Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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急ぎの仕事が終わったあとで
手持ちの急ぎの仕事は、すべて終わった。

いつものことだが、いっときだけ開放感がある。
自分を解き放ちたい、と一瞬だけ思う。

だが、自分を解き放つ方法を私は知らないので、曇り空の中、自転車で小金井公園に出かけた。

大きな小金井公園の真ん中にある広場の芝生に座って、保冷バッグにいれたクリアアサヒを飲む。

朝9時5分。
気温16度。
寒い。
今にも雨を落としそうな灰色の雲が、斜め20度の方向に浮かんでいる。

しかし、寒くてもクリアアサヒは美味い。

トータス松本たちが出ているクリアアサヒのCMを口ずさみながら、500缶を一気飲みする。

クゥゥゥゥリィィィアァァァサヒィ〜〜〜ット!

控えめに下品な雄叫びを上げていたとき、後ろ12メートル地点を親子連れが通った。

その会話。
「今年のクリスマスプレゼントは、サンタさんにいらないって言おうかな。そのプレゼントをヒサイチの人に寄付してよってお願いしたいんだけど、ねえ、ママ、いいでしょ」

その話の内容に興味を持って振り向くと、5歳くらいの男の子が30代半ばの母親を見上げている姿が目に入った。

そんな「深イイ話」だから、偉いねえ、とお母さんは、彼のことを褒めるのかと思った。

だが、お母さんは、笑い飛ばすように言ったのだ。
「いいんだよ、レン君は、そんなこと考えなくたって。サンタさんは、そんな変な願いは聞いてくれないよ。それにさあ、クリスマスの頃には、レン君は地震のことなんか忘れているよ。半年以上も先なんだからさ」

おやおや、褒めませんか〜。

最近の人は、褒めるのが下手のようですね。

私ならこう言う。

レン君、偉いねえ。優しいねえ。じゃあ、お母さんも一緒に、サンタさんにお願いしてあげる。でも、レン君があんまり偉いから、サンタさんが感心して、よけい立派なプレゼントをくれるかもしれないね(笑)。

背筋が寒くなるような褒め方だが、褒められて悪い気はしない、と私は勝手に解釈している。

私は母親から褒められて育ててもらったので、それが当たり前だと思っている。
だから、私は子どもに対しても、大人に対しても「褒めること」を優先するようにしている。

なぜなら、怒るのは簡単。
褒める方が、難しいと思っているからだ。

難しいから、皆が「褒めること」から逃げている。
「恥ずかしくて褒めてなんかいられないよ」と、言い訳をする。


一番新しいお得意さまである建設会社の社長。
前回訪問したときに、社長が言った。
「息子たちが、俺のことを怖がるんだよね。全然なつかないんだ。まあ、それも当然か。毎日怒鳴って、ときどき叩いて。言うことをきかないときは、庭に放り出すからな。でも、それって、親なんだから、当たり前だろ?」

社長の子どもは、10歳と11歳の男の子だという。
私が、奥さんは何て言ってるんですか、と聞くと「カカアは、いねえ」。
私は、他人の生活を聞く趣味がないので、その話をそれ以上掘り下げることはしない。

そして、「俺は、社員も叩くよ。殴るよ。ヘマやらかしたら、責任をとってもらわなけりゃいけないからな。給料減らさない代わりに、殴る。経営者は、それくらいしてもいいよな」

殴るのは、暴力ですから、時によっては、犯罪になりますが。

私がそう言うと、「はん?」と15センチほど顔を近づけて、私を睨んだ。
「甘っちょろいな、あんた。俺は、あいつらの親みたいなもんなんだよ。親は、殴っても許されるだろ。それと同じだよ」

(それは論理の飛躍だ。経営者が親と一緒というのは、あなたが勝手に思っていることだ。おそらく、社員たちは、そうは思っていない。それに、殴って怪我をさせたら、それは犯罪だ。親だからといって、許されるわけではない)
そう言おうと思ったが、喧嘩になりそうなので、黙ってコーヒーを口に運んだ。

その私の姿を弱気ととったのか、勝ち誇ったように、社長が言う。
「まあ、叩くと半分くらいが辞めちまうがな。だが、働きたいってやつは、いくらでもいるから、俺は困らないよ。『社会は厳しい』ってことを教えるのも、経営者の役目だろ。違うか?」

黙って、コーヒーを飲む。

言いたいことを黙ってこらえていると、体の奥から不快な虫が騒ぎ出して、その虫が段々と大きくなって細胞を叩いて回るのが、背筋のあたりで感じられて、背中がムズムズしてくる。


口答えをしたら、いかん!


懸命にこらえる。

こらえる。

目の前には、勝ち誇ったような顔。

しかし、こらえる

背中に不気味な生き物を背負いながら、聞かなくてもいいことを聞いた。

社長は、褒めたことはありますか?

すると、社長が勝ち誇った顔のまま言った。
「一度もないね。自分の子どもを褒めたことも、社員を褒めたこともない。あいつら、馬鹿だからな。褒めるところなんか、ひとつもない」

聞くんじゃなかった。

背中の異生物が、さらに大きくなった。

大きな危険を感じた危機管理に優れた男は、唐突に「急用を思い出したので、失礼します」と頭を下げ、早足で事務所を後にした。
男は、非常階段を駆け下りているとき「ウギャー!」と大声で三回吼え、地上に降り立ったとき、8段上の階段から飛び降りたのを確認して、満足の笑みを浮かべた。
そして、何事もなかったような顔で、ビルの外に出た。

危ないところだった。
人格が、変わるところだった。
(人格は変わらなかったが、もともと壊れているという噂がある。私は、その噂を信じないが)


そんなことを思い出していたとき、雨が降り出してきた。
最初パラパラ、しかし、すぐにザーザー。

全身を濡らしながら、保冷バッグを自転車のカゴに載せ、近くの東屋まで、全速で走った。

雨宿り。

2本目のクリアアサヒを飲みながら、空を見上げる。
おそらく、しばらく雨がやむことはないであろう。

まあ、いいか。
クリアアサヒは、3本持ってきているし。
クラッカーも持ってきているから、腹が減ったら、それをかじればいいし。
急ぎの仕事はないし

危機管理に優れた男は、フェイスタオルも持ってきていたから、それで濡れた部分をパンパンと叩きながら、クリアアサヒを飲んだ。


しかし、危機管理に優れた男は、突然思ったのだ。

クリアアサヒの500缶を3本飲んで、自転車に乗る。
これは、道路交通法違反ではないのか。

その点を、厳しいお方に、突っ込まれたら、どうしよう?

なんと言い訳しよう。

酒気帯び運転と酒酔い運転は違う。
私は酔っ払ったことはないから、酔っ払って自転車を走らせたわけではない、とでも弁明しようか。


いや、どんなことを言っても、突っ込んでくる人はいる。

だから、私は言う。

雨宿りを12時間したあとで自転車に乗ったから、酒は完全に抜けている。
だから、酒気帯びでも酒酔いでもない。
私は、無実だ。



こんなところで、いかがでしょうか。



2011/05/08 AM 08:33:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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