|
|
● 公園で「ビッグかつ」 |
|
いま手持ちの仕事は、ドラッグストアのチラシだけだから、時間に余裕がある。 ドラッグストアの仕事は、8割方終わっている。 校了は、火曜日の午前中。
余裕だ。
作業部屋でボーッとしていると、サボっていると思う人が一名いるので、スーツを着て営業のフリしてお出かけすることにした(日曜日だったが)。
と言っても、遠くまで行くのは億劫なので、武蔵野のご近所を自転車で流すというユルい時間を過ごすことにした。
最初、井の頭公園に行こうと考えたが、日曜なので人出が多いだろうと思ってやめた。 小金井公園は、ジョギングで絶えず利用しているので、今回は敬遠。 野川公園は、家族連れが多いと判断して、やはり敬遠。
野川公園のお隣の武蔵野公園の方がすいているだろうと判断して、こちらに行くことにした。
風は強いが、天気良し。 家族連れとカップルがそれなりにいたが、おそらく野川公園ほどではないだろう。 木のベンチに座って、全身から力を抜く。
空を見上げ、「空が青く見えるのは、空気の層が青い光を散乱させるからなんだぁ」とつぶやく(変?)。
さて・・・・・バッグの中に忍ばせた保冷バッグには、クリアアサヒの500缶が入っている。 よく冷えたクリアアサヒを飲みながら、駄菓子の「ビッグかつ」をかじる。 「ビッグかつ」は4個持ってきている。 これが、私の昼メシだ。
クリアアサヒは2本持ってきた。 つまり、1本につき2枚の「ビッグかつ」を食う計算になる。 昼メシとしては、ちょうどいいカロリーではないだろうか(おそらく900キロカロリーくらい)。
カロリーは一応気にする。 しかし、バカ食いしても太らない体質なので、本気で気にしているわけではない(誰にも喧嘩は売っておりませんので)。 それに、私はバカ食いしたことは、長い人生の中で5回しかない。
最初は、高校2年の夏休みだったが・・・・・・・話が長くなるので、カット。
そんな風に遠い昔に思いを馳せていたとき、4メートル左のベンチにご老人が腰を下ろした。 そのご老人を見て、私は小さく息をのんだ。
そのご老人が、今年の一月に死んだ義母に似ていたからだ。 この年代のご老人の着る洋服の嗜好は、たいていは似通っているものだが、ほとんど同じと言っていいセンスをしていた。 体型もほぼ同じ。 人を気軽に寄せ付けない雰囲気も、同じだった。
顔はボヤけて見えないので判断のしようがないが、全身から出る空気感が、そっくりだった。
ご老人は、座るとすぐに独り言を小声で言い出した。 お経みたいな独り言だな、と思っていたら「南無妙法蓮華経〜」と言い出したので、本当にお経だったようだ。
ご老人の横顔を見ていて、思った。 義母は、私の娘の高校生になった姿を見ずに逝ったのだな、と。
それを思うと、小さな何かがこみ上げてきたが、「ビッグかつ」をかじることで、かろうじて抑えた。
この日は、幕張で開かれる「K-POP SUPER LIVE」に居候さんと一緒に行っている娘は、今春から居候さんと同じ都立高校に通っていた。
入学して一ヶ月と少し。 既にクラスの子全員と会話をした娘は、全員の名前とニックネーム、性格などを事細かに、私に教えてくれる。 教師の特徴なども、同じように事細かに教えてくれる。
だから、私は家にいながらにして、娘の同級生と先生の名前、性格を把握するという情報通になっている。
「おい、キョースケ、おまえ、AKBの板野友美のファンなんだってな」 などと突然言ったら、キョースケはビックリするだろうな。
キョースケの顔を見て、その衝動を抑えられる自信が、私にはない。
娘は、自らクラス委員に立候補して、権力のうまみをいま存分に味わっているという。 部活は、ファッション部。 文化祭はまだ先のことではあるが、クラスの女装の似合いそうな男を選んで、女装ファッションショーを開こうと、今から男の子を毎日のようにくどいて、暗示にかけているらしい。
「そのままでもいいけど、化粧すると、プリンセスだね。華麗に変身できるよ」 「もしかして、ウエストくびれてる? それに、美脚じゃない? 香里奈になれるかもね」 「私の見る目が間違っていなければ、君は新垣結衣よりも可愛くなるかもしれない」
悪徳スカウトマンの手口である。
しかし、今のところ、すでに二人その気になったメンズがいるというから、娘は、悪徳ではなく有能なのかもしれないが。
そんな娘が、こんなことを言った。
「授業公開の前日に、ばあちゃんの夢を見たんだよな。ばあちゃんが、授業公開に来てくれたんだ。俺が手を振ると、ばあちゃん、嬉しそうに手を振ってくれたよ。ばあちゃん、きっと見に来たかったんだな。絶対そうだよ!」
それを思い出したとき、また何かがこみ上げてきそうになった。 慌ててクリアアサヒを飲んだが、遅かったようだ。
口の中に、目から流れ落ちた何かが入って、クリアアサヒが苦く感じられた。
ご老人は、相変わらず小さな声で、お経を唱えていた。
|
2011/05/16 AM 06:19:55 |
Comment(2) |
TrackBack(0) |
[日記]
|
|
|
|
(C)2004 copyright suk2.tok2.com. All rights reserved.
|