Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
[TOP] [RSS] [すくすくBLOG]








ゲゲゲのともだち
仲間や知り合いを褒めるのは、照れるものである。

ただ、人への感謝が顔に出ない私のような人間は、褒める場所がここしかない。
だから、書いてみようか、と。


京橋のウチダ氏の事務所。

いつもは、二人のことが多いが、今日は友人のミスター極道顔、コピーライター・ススキダがいる。
友人のチャーシューデブ・スガ君から託されたラーメン店開業の細かい打ち合わせをするために集まったのである。

打ち合わせは、私があらかじめワークフローを8枚のレポートにまとめておいたので、20分程度で終わった。

「Mさんは、こんなこと面倒くさがってやらないかと思っていたが、やればできるんだな」という、確実に人を小バカにしたツラで、ススキダが言った。

私は無言でスーパードライを呷った。

ススキダは、持参の綾鷹のペットボトルをちびちびと飲んでいた。
ウチダ氏は、ウーロン茶。100グラム4千円の高級品だ。少々鼻につく。

打ち合わせが終わって、民主党代表選の五流の脚本家でさえ書けない茶番劇の話題が出たところで、ススキダの携帯が鳴った。
着信音は、「おさるのかごや」だ。
極道顔には、いかにもミスマッチの気もするが、奥さんにケツをたたかれて、いつも尻を赤くしているススキダには、お似合いかもしれない。
ただ、ススキダに限らず、妻帯している男は、みんな尻が赤いという説もあるが。

電話は数秒で終わった。
ススキダが言う。
「レイコ(奥さん)からだが、緊急の仕事が入った。これから品川の得意先まで言ってくる。もう話は終わったよな」

話は終わったが、俺はどうなるんだ?
俺は、どうやって帰ればいいんだ?

今日は、ススキダがわざわざ横須賀から武蔵野まで車で迎えに来て、京橋まで連れてきてくれたのである。
帰りも送ってくれることを期待していた私は、すねた。

5秒ほど考えて、ススキダが言う。
「品川まで付いてくるか? 打ち合わせは、そんなに長引かないと思うが」

やだ!

品川での打ち合わせが終わったら、またここに戻って来い。
俺は、その間、ウチダと酒を飲んでいるから。

そうしてくれなきゃ、やだ!

醜く駄々をこねる、中年白髪アル中貧相男。

そんな我が儘な男に向かっても、ススキダは怒らず、苦笑いをするだけだ。
自分より2歳年上の駄々っ子に、諦めたような笑みを作って、「しかたねえか」とつぶやくのである。

ススキダは、顔は怖くて気持ち悪いが、心は広い。
月面のクレーターくらいの広さを持っている男だ。
そして、決して友達をないがしろにはしない。
だから、私は顔が気持ち悪くても、我慢して付き合ってやっている。

「二時間、待てるか?」とススキダが、恐怖の極道顔で微笑んだ。
私は、懸命に吐き気をこらえた。

その恐怖の極道顔に向かって、ウチダ氏が言った。

「いや、俺がMさんを送っていきますから。ススキダさんは、ゆっくり仕事の打ち合わせをしてくださいよ」

どこから見てもイケメン。
そして、まわりに爽やかさをまき散らし、さらに、とてつもなく嫌みなことだが、仕事ができる男。
5歳年下のウチダ氏が微笑むとき、まわりの空気が一変する。
彼の口から出る言の葉は、すべてが真実であるという錯覚に陥るほど、彼の放つ言葉は説得力を持つ。

つまり、彼は言葉の魔法を使う「魔法使い」なのだ。

同じことを私が言っても、誰も納得しないが、ウチダ氏が言うと、真実に聞こえる。
それが、つまり、魔法。

「俺が送っていきますから」
もう一度ウチダ氏が言うと、ススキダは魔法にかかったようなマヌケ顔で頷いた。

ススキダが、退場。

「Mさん、俺、一件だけ仕事を済ませるから、オイルサーディンをつまみにして、ビールを飲んでてよ」

わかった。

ウチダ氏は、3台の携帯電話を駆使して、客と連絡を取り、ときに業者を叱咤激励し、他の業者に腰を低くして進行を指示し、十分ほどワンマンショーを演じていた。
その間も、ウチダ氏は、爽やかなイケメン顔だった。

なんか、すげえな、こいつ!

私は圧倒される思いで、オイルサーディンの缶詰を3缶食い、スーパードライを2本あけた。

これが、一人で仕事をするっていうことなんだな。
こんな風に効率よく仕事を運ばなければ、儲からないってことなんだな。

イケメンは、得だな。

帰りのアウディの車中で、ウチダ氏が言った。
パルマハムのブロックを貰ったんだが、俺は食わないから、Mさんにやるよ。保冷剤で巻いてあるから、それをそのまま持って帰ってよ」

後部座席に、ピンクのショッピングバッグが置いてあった。

いつの間に用意したんだ、ウチダ氏。
まるで、手品みたいじゃないか。

わかった、貰ってやる。

「スーパードライも6つで悪いが、袋に詰めておいた。それも持っていってよ」

確かに、黄色い袋が、ピンクのバッグの横に置いてあった。
それも、いつの間に?

すごいなあ、ウチダ氏。
彼の気配りは、どれだけ底が深くて奥行きがあるんだろう。

雨上がりにできた水溜りほどの深さしかない俺には、想像もつかないな。

感心していたら、着信音が聞こえた。

ゲ・ゲ・ゲゲゲのゲ〜〜。

私は着信メロディを設定していないから、それは当然、ウチダ氏のもの、ということになる。

ウチダ氏がプライベートで使っている携帯電話の着信音が「ゲゲゲの鬼太郎」らしい。

出なくていいのか、と私が言うと、「かあちゃんからのラブコール。半分で切れたときは、緊急の用。フルに流れたときは、今日の夕飯は家族全員が揃っているということだ。だから、一緒に飯を食べようというサインだな」とウチダ氏が、笑いながら言った。

今回は、フルに「ゲゲゲ」が流れたから、夜は一家団欒でメシを食うということか。

そうか、ゲゲゲがサインなのか。
面白いな。

「面白いだろ。そして、留守電に、今日のメニューがふき込まれるんだよ」と言って、路肩に車を停めて、嬉しそうにウチダ氏が携帯を操作した。

そしてイケメン顔を紅潮させて、ウチダ氏が言う。
「今日の晩飯は、俺の好物の黒マグロのしゃぶしゃぶだ。ああ! 早く家に帰りてえ!」

いいなあ、ウチダ氏。

俺は黒マグロのしゃぶしゃぶなんか、食ったことないぞ。
おまえんちは、高級料亭か!

「そうかい? じゃあ、こんどクール宅急便で送るから」

ゲゲゲ!

本当かい?

「俺が、嘘を言ったことがあるか?」

ないよ!

ゲゲゲ!





2010/09/01 AM 06:52:44 | Comment(4) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



(C)2004 copyright suk2.tok2.com. All rights reserved.