Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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秘密が洩れている
話は、やや古くなる。

書くネタがなくなったときは、古い記憶をさかのぼると、いいネタにぶち当たることがある。
今回のは、いいネタとは言えないが、記録しておくのもいいと思って、書いてみた。


自治会というのがある。

どの地域にもあるかは、知らない。
ただ、私の住む武蔵野にはあるようだ。

昨年の暮れ、その自治会の会長を名乗る男の人が、副会長を連れて、我が家のインターフォンを押した。
二人とも65歳くらいで、会長は、どんな不正も見逃しませんよという正義感あふれた顔。
副会長は、世の中のこと、何でも丸く治めましょう、という柔和な顔。

いいコンビだと思った。

その副会長が言う。
「すみませんねえ。年末のお忙しいときにお邪魔して。こちらにだいぶ前に越して来られたのは知っていたんですが、挨拶もいたしませんで」
会長の方は、黙って私の表情を観察する役割に徹しているようだ。
口を引き結んで、私を凝視していた(刑事の尋問みたい。相棒?)。

(すみませんねえ。こちらこそ、ご挨拶に伺いませんで。自治会なんてものが、私の生活に役に立っているとは思っていなかったもので)
心の中で答えたが、相手の訪問の真意が読めないので、私は無言で相手の顔を見返した。

彼らが言うとおり、年末の忙しいときに訪問する意味が、わからなかったからだ。

私が黙っていると、今度は会長が、観察する顔から一転して笑顔になり、「ゴジエイだそうで」と言った。

その「ゴジエイ」が「ご自営」を言っているのだとわかるまで、数秒かかった。

私の頭の回路が繋がって、「ご自営」を理解したとき、会長が「不景気ですから大変でしょうなあ」と言い、それに副会長が人当たりのいい笑顔を見せてうなずく場面に、私は参加させられることになった。

つまり、私は曖昧ながらも同様に笑顔つくり、うなずいたのである。

しかし、いまだに訪問の真意は不明。

武蔵野に引っ越してから8ヶ月。
自治会なるものを意識したことは、蟻のウ○コほどもなかった私は、心の中でまだ身構えていた。

自治会費を払えと言うことだろうか。
しかし、我が家は、自治会には入っていない。
会費を払っていないのだから、自治会員ではないだろう(と思う)。

賃貸契約のとき、「自治会強制加入」とは書かれていなかった記憶がある。

ということは・・・・・、入ってくれというお話か。
つまり、勧誘か。

自治会費って、いくらくらいするもんなんだろうな?
会費は月々支払うのかな。
それとも、年間一括払いかな。

ひと月千円だとしたら、一年で1万2千円か。
高いな。
やだな。

1万2千円あれば、貧しい人が、どれだけ助かるだろうか(貧しい人というのは、私のことだが)。
それだけあれば、その貧しい人に、クリアアサヒを買ってあげることができるのに。
そうすれば、その貧しい人は、涙を流して喜ぶに違いない。

私は、どちらかと言えば、自治会費を払うより「貧しい人にクリアアサヒを買う運動」に参加したい方だ。
だから、自治会には、入りたくない。

というような理屈が、世間様に通用するかどうか。

まして、いかめしい顔をなさった会長様に。

その会長が言う。

「自治会の会報ですが」

カイホウ?

「はい、会報です」と言って出したのが、2009年の会報だった。

ああ、会報ですね?

「そう、会報です」

会報ですか?

「・・・・・・・」

しつこかったようである。

「これまで二十年近く同じ印刷屋さんにお願いしていたんですが、そこが去年倒産してしまいまして・・・」

倒産ですか?

「はい、倒産しました」

倒産なんですね?

「・・・・・・・」

くどかったようである。

「そこでですね」と副会長が、話をひきとって、ことばを繋げた。
「お宅が、その種の仕事をなさっているというのを聞きまして、とりあえず見積もりをいただけないか、とうかがったわけです」

つまり、この方たちは、お客さまだったようだ。

申し訳ありません。
お茶もお出しいたしませんで。

自治会の会報の版下作りは、何度か経験したことがある。
現実的な話をすると、予算があまりないから、ほとんど儲からない仕事だ。
私の知っている印刷屋さんも、儲からないからと言って、断るところもあったと記憶している。

だが、とりあえず話だけは聞いてみた。

まず、データがあるかどうか。
データがなかったら、1からの作業になるから、その分、経費はかかる。

あるいは、その倒産した印刷屋さんが、アナログ形式で会報を作っていたら、私がやる場合、やはり1からの作業になるから、同じように経費がかかる。
データがあれば、今回変更した箇所だけ修正すればいいから、経費は小さい。
後は、印刷代だけで済む。

私は、一応、2種類の見積書を出します、と告げた。

これは年明けに見積書を出したのだが、倒産した印刷屋さんが、アナログ形式で仕事をしていたので、結局アナログ形式を受け継げる他の印刷屋さんに直接出した方がいい、ということになり、仕事の話は消えた。

「申し訳ありません」と会長さん、副会長さんに頭を下げられたが、これはよくあることなので、と私は鷹揚に答えた。


それよりも、私には、ひとつ気になっていることがあった。

なぜ、彼らは私がデザインの仕事をしていると知っていたのか。

私は、看板を出して仕事をしているわけではない。
オンボロアパートに引き篭もって作業をしているから、まわりの住民が私の職業を知ることはできないはずだ。

娘が通う中学の調査書にも、私は「自由業」とだけしか書いていない。
「デザイン」とは言っていないのだ。

いま居候中の中学3年の娘のお友だちに以前、「マツコのパピー、何してるの?」と聞かれたときも、自由業だよ、と答えていた。

「自由業って?」

華麗なるプータローだよ。

「ふ〜〜ん」

我が家に遊びに来る娘の友だちにも、そう答えているから、私の本当の職業は誰も知らないはずである(隠すこともないと思うのだが)。

なぜ、私がこのような仕事をしているとわかったのですか?

会長に、そう聞くと、会長は副会長と顔を見合わせて、「ああ、何ででしょうかねぇ・・・」と、とぼけた。
副会長も、「そうですなあ」と曖昧な顔をして笑った。

そして、曖昧に笑ったまま、二人は帰っていった。


まさか! 私の知らないところで、いつのまにか私の個人情報が漏れている?


もしかしたら、私が去年の12月、お尻の痛みで悶え苦しんでいたこともバレていたりして。
あるいは、去年の暮れに、イトーヨーカ堂のお酒売り場の前で、ワインを2杯も試飲したこともお見通しなのか。

昨日、打ち合わせの帰りに、ブックオフで2時間も「ゴルゴ13」を立ち読みしたことも。
図書館で借りた北方謙三の「楊令伝第8巻」の貸し出し期限が2日過ぎていることも。
iPhoneの待ち受け画面が、カピバラだということも、みんな世間に筒抜けなのか。


これは、怖い。


榮倉奈々のポスターが仕事場の壁に貼られていることもバレてしまったら、俺は・・・・・。


怖い・・・・・・。





2011/01/20 AM 06:38:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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