Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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ピンクの金庫
風邪をひいた。
土曜の夜から、体温は38度をいったりきたり。

しかし、私は元気だ。

38度は、熱とは言わない。
平熱が上がっただけだ。

この間の日曜日は急ぎの仕事がなかったので、オフにした。

オフとは言っても、寝ていたわけではない。
暇ができたらやろうと思っていたことをすることにした。

義母のマンションの後片付けに行ったのである。

大きな家具は片付けたが、クローゼットの中などの整理がまだである。
これが終わらないと、完全に煤を取り除く作業ができない。

家族に声をかけて、一気に片付けようと思った。
しかし、「心が折れるから勘弁して」と言われた。

確かに今まで2回、ヨメたちはマンションの整理に行ったが、気がついたら、みな泣きながら作業をしていた。
無意識のうちに、重い空気にどっぷりと浸かっていたのである。

薄情な私だけが、事務的に作業をした。

今回は、一人で片付けるしかないか、と思っていたとき、(我が家に居候中の)娘のお友だちが「じゃあ、オレが行く」と言ってくれた。

しかし、受験勉強があるだろう?

「過去問バッチリ! オレは面接よりも筆記試験のほうが得意みたいですよ。怖いくらい、今オレの頭冴えてますから。だから、ちょっとくらい息抜きをしても大丈夫」

ということで、2人でマンションの整理に行った。

お友だちは、煤で真っ黒の室内を見て、息をのんだ。
そして、「こんなにひどいんだぁ!」と絶句。

煤で全身が汚れるので、お友だちは、学校のジャージの上下。
私は知り合いからもらったツナギ服。
そして、頭にはタオルを巻き、手は軍手、鼻と口は粉塵防止用の大きめのマスクをつけている。

そんな怪しい格好で、整理を始めた。
ダイニングと和室、洋間は、もうすでに片付け終わっていたので、あとは生活には使っていなかった3畳のサービスルームだけである。

ここも人の頭の位置から上あたりが、熱風で煽られ、天井が変形していた。
クローゼットも上の部分は、大量に煤が付着していたが、変形はしていなかったので、扉は簡単に開いた。

幸いにも、煤は内部までは及んでいなかったようだ。
クローゼット内に格納されたものは、ほとんどが綺麗なままだった。

いただきものらしき贈答用の箱が、無造作に何段も積まれていた。
中を調べると、ティーカップや丼などの食器が多かった。
使えそうなものが、ほとんどだった。

これは、「使えるものリスト」に追加しておこう。

こうしてリストにしておけば、あとで義母のバカ息子たちが、「あいつが盗んだ」と大騒ぎしたときも、俺はこれだけ丁寧に整理したんだぜ、おまえらは何もしていないじゃないか、と逆襲することができる。
だから、これは大事な作業である。

使えそうなものは、大き目の段ボール箱に入れて、「Good!」と書いておく。
これで、「Good!」の箱が3つになった。

あまり長く煤だらけの部屋にお友だちをいさせるわけにはいかないので、今日はここまで、と終了宣言をしようとしたとき、クローゼットの奥にピンクの金庫らしきものがあるのに気づいた。

ピンクの金庫?

そう言えば、義母は、ピンクが好きだったな。
金庫まで、ピンクか。
それほどまでに好きだったとは。

しかし、金庫となると、鍵がないと開けることはできない。
この状態で鍵を見つけることが可能かどうか。
そう思って、取っ手を持ち上げてみたら、ふたが自然に開いた。

こんなに簡単に開いたら、金庫の意味がない。
つまり、大事なものを入れていたわけではないということか。

中を覗いてみた。

入っていたのは、携帯のストラップが5本。

3つは、小さなウサギのぬいぐるみ。
他の2つは、子ブタのぬいぐるみ。

それらは、透明なビニール袋に入っていた。

そして、そのビニールには文字が書いてあった。
3つのウサギには、ヨメと息子と私の名前。
子ブタには、娘と娘のお友だちの名前。

義母は、娘のお友だちには一度しか会ったことがないのに、名前を覚えていたようである。
認知症は、それほどまでに改善されていたのか。

これ、Mちゃんに、だって。
私がお友だちにストラップを渡すと、彼女は、それを手に取った途端、しゃがみこみ、声を抑えて泣き始めた。

丸まった背中が震えていた。


ウサギの一つには、「サトルさんへ」と書かれていた。


それを見て、あらためて思った。

義母は、死んではいけない人ではなかったのか。

どうしようもなく薄情な男ではあるが、そんな私でも、そのことだけはわかった。


目が痛い。

きっと天井から降って来た煤のせいだ。




2011/02/08 AM 08:16:00 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]



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