Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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ムツゴロウ化してきた?
年初に、得意先の杉並の建設会社で、会社案内とチラシの仕事をしたことを書いた。

それに対して、「いやあ、チラシの反響が思いのほか良くてよお! まあ、実際、仕事に結びついたのは1件だけなんだがな、問い合わせの電話とメールは、ホームページの比じゃないわな。驚いてるよ」という社長のお言葉を頂いた。

それは、善き哉。

「でよお、今月中に、もう一発チラシで攻めようと思うんだよ。ホームページの更新は、適当にお茶を濁す感じでいいからよ」
と言ったあとで、眉間にしわを寄せ、遠くを見るような目をして、社長が言葉を続けた。

「ホームページの中に『問い合わせ』っての、あるだろ? あれ、やめねえか。
9割が、冷やかしじゃねえか。バカなヒマ人の相手をするのは、ウンザリだ。
中には喧嘩売ってんのか、てのもあって、俺、本気で喧嘩したくなったぜ。
喧嘩して俺が警察に捕まったらシャレにならねえからな。あれ、やめようと思うんだが、あんた、どう思う?」

たとえば、ペットのための家だけを建てて欲しい、という要望があった。
なるべく豪華な家を建ててやりたいという希望を聞いて、自分でも犬を飼っている社長は、その熱心さに打たれて、家を作ろうかという気になったらしい。

しかし、何度かメールのやり取りをするうちに、最初は大型犬だったという話が、猿になり、最後には、そのペットはウサギだということがわかった。
腹立ちを抑えながら再度予算を聞いてみたら、最初百万だと言っていた予算が、1万円以内に変わった。
だったら、ペットショップに行ってみたらどうか、と社長が提案したら、逆ギレして「お前のところは、ウサギの家も建てられないのか。シロウトが!」と罵られたというのだ。

嫌がらせ、としか思えない。

他に、家でピアノ教室をやりたいので、完全防音の部屋が欲しい、というのがあったという。
メールで見積もりを提示すると、予定通りの金額だというので、メールの主と会社で会う約束をしたら、すっぽかされた。
相手から謝罪のメールが来たので、次に会う日時を決めて、相手が言う通りの自宅住所に行ってみたら、その住所は公園だった。

そんなこともあったかと思えば、建築のこととは全く関係のない杉並近辺のグルメ情報を教えてくれ、というしつこい「問い合わせ」があったりもするらしい。

無視をすると、違うメールアドレスを使って、同じような内容のメールを立て続けに送ってくる。
「営業妨害で訴えるぞ」と返信すると、しばらくは大人しくしているが、しばらくすると、また違うアドレスで送ってくることの繰り返し。

「おい、世の中には、こんなにヒマなバカが多いのかよ!」

社長は、大変なご立腹である。

「俺は、こんな奴らの相手をするほど、ヒマじゃねえぞ。首根っこ捕まえて、肥溜めに落としてやろうか! 柔道の絞め技で落としてやろうか! ●●が!(放送禁止用語・差別用語)」

それに対して、「顔が見えないのは怖いですよね」という在り来たりの答えで誤魔化したら、「バッカヤロー! こんなやつら、顔が見えたって見えなくたって、何の役にも立たねえよ! テキトーなことを言うんじゃねえ!」と火に油を注ぐ結果となってしまった。

申し訳ござらん。


でも・・・・・しかし・・・・・あのぉ・・・・・ワタクシ、あなたより10歳ほど歳上なので、もう少し、手加減していただいても・・・・・もう少し優しいお言葉で・・・・・。


しかし、社長のMAXの怒りの前では、そんなことは言えるわけもなく・・・。

ハイ、「問い合わせ」はやめましょう。
今すぐやめましょう!

そう言うのが、精一杯だった。

これで、いいのか、俺?


黙っていたら、社長が私の顔を覗き込んで、唐突に「あんた、貧相な顔をしてるけど、陰険じゃあ、ないよな。シャレも通じるしな」と言うではないか。

陰険、という言葉を使って何か洒落たジョークを言おうとしたが、下ネタしか浮かばなかったので、やめた。

しかし、人間というのは不思議なものである。
言ってはいけないと思うと、自然と口が滑ってしまうものらしい。

「まあ、確かにインキンでは、ありませんが」

言ったあとに、そのフレーズの下品さに気づいて青ざめた。

また、社長のお怒りを買うのでは・・・。

しかし、「ハハハ、おもしれえじゃねえか!」と、社長は手を叩いて喜んだ。

怪我の功名。
社長は、下ネタがお好きなようだ。

そればかりか、「俺も若い頃、苦しんでよぉ」という体験談まで、5分間に渡ってお話になったのである。

この話、下品すぎるので、5分後に軌道修正に成功。
(社長は、まだ体験談を話したがっていたが)


インターネットの世界では、確かに、悪さをして人の反応を面白がる人は、少なからずいますよね、という話を社長の目を覗き込みながらした。

見つめたいと思う目ではなかったが、お下品な社長の話をそらすためには、仕方なかったので、そうした。
その結果、背筋に寒気に近いものが走ったが、足を踏ん張って堪えた。


全体の比率で言えば、1%以下だと思うのですが、人を否定することでしかアイデンティティを保てない人が、インターネットの世界ではいるようです。

そういう人たちは、すべてを否定することで心の安定を図っているのです。
その「すべて」のなかに、自分も含まれていることは自覚しているのですが、それを公に認めたくないので、なおさら他人をネガティブな位置に置くことによって、心の均衡を保っているのです。

そして、インターネットにどっぷり浸かっている人間は、他者は容赦なく否定しますが、自分の意見の「賛否両論」の「賛」は許しても「否」は許さない傾向にあります。
自分の意見が否定されることを、病的なくらいに怖がるのです。

マスメディアは、そのごく一部の偏向的な人の意見をまるで百%の意見のようにして報道しますが、マスメディア自体も病んでいますから、信用なさらない方がいいと思います。

要するに、相手にしない方が、いいということです。

社長の仰るとおり、それは、時間の無駄です。

だから、「問い合わせ」は、削除しましょう。
いますぐ、削除します。

テクニカルイラストの達人・アホのイナバから永久的に借りているMacBookを社長の前に提示して、私はすぐ「問い合わせ」ボタンを削除して、アップロードした(社長の会社はWiFiなので、直ぐに継った)。

その神業的な私の作業手順を見て、社長は、「おお!」と言い、「OH!」と言い、「ワオ!」と言って、尊敬の眼差しで私を見た。


どんなもんじゃい!


と胸を張っていたとき、来客が。

ピンクのジャージの上下を着た、30半ばくらいの女性。

女性の顔もスタイルも、まったく目に入らなかった。
真っ先に目に入ったのは、女性が両腕に抱いたミニチュアダックスフント。

私好みの上品な顔立ちをしたキュートな犬だった。

最近の私は、可愛い動物を見ると自制が効かなくなっている。
だから、思わず立ち上がって、「おお! ワンコ! ワンコ!」と言いながら、犬の顔を両手で挟んでしまったのである。

その突然の行動にびっくりしたピンク・ジャージは、腰を引き気味に、体をひねって逃げようとした。
両手から犬の鼻が抜けた。

そのとき、「失礼だろうが!」と肩を叩かれた。

シマッタ!
やっちまった!

「申し訳ありません! オダワラ様、こいつ、極度の犬好きなもので」
頭を押さえ込まれて、無理矢理頭を下げさせられた「こいつ」。

本当に、申し訳ござらん。

しかし、二人の平身低頭に恐縮したピンク・ジャージの女性は、「いえいえ、少し、ビックリしただけで、犬を可愛いって言っていただけるのは、ものすごく嬉しいんですよ」と社長をなだめ、大人の対応をしてくれたので助かった。

それでもなお「こいつ」は、頭を下げ続け、「失礼をいたしました。お許しください」と声に誠意を込めて言った。

しかし、また肩を叩かれた
「いいんだよ、もうオダワラ様が、いいって言ってるんだから、もう頭を上げようよ」

その社長の言葉に思わず反応して、なぜか私は、頭を上げると同時に「キャン!」と言ってしまったのである。

またまたシマッタと思ったが、これも社長には受けた。
手を叩いて喜んでくれたのである。

それを見たオダワラ様は、「あらぁ! 社長って、こんな風に笑うこともあるんですね。初めて見ましたわ!」と大笑い。

座が、和んだ。

犬も、私を見つめて話しかけたそうな顔をしていたので、また両手で顔を挟んでスキンシップをした。
今度は、ピンク・ジャージの女性は、腰を引かなかったので、存分に可愛がることができた。

そして、ピンク・ジャージに聞かれた。
「ここの社員の方?」

私が答えるより早く社長の方が答えた。
「いや、彼は、うちが仕事を頼んでいる人です」

「こいつ」から「彼」に昇格した。
嬉しかった。

ピンク・ジャージに色々と細かいことを聞かれたが、売れないデザイナーです、とだけ答えた。

ピンク・ジャージは、最近社長の会社が施工した3階建ての賃貸マンション兼住居の依頼主だった。
要するに、セレブ。
お犬様も、セレブ。

賃貸マンションの管理も社長の会社の不動産部門がしているので、たまに犬の散歩がてら、各種の要望を伝えに来るのだという。

チラシの打ち合わせが、まだだったので、気をきかせた私は、セレブVS野獣の会話の邪魔をしないように、応接セットの端っこに移動しようとした。
しかし、社長に「まあ、座っていろよ」とスーツの腕の部分を引っ張られた。

社長の顔が、珍しく弱気なものに見えた。

まさか・・・まさか、セレブ様のお相手は苦手なのか?


この日、社長の丁寧語を初めて耳にした。
両足を閉じて座る姿を初めて見た。
人と話をするときに、ソファの背にもたれて、ふんぞり返らない姿も初めて見た

初めてづくし。

長生きは、するものである。

そんなことを考えていたら、ピンク・ジャージが、「この方(私のこと)、本当に社長さんが使っている方ですか?」と言い出すではないか。

「はぁ・・・」
突然の質問に、社長の声が、少し裏返った。

「社長さんが、お客さん以外に気を使っている姿を初めて拝見しました。お友だちなんですか?」
犬は、おとなしく床に寝そべっている。
眠っているのかもしれない。

「いや、本当に僕が使っているデザイナーさんですよ。まあ、気を使うというか、僕より10歳上なので、言葉遣いには気をつけてます」

まず、社長が、自分のことを「僕」と言うことに驚いた。
そして、私が10歳年上だということを忘れていなかったことにも驚いた。
言葉遣いに気をつけている、というところは、「どこがやねん!」と突っ込みたくなったが、私は吉本興業の芸人ではないので、できなかった。

そして、ピンク・ジャージは、最後に迷惑な爆弾を落としたのである。

「あの・・・短い時間だけの印象で、こんなことを言って申し訳ないのですが、お二人を見ていると、こちらの方(私です)が、気の荒いクマさんを上手に手懐けるムツゴロウさんのように見えてしまいましたわ」

(・・・・・・・・・・)

「だって、家を建てるとき、しょっちゅう現場に伺いましたけど、明らかに50歳以上と思える下請けの方とかに、社長さんは怒鳴り散らしてましたよ。社員や業者の方も叱り飛ばしている記憶しかないんですよね、私」

いいのか、そこまで言って。
その爆弾は、大きすぎないか。

一応、社長は「ハハハハハ、いやあ、鋭いことをおっしゃいますね」と上機嫌の様子を見せたが、私の位置からは社長の顔が見えないので、本当にご機嫌麗しいかは、判断できない。

私の心臓は、瞬間冷凍で凍りついて、そのまま冷凍庫行きになりそうだった。

しかし、そんな空気を作ったご本人は「あら、もうこんな時間! 長く喋りすぎたわ」とダックスフント様を抱え、笑みを浮かべたままドアの外に瞬間移動したのである。

心臓は冷凍室に直行。
どんなに心を奮い立たせても、打ち合わせをするというテンションまで、私の心は上がっていかなかった。


逃げ出したい・・・・・。


ここは、死んだふりをするしかない。
そう思ったとき、社長が「さあ、ムツゴロウさんよ。打ち合わせをしようじゃねえか」と、笑い混じりで、言うではないか。

社長の顔を恐る恐る窺ってみると、柔和な目をしている。

怒っては、いないようだぞ・・・・・。

それからは、何かあるたびに「ムツゴロウさんよ」と私のことを呼ぶ社長。

それが気になって、打ち合わせの内容が、あまり頭に入ってこなかった。
だから、何度も聞き返した。

しかし、社長は機嫌を損じることなく、その度に「ムツゴロウさんよ」を言葉の最初に付けて、説明してくれたのである。

その姿を見ていると、私の目には、社長が確かにクマさんに見えてくるのだった。


ただ、もちろん、その姿は、私には少しも可愛く思えなかった。


私は、猫や犬やミニブタ、モルモットの方が、断然好きだし・・・・・。



(今日のブログは、長すぎましたね。いつもは、40分前後で終わるのに、今日は1時間もかかってしまった。読み返す習慣がないので、どんなダラダラした文章になっているか、想像すると怖い。今度からは、もう少し頭を整理してから書くようにします)


2012/04/08 AM 08:26:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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