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● 9割の法則 |
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急ぎの仕事(建設会社のチラシ)を朝3時に起きて、一気に3時間で仕上げた。
手持ちの仕事は一件あるが、今しなければいけないというものでもない。
たちくらみ、めまいは、もう私の体のお友だちと言っていい。 だから、お友だちと一緒に休みたい。 しかし、私が休んでいると異議を唱える人がいるので、スーツを着て午前9時15分にお出かけした(営業の体で)。
ネットカフェで寝ようかと考えたが、金がもったいないので、やめた。 公園の芝生で寝ることも考えたが、一着しかないスーツが汚れるので、やめた。
久しぶりの快晴の中、武蔵野から新宿まで、15キロの道をサイクリング。 中野坂上を通り過ぎ、北新宿図書館の手前まで来て、この近くに大学時代の友人オオクボが会社を構えていることを思い出した。 コンサルタント会社だ。
オオクボに関しては、何度か書いたことがある(コチラとコチラなど。ただサーバーの無作為により、リンクが外れている可能性あり)。
忙しいコンサルタント業だから、アポなしで会える訳がない。 無理だろうとは思ったが、ギャンブルのつもりで、突然訪問してみた。
8階建てのビルの8階。 どこかで気後れを感じながら、エレベータに乗った。
8階の半分のフロアを占領して、オオクボは自分の名前とは違う会社名を掲げて商売をしていた。
受付嬢はいない。 社員4人のささやかなオフィスなのだ。
入口に一番近いデスクに座っていた男に名を名乗り、オオクボが在社しているかどうか聞いた。 男は「マネージャーは、おります」と言って、私を頑丈そうな衝立で仕切られた応接室に案内してくれた。 フットワークの軽そうな好青年だと思った。
私の突然の訪問に、少しも嫌な顔はせず、慌てたところも見せなかった。 社員教育が、しっかりしていると思った。
絵画さえもかかっていない殺風景な部屋を二回見廻したところで、オオクボが「何だよ、いきなり」と言って、入ってきた。
忙しいところを悪いが、寝る場所を提供してくれないか。
私のささやかな要望を、オオクボは即座に却下した。 「あるわけないだろ、こんな狭い場所だ。本の隙間で寝られるなら、寝てもいいが」
確かに、事務所の半分は本で埋まっている気配だ。 コンサルタントってのは、古本屋と同じと考えていいのか?
「まあ、同じようなもんだな。ただ、買うのが専門で、売ることは考えていないがな」
暇か、と突然聞いてみた。
オオクボは苦笑いして、「午後いちの相談がキャンセルになった。だから、2時までは暇だ」 時刻は、10時56分。 3時間の暇はあるわけだ。
「昼メシ、奢ってやるぜ」 オオクボが、まるで会社の社長のような威厳を示して、私に顔を近づけた。
よし。 奢らせてやるが、メシはコンビニ弁当でいい。 食う時間は、12時半。 それまでの1時間半、この応接室を借りたい。
「そんなに眠いのか? そんなに忙しいのか?」
忙しかったら、こんな新宿の場末まで来るわけがない。 ただ、眠いだけだ。
オオクボが肩をすくめて、苦笑い。
「わかった。ほっともっとのビーフステーキ弁当でいいな」
いや、のり弁にしてくれ。 290円のやつだ。 クリアアサヒがあれば、さらに望ましい。
オオクボが、また苦笑い。 そして、新品らしき毛布を持ってきてくれた。
眠った。
安室奈美恵のコンサートに行った夢を見た。 「Hide & Seek」を聴いているところで、起こされた。
「満足したか?」とオオクボが聞いてきたので、不満だ、と答えた。
オオクボはもう苦笑いはせずに、私の前にノリ弁とクリアアサヒを無言で置いた。
オオクボは、ビーフステーキ弁当。 まるで、社長は肉を食う権利がある、と言わんばかりである。 飲み物は、ペットボトルの「綾鷹」。 皮肉のひとつも言ってやりたかったが、奢られる側なので、我慢した。
お互い、過去の話で盛り上がるのは嫌いなので、今の大地震と原発の話から始めた。 次に「プリンセス・トヨトミ」の話になり、韓国の話になった。
オオクボが「女房が、韓流ドラマにハマって、夫婦の会話が成り立たないんだよな」と言った。
それは、「9割の法則」だから、仕方がないんだ。
「9割の法則?」
そうだ。 韓流ドラマにしろ、韓流映画にしろ、K-POPにしろ、女性は、韓流に興味を持つと、頭の中の9割が韓流に占められてしまうんだよ。 残りの1割は、亭主の愚痴だったり、世間への不満だな。
9割ってのは、大きいだろ。 例えば、男がゴルフに興味を持ったとしよう。 だが、男の場合は、ゴルフのことが頭の9割を占めるなんてことはない。 プロだったら、有りうるかもしれないが、普通の人だったら、せいぜい半分ってところだろう。 普通の男は、そこまで一極集中はできないものだ。
ところが、女の場合は韓流となると、簡単に集中できてしまうんだな。 女はすぐに、誰もが韓流やK-POPのスペシャリストになれるんだよ。 しかし、その代わり、ほかのことが頭に入らないから、俺たちの言ったことは、すぐに忘れるんだ。
「そうなんだよ。見事に忘れるんだな。『え? そんなこと言った?』の繰り返しだ。だから最近では、女房にものを頼むことを諦めちまったよ。そのほうが、ストレスがたまらないからな」
すごい勢いでビーフステーキ弁当を平らげ、綾鷹を一気に半分まで飲んで一息ついたオオクボ。 体全体に、苦笑いが貼り付いているような、どこか無気力を感じさせるため息を吐きながら、オオクボは残りの綾鷹を飲み干した。
「しかし、韓流となると、なんで女はあんなに集中できるのかな」
それは、わからない。 日本女性特有の感性が、日本人社会、白人社会とは別の「特別感」として、韓流を捉えているのだとは思うが、詳しいことは今後の関係諸機関の研究を待たねばならないだろう。
「そうか、俺は韓流ドラマもK-POPも全く興味がないから、完全に理解の外だな。マツも、そうだろ?」
いや、BIGBANGと2EN1は、高度に完成されたヴォーカル・ユニットだよ。 彼らは、世界進出しても不思議ではない。
「???????」
それに、RAINBOWのジェギョンちゃんは、いいぞ。 綾瀬はるかに似て、可愛いんだ。 歌は下手だが、あの子は、おすすめだな。
「おまえ・・・・・」
なんだ?
「変わったな」
そ・・・・・・・そうか・・・・・。
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2011/05/26 AM 06:01:25 |
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