Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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細〜〜い!
「ほそ〜〜い!」と言われた。

中学3年の娘の友だちが、夏休みなので、泊まりに来ている。
晩メシの支度をしているとき、女子3人から、そう言われた。

「足だけじゃないよ。からだ全体も細くて、カワイソウ!」とも言われた。

夏は、家の中も外も短パンで過ごすことが多い。
私が足をむき出しにしてジョギングしていると、公園ですれ違う子どもから、頼みもしないのに「細い足! 折れそう」などと言われることがある。

そのたびに、「折れるわけねえだろ! バーカ!」と、心の中で毒づく。

それほど、私は華奢に見えるらしいのだ。


そして、昨日、足が細い、という10種類の声。


大学の陸上部時代の仲間と13年前から、体力測定をしている。
ただ、毎年ではつらいので、オリンピックのように4年おきに開催している。
本当なら、昨年する予定でいたが、私の体調が万全ではなかったので、今年に繰り越された。

13年前は参加者が17人、2回目は15人、3回目は13人、そして、今年は11人。
段々と参加者は少なくなっているが、この暑さの中、11人も集まったのは、奇跡だという見方もできる。

当然のように、「この猛暑に体力測定!?」というブーイングが飛び交った。

だが、いつも借りている企業のグラウンドが、今年の秋のスケジュールが完全に埋まっていたという事情を聞いて、全員がおとなしく納得した。
私の知り合いは、聞き分けのいい子ばかりなのだ。

夕方5時のグラウンド。
昼の熱気がこもっていて、蒸気が体のまわりを被うように漂っているから、不快指数は相当なものだ。
わざわざ持ってこなくていいのに、温度計を持ってきたやつが、「まだ32度あるぞ!」と喚くから、みんなのテンションが落ちかけた。

しかし、私が、「測定のあとは、焼肉、ビール!」と叫ぶと、「ヨッシャ!」の声が轟いた。


みんなの「焼肉、ビール!」という、ヤケクソとも思える掛け声で始まった体力測定は、中年男たちの断末魔の叫びで終了した。


死っぬーーーーーーー!


私のまわりでは、大きな腹を上下させて、芝生の上に醜く横たわるデブたちの品評会が開催されていた。

今日が、確実に命日になりそうなやつが、数人いた。

しかし、そんなやつでも、「さあ、焼肉だぁー!」の声で、できの悪いゾンビのように、生き返るのである。

キャンピングカーをグラウンドの隅に横付けして、そこを即席のバーベキュー場にすることは、グラウンドの管理者の了解を得てある。
バーベキューをしたという痕跡を残さないように、という心温まる言いつけを守って、我々は、午後6時半過ぎ、全員がグラウンド整備用のホースで水浴びをしたあと、宴会を始めた。

全員が水を浴びて、ランニングと短パンを水浸しにしていた。

水浸しにすると、その人の体型が、歴然とする。

デブは、より一層デブに見える。
そして、ヤセは、よりヤセに。

デブ10対ヤセ1。

そこで、また「細〜〜い!」の大合唱だ。

それは、まるでブタの群れに、品のいいカカシが、迷い込んだようなものだった。

「品の言いカカシ? 憐れなガイコツだろ?」

まあ、見解の相違は誰にでも、ある。

しかし、測定結果は、私の一人勝ちだった。

前回までの記録は、こちら。

      第1回  第2回  第3回
100M  12秒11  12秒14  12秒96
立幅跳び  2M64  2M66  2M36
走幅跳び  6M52  6M47  5M77
反復横跳び  62回   59回   50回
ソフトボール投げ(ハンドボールがないので)
       51M   51M   40M
5000M走  21分49  21分02  19分45

そして、4回目の今年。

100M  13秒90
立幅跳び  2M63
走幅跳び  5M50
反復横跳び  48回
ソフトボール投げ  41M
5000M走  19分20

5年前の測定では、5千メートル走は、13人中8位だったが、今回は1位。
20分をきったのは、私だけだった。

この結果を見ると、私の体が、短距離向きから長距離向きに変わってきたのがわかる。
今回参加した中で、大学時代、短距離専門は私だけだった。
あとは、全員が長距離専門。

デブの集団には、もう20分を切るのは、無理だろう。

私が勝ち誇った顔をしていたら、みんなに言われた。

「俺たち、別に20分を切ろうなんて思ってないよ。そんなに細くなって、記録だけ伸びても、憐れなだけだ」

まさか、今回、真面目に取り組んだのは、俺だけだった?

勝っても、複雑な気分・・・・・。



バーベキュー。

牛ヒレ肉、豚ブロック、焼き鳥、ホタテ、伊勢海老、トウモロコシ、焼きソバ、焼きおにぎり・・・・・。
さっきまでは、瀕死の状態だったデブたちも、肉を食い、ビールを飲めば、陽気に復活する。

時事ネタから下世話な話題まで、声高に語り、乾杯する。

ひと通り話題が回ったあとで、今回の幹事の「首ナシ」が、私のそばに寄ってきた。
「体は、大丈夫なのか。おまえが痩せたままだから、みんな心配してるんだよ」
話を聞きつけて、「妖怪」もそばにやってきた。
「焼き鳥、持ってきたぞ。あんまり食ってないだろ。ビールばかりじゃ、栄養にならないぞ」
そして、「出っ歯」「鉄道」もやってきた。

「マツは、昔から、痛いとか苦しいとか、俺たちの前では絶対に言わなかったからな。心配なんだよ」
「去年入院した時も、ギリギリまで我慢したんだろ。そろそろ体全体にガタが来る年代だ。つらかったら、弱音を吐け」
「今日、おまえは一人勝ちだったが、結果を見ればわかるだろ。10年前と比べたら、確実に体力は落ちているんだ。無理するな」
「そうだ、力を抜け。そして、太れ」
「太れ、太れ。俺たちの仲間入りをしろ」
「そうだ、そうだ!」

私は、彼らの友情に涙腺を刺激されたのを誤魔化すために、目の前に置かれた焼き鳥、焼きおにぎり、伊勢海老、サンマの皿に、挑みかかった。

「おお! ワイルド!」
「みごとなやけ食い!」
「味を無視した芸術的な丸飲み!」

脳の中の満腹中枢が切れてしまったのではないか、と思うほど、私は貪り食った。

私は、ただただ何かを満たそうと思って食いまくり、食い散らかした。

そして、他の仲間が食おうとしていたフランクフルト3本を横取りして、まとめ食いしようとしたとき、首ナシが、私を羽交い絞めにした。

「わかった! やめろ! もう、いいから!」

気がついたら、出っ歯と妖怪が、私の両足をつかんでいた。

出っ歯と妖怪が、私の足をつかみながら、同時に言う。
「なんて細い足なんだ」

バーベキューの手を止めて、みんなが私たちのほうを見ていた。


仲間を心配するときの目。


嬉しいが、居心地が悪い。

そこで、私はみんなのまわりを回って、「はい、これが細い足ですよ。今だったら、ただで触れますよ。お触りくださ〜い」と、できるだけ軽い調子で言った。

最初は誰もが戸惑いの表情を見せたが、「ぞろ目」が、真っ先に私の足を触り、「おお! これが、名物細い足か」と言った。
すると、みんなが触りだした。

「細いぞぉ」
「おお! これが細足様か! 縁起がいいぞ!」
「細足様ぁ〜」

私の足を拝むポーズをした後で、みんなで胴上げをしてくれた。

夕闇に舞う、憐れなガイコツ。

満たされていなかったものが、埋まった気がした。


胴上げをされながら、思った。

俺は、太った方がいいのか、それとも、このままのほうがいいのか。




The Answer , my friend , is Blowin’ in the wind.
(友よ、答えは、風の中にある)




さて・・・・・、今日も、仕事。





2010/08/16 AM 08:01:52 | Comment(3) | TrackBack(0) | [日記]



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