Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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サプライズなんか
友人のテクニカルイラストの達人・アホのイナバと二人だけの忘年会。

毎回14歳年下のイナバに奢ってもらうのは申し訳ないのだが、今回は、少しもためらうことなく奢ってもらうことにした(奢らせてくださいとイナバが泣くので)。

乾杯のあとで、イナバがいきなり「俺も宇宙人を知ってるんですよ」と言い出した。
前回の私のブログを読んで、唐突に話題を振ってきたのである。

「そして、その宇宙人は、5歳なんです」と、イナバが話を続けた。

アホのイナバが言いたいことはわかった。
その話は、以前に聞いたことがある。
彼の義理の妹の子どもが、「宇宙人」と書いて「ソラン」と読ませる変わった名前だったのである。

イナバは、私にそう自慢げに言ったことを忘れて、今回また同じ話を持ち出してきたのだ。
ここは、とぼけて素直に話を聞いてやってもよかったかもしれないが、時間がもったいないので、私は、ソランちゃんだろ、とその話を無理矢理終結させた。

拍子抜けのイナバ。
アホ顔が満開である。

しかし、焼き鳥をひと口頬張って、イナバは、すぐに立ち直った。
「そう言えば、Mさん。ラーメン屋は、順調なんですか?」

昨年末に友人とともに立ち上げた「幸せなラーメン屋さん」計画。
それが、実は約1ヶ月前に実現していたという意外な展開。

そのことで、私は今もむくれているのである。

ラーメン屋のスポンサーは、友人のスガ君。
いや、スポンサーなのだから、スガさんと呼ぶべきだろう。
そのスガさんと私は、11月の初めに、来年1月15日オープンで合意して、私はそのとき、日付の入ったチラシとポスターをスガさんに見せて了解を取っていた。

それは、全員で合意した決定事項だった(はずだ)。

しかし・・・・・。
私は11月24日に、突然京橋のウチダ氏に電話で言われたのだ。
「Mさん、明日オープンだから」

何が?

「ラーメン屋だよ」

ラーメン屋は、来年の1月15日オープンだろ、冗談はよせよ!

「冗談じゃないよ。とにかく明日オープンだ。明日の朝8時に現地集合。わかったね」

寝ぼけたのか、ウチダ氏。
そこで私は、プロジェクトの一員であるミスター極道顔・コピーライターのススキダに電話をして確かめることにした。
すると、ススキダも「明日オープン。つべこべ言うな」と言って、一方的に電話を切った。

まさか、俺が勘違いしていたのか。
いや、しかし、手元のチラシやポスターには、2011年1月15日オープンとなっているぞ。
間違えるわけがない。
それは、私が作ったのだから。

夢。
これは、夢なのか、と現実逃避をしようと思ったが、このケツの痛みが夢であるわけがない(そのときはまだケツは痛くなかったが)。
季節外れのエープリル・フールかとも一瞬疑ったが、いくらなんでも外れすぎている。

眠れない夜を過ごした私は、約束の午前8時の19分前に現地に到着したが、みんなはもう来ていやがった。
スガさん、ススキダ、ウチダ氏、店長代理、イナバ、その他スタッフゥ〜。

そこで、私は馬鹿げたサプライズを仕掛けられたことを覚ることになる。

つまり、11月25日は、私の参百歳の誕生日。
要するに、このバカどもは、私の誕生日に合わせて店のオープンを密かに決め、水面下で進行させていやがったのである。
私のほうに回ってきたチラシやポスターは、ダミーだったのだ。

ハッピバースデイ・ツゥ・ユー〜〜。

それを聞いて私は怒った。
バカじゃないのか、と。
おまえたちは、ビジネスを何だと思っているのか、と(実は、少しは嬉しかったのだが)。

「Mさん、あのとき、本気で怒っていましたよね。あんなMさん、俺はじめて見ましたよ」
イナバが、焼き鳥で口の中を充満させながら言った。

当たり前だ。
人には役割というものがある。
たとえば、スガさんと私は、ビジネスに対して甘い考えを持っている。違う言い方をすれば、商売が下手な人種だ。
それに対して、ススキダとウチダ氏は、ビジネスに対する姿勢が厳しく、商売がうまい。
悔しいことに、あいつらは上等な人種なのだよ。

だから、ススキダやウチダ氏には、ガキの遊びのようなサプライズなんかして欲しくないのだ。
それは、下等人種である俺の役目だ。
このメンバーの中では、俺だけが、それを許されるのだ。
他のやつがやるのは、許さない。

だから、俺は怒っている。

「それって、無茶苦茶じゃないですか。ただの負け惜しみじゃないですか」と、イナバがアホなりの正論で責めたてる。

そうだ。支離滅裂だ。
だが、俺は、ススキダやウチダ氏には、俺みたいになって欲しくないんだ。
私は、ジョッキを一息で呷って、イナバを睨んだ。

「俺みたい、って、白髪のオッサンに、ということですか」と、イナバ。

そうそう、毎日シラガが684本ずつ増えて、一ヵ月後には、おじいさ〜ん・・・・・違うわい!

「ああ、そうか! ノリ突っ込みが下手なオッサンということですね」

そうなんだよ。鳥肌が立つくらいノリ突っ込みが下手なくせに、性懲りもなくやる白髪のオッサン・・・・・いやいや、違う!(ホントに下手だなオレ)

新しいジョッキを呷り、気を取り直して・・・、
「要するに、14歳年下の友だちに、金をたかる俺のような蛆虫にはなるな、ということだよ」

イナバが、私の顔を真っ直ぐに見つめた。
眉が少し吊り上って、目が細められていた。
その険しい顔は、去年の今ごろも見た記憶がある。

昨年、姉がいつもの我が儘精神を発揮して、PETという高額な最新検査を受けたいと駄々をこねたとき、私は主治医がする必要はないといっているのだから必要なし、と姉を説得しようとした。

でもね。俺の姉は、50数年の生涯の中で、一度も人の説得に折れたことがない経歴を持つ女なんだよ。
私はそう言って、迂闊にもイナバに愚痴をこぼしてしまったのである。

私は、姉の抗がん剤の治療費をイナバに借りていた。
その時点では、まだ半分も返済していない状況だったから、とても頼める道理ではなかったのだが、イナバは、それを聞いて、真剣に怒ったのだ。
それは、私がはじめて見るイナバの怒りだった。

「生きたいと思うお姉さんの気持ちをわかってやれよ! 俺に、遠慮なんかするな!」と。

そのときと同じ目。

だが、今回のイナバは昨年とは少し違って、幾分抑えた口調で言った。
「俺は、Mさんにたかられているとは、思ってないな。俺が必要だと思うから力を貸しているだけだ。世話になった人に力を貸すのは当たり前のことだ。それに、俺のほうが金持ちだからね。富は分配すべきだ。それは、Mさんがいつも言っていることだろ」

イナバの目が、柔らかくなった。
そして、歯並びの悪い口を大きく綻ばせて言った。
「俺、Mさんのことが、好きだからさぁ」

ま、まさかの「好きですよ」発言。

私は、咄嗟に言った。
イナバくん、悪いが、俺は今晩帰らなくてはいけないんだ。
好意は、ありがたいんだけどね。
おケツも痛いことだし・・・・・。

すると、イナバは、ししゃもを頭から齧り付いて、それをワシャワシャと噛みながら、また笑った。
歯の間から、無惨なししゃもの死骸が覗いて見えた。

寒気がした。

「ほらね。いい年をして、そういうバカを言うMさんが、俺は好きなんですよ」

何と! 「好きですよ」発言、2連発。

私は、大きく息を吸って、覚悟を決めたように言った。


わかった・・・・・イナバくん・・・・・抱いてやる。


その不気味な会話が、運悪く聞こえたのか。
隣のテーブルで談笑していた若い女の子3人が、一斉に振り返って、私を蛆虫を見るような目で見た。
いや、突き刺すように見つめた。



蛆虫、赤面。



みなさまは、このようなキュートなお尻を持つ蛆虫には、決してなりませんように・・・・・。





2010/12/24 AM 06:56:59 | Comment(3) | TrackBack(0) | [日記]



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