅう!」と白い歯を見せて「ダハハ」と笑った。

「ダハハ」と笑うのが、好きなようである。

そんな私と同じ「メール劣等生」のポニーテールさんから、一昨日の夜メールが来た。

いま働いているパート先の社長が独裁者で、社長がすべてを支配しているのだが、社員は、みな従順で社長にひれ伏すようにして働いているのだという。

ときどき社長が訳のわからないことを言っても、誰も逆らうことなく、ポニーテールさんが言うには、みんな喜んで支配されているように見えるらしい。


よそ様の会社の内情は、パート一人の目で見ただけでは、わからない。
社長には社長の考えがあり、社員には社員それぞれの事情がある。

会社が健全に機能していれば、社長が独裁者でも構わないのではないだろうか。
中小企業の社長で、独裁者じゃない人を探すほうが難しい。


そう返信したら、「さすが大人のご意見(´Д`)」と、返ってきた。
そして、「私たちパートの直接の上司が、社長の真似するミニ独裁者。嫌なやつでね」と続く。

「全部が命令口調。
あれしろ、これしろ、早くしろ、おしゃべりやめろ、爪を切れ、返事が小さい、化粧を薄くしろ、しろ、するな、しろ、ばっかり。
だから、白髪おやじ(俺のこと? ホネホネ白髪オヤジですが)が教えてくれた、沈黙の抵抗を最近始めましたぁ!」

どうだった? と返信。

「上司の顔が、鬼のように変わったけど、無視して沈黙した。
でも、仕事はいつも以上にしたから、まわりが爐匹Δ靴燭痢瓩辰董∧垢い討た。
わけを話したら、今度はみんなで沈黙しようということになって、今はパート9人中4人が狡戚曠譽鵐献磧辞瓠
レッド、イエロー、ピンク、ブルーの狡戚曠譽鵐献磧辞瓩如∋笋ブルー。
上司の顔は、鬼のままだったけど、いつも以上に仕事はしているし、後片付けや仕事道具の清掃なんかも率先してやっているから、文句は言えない。
面白いよね。
いいこと教わったよね」

ちなみに、ポニーテールさんのパート先は、食品加工会社です。

クビにならなければいいのだが・・・・・。

そうなったら、完全に私の責任だ。

「白髪おやじ、気にすんなよ。これは私たちが選んだ方法なんだから、責任は私にあるからね。
でも、何で男たちは、支配されるのが好きなんだろうね。
うちの社員どもは、自分を完全に殺してるというより、命令されて喜んでいるように見えるよ。
見ていて情けないよ」

白髪おやじではなく、ホネホネ白髪おやじですが。


独裁者を選ぶ人の際立った特徴は、自分の考えを放棄しているところ。

人の強い意見に従っていれば、あるいは権力者に迎合していれば、自分で考えなくて済む。
自分で決める能力のない人が、独裁者を選ぶ。

上の人が決めてくれたことに素直に従っていれば、とりあえず今の生活だけは維持できる。
その生活が、はたから見て、どんなに悲惨なものでも、慣れてしまえば彼らに大きな不満はないんだと思う。

自分でも軽薄な言い方だと思うが、ロシア人や中国人、北朝鮮人、シリア人なども、知らない間に考えることを忘れ、支配されることに慣れきって、考えることを放棄しているように思える。
その方が、楽だから。

某都知事や某市長を支持する心理も似たようなもの。
理性的ではない意見でも、強い圧力で言われると、考えるのが苦手な人は、頷いてしまう。

自分が考えていないのだから、自分に責任はない。
自分を殺して、他人の命令に従属していれば、己れを反省することもない。

そんなことを繰り返すうちに、支配者の意見が、いつの間にか自分の意見になる。
支配者と同じ考えになる。

誤解されることを承知で言うが、かつての反社会的な教団の教祖の教えに唯々諾々と従う信者の心境も、それと同じではないか、と思う。

命令されたことだけをやればいい。
つまり、考えなくていい。
それは、とても楽だ。

最初のうちは抵抗していても、支配が長く続くと、それが当たり前になる。
そのうち、命令されたことが、自分の自発的な考えのように思えてくる。
そして、それを他人に強要したり、実行したりする。

それを繰り返すうちに、他の人にも支配者の考えが、浸透する。

それに逆らえるか逆らえないかで、アイデンティティの位置づけがわかる。

支配者寄りになるか、本来の自分を確立したままでいられるか。

支配者寄りになった人は、それを否定したら、自分が自分でなくなるから、より一層支配者と同じことをするようになる。
だから、強権的になるんだ。

強権的なアジテーター(扇動者)に煽動された人は、同じように強権的なアジテーターになる。

そこまで行ってしまったら、引き返すことは難しい。
支配者と同化してしまっているんだから、支配者がいなくならない限り、彼は支配者と同じことをし続けるだろう。
支配者の思想に、支配され続けるだろう。


だから、俺は沈黙で、それを防御するんだ。

支配には、沈黙の抵抗を。

弱い人間が、支配者に勝つ方法は、それしかない。



そんなことを返信したら、返事が帰ってこない。


ポニーテールさん。

一行でもいいですから、返信を・・・・・。



しかし・・・・・こんな非論理的で馬鹿げたメールに、返信が来るわけないか。



2012/07/18 AM 05:41:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

ヨコハマの空の下 メルアド交換
横浜元町の松雪泰子似の美女から仕事をいただいた。

この松雪泰子似の美女のことは、このブログで何回か書いているが、最近は、ご本人から柔らかなクレームをいただいているので、あまり書けない。

柔らかなクレーム。
「あまり美化されると正直困るんです。私はMさんのブログファンの一人ですが、何度も書かれると、ブログを読むのをやめようかと・・・・」

絶滅の危機に瀕するツシマヤマネコと同じように、数少ない貴重なブログファンを失いたくないので、もう書くまいと固く誓った。

しかし、死ぬ前に、一つだけ言っておきたい。

私が「美女」と書くとき、たいていは10%増量して表現するのだが、この人の「美」は、本物である。
性格も含めた正統派の美女をひとり選べと言われたら、私は間違いなく彼女を選ぶ。

これは、どうでもいい情報だと思うが、私が見た美女のベスト・スリーは、港区北青山のバスタ屋さんの行列に並んでいた故・夏目雅子さん。
渋谷宇田川町のNHK放送センター駐車場で見た中山美穂さん。
お台場で、同年代の女性と二人で歩いていた滝川クリステルさん。

いずれも女神といっていい方々だった。

ただ、このお三人は、芸能人である。
言い方は変だが、「綺麗で当たり前」という方々だ。

しかし、松雪泰子似は、違う。
一般人なのである。

それなのに、この美しさは・・・・・。

具体的に書きたいところだが、クレームが怖いので書かない。

ただ、松雪泰子似との1時間4分の打ち合わせの間、私の心臓の鼓動は、いつもより29%アップし、至福の時間を過ごしたことだけは、死ぬ前に、ここで書き残しておきたい。

ここまで書いて、気が晴れたので、話を次に進める。


打ち合わせが滞りなく終わったあとは、フリータイム。

まさか松雪泰子似を昼メシに誘うわけにはいかないので(そんな度胸はない、金もない)、どこか広い空間で、精神の安らぎを得たいと思った。

横浜元町のそばには、港が見える丘公園という有名な公園がある。
私の好きな公園の一つではあるが、ここは有名すぎて今さら足を運ぶのも照れくさい空間である。
(坂道を登るのが面倒くさい。そして、カップルが多いから。)

人一倍カップルに対して敵意を抱いている私は、この公園のことは無視して、元町からはかなり離れているが、根岸森林公園まで足を伸ばすことにした。

根岸森林公園に関しては、ネットで調べれば簡単にわかるだろうから、沿革・歴史など詳しいことは書かない。

むかし友人が根岸に住んでいたとき、彼のマンションを訪れるたびに私たちはここに足を運び、毎回のようにランニング(ジョギングではない)をしたものである。

1周約1.3キロの周回コース。
それなりにアップダウンがあるので、ペース配分が難しいコースだと言える(クロスカントリー的と言えば、わかりやすいか)。

1周を5分15秒以内で走ったら、今日は調子が良い。
しかし、それ以下だったら、調子が悪い。

それを基準にして、走ったものだ。
それが、13〜4年ほど前のことだ。

その後、1度だけ根岸森林公園に足を運んだことがあったが、ランニングはしなかった。

いつも一緒に走っていたパートナーは、離婚と長年のハードワークがたたって体を壊し、実家のある京都府乙訓郡に帰ってしまったので、走る気になれなかったのだ。


何年ぶりになるか忘れたが、久しぶりに足を運んだ根岸森林公園。

「馬の博物館」の後ろの道を降りると公園がある。
降り立った途端、目の中に、公園の緑が圧倒的な密度で入ってきた。

前日の雨で、緑が、さらに力を取り戻したように思えた。

緑の木と緑の芝生。
緑の美しい公園だという私の記憶は、時を経ても全く色褪せることがない。

暑いが、目を心地よく刺激する緑と、その香りを肌で感じると、体の奥底に溜まった疲労が少しずつ段階的に抜けていく気がする。

つまり、心地よい空間。

木陰に腰を下ろし、バッグから保冷袋に入れたクリアアサヒを取り出した。
昼メシ兼ツマミは、チーかま5本。
あとは、カットよっちゃんを2袋、亀田の柿の種1袋だ。
(人は駄菓子と言うが、私は主食と言っている)

心身ともに完璧にくつろいだ状態でクリアアサヒの500缶を飲み、チーかまを齧るホネホネ白髪おやじ。

午前中は、美女の顔を真正面から拝み、午後は緑深き地で、クリアアサヒを飲む。
久しぶりの贅沢気分である。

ペースの速さに自分でも驚くが、2本目のクリアアサヒを開けた。

何人かのジョガーが、私の目の前を走りすぎていった。
その中で、小柄な体でバランスのいいフォームで走っている女性が、私の目にとまった。

白のTシャツ、白の短パン、青のランニングシューズ。
手をリズミカルに振り、膝から下の蹴り上げも理想的なリズムを刻んでいた。

小柄な割に歩幅の広いストライド走法。
特別スピードがあるわけではないが、才能を感じさせる走りだった。

ステップの度に、頭の後ろで揺れるポニーテールが、まるで別の生き物のように感じられて、目を奪われた。

私の前を通り過ぎるたびに、私はその姿を凝視した、

おそらく、その視線を覚られたのだと思う。
次にその女性が私の前を走ってきたとき、彼女は、「ちょっと頼んでいいですか」とスピードを急に落として、私に言ったのだ。

スケベ心を見透かされたか。

しかし、女性は、綺麗な白い歯を見せて、「すみませーん」と言ったのである。
そして、ストップウォッチを私の目の前に差し出して、「これで1周のラップを教えていただけませんか。走っている私に、何分何秒って叫んでください」。
そう言ったあとで、私に向かって深く頭を下げ、「厚かましいお願いをしてごめんなさい。集中して走りたいものですから」と、下げた頭を数秒間キープした。

断る理由などない。
だから、「いいですよ」と答えた。

そうすると、またポニーテールが揺れたあとで、女性は、コースに戻っていった。

年齢は、おそらく20歳か21歳。
美人かと言えば美人ではない。
可愛いとも表現できない。

ただ普通より「今の消費税分」くらいは、可愛いかもしれない。
それに、健康的な笑顔がプラスされるから、好感度は高い。

濃い緑の匂いの中に、若い健康的な女性の匂いが混じった。

こんな贅沢な偶然なら、一生のうちに、あと一万回は経験してもいいと思った(スケベおやじ)。

普段なら、見ず知らずの人に話しかけられる確率が異常に多い自分の存在を呪ったものだが、この日は呪う気になれなかった。

クリアアサヒが、美味かった。

数分後、ポニーテールが見えた。
ストップウォッチを見た。

5分51秒、と叫んだ。

ポニーテールが、頷いた。

次は、5分43秒。
そして、5分46秒。
5分40秒。
かなり、正確なピッチと言っていい。

ポニーテールが、私の前を50メートルほど通り過ぎてから、反対側の芝生の山を駆け上がった。
練習の続きかと思ったが、次に姿を現したときは、右手に青いリュックを持って、私の方に歩いてくるところだった。

そして、私の前で立ち止まって、1度頭をペコリ。

「ありがとうございましたぁ!」

そのまま帰るだろうと思ったが、躊躇いもなく私の横に腰を下ろした。

ポニーテールは、バッグを開けてタオルを出し、顔と首筋を拭いた。
そして、バックから取り出したミネラルウォーターを一気に半分ほど飲んだ。

見つめては失礼だと思ったので、その動作を気配で感じただけだが。

そのあと、人見知りの私としては奇跡と言っていいくらい、スムーズに雑談に入ることができた。

まず、フォームが綺麗だと褒めた。
ただ、綺麗すぎて力感がない。
一流のランナーは、みな走りに個性がある。
あれは、どこかで全体のバランスを一度壊して、自分のものにしているから、個性的なフォームになる。
それぞれの個性的な走りには、ランナーなりの理論的な裏づけがあるのだ。
しかし、君のフォームは、一度も壊したことも壊されたこともないから、綺麗だけどスピードが上がらないんだ。

そんなことを言ったら、「走るの6年ぶりなんですよ。1か月前に、中学卒業以来6年ぶりにまた走り始めたんです。中学のときは陸上部だったんですけど、色々とあって・・・・・」と、ポニーテールが白い歯を見せた。

6年ぶり、ということなら頷ける。
その割には、いいタイムだったと言っていい。

偉そうに言ったら、「経験者ですか」と聞かれた。

中学、高校、大学のとき、陸上部だった、と答えたら、「見えませんね」と言われた。
速そうに見えないのではなく、「体育会系に見えない」ということらしい。

それは、10人中11人に言われる、と言ったら、「ダハハ」と笑われた。
「このバカおやじ」と思ったのかもしれない。

話を軌道修正した。
俺は、押忍! とか、先輩、ありがとうございました! なんて、一度も叫んだことなかったから、変わった体育会系なんだ。

「じゃあ、先輩から、怒られたでしょ」と、心地よいタメグチで言われた。

沈黙は、最強の抵抗だ。
「Silence, but most strongest resistance」

「沈黙は、最強の抵抗?」
ポニーテールが、斜めに揺れた。

そうだよ。
怒られたら、黙る。
頷いたりしないし、口ごたえもしない。
ただ何度怒られても黙る。
そして、その間に、実力を蓄える。

黙って力を蓄えて、彼らに負けない実力を示せば、3ヶ月もすると、「ああ、こいつは、こんなやつなんだ」と、まわりを思わせることができる。
認めてはもらえなくても、とりあえず仲間には入れてもらえる。

俺は、そうやって高校一年、大学一年の体育会系的封建主義を乗り切ったんだよ。

社会人になっても、独立してからも、ずっとそのスタイルを続けている。

だから、俺から沈黙を取ったら、丸腰だ。
最強の武器がなくなる。

そうなったら、完全に老いぼれたってことだな。

「ダハハ、面白いね」と、またタメグチ。

ポニーテールが言う。
「ワタシ、その面倒くさい上下関係が嫌で、高校では部活やめたんだ。高校出てからも、ずっとフリーター」
そして、天を仰ぎながら、ため息をついた。

「沈黙は最強の抵抗かぁ・・・・・。そんな生き方ができたら、高校でも走っていたかもなぁ・・・・・」

両膝を自分の体に寄せて、膝を両手で抱き、今度は顎を膝の上に乗せながら、顔だけを私にゆっくりと向けた。

そして、言った。
「回り道してるよね、ワタシ」

綺麗ごとだったら、いくらでも言えたが、それを言える雰囲気ではないような気がした。

だから、回り道 地球一周 回り道  詠み人 ホネホネ白髪おやじ、と俳句を詠むようにして言った。

ポニーテールに、瞬きのない目で、見つめられた。

瞳に、公園の緑が映っていたから、その目は、とても綺麗に見えた。
心臓の鼓動が、19%アップした。

そして、突然「メルアド交換しようか」と言われたときは、89パーセントにアップして、失神寸前になった。

「相談に乗ってもらおうかな」


ソ、ソウダンデスカァ?(そうなんですか)。


(ダジャレにもなっていなかったので)完全にスルーされたが、ポニーテールも偶然iPhoneだったので、「Bump」して、交換した。



こんな若い子とメルアド交換・・・・・なんて(ニヤけている)。



長生きしてよかった、と思った。



2012/07/14 AM 06:07:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

恐怖のウナ重
どうでもいい、と思われるかもしれませんが、前回の続きです。

大学時代の友人、オオクボの事務所で、京橋のウチダ氏と遭遇したという話。

ウチダ氏とは、10年ほど前、得意先の新橋のイベント会社で知り合った。
その会社では、彼が、外注に仕事を割り振りする担当だった。

しかし、その会社は、まもなく倒産。

途方に暮れたウチダ氏だが、奥さんが株で得た金を資本にして、ウチダ氏は、東京都中央区京橋でイベント会社を立ち上げた。
5年ほど前のことだ。

ウチダ氏は携帯電話を3台駆使して、一人で事務所を切り盛りし、高級スーツを着こみ、高級車トヨタクラウンを乗り回す毎日だ。

儲かっているかどうかは、知らない。
ただ、東京の一等地、京橋の事務所の家賃を払い続けているということは、それなりの稼ぎがあると想像していいと思う(イヤなやつだ)。


ウチダ氏とは、最初から気が合った。
まるで大学時代からの友だちのように、打ち解けて話をすることができた。

ヒネクレ者で人見知りの私としては、それは、とても珍しいことだった。

だから、私は、その繋がりを大事にしようと思った。
ウチダ氏は、私より5歳年下だったが、総合力で完全に私を凌駕して、完成された「大人」の佇まいを身につけた尊敬できる男だった。

ただ、ひとつだけ難点がある。
このイケメン社長は、独立して5年、私に2回しか仕事を回さないケチな男なのだ。

なぜ、俺に仕事を出さない? と聞くと、「俺は仕事のできるやつにしか出さないんだ」と胸を張る。

そこまでキッパリ言われると、納得するしかない。
清々しい気さえする。

ウチダ氏と私の関係は、茶飲み友だちのようなものだった。
ウチダ氏が話す仕事の悩みを年上の私が聞かせていただく。
私の意見など、何の役にも立たないだろうから、私は聞くだけで、意見や忠告の類いは、ほとんどしない。

私の役割は、ウチダ氏の事務所の冷蔵庫に、大量に常備されているスーパードライかクリアアサヒを消費するだけだ。

まったく色っぽい関係ではない。

2ヶ月に1回程度だが、ウチダ氏の事務所の鍵を預かっているので、ほとんど事務所を空けているウチダ氏の代わりに、クリアアサヒを飲みながら、私が店番をしてやることもある。

いい気持ちになって家に帰ると、ウチダ氏から電話。
「今日は、4本飲みましたね。何か嫌なことでもありましたか?」

成功者の事務所の雰囲気を味わっていたら、なんか腹が立ってきて、ヤケになって飲んだ。

「カマンベールチーズも食べましたね」

チーズ好きの私のために、冷蔵庫には、絶えず数種類のチーズが常備してある(時にキャビアの缶詰が置いてあることがあるが、これは罠だと思って、一度も食ったことがない。ただ・・・一度だけ、高級食好きの息子とヨメのために持って帰ったことはある)。
チーズだけは、食わないともったいないので、食ってやっている。

ブルーチーズを食わなかっただけでも、有難いと思え。

「言っている意味がわかりませんが・・・」

俺の言葉に意味があると思っているなら、君は、まだまだまだまだ未熟だな。

「未熟だからこそ、Mさんみたいな男と付き合ってられるんですよ。成熟した男なら、匙を投げているでしょう」

確かに。

というような会話が、最近の私は面倒くさくなったので、半年前に、私は成熟した男であるオオクボをウチダ氏に紹介したのだ。

仕事の悩みは、専門家に任せるに限る。
何で、そのことに今まで気づかなかったのか、私は自分の愚かさに呆れたものだ。

オオクボとウチダ氏は、生真面目同士だから、むしろ合わないのではないかと危惧したが、二人とも「大人」なので、すぐに信頼関係を築くことができたようだ。

それ以来、ウチダ氏は、私に愚痴をこぼすことがなくなり、私はウチダ氏がいない頃合を見計らって、京橋の事務所に忍び込み、クリアアサヒとチーズを消費する、ただの泥棒に成り下がった。

ウチダ氏は、オオクボの会社に、月に1回か2回程度、相談に来るらしい。

要するに、今回私は、運悪く「その日」に遭遇してしまったということだ。

私に構わず、ステーキ弁当を食いながら雑談をする「大人」ふたり。


なんか、仲が良さそうだなあ。


孤独感を抱きながら、ああ、空きっ腹に、スーパードライが沁みるぜぇ! とヤケ気味にスーパードライを呷るホネホネ白髪おやじ。

もちろん、二人は、そんな私を無視。

しかし、ここで、酒に侵された私の頭に、ひとつの疑問が浮かんだのである。

なぜ、ウチダ氏は、ステーキ弁当を買ってきたのか?
Why Does Mr. Uchida have bought a steak lunch?
打ち合わせの度に、ステーキ弁当を食っているから?
Time of meeting, because he eat a steak lunch?

いや、そんなことはないはずだ。
ウチダ氏は、骨の髄までの成功者だから、京橋の事務所にいるときは、弁当だったら三千円もする「すき焼き弁当」か「和牛焼肉弁当」しか食わないはずだ。

彼の頭の中には、580円のステーキ弁当など、目の端の隅っこのゴミにさえも見えないはずである。

ということは・・・・・。

親密な雰囲気で雑談をしている二人の会話に、私は嫉妬混じりで、無理矢理に入り込んだ。

おい、オオクボ! おまえ、俺が来たことをウチダに知らせただろ?

それに対して、オオクボは、「何だとぉ!」と目を剥いて、私を睨んだ。
迫力のある顔だ。
怖いぞ、こいつ。

ああ、悪かった。
そんなわけないよな。
そんなわけ・・・・・(完全に気後れしている)。

「電話したに決まってんだろ! 今ごろ気づいたのかよ」

はぁ〜ん?

向かいの椅子で、ニヤけるウチダ氏。

いつ電話した。

「それくらいチョッと考えれば、すぐにわかるだろ。おまえが受付で下らんコントをしているときに電話したんだよ。いつも思うんだが、あれは余計だな。ちっとも面白くない」

それを聞いて、自己嫌悪に陥った俺に、今度はウチダ氏が追い打ちをかけた。

「オオクボ先輩は、Mさんのノリ弁も買って来いって言ったんですけど、俺が『やめましょう』って言ったんですよ」

ん?

ちょ、ちょっと待て、なぜ「オオクボ先輩」なんだ?

「おい! とうとう脳が退化したか? ウチダさんは、俺たちの大学の後輩だからに決まってるだろ」

だ、大学の後輩?
ウチダがぁ?

初耳でござる。

そうなのか、ウチダ?

含み笑いをして、頷くウチダ氏。

「まあ、5歳下だから、当然俺たちとは接点はないのだけどな。しかし、おまえ、知らなかったのか。俺は最初に聞かされたぞ」
勝ち誇った顔のオオクボ。

こいつ・・・ドヤ顔をすると、中尾彬に似てるな。

いや、そんなことはどうでもいい。

なんで、俺に言わなかったんだ、ウチダさんよ。

すると、ウチダ氏は、子どものように口を尖らして、「だって、Mさんに向かって『先輩』って言うの嫌だったんだもん!」。

そ、そんな理由で・・・・・・・(絶句)。

「『さん』をつけてくれるだけでも、ありがたいと思うんだな」と、さらにドヤ顔のオオクボ。

まあ、それは、確かに有難いことだが・・・と納得されかけたとき、オオクボの片腕が帰ってきた。

「弁当を買ってきました。これ、私の奢りですから、お代は結構です」
こいつもドヤ顔で言いやがった。
こいつ・・・幸薄そうなところが、ドランクドラゴンの鈴木拓に似てるな。

ありがとう、と言って、袋(なんで、すき家の持ち帰り袋なんだ?)から弁当を取り出すと、そいつは「うな重」。

「奢りです」と、またドヤ顔で強調する片腕。

それを見て、固まるオレ。

ウナ重・・・・・・・かよぉ。
ウナ重って、高級食だろ?

よりによって、ウナ重・・・・・。

しかし、ここで、断るのもなあ・・・。

しかし、ああ・・・しかしなあ。
(思い切って言おう)


せっかく買ってもらって、申し訳ないんだけど、オレ、ウナギ嫌いなんだよね。


そう言ったら、「おまえ、人の好意を無にするのか!」と、オオクボ、ウチダ氏にユニゾンで怒られた。
また5歳下の後輩から「おまえ」呼ばわりですよ(泣)。

中尾彬と坂口憲二に怒られて、反論できるやつは(おそらく)いない。


仕方なく、ウナギをビールで喉に流し込んだ。
(味なんか、わからねえよ)


そんなわけで、その日の夜から次の日の昼まで、トイレ通いが続いたホネホネ白髪おやじでした。





高級食を食うと腹を壊す、この貧乏体質は、おそらく死ぬまで治らない。



2012/07/10 AM 05:40:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

ノリ弁、ステーキ弁当、そして・・ウナ重
大学時代の知り合いに、オオクボという男がいる。

オオクボとは、大学時代は、それほど親密な関係ではなかった。
同じ陸上部に所属していたが、学部はオオクボが経営学部、私が法学部だったから、教養課程の授業で顔を合わす以外は、ほとんど接点がなかった。

それに、オオクボは生真面目で熱い男、それに対して、私はヒネクレ者で怠け者。
根本的な人間としての質が、天と地ほど違う二人だった。

以前にも書いたことがあるかもしれないが、当時私が所属していた大学の陸上部は、2年生が新入部員を教える習慣になっていた。

我々が2年になったとき、長距離が専門のオオクボは、中・長距離の選手の指導をした。
そして、私が短距離、幅跳び、障害物、投てきの選手の指導をした。

オオクボは、自分が練習の虫ということもあって、新入部員を練習漬けにする毎日だった。
それに対して、私は「疲れるためだけの練習はするべきではない」という方針を貫いたから、練習量は、オオクボたちのグループの半分以下だった。

そんなユルい練習だったから、手を抜く1年生もいたが、それは休養の一つだと思って、私は叱らなかった。
ただ練習の中で、昨日と何か違った「小さな進歩」を見つけたとき、私は、自分でもわざとらしいと思えるほど相手を褒めた。

しかし、オオクボは、手を抜いている部員を見たら、すぐに大声で怒鳴った。
ときに、突き飛ばすこともあった。

オオクボは、ユルい練習を許容する軟弱な私に対して「もっと親身になれよ!」「何で人と真剣に向き合わないんだ!」と怒鳴った。

先輩や2年生部員の間でも、オオクボの指導方法に対して肯定的な意見が多く、私の指導方法は「やる気がない」「あいつは指導者に向かない」という評価が、圧倒的に多かった。

そんな風に、私に対して逆風が吹き荒れる中、新人戦が始まった。

結果はと言えば、大久保が指導したグループは、練習で疲れきって、本番では本来の力を出すことができずに、6人全員が自己記録を大幅に下回る成績で惨敗。
それに対して、私が教えたグループ4人は、全員が自己記録を更新して上位入賞した。

だが、たった一度だけで、どちらの指導方法が正しいなどとは言えない。
おそらく、結果にかかわらず、オオクボの指導方法が正しいというのが、大方の意見だと思う(日本の風土の中では)。

だから、オオクボは、結果に対して責任を感じることはなかった。
気にすることはなかったのだ。

しかし、オオクボの自尊心は、そのことでかなりダメージを受け、オオクボは、その後練習に顔を出さなくなり、2年の終わりに陸上部をやめた。

それ以来、オオクボと私の間は、ギクシャクした。
キャンパスで顔を合わせても、オオクボの方が私を避け、卒業後1度羽田空港で偶然出くわしたときも、オオクボは、私に対して右手を上げただけで、逃げるように去っていったことがあった。

そんな変ないきさつのあった私たちだったが、仲間の仲介もあって、5年ほど前の飲み会の席で和解の儀式を執り行ったのち、我々は大学時代以上に接近した友だち関係を持つようになった。

オオクボが言う。
「部員や部下をいつも叱り飛ばしていた俺が、今では『仏のオオクボさんだよ』。それは、大学時代の軟弱なおまえに教わったことだ。怒鳴るだけじゃ人は動かないってことを、俺はおまえに教わったんだ」

それに対して私が言う。

人を怒るには、すごいエネルギーがいるだろ。
でも、俺はそんなことでエネルギーを使うのが嫌だったんだ。
ただ怒るのが面倒くさかっただけなんだよ、オオクボ。


そんなオオクボと私だが、接近した友だち関係と言っても、お互いが・・・特にオオクボが忙しいので、年に2、3回程度の交流を持つだけだった。


オオクボは、大学卒業後、大手のコンサルタント会社に19年勤めたあとで独立し、今は南新宿に事務所を持つ年商1億のコンサル会社の社長様に収まっている。

つまりは、成功者。

オオクボを見た11人のうち10人が、必ず彼のことを「社長様」だと判断するほど、彼は無理なく、その容貌に経営者の空気を身につけていた。

たえず成功者の空気を振りまく男、オオクボ。


いつものように、アポなしで南新宿のオオクボの会社を訪れた私は、オオクボの片腕と呼ばれる男に、毎回の儀式のように「事前にご連絡は?」と聞かれた。

していません。
突然、電話のかけ方を忘れてしまったのです。
だから、そのことをオオクボ社長様に相談したいのです。
困っているんです!
電話のかけ方を忘れてしまった私は、これからどうやって生きていけばいいのでしょうか。
ぜひ、オオクボ社長様にそのことを教えていただき、これからの私の人生の光を取り戻したいのです!

そんな茶番を演じていたら、事務所の奥の衝立で仕切られた部屋から「おい! そこのバカをここに連れてこい! 指南してやる」という声が聞こえた。

バカは、揉み手をしながら、卑屈に頭を下げ、社長室に入り、社長様が用意してくださったパイプ椅子に座った。

時刻は、12時15分前。
だから私は、「昼飯をおごれ」と、卑屈に顎を上に上げ、腕組みをしながら言った。

「またノリ弁か? そして、俺がステーキ弁当でいいんだな」

そうだ。
おまえは、学習能力がある。
さすが、経営指南の神様だ。

俺は、お前を尊敬する。

しかし、一つだけ間違っていることがある。

ノリ弁プラス「スーパードライ」だ。

「おまえはクリアアサヒ派だろ? ここでは、何でいつもスーパードライなんだ?」

ここでは成功者にあやかって、スーパードライを飲むと決めているんだ。
それが、俺の「ルーティン」だ。

苦笑いのオオクボ。

「じゃあ、お前も一緒にステーキ弁当を食えよ」

成功したら、食う。
それが俺の「ポリシー」だ。

今のお前と俺のグレードは、ちょうど「ステーキ弁当」と「ノリ弁」くらいの開きがあるからな。
そこだけは、キチンとしておきたい。

「面倒くせえ男だな」と、さらに苦笑いのオオクボ。

いつかお前のように、普通にステーキ弁当が食える人間になる。
それが、今の俺の最大の目標だ。

「本気かよ」とオオクボ。

本気だ。
自分でも呆れるほど本気だ(嘘だが)。

俺は、まだ人生を降りちゃいないからな。

そんな話をしながら、オオクボに遊んでもらっていたら、来客があった。

生真面目な声。
その容姿を想像できるイケメンな声だ。

「お邪魔します」
入ってきたのは、京橋でイベント会社を一人で切り盛りしているウチダ氏だ。

真面目なウチダ氏は、事前にアポを取っていたようだ。

そして、2人分の「ステーキ弁当」を持参。
俺の分は? と聞いたら、「そこまでの責任は、俺にはないですよ」とイケメン顔で言われた。

俳優の坂口憲二氏からワイルドさを消したイケメン。
私より5歳年下だが、私が「師匠」と崇めるほど完成された男である。

そして、成功者。

二人の成功者に挟まれて、いたたまれなくなった私は、こう聞いた。

オレ、もしかして、邪魔じゃねえか?

そう言ったら、「アポなしの客は、いつだって邪魔だ」とオオクボに言われた。

シュンと萎れるホネホネ白髪おやじ。

じゃあ、いい! スーパードライだけ飲ませろ。
俺は、それを飲んだら帰る。

スネるホネホネ白髪おやじ。

すると、オオクボの片腕がドアから顔を出し、「あのぉ、俺がノリ弁買ってきましょうか?」と助け舟を出してくれた。
そして、「俺も弁当を買いに行こうと思っていたので」。

ちなみに、あなたは何弁を? と聞いたら、「オレ、うな重ですけど・・・・・」。

それぞれ複雑な思いで、顔を見合わせるオオクボ、ウチダ氏、そして、オレ。

で、おいくらのを?

「8百円? 千円? くらいでしょうか」と片腕。

ウチダ氏に聞いてみた。
ステーキ弁当は、いかほど?

「580円だったか・・・・・」

俺のノリ弁は、確か290円。

ノリ弁とスーパードライ500缶を足すと、おそらく580円前後。

だから、俺たちはトータル金額では同等。

しかし、片腕は、弁当だけで8百円あるいは千円。

3人で同時に「ホォー!」。

つまり、社長2人とホネホネ白髪おやじが580円で、一般社員が8百円(千円?)ということ。

経営学の正しい原則として、この事実をどう受け止める? とオオクボに聞いてみた。

オオクボは、しばらく腕組みをしながら考えたあと、「ウチダさん、これは社員の生活水準が向上したことを経営者は純粋に喜ぶべきなんでしょうね。つまり・・・・・有能な経営者が存在するが故に、社員の高度な生活水準が維持できると・・・・・そう考えていいんでしょうか」とウチダ氏に、問いかけた。

それに対して、ウチダ氏は、大きく頷きながら、「もっともですよ。オオクボ社長。これはまさしく、健全な企業の形態と言えます。羨ましいですね」と生真面目に答えた。


てめえら、昼日中から、いい年をした経営者が、たかが弁当ごときで、遊んでいるんじゃねえ!

バ〜〜カじゃないか!


そう言ったら、「おまえに言われたくない!」とユニゾンで非難された。

ウチダ氏は、私より5歳年下なのに、私に向かって「おまえ」ですよ(泣)。



このバカバカしい話は、次回に続きます。


2012/07/07 AM 08:33:37 | Comment(2) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

リセットされるコトバ
たまに、ヨメと二人で散歩をすることがある。

武蔵境駅近くから亜細亜大学の通りを歩き、小金井北高校あたりまでの道を往復する。
往復で6キロ程度だ。
それを1時間半ほどで歩く。

途中、無人の野菜販売所がいくつかあるから、季節の野菜を買うこともある。

そして、その無人販売所の一つでは、2匹の猫と遭遇することが多い。
毎回ではないが、3回に1回くらいの割りで遭遇する。
おそらく飼い猫ではない。

二人の猫は、どちらも美男美女の部類には入らないが、愛想はいい。
私の顔を認めると、すぐに足元に擦り寄ってきて、私が体に触ると、すぐにお腹を見せる。

甘えと服従のポーズだ。

その仕草を見て、毎回ヨメが言う。

「あらあ、珍しい! ノラなのに、こんなに人懐っこい猫、初めて見たわあ」

もちろん、初めてではない。

散歩の3回に1回は、この猫ちゃんたちと遭遇しているのである。
ヨメが、毎回毎回記憶をリセットしているだけだ。

人間の脳は、何かの加減で記憶をリセットすることがあるようだが、このリセットの回数が、ヨメは人並み外れて多い。

朝出がけに、「今日は、雨が降るかしら、傘持っていったほうがいい?」とヨメが聞く。

それに対して、私は、梅雨なんだから、いつ雨が降ってもおかしくはない、と答える。

しかし、ヨメは私に問いかけはするが、私の言葉は、いつもヨメの脳には届かない。
だから、傘は持っていかない。

その結果、降られる。
そして、毎回折りたたみ傘を買うのである。

「雨が降ってきたから、傘買っちゃったぁ。安い傘を買うより、高い傘の方が長持ちするから、奮発しちゃった」

値段を聞くと、3500円だという。
そんな「高級傘」が、我が家には10本近くある。
雨に降られる度に「高級傘」を買うからだ。

私は、突然の雨のときは、百円ショップで105円の傘を買って、その場をしのぐ。
そして、それを壊れるまで使う。
今年は、2回105円の傘を買った(まだ壊れていない)。

私の感覚では、これはとても経済的なことだと思うが、ヨメの意見は違う。
「もったいない! 傘を持って行けばよかったのにぃ! こんなの買って、無駄じゃない?」

「高級傘」を10本溜め込むことは、ヨメの脳の中では、無駄ではないようだ。
105円の傘を2回買う方が無駄だと、ヨメは断言する。
つまり、ヨメは自分の都合のいいように記憶をリセットして、「もったいない」を決して自分に向けることなく、人を非難する道具として使っているのである。


羨ましいと思う。


6月28日木曜日、最近17歳になった高校二年の娘から、メールが来た。
「ロフトで文房具を買って帰るから、帰りは8時半過ぎになる。メシは食うから、用意しておけ」

娘が学校から帰る時間は、だいたい7時半前後だ。
つまり、いつもより帰宅時間が1時間遅れるということ。

だから、ヨメに、Kちゃん、帰りが1時間遅れるってさ、と私は報告をした。

ヨメは、「あら、そう」と答えた。
しかし、「あら、そう」と答えたからといって、ヨメの脳に私の言葉が届いたとは限らない。

私の報告から10分たった頃、「おかしいわねえ、Kちゃん、遅くない?」と言い出すのは、いつものことだ。

だから、私は、そうだね、とだけ答えた。

ヨメにまた、娘が遅れる事情を言ったとしても、言葉がリセットされるだけだからだ。

そして、また10分後、ヨメが言う。
「Kちゃん、遅いわねえ。ねえ、なんか聞いてない?」

いや、聞いてない。

報告の義務は、一度だけでいい。
あとは、適当に流しておいても何の問題もない。

「Kちゃん、遅いわねえ。ねえ、なんか聞いてない?」

いや、聞いていない。

そんな儀式を繰り返しているうちに、娘が帰ってくる。

ヨメが、「遅かったわね」と言う。
それに対して、娘は、ヨメの「脳内リセット事情」を理解しているので、遅かった理由を理路整然と説明したあとで、私に対してドヤ顔をつくり、右手の親指を立てるのだ。


そんな「脳内リセットの天才」であるヨメが、いつものように、私に聞いてきた。

「今度、お友だちとCOCO壱番屋でお昼をするんだけど、私COCO壱番屋は、初めてなのよねえ。どのメニューが一番美味しいの? 教えて」

私は、確かにCOCO壱番屋は、よく利用するが、ハーフサイズのポークカレー以外は、ほとんど食ったことがない。
そのことは、ヨメには、何回か説明しているはずである。

しかし、何を何回言っても、私の言葉はヨメの脳には届かない。
それは、長年の経験で理解している。

これは、どうせリセットされるんだろうな、と思いながら私は毎回言葉を発している。

言葉はコミュニケーションの手段だから、届かなくても言っておいた方がいい、と思うからだ。
過去に、おそらく4回、私は、こういうことを言った。

COCO壱番屋で、俺が食うのは、ハーフサイズのポークカレー。
そして、COCO壱番屋のカレーはレギュラーでも結構辛いんだよ。
だから辛いのが嫌な場合は、甘口にしてもらえばいい。

しかし、もちろん、その報告は、ヨメの脳に全く届かない。

仕事が忙しいときは、そんな儀式が面倒くさくなるときがある。

だから、COCO壱番屋? いや、行ったことないなあ、まあ、お友だちと同じものを食えばいいんじゃないかな、と答えておいた。

ヨメは、「あら、そう? 行ったことなかったんだ」と、それ以上は追求しない。

その点は、都合がいい。


COCO壱番屋から帰ってきたヨメが、「なに! 普通であんなに辛いなんて信じられない! もう二度と行かないから」と怒ったが、それは私の責任ではない。
COCO壱番屋さんが、悪いわけでもない。

ヨメは、和がらしやワサビの辛さは平気だが、スパイス系の辛さに弱い。
だから、我が家のカレーは、いつも甘口である。

COCO壱番屋では甘口を頼んだほうがいい、とは過去に言ったが、言葉が脳に届かないのだから、それは私が悪いわけではない。
ただ、COCO壱番屋さんが、余計な濡れ衣を着せられて不幸だな、とは思う。


こんな風に、私の言葉が全く脳に届かないヨメだが、K-POPと花のことに関しては、かなりのスペシャリストである。

K-POPの情報は、細かいことでも漏らさずに把握しようとする。
脳がリセットすることはないようだ。

ただ、私が安室奈美恵さんのプロモーション・ビデオを見ていると「あっ、K-POPの真似してる!」というのには閉口する。
倖田來未さんや加藤ミリヤさんのプロモーション・ビデオを見ていても、「あっ、K-POPの真似してる!」。
(安室先生、倖田先生は、K-POPが流行る遥か前からこのスタイルですが)

だから、ヨメが今に、ジャネット・ジャクソンやカイリー・ミノーグのミュージック・ビデオを見て、「あっ、K-POPの真似してる!」と言い出すのではないかと、私は気が気ではない。


パート先である花屋に陳列している花のこともヨメは完璧なほど把握している。

毎月、花に関する雑誌を買い、本の専門書を買って、情報収集に余念がない。

私がブックオフで仕事関係の本を買って帰ると、「その本、図書館に置いてないの? もったいないんじゃない?」と非難するヨメ。
だから、私は、ここ数年、あれほど好きだったブックオフ通いを止めて、図書館の常連になった。

私が買う仕事の本は「もったいなくて」、自分が買う花の本は「もったいなくない」という論理は、人類史上最強の鎧を着込んでいるので、この論理を覆すことは、誰にも出来ない。


そんなこともあって、私は、最近ひとつの仮説を立てたのである。

おそらく、私の言葉は、ヨメの脳の中では、アカン語かヘブライ語に聞こえているのではないか・・・・・と。

ヨメの脳の中には、アカン語、ヘブライ語を変換するソフトが入っていないので、ヨメは私の言葉が理解できないのだ。
この仮説に、私は自信を持っている。


そんなヨメが、先日、店の客に、こう言われたらしい。

「あなたの言ったとおりにしたら、庭のオリーブの木が生き返ったわよ。ありがとう。嬉しいわぁ」

そう言われて、体が震えるほど、ヨメは感動したらしい。

「この仕事やっていてよかったァ!」と、涙目で喜ぶヨメ。

そんな姿を見ると、私の言葉が、ヨメの脳に、アカン語、ヘブライ語に聞こえることなど、どうでもいいことのように思える。


しかし、昨晩寝る前のことだ。

ヨメが突然言った。

「ソーキさん(業者さん)への振込、忘れてたぁ! ああ、どうしよう! パートしているときは覚えていたんだけど、店出たら忘れちゃったァ! 明日でも、いいかしら」



はいはい。

忙しいからといって、頼んだ俺がバカでした。



2012/07/03 AM 05:40:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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