Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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カツラとトラウマ
私には、三つのアレルギーがある。。

ひとつは、某大新聞社が所有するプロ野球チーム。
次に、50年以上、官僚と馴れ合いを演じ、銀行を優遇し、官僚と銀行と政権与党だけが得をする仕組みを作った政党。
最後に、演歌である。

同業者たちに、カラオケに誘われることが、よくある。
だが、たいていは、断る。

私は、自分がオジさんであるにもかかわらず、オジさんたちが、フォーク、懐かしのポップス、演歌をウットリと歌う姿を見ると、鳥肌が立つ体質をしている。
私は、「昔はよかった」という、過去礼賛の脳内麻薬を持っていないのである。
この体質だけは、治しようがない。

特に演歌を歌われると、胃が急に重くなって、吐き気を催すことが度々ある。
あるいは、全身が痒くなる。
これは、誇張ではなく、本当に、そういう症状が出るのである。

歌が、下手でも上手でも、その症状が出るから、演歌そのものが、私の体の中を通っていかないのだと思う。
アレルギー体質の人が、花粉が駄目、ネコが駄目、そば粉が駄目というのと同じだ。

要するに、特異体質なのだ。

そう思っていた。

しかし、私は昨日、得意先からの帰り、武蔵境イトーヨーカ堂のトイレで、過去の記憶を甦らせることになった。

それは、特異な出来事だった。
私が、トイレに入ると、男の人が髪の毛を剥(む)いていたのだ(カツラをセットし直していた)。
髪の毛を剥いた頭は、88パーセントが綺麗に地肌をさらしていて、とても生々しかった。

その光景は、デジャヴかと思った。
過去に、同じような光景を確かに見たような気がしたのだ。
そして、用を足しているときに、ある出来事を鮮明に思い出した。

忌まわしい過去を。

小学校2年のときのことだった。
近所にボーリング場があり、そこで、毎週テレビの公開放送をしていたのである。

その番組には、プロボーラーの対戦の合間に、当時流行っていた歌手の歌を聴かせるコーナーがあった。
ミーハーな友だちに誘われて、私は毎週その公開放送を見に行っていた。

どんな歌手が出ていたかは、まったく覚えていない。
だから、そのことを、完全に私は忘れていた。
しかし、今回突然、ある光景が私の頭に、雨上がりの晴れ間に地面から湧き上がる蒸気のように、浮かび上がってきたのである。

その日のゲストは、演歌歌手だった。
当時の私は、音楽には疎かったので、どんな歌を聴いても、「ああ、うまいな」としか感じなかった。
演歌も、変なうたい方だとは思ったが、不快には感じなかったと思う。

しかし、その後、私の体質を劇的に変える出来事が起きた。

私と友だちは、いつも公開放送が終わった後も、ボーリング場に残って、人のゲームを見ることにしていた。
ボーリングは一度もしたことがなかったが、「あのフォームでは駄目だ」「玉が軽すぎるから、力が伝わらない」などと、小学2年とは思えない偉そうな批評をして、時間をつぶしていた。

ただ、私はその日、少し体調を崩していた。
ボーリング場に来る前に、近所の家から貰ったトウモロコシを祖母に茹でてもらい、3本をまとめ食いしていたのである。
食い終わった時点では、満足感でいっぱいだったが、公開放送を見ているうちに、胃に何ともいえない不快感を感じ、収録が終わった後も、その違和感を引きずっていた。

そして、徐々に我慢の限界が、胃の上のあたりに押し寄せてきた。
ピンが倒れる音が、聴覚から脳を刺激し、それが徐々に全身に回っていったのだろう。
私は、不快感を抑えきれずに、トイレに走った。

しかし、それは、従業員用のトイレだった。
慌てていたので、一番近いトイレに駆け込んだのだ。

そして、トイレのドアを開けた途端に、私の目に入ってきた光景。

それは、先ほどの演歌歌手が、頭の毛を剥いているところだった。
本来なら、楽屋というものがあるのだろうが、そのボーリング場には、なかったのかもしれない。
だから、演歌歌手は、そこでカツラをセットし直していたのだろう。

カツラが、それなりに市民権を得た今なら、それは違和感なく受け入れられる光景だった。
しかし、当時は、特に8歳の子どもにとっては、その生々しさは、到底受け入れられるものではなかった。

普通は、剥けない髪の毛を、剥いている人が、目の前にいる。
安っぽい蛍光灯のせいで、頭皮が赤くテカっている光景は、子どもにとっては、ゾンビを見たようなものだ。

私は、その光景を見て、その場に、トウモロコシの残骸を口から噴射してしまったのである。
ジェット噴射といっていい、強烈な嘔吐。
それは、突然で、抑えようがなかった。

そんな私に対して、演歌歌手は、容赦ない罵声を浴びせかけた。

「このガキ! 汚ねえなあ! 何してくれるんだよ!」
ツルリと剥けた頭のまま、演歌歌手は怒鳴った。

そして、私は、演歌歌手に、頭を叩かれた。
その叩き方には、まったく遠慮というものが、なかった。

だから、私は泣いた。

泣くとまた、トウモロコシを噴射した。

今度は、頬っぺたを張られた。

また、泣いた。

泣くとまた、頭を叩かれた。

私の体のことを1ミリも心配せずに、ただ暴力を振るう演歌歌手。

何発叩かれたか、思い出せないほど、私は演歌歌手に叩かれた。
ひどい大人がいるものである。

それが、演歌を嫌いになった理由。



昔を思い出したら、全身が痒くなってきたような・・・・・。




2010/07/27 AM 07:14:18 | Comment(4) | TrackBack(0) | [日記]



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