Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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てんてん
昨年の10月のことだが、我が家の脱衣場に、てんとう虫の姿を見つけた。

「可愛い!」と萌えたのは私だけで、他の4人は「早く追い出してよ」と毛嫌いした。

こんなに、可愛いのに・・・・・。

「てんてん」と名づけた、と私が言うと全員が「キモッ!」
「追い出せ!」の総攻撃を受けたが、生き物を労わろうよ、淋しい中年の楽しみを取らないでよ、と言ったら渋々ではあるが了承してくれた。

それから10日間くらいは、脱衣場の天井や壁で「てんてん」が遊んでいるのを見かけた。

しかし、いつのまにか姿を見かけなくなった。

「てんてん」どこに行ったのかね?

「キモッ!」

脱衣場は、常時生活の場というわけではないので、寒い。
11月の寒さに耐えられなくなって、「てんてん」は天に召されたのだろうか、と私は考えた。

もちろん家族の間で、「てんてん」が話題になることはない。

私だけが気を揉んで、鬱になっていた。

しかし、昨日の夜、風呂から上がって、パンツをはき短パンをはきTシャツを着ていたとき、壁に動くものを発見した。

まさか、ね・・・・・・・。

しかし、それは飛んだ。
壁から壁に30センチほどの跳躍であるが、間違いなく「てんとう虫飛行」を繰り返した。

思わず、私は「オー!」と叫んだ。

その叫び声を聞きつけて、家族が駆けつけてきた。

「何だ、痔が悪化したのか!」と娘。
「髪の毛が抜けた?」と息子。
「こんな時間に発声練習なんて!」と娘のお友だち。
そして、「久しぶりに鏡で自分の顔を見てビックリしたんじゃない? あまりにも老けたから」とヨメ。

いや、「てんてん」が、と私が壁を指差すと、全員が「ケッ! 人騒がせな!」と、すぐに解散。

喜んだのは、俺だけかよ。

まあ、いいか、生存を確認できただけでも嬉しい。

ネットで調べたら、てんとう虫は冬眠をするらしい。

気温が下がって、動きにくくなったので、彼は冬眠をしたのではないだろうか。
そして、昨日今日の暖かさで、目覚めた。
そう考えるのが、合理的だ。

生命というのは、素晴らしい。

中年男に、感動を与えてくれた「てんてん」だった。



という夢のある話の次は、現実的な話を。

8年前から私に仕事を出してくれる編集企画会社がある。
それをN企画としておく。

N企画からは、年に2回仕事をいただくが、実は、それは仕事とは言えないものだった。
いや、仕事は仕事なのだが、私のふところに一銭も入らないという意味で、仕事ではないということだ。

それは、タイピングの仕事。
私の場合、仕事の流れで文字を打つことはあるが、大量に文字打ち原稿がある場合は、外注に出すことにしている。

私のタイピングは、猛烈に速いわけではないが、遅くもない。
ただ、正確に打つ方だとは言える。

しかし、文字打ちのプロの方たちと比べたら、チェ・ホンマン猫ひろしくらいの差はある(例えが変?)。
だから、大量の文字打ちは、プロに任せるようにしている。

そして、プロにまかせた以上、プロの領域を侵食してはいけないと思うから、私は儲けを取らないことにしているのだ。
外注さんに4万円を請求されたら、そのままクライアントにその額を請求して、それが入金されたら外注さんにそのまま振り込む。
その工程を8年間繰り返してきた。

厳密に言えば、通信費や外注さんに原稿を送る料金などを考えれば、むしろマイナスの赤字である。
我ながら8年間もよく我慢したと思う。
それは、信頼できる外注さんがいたからこそ我慢できたことである。

これからもその我慢を続けていれば、外注さんに迷惑をかけなかったのだが、今回突然私の「変人気質」が爆発した。
あらゆることで、疲れていたということもある。

昨日、N企画の社長から電話があった。
「文字打ちのミスが、100個以上ありました」

100個以上では曖昧です。詳しい数字を言ってください。

(面倒くさそうに)「131個」

400字詰め原稿用紙で、95枚の原稿。
単純計算で、3万8千字だ。

この仕事は、文字を打ってもらったら、それでおしまい、というわけではない。
私が内部校正をする。
原稿と照らし合わせて、打ち間違いを修正していくのだ。

私が信頼して出している文字打ちのプロは、宇都宮に住む主婦だ。
仕事が速くて正確だから、彼女にしてもらうと、仕事のスケジュールが立てやすい。
6年以上のお付き合いをさせていただいている。

ただ、どれほど早くて正確とはいえ、打ち間違いはある。
それは、本人の勘違いだったり、変換ミスだったり、原稿が汚くて読めなかったりというのがあるから、ミスがゼロというのは、ほとんどありえない。

今回も内部校正で37個の打ち間違いを見つけた。
率としては、約0.1パーセントである。
これは、前日の午後4時に出して、翌日の正午までに仕上げる仕事としては、優秀な結果と言っていいだろう。

それを私が内部校正する。
ただ、内部校正をしたからといって、やはりミスがゼロになるわけではない。
明らかに間違った言い回しや表現は、注釈をつけて正しい文章に変更するから、その勝手に変更した部分をこちらのミスと言い張られたら、ミスの範囲は広がるだろう。

今回、内部校正で37だったミスが、131個に増えていた。
ただ、これはたまにあることだ。
私が気を利かせて文章を直した結果、注釈つきで訂正したその箇所が気に入らず、もう一度訂正しなおされた場合、それを当方のミスとカウントする場合がある。

このN企画は、毎回そうである。

今回は、有名な歴史書から引用した文章が明らかに間違っていたから、それを訂正して打ち直した(注釈つきで)。
出典元とは明らかに記述が異なるから、訂正しただけだ。
意味が違ってしまったら、その引用文は、まったく役に立たなくなる。
それがそのまま通ってしまったら、筆者にとってもよくないだろう。

だから、ここの引用文は、実はこういう表現で、こういう意味です、という注釈をつけて、文章を変更したのだ。
それを打ち間違いととられるのは、心外である。

現行のままだと意味がまったく違ってしまいますよ、と私がN企画の社長に言うと、社長は「それは、あなたの仕事でも俺の仕事でもありませんよ」と言う。

そう言われるのは、実は毎回のことだった。
今までは、それに耐えてきた。
たいしたことではないと思ったからだ。

しかし、今回の私は、意固地だった。

社長が面倒くさそうに言う。
「書いた本人が責任をとればいいんです。俺は、本にすればいいんだ。そして、あなたはいつも通り、文字を打っていればいいんですよ。余計なことはしなくてもいいんです。どうせ、身内だけに配る本なんだから」

しかし、編集者は、自分が作る本に責任をもつべきでしょう。

「いや、責任は、書いた人だけが持つ。儲けを考えたら、余計なことはしていられない。時間を食えば食うだけ損ですからね。俺は細かい内容までは責任をもたない。相手にも、そう言っていますから」

では、明らかに間違った文章でも、訂正しないと?
それで、その人が、恥を書いても気にしないと?

「そう、気にしない。俺が間違ったわけじゃないから。ここは大手の編集社とは違うんですよ。客も、それはわかっているでしょ。値段が違うんだから・・・、安いってことは、そういうことですよ。書いた人間だけがリスクを負うんです」

それは、明らかに私の価値観とは、違うものだった。
今までだったら、「まあ、いいか」で済ませられたが、今回は、その意見に屈するのが嫌だった。

自分でも、その感情の動きが理解できない。

上等じゃねえか。
そう思った。
だから、言った。


そうですか。
では、修正箇所は、こちらで修正しなおして再度送りますので、次回からは他に頼んでください。
ご迷惑をおかけしました。


成りゆきで、このような結末になったので、次回から、この仕事が入ることはない。

宇都宮のサカイさん。
ゴメンナサイ。
新しい仕事を持ってきますので、お許しください。

必ず持ってきます。



てんとう虫に誓って・・・・・。




2011/02/06 AM 07:28:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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