Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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師走のなぞかけ
「今やAKBだけじゃないですか、CDが売れているのは」、と最近AKBにはまっている、30過ぎのいい年をしたオッサン・桶川のフクシマさんが、得意気に鼻を膨らませて言った。

「マユユ、サイコー!」

マユユって誰ですか? フクシマさん。
ツルカメユなら知ってますけど。

「ツルカメユ、ってなんですか?」

鶴亀湯ですよ、銭湯の。

「ふざけないでくださいよ!」

ふざけてるんですよ。

(唐突に)整いました。
AKBとかけまして。

「AKBとかけまして?」

歌の好きなオッサン、とときます。

「そのこころは?」

どちらも、先頭(銭湯)で、歌いたがります。

それを聞いたフクシマさんは、蔑むような目で私を見て、肩をすくめた。

「Mさん、やっちまいましたね。AKBは、先頭ではなく、センターなんです」

知らんわ! そんなもん!

わしゃ、帰る!

私が立ち上がると、フクシマさんも勢いよく立ち上がり、テーブルを回り込んで私の肩をつかんだ。
「まだ、仕事の打ち合わせもしていませんよ。Mさん、職場放棄ですか?」

場所は、中央線武蔵境駅から少し離れたサイゼリア

ここは、職場ではない、レストランだ、と私が言うと、「生ビール放棄をするんですか!」とフクシマさん。

そこで私が、生ビール放棄はしないが、フクシマ放棄はする、と言い返すと、「ホウキと言えば、大掃除」と、おバカな展開になってきたので、私は無言でソファに腰を下ろすことにした。

立ち尽くす、おバカひとり。

続けて何か言おうとするフクシマさんに向かって、私は、生ビール早く、と人差し指を向けた。

気を削がれたフクシマさんは、無表情に腰を下ろし、無表情に「生ビール一つ」と店員に告げ、無表情に顔を窓の外に向けた。

すねたか、フクシマ。

しかし、面倒くさいから、放っておこうか。
ただ、今日は、いつもセットでいる麻生久美子似の事務員がいないという淋しい展開だから、なだめる人がいない。

少し相手をしてやるか。

そこで、「アリマサン、ナゼイナイ?」と、宇宙人の声で言った。

その声に素早く反応したフクシマさんは、宇宙人の声で、「アリマサンハ、新婚旅行デ、グアム」と答えた。

しかし、私はすぐに普通の声に戻り、何だよ! 結婚式はしないのに、新婚旅行は行くのかよ! 私という男がいながら、と憤慨を装って言った。

フクシマさんは、展開が変わったのもお構いなしに、まだ宇宙人の声で「ナンデスカ? 私トイウ男ッテ? Mサントハ、ソンナ関係ジャナイデショウ?」と続けた。
(もう宇宙人ごっこは、終わったのに)

では、私は男ではないのか? 女なのか?

「イヤ、男デスケド」(まだ、やってやがる)

ほら、やっぱり男じゃないか。

「エッ? ソレハ、意味ガ違ウンジャ・・・」

おバカは、放っておいて、さて、仕事の話をしましょうか、と私は再び話を方向転換した。

しかし、おバカはまだ、宇宙人ごっこを続ける。
「今回、オ願イスル仕事ハ・・・・」

ここまで徹底すると、おバカも芸術的だ。

その姿に敬意を表し、私もお付き合いすることにした。
だが、窓の外を指差し、UFOガ迎エニ来タ、と言ったら、そばを通ったウエイトレスに、宇宙人を見るような目で見られた。

このままでは、私のメンタルがズタズタになりそうなので、フクシマさんに頭を下げ、もう勘弁してくださいと言った。

「ワカリマシタ」とフクシマさんが、勝ち誇った顔で頷き、私はやっと宇宙人から解放された。
長い宇宙への旅だった。

地球に無事帰還した二人は、仕事の話を22分17秒で終え、同時にピザを口に含んだ。
すると、フクシマさんが調子に乗って、また「地球ノピザハ最・・・」と言いかけたので、私は再び、なぞかけを始めた。

宇宙人とかけまして。

「宇宙人トカケマシテ?」(しつこいぞ、フクシマ)

フクシマさんの奥さん、とときます。

「その心は」

どちらもまだ、会ったことがない。

即座に言われた。
「ひでぇ〜。最悪のできだぁ!」

確かに・・・・・。

二人とも脱力及び反省したところで、「ああ、そう言えば」とフクシマさんが、気を取り直すように言った。
「Mさんへのお歳暮、アリマさんから預かってきたんですよ。結婚祝いのお返しも兼ねているそうですよ。クリアアサヒをツーケース持ってきましたけど」

おお! さすが、アリマさん。フクシマさんと違って、気が利きますなあ。

私の皮肉に気づかないフクシマさんは、大きく頷き、「あの人は、できる人ですから」と、真面目な顔で答えた。
このあたりが、フクシマさんのいいところだ。
他人を照れずに褒められるというのは、大きな才能である。
ただの一つも長所のない男だと思っていたが、その一点だけは、人間として宝物だと言っていい。

しかし、そんなことは恥ずかしくて、私は口に出せない。
心とは裏腹に、私は、で? その重い荷物を自転車の荷台に括りつけて、私に帰れと言うんですね! と、きつい口調で言った。

すると、フクシマさんは、しどろもどろになって、「あっ、そのー、いやいや、Mさんのお宅まで、車で運びますから」と、顔を縦に何度も上下させた。
まるで、「赤べこ」のオモチャのように。

マイ自転車をワゴン車の後ろの荷台に乗せて、私のアパートまで送ってもらった。

古びたアパートを見たフクシマさんは、「おお! 何か昭和の香りがしますな」と感心して、建物を見上げた。

昭和60年に立てられたアパートだから、その表現は、間違いではない。

すごいですね、フクシマさん。
よく見抜けましたね。
だから、ここは、「昭和荘」と言うんですよ。

「本当ですか?」

ウソです。

「もう! Mさんの言うことは、90パーセント信じられませんね!」
また、すねやがった。

結局、その日、フクシマさんはクリアアサヒのケースを持ち運んだだけでなく、我が家で晩メシを食い、風呂まで入り、私が無理矢理勧めた酒を飲んじまったものだから、泊まることになった。

次の日は日曜日だったので、ノンビリすればいい、と私は言ったのだが、フクシマさんは、6時前に起きて、朝メシを食わずに、慌しく家に帰っていった。

よほど、奥さんのことが怖いと思われる。

日曜日朝、10時過ぎに起きた娘とお友だちが、同時に言った。

「あのタレ目は、どうした?」

タレ目は帰った、と私が言うと、「あのタレ目、けっこう面白かったのにな」と我が娘が、残念がった。



我が家では、フクシマさんは、「タレ目」という扱いになった。




2010/12/13 AM 06:46:32 | Comment(6) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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