Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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無敵の人
居酒屋の天井で頭を打ってコブを作り、深夜のサイクリングでケツを痛めたという災難。
それで充分だと思っていたのだが・・・・・。

今度は、ヨメが、3万円の入った封筒を落とした。
どこで落としたか、まったく記憶にないという。

3万円は、大金だ。

しかし、私はヨメを責めない。
今まで一度も、責めたことがない。

我が家の人間は、人を責めることをしない。
息子、娘も、絶対に人を責めない。

みんな平和な草食動物。

ただ、唯一、ヨメだけが、容赦なく人を責める。

「どうすんのよ! どうすんのよ!」
「なに考えてんのよ!」
「ちゃんとしなさいよ!」

しかし、自分のミスは、簡単に笑って済ませる。

「ごめんなさいね〜。落としちゃったみたい。どうしましょ? ハハハハハ・・・・」

羨ましい、と思う。
我々が3万円を失くしたと言ったら、10年先も「あの3万円があったら・・・」という嘆きを、何かある度に投げかけられることは間違いがない。

責められない人間は、無敵だ。
人間は、失敗から何かを学び取るものだが、無敵の人には、反省がない。


今は付き合いがなくなってしまったが、さいたま市岩槻に、懇意にさせていただいた印刷会社があった。
パソコン11台のメンテナンスをする代わりに、高速レーザプリンターと大型インクジェットプリンターを貸してもらう約束で、出入りしていた。

その社長に、毎回のように、私は言われたことがある。
「Mさんは、大学も出て、俺よりはるかに物知りなのに、不良債権が多すぎるよね。いったい、何やってんの! 毎回毎回、よく懲りないねえ。頭、使ってんの?」

はい。
申し訳ありません。
反省しております。

しかし、社長は、妹の旦那に、株を買うように頼んだ2千万円を自分の借金の穴埋めに使われ、さらにその後、泣き付かれて保証人になり、多額の損害を蒙ったことがある。
その損害の総額がいくらなのかは知らないが、「都会で一軒家が楽に買えるね」と、自慢げに言うほどの金額だったらしい。

バブル前に、「原野商法」なるものに引っかかったこともあるらしく、「俺、今でも水道も来ない道もない北海道の山奥に、土地持ってるんだよね」と、得意げに話すこともあった。

「バブルのとき、馴染みの不動産屋に頭を下げられて、居抜き春日部のカラオケバーを買ったんだけど、まわりのビル、ぶっ壊している最中だったせいか、金曜土曜に客が少し来る程度で、一年も経たずに店閉めちゃったなあ。何で、あんなの買っちゃったんだろう? 今でも信じられないよ」
そんなことも言っていた。

私よりもスケールのでかい損失を受けているそんな社長だが、自分のことは「俺の場合、相手が悪かったからね。それに、ホラ、俺はお人よしだから」で、簡単に笑って済ませる(笑うしかないという事情もあるだろうが)。

そして、鼻で笑うように言うのだ(つまり、冗談で言っているわけでも、心配してくれているわけでもない)。
「Mさん、もっと賢くなろうよ。ただ働きは、馬鹿馬鹿しいよ。鏡、見てる? 白髪、また増えたよ。おバカさんだねえ」

はい。
申し訳ありません。
反省いたします。

無敵の人は、人を責めてもいいのである。


先日、近所の大型古書店に行った。
気に入った105円の文庫本を3冊小さなカゴに入れ、店内を歩き回っていた時のことだ。
突然、私のカゴを指さして、「ああ、それ、俺が買おうと思っていた本なんだよ〜!」と言う40前後の男がいた。
五分刈り頭で、茶色のスーツを来た、血色のいい男だった。
吊り上ったキツネ目が、不気味さを感じさせたが、声は女性のように細いアンバランスなものだった。

「最初に、それを買おうと思ったけど、店内を一回りしてから最後に買おうと思って、棚にそのままにして置いといたんだよね。だから、それ、買っちゃ困るよ!」

常識ある大人なら恥ずかしくて言えないことでも、「無敵の人」は、平気で言えるのだ。
それは、理屈ではない。
たとえば、政治家が不正な献金を手にしても、「あれは秘書がやりました」と平然と言える種類の、「俺は、いいんだよ」という無敵さである。

何度裁かれても、同じ「無敵の人」は、後を絶たない。
なぜなら、無敵の人は、反省をしないから。

そして、その無敵の政治家は、彼の選挙区では、頼りになる「最高の政治家」として、崇め奉られる。
それが、世間の道理というものらしい。

世間は、反省をしない人が、頼もしくて好きらしいのだ。

それを知っている私は、「はい、わかりました」と言って、無敵の人に、ご要望の本を差し出した。
無敵の人は、ひったくるようにしてその本を受け取り、レジの方に歩いていった。
ありがとう、も言わずに・・・・・・・。


その後ろ姿を見て、私は、心底羨ましいと思った。


無敵でない私は、失われた3万円をどうしようかと、思い悩み、白髪を4989本増やした。




2010/12/09 AM 06:45:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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