Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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イタかった忘年会
「今年も不景気だったね」
「変わりばえのしない年だったよ」
「仕事、減ったなあ」

いや、私にとって、去年、今年は、激動の年だった。

まるで、突然、南極に連れて行かれ、その次に北極、ロシアのツンドラ、最後にオホーツクの流氷に投げ出されて、シロクマとご対面をしているような、世界の冒険家さえも、なし得ないような激動の時代を生きた思いがする。

少し早い同業者との忘年会の一場面。
場所は、吉祥寺の全国展開の居酒屋。
同じ店は大宮にもあるのだから、大宮でやればいいと思うのだが、みんなが私に気を使ってくれたのか。
あるいは、私がいつも冗談で言っている「吉祥寺には美女が溢れている」を真に受けたスケベ心からか。

出席したのは、一流デザイナのニシダ君。
最年長デザイナ・オオサワさん。
バツイチ・デザイナ・カマタさん。
名を出さないで、と頼まれた印刷ブローカーのSさん。
そして、私の5人が参加した。

他に、乱暴者のヘラクレス・タナカがいるが、アルバイトが忙しいので、この日は欠席。
印刷ブローカー・Sさんの弟も、いつもは出席率の高い人だが、階段を踏み外して、左手を骨折したので欠席。
テクニカルイラストの達人・アホのイナバも常連だが、おバカなので、日にちと時間を間違えて、欠席。

天才WEBデザイナのタカダ君(通称ダルマ)は、一度だけ出たことがあるが、ヘラクレス・タナカに技をかけられて泣いたことがトラウマになって、最近は出ていない。
痛みに極端に弱い男だから、ヘラクレス・タナカの存在がこの世にある限り、これからも参加しないだろう。
それに、今回は、第一子が生まれたばかりだから、それどころではない。

五人だけの忘年会。

時代を反映してか、仕事の愚痴や政治に関して憤慨する話題が多い。
おとなしいニシダ君までが、「民主党は〜」などと言って、飲めない酒を無理矢理飲み、顔を赤く染めて眉を吊り上げていた。

酒を飲むと、誰もが一流の評論家になったような気になる。
私も無責任に「おお、もっと言え、罵倒しろ!」などと煽り、みんなのグラスに、酒を注いで回った。

酔ってはいるが、みな決して心底から楽しんでいる顔ではない。
しかし、楽しむ振りをするだけで、楽しんだ気になれる。

人間とは、そういう生き物だ。

だが、ひと通り話題が回ると、あとはネタ切れ。

白けた空気が、座を支配し始めたとき、誰かが、エビゾウ事件の話題を振った。

まるで甘いものに群がる蟻のように、皆が、その話題に食いついた。
しかし、インターネットの見出ししか見ていない私は、その話題から距離を置いて、ビールを飲むことに専念した。
そして、イカ焼き2つを自分の前に占領確保し、箸でほじくりながら口に運んだ。

美味いぞ! イカ焼き。
イカ焼きは、一つ258kcalあるらしいが、そんなことは知ったこっちゃない。

ジョッキ、お代わり。
イカ焼き、ハフハフ!
いいイカ、使っとるやないか〜い!

そして、エビゾウフライ、いや海老フライ(196kcl)を追加注文。
大好物のカキフライ(296kcl)も追加して、私の目の前は、ご馳走の玉手箱や〜!

ジョッキ、4杯目、お代わりィ!

と、私は賑やかに宴を楽しんでいたつもりだったが、向かいに座った最年長のオオサワさんに「Mさん、今日はおとなしいね」と言われた。

いや、飲むのと、食うのに専念しているだけですが・・・・・。

「この中で、一番社交性のあるMさんがおとなしいと、空気が沈むよね」とオオサワさんが言う。

私が社交性がある?
ご冗談を。
私は、偏屈なだけですから。

「いや、だって、Mさんは、この中の誰とでも仲良く話せるでしょ。でも、みんなは、そうじゃないよ。派閥と言ったら変だけど、小さい中でグループを作って、その人としか、話さないからね」

確かに、今回も共通の話題で盛り上がってるようには見えても、話をする相手は固定されているようだ。
見ていると、結局2つのグループに分かれて、会話が成り立っていた。

私から見ると、オオサワさんの方が社交的だと思うが、オオサワさんは印刷ブローカーのSさんとしか話をしていない。
そして、ニシダ君は、カマタさんとしか話をしない。

それに比べると、確かに私は、みんなと等間隔で話をする。
だから、社交的だというのか。

それは、なんか、違うと思うが。

社交的?

「そう、Mさん、意外と社交的ですよ。外見とは少し違いますけどね・・・」

それは、昔、法律事務所に勤めていたとき、ボスにも言われたことがある。

「マツは、外見は取っ付きにくいけど、意外と社交的だよね。どの派閥に入ることもなく、みんなと同じ間隔で接しているからね。そこだけは、感心するよ」(つまり他に感心するところはない?)

11人の小さな事務所だったが、そんな小さな集合体でも、派閥はあった。
しかし、どんなときも少数派を選ぶひねくれ者の私は、派閥に身を寄せることなく、テキトーに真ん中を泳いでいた。

それが、人からは「社交的」に見えたのか。
だが、しつこく言うが、私は偏屈なだけだ。
ただ、派閥に入るのが嫌だから、みんなと距離を置いて話をしているに過ぎない。

さらに、「Mさんは、心が広いからね」とオオサワさんが言う。

嫌みか、と思った。
偏屈な人間に、心の広いやつはいない。
私の心は、おそらく鼠の脳ほどの広さしかない。

しかし、オオサワさんは、そんな私の気持ちとは関係なく話を続ける。
「Mさんのブログを読むと、娘さんが韓国人と結婚したいと言っているそうですが、私はよくわからないんですよね。自分に女の子がいないから、そう思うのかもしれませんが、よく平気だなあ、と」

他の3人もうなずいている。

雲行きが、怪しくなってきたぞ・・・・・。

それは、どういう意味か、と警戒心を心に宿しながら、カキフライを二つ頬張った。

「俺も、自分の娘が外人、ましてや韓国人と結婚するのは嫌だな」
「よく平気でいられますね。父親は、娘を手放したくないものでしょう・・・・・普通」
「風習のまったく違う外国人との結婚なんて、うまくいくわけありませんよ。俺だったら、付き合うのも認めませんね」

ほとんど総攻撃だ。
いや、口撃か。

みんなが言っていることは、わからなくはない。
娘を結婚させたくない、手元に置いておきたいという思いは、自慢ではないが、世界中の男親の誰よりも強い、と私は思っている。あるいは、強烈に自覚している。

人間は、みな平等だよ、と綺麗ごとを言うつもりもない。

世の中は、差別にあふれている。
人間は弱いものを見つけて、人を貶める生き物だ。
下等動物なのである。

マザー・テレサは、一人しかいないのだ。

私も、異人は怖い。
怖いから、彼らの悪いところを、心の顕微鏡で拡大して、相手のマイナス点だけを心に留める。
そして、それを「怖い」という感情を押し殺すための道具にする。

その一番手っ取り早い方法が、「差別」だ。

異文化の中で生きてきた異人さんは、私にとって、わけもなく怖い存在だ。

小学校4年の頃、同じクラスにコロンビア人の女の子がいた。
彼女は、肌が黒かったから、子どもたちは、お決まりのように、ある侮蔑の言葉、差別的用語を吐いた。
しかし、私は言わなかった。
多数派に入るのが嫌だということもあったが、「俺はおまえらとは違うんだよ」という、違う意味での「差別の心」もあったと思う。

私は、コロンビア人と親しく話をしたが、おそらく、クラスの中で一番彼女を怖がっていたのが私だ、ということも自覚していた。
私は、私がコロンビア人を怖がっている、ということをみんなに覚られるのが怖いから、平静を装って親しく話しかけた。
つまり、考えようによっては、クラスの中で、私が一番卑怯だったかもしれない。

同級生の反応の方が、人間的だったとも言える。

だから、こんな卑怯な男が、何の抵抗もなく娘の彼氏を認めるわけがない。
それは、相手が日本人でも、異人でも同じことだ。



だが・・・・・と思うのである。

私は、娘の夢を知っている。
通訳になること。

それは、韓国語の通訳でもいいし、英語でもいいらしい。

これは、娘が自分の特性を考えて、真面目に出した答えである。

「通訳ってすごいよな。違う国の人たちの会話を伝えて、コミュニケーションが取れるんだぜ。小さな誤解があって争いごとが起きたとき、通訳は、同時に相手の言い分を伝えて、仲を取り持つことができるんだ。すごいだろ! 魔法使いみたいなもんだろ。だから、オレ、通訳になりたいんだ」
(本当は、外国との仲を取り持つのは外交官の仕事なのだが、大きな間違いではないので、私は娘の言い分を尊重した)

でも、これから先、優秀な翻訳機ができて、通訳は要らなくなってしまうかもしれない。

「機械に、相手の表情が読めるかい? 心が読めるかい? 通訳は、心も伝えるんだよ。そんなこと、機械にはできない。通訳は、絶対に必要なんだ」

得意気な娘の顔。

そんな会話の中で出てきたのが、「オレ、韓国人と結婚する」だった。

そして、娘が言う。
「オレは、日本と日本人が一番好きだ。だけど・・・・・外国人や韓国人を嫌いになる理由もない」

名言だ。


だから、私は、異人がとても怖いが、心の奥底で震えながらも、娘を応援しているのである。


しかし、そんなことを酒の席で言っても、白けるだけだ。

それに、面倒くせえ。

私は、変人に徹することにして、得意の平泉成の物真似をしようと思い、立ち上がろうとした。
だが、なぜか私が座っていた場所だけ、天井が低くなっていて、私は勢いよく天井に頭をぶつけた。



私は、死んだ。



いま、後頭部にできたコブを冷やしているところである。




2010/12/05 AM 07:45:07 | Comment(4) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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