Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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ドタキャンのお返しは枡酒2杯
言いたくはないが、困ったお客様というのはいる。

たとえば、無理難題を吹っ掛ける人。
ゴリ押しとも言う。

「急いでるんだよ。○日までに仕上がらないと、大変なことになるんだ。だから、大急ぎでやってくれよ。長い付き合いなんだから、できるだろ!」

これは、意外と多いパターンだ。
世の中には、自分だけが仕事を出していると思い込んでいる人がいて、だから「俺の仕事を優先」というゴリ押しタイプだ。
ただ、中には、仕事を終えたとき思いがけず、ねぎらいのことばをかけてくれる人もいるので、そのときは嬉しい。

予算がないので、とにかく安くしろ、と言う人もいる。
私は金銭的な駆け引きが嫌いなので、最初から最低限の見積もりを出す(プロとして卑怯と言われることがあるが)。
つまり、最初から譲歩しているのだから、あまり「安く安く」という人は、申し訳ないがお断りすることもある。

「安いのは今回だけで、次回からは普通にお願いしますから」と言ってくる人の仕事は、とりあえずするが、ほとんどの人が、その口約束は覚えていない。
つぎも「まけろ」と言うか、仕事が来ないかのどちらかである。

先日、頭に何のイメージもなく、仕事を出す人がいた。
最終的な納期だけが決まっていて、中身は全てお任せという仕事。

冬物の在庫セールのチラシ他の仕事だったのだが、担当していた人が事故で入院してしまったので、店のオーナー自らが仕事を発注しなければいけないことになった。
それまで全部をその担当者に任せきりだったから、オーナーは副業の「そば打ち」の仕事がメインになり、10年近く本業をおろそかにしていたというのだ。

一週間前、私は過去の資料を目の前の机にドッサリと置かれ、「とにかく、この日までにセールをしたいんだよ」と切羽詰った声で訴えられた。
とは言っても、私も、この分野には疎い。

デザインだけなら請けますが、商品の選択まではできません、と答えた。

それに対して、オーナーは「わかりました。少し考えさせてください」とあっさりと言った。
それ以来、連絡はない。
こちらからする気もない。


そして、昨日のできごと。

これは、私が悪いのか。
それとも相手が悪いのか。


大宮の印刷会社。
この会社の担当者が私に対して冷淡であるというのは、このブログで何度か書いたことがある。

悪口と取られると困るので、詳しくは書かない。
ただ、今回起きたことだけは、事実として書く。
いや、書かせていただきたい(切望)。

やや感情的な文章になりますが・・・・・。

昨日午前10時半、宇都宮線で大宮駅に降り立ったそのとき、iPhoneが震えた。
印刷会社の担当者からだった。

「悪い。大きなトラブルがあってね、今日はダメなんだ」

要するに、ドタキャン。
大きなトラブルが何かはわからないが、大変だろうことは想像がつく。
これは、仕方がない。
違う日にするしかない。
私は納得した。

ただ、私にも都合がある。
翌日は、他の打ち合わせが2件入っているから、大宮まで行く余裕がない。

しかし、相手は言うのだ。
「明日、10時半、いいね?」

いや、私は明日一日都合が悪いです、と言うと、担当者は何と言ったか。


「自分の都合ばっかり言わないでよ。相手の都合も考えるのが、ビジネスってもんじゃないの!」


自分の都合で打ち合わせをドタキャンしたことは、忘れているのか、考えもしないのか。

しかし、明日の仕事の予定は、そちら様より早く決まったことですから、それを優先させるのは当たり前のことだと思いますが。

私のその言い方が、相手の気に触ったようである。
「だからぁ! 自分の都合ばっかり言わないでよ。じゃあ、こっちの都合はどうするの!」

20歳以上年上の人間に向かって、見事なタメぐちである。
この方のご両親、恩師、上司様は、素晴らしい教育をなさったと、私は深く感心した。

ただ、ここで怒ってしまっては、仕事をなくす。
この会社からは、年に5、6回仕事をいただいているのだ。
それがなくなるのは、痛い。

ここは、冷静に、冷静に。

では、そのトラブルが解決するまで、お待ちしましょうか。
私はこのあと、体が空いていますので。
トラブルが解決したら、すぐお伺いいたしますから。

これは、私としては、相当な譲歩である。
これこそ相手の都合に合わせる大人の対応と言っていいと、私は自分を褒めたくなった。

しかし、それは私の思いあがりであると、すぐ悟らされることになる。

私の提案を聞いて、相手の声のボルテージは、さらに上がった。
「そんなふうに待たれたら、落ち着いて仕事できないでしょ! 待っていると思っただけで、集中できないの! 何でそれがわからないかなあ!」
そして、「まったく! 自分のことしか考えていないんだから!」と、憤慨で語尾を震わせたまま、電話を切られた。


激しく怒られた。


これって、俺が悪いってことになっていませんか?

大きなトラブルに直面されているのは、ご同情申し上げますが、もう少し冷静な対応ができないものでしょうか。


叫びだしたい衝動に駆られたが、善良な市民が回りにいるので、私は歯を食いしばってこらえた。

こんなときは、知り合いの顔を見て、触れ合って、心を落ち着けるのが一番いい。
幸い私には、大宮駅から20分ほど離れたところに事務所を構えるオオサワさんという同業者がいた。

この人は、私にメシを奢ることに生きがいを感じている人だ(私だけがそう思っているのかもしれないが)。
この心の大きな人なら、私の心にあいた空洞を埋めてくれるのではないかと私は期待した。

電話をかけた。

オオサワさんは、いた。
「おお! Mさん、久しぶりぃ」から始まって、その後10分ほどオオサワさんの近況報告が速射砲のように続き、「ああ、新年の挨拶をしていなかったね、おめでとう」と照れながら言い、「で、いま、どこ?」で話が終わった。

いま、大宮駅です、と私が言うと、オオサワさんは「じゃあ、時間あれば、お昼奢るけど(待ってました!)。一時間で仕事終わらせるから、11時50分にいつもの定食屋ね。12時になると混むから、先に席をとっておいてね」と慌しく電話を切った。

以前は高級な店で奢ってもらうことが多かったが、景気が悪くなると、定食屋になった。
しかし、私は高級な食材が体に合わない体質なので、これはむしろ喜ばしいことだ。
アジフライと大盛りのキャベツと味噌汁が目の前に並ぶと、食が進むのである。

今日の定食は何かな、そう思っただけで、先ほどの嫌なことの49パーセントは忘れることができた。

駅周辺で時間をつぶし、大宮駅から10分ほど離れた定食屋に11時45分に着いた私は、席を確保して、オオサワさんを待った。
「本日の定食」は、愛しの「カキフライ定食」だった。
心が躍った。

もう先ほどのできごとの85パーセントは忘れかけた。

11時52分に、オオサワさんはやって来た。
70キロの小太りオジさん。
オジさんは席に座るなり、「今日の定食二つ。ごはん大盛りでぇ!」と叫んだ。

その大声に、6割方埋まった席のほとんどの人が、振り向いた。
しかし、オオサワさんは、平然としている。
その大物振りが、好きだ。
嫌みがない。
憧れる。

これで、嫌なことは、99パーセント忘れた。

「ごめんよ、さっきは、俺のことばかり喋って」と言って、頭を軽く下げたオオサワさんは、カキフライがテーブルに並んだだけで感動し、「うまそお!」と、また大きな声を上げた。
その声が気に入ったのか、店のおネエさんが、私たちの皿に「あらあら、カキフライが一個足りなかったみたいね。ゴメンナサイね」と言いながら、カキフライを一つずつサービスしてくれた。

人徳というのは、あるようだ。

ただ声がでかいだけでは鬱陶しく感じるものだが、オオサワさんの声には、人間的な「何か」が人の心のどこかを振動させる威力がある。
場の空気が柔らかくなるのである。

カキフライもうまいし、オオサワさんは聞き上手だし、私は気持ちよくメシを食った。
普段はご飯のお代わりや味噌汁のお代わりはしないのだが、このときは、自然にお代わりを頼んでいた。

しかし、そんな夢のようなときも、一つの電話が、ぶち壊しにする。

iPhoneが、震えたのだ。
ディスプレイを見ると、大宮の印刷会社だった。

出たくはなかったが、オオサワさんが、目で「でれば」と合図したので、仕方なく出た。

すると、担当者の爪でガラスをこするような声が、私の耳奥に、この上ない不快な刺激を与えて侵入してきた。

「トラブル解決したよ! 約束どおり、今から来てよ」

いま食べたカキフライが、消化不良になりそうだ。

そうは言うが、私は約束した覚えはない。
私がトラブルが解決するまで待ちましょうか、と言ったとき、先方は「そうやって待たれるのはヤだ!」と言って、一方的に電話を切ったではないか。

それが、なぜ「約束」ということになるのか?

しかし、せっかく大宮まで来ているのだから、ここで定食を食って帰っただけでは、意味がないことは5歳児でもわかる理屈だ。
だから、私は不機嫌丸出しの声で「2時過ぎに行きます」と答えた(大人げない)。


不審顔のオオサワさんに、今日のできごとを説明すると、オオサワさんは「いるよねえ、そんな勘違いバカ」と言ったあとで、おネエさんに、「枡酒三つ」と指を三本立てた。

なぜ、三つ?

「俺が一杯。Mさんが二杯。向こうに酒の匂いをプンプンさせて行ってごらん。そいつはどんな顔をするかね? バカを相手にするときは、こっちもバカになったほうがいいんだよ。それでフィフティフィフティさ」

オオサワさんが、豪快に笑った。

まるで筋の通らない話ではあるが、相手も筋が通っていないのだから、それでいいのだ。
オオサワさんは、そう言いたいに違いない。


ノンビリ酒を飲んで、2時過ぎに得意先に到着。
自分でも日本酒の匂いを全身から発散していたと思う。

こういう場合、自分より他人の方が敏感だと思うから、まわりはもっと匂いを強く感じるかもしれない。


私が近づくと、はたして、担当者の顔色が変わった。

しかし、私が声に「気」を込めて「何か!?」と言うと、相手はすぐにうつむいた。
気合勝ちだったようだ。


さて、この事件、どちらが非常識でありましょうか。


まあ、年上の私の方が非常識だというのが、世間様の評価だとは思うのだが・・・・・。




一応、反省したフリでもしておきましょうか?





2011/01/18 AM 06:49:33 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]



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