Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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お鮨屋ミステリー
私には、不思議に思っていることが、ひとつある。

お鮨。

回って出てくる寿司ではなく、カウンターあるいはテーブル席で注文する鮨屋のことである。

私の人生で、鮨屋に入った回数は、数えるほどだ。
そのうちの4回をミズシマ氏の奢りで入った(ミズシマ氏に関してはコチラ)。

ミズシマ氏とはじめて入ったのが、東銀座にある、格式高い門構えの鮨屋だった。
もう20年以上前のことになる。

小柄で貧弱な体系ではあるが、高級なスーツに身を包んだミズシマ氏は、見方によっては金持ちに見えるだろう。
たとえ、金持ちに見えなかったとしても、ミズシマ氏が話すことを聞いたら、「ああ、この人、金持ってるんだな」と誰もが思う。

「この間、はじめてアフリカに旅したんですよ。一ヶ月間、アフリカを堪能しましたね。野生動物の美しさは、想像を絶していました。それに比べて、人間なんて美しくないですね」
「突然、本場のチーズ・フォンデュが食べたくなったんで、スイスに行ってきました。やっぱり、本場のは美味いですよ」

そんなことを、カウンター席に座って、大きな声で言うのである。
大きな声は、ミズシマ氏の地声なので、私は慣れたのだが、人によっては、神経を逆なでされた気になるかもしれない。

ミズシマ氏は、小食。
だから、多くの量の鮨を食べるわけではないが、そのときは、高いネタの鮨を12〜3貫ほど食べたような気がする。

私は、鮨は嫌いではないが、「鮨を奢られる」というシチュエーションが、あまり好きではないので、納豆巻きやカッパ巻きなどの安い巻物類を中心に10個ほど食った記憶がある。
そして、ビールが3本。

会計。
なんと、3万8千円を要求されたのである。

私が食ったのは安いものばかり。
高く見積もっても、2千円くらいだろう。

ミズシマ氏は、確かに高いものを食った。
だが、それがたとえ1貫2千円という法外な値段だったとしても、2万6千円。
ビールが3本で、1500円。

どんなに高くても、3万円だろう、と私は思った。
それでも、3万円は、私にとって、ボッタクリ以外の何ものでもないが。

それ以上の、3万8千円。

その金額が、私の心に、棘のように引っかかっていた。

本当かどうか知らないが、鮨屋は、相手を見て金額を決めるということを聞いたことがある(特にカウンター席の場合)。
鮨屋は、ミズシマ氏の話す「金持ちの道楽話」を聞いて、彼が上客だと判断したのではないだろうか。

こいつなら、金がとれる、と。

私は、奢られる立場の人間として、自分が食ったものは、必ず把握するようにしている。
相手から好意を受けるのだから、「食った結果」は、こちらの責任になる。
だから、覚えているし、奢る側の出費に関しても、それなりに把握しているのである。

それが、奢ってもらう人間の礼儀だと思っているからだ。

奢られた側から見て、この場合の3万8千円は、法外である。
鮨屋は、正規の金額ではなく、相手を見て請求額を決めているのではないか。

そのとき、私の頭に、鮨屋に対するそんな拭いがたい疑念が宿った。

ただ、一つだけの経験では、説得力がない。

私は、後日、さらに、それを裏付けるもう一つの経験をした。

母が、検査入院をした4年前。
退院の日、母が、迎えにいった私に、「ちょうどお昼どきだから、お寿司でも食べていこうか」と言った。
そして、「私が、払うからね」とも言った。

断るのは申し訳ないので、清瀬駅近くの鮨屋に入った。
小ぎれいな店内だ。
ランチが、「チラシ寿司1350円」とあった。
まわりを見渡してみたら、客筋の良さそうなサラリーマン風の人が、数人いた。

「チラシを食べきる自信がない」と母が言うので、カウンターで適当なものを頼むことにした。
私は、ビール。

母は、小食だ。
まして、退院したばかりだ。
ヒラメが好きなので、ヒラメだけを3貫食べた。
お吸い物も頼んだ。
私は、イカとサラダ巻き、納豆巻き、全部で6個。

食べ終わって、即座に金額を計算した。
メニューに金額が書いていなかったので、推測だ。
ヒラメが、300円×3、お吸い物、200円で、1100円。
私が食ったのは、平均して150円と計算。900円。
そして、ビール1本が500円。

合計、2500円か。
高めに見積もっても、3千円はいかないのではないか。
だが、それさえも、母にとっては負担だと思う。

祈るような気持ちで、「おいくらですか?」と聞いた(「おあいそ」なんて恥ずかしくて言えない)。

すると、店員が「1300円」と、白い歯を見せて言った。
予想よりも、はるかに低い額だった。
思わず「二人分ですか?」と聞いてしまった。
信じられないことだが、二人分だったようだ。

一人分のランチの金額よりも、安い。
ビールの金額を引いたら、二人分で800円ということになる。

そのとき私は考えた。
母は、155センチ、35キロ。病気のせいもあるが、極端な痩せ型。
そして私は、180センチ、56キロ。病気でもないのに、かなり貧弱な方だ。
それに母はともかく、私の顔は、誰が見ても直視できない貧乏顔だ。

鮨屋は、その外見を見て、私たち親子からお金を取るのは、不憫だと思ったのではないだろうか。

姿かたちで、金額を決められたのではないか、と。

そして、昨日。
大学時代の陸上部の友人・デッパから電話がかかってきた。

世の中は不況だが、デッパの会社は好調だったせいか、ボーナスの額が2割以上アップしたという。
そこで、会社の帰りに、同僚3人と勢いで鮨屋に寄ったというのだ。

そのとき、請求されたのが、3人で4万2千円だったという。
「俺たち、そんなに食ってねえんだけどな。一人せいぜい5千円くらいだよ」とデッパが、電話口でボヤく。

おまえたち、カウンターで食ったのか。

「ああ」

まさか、鮨屋で、今日はボーナスが出た、金額がアップした、なんて自慢げに話したんじゃ?

「言った。何度も言った。嬉しかったからな」


やっぱりな。


しかし、金持ちは、金を使う義務がある。

だから、私は、デッパには同情しない。




2010/07/19 AM 07:11:20 | Comment(5) | TrackBack(0) | [日記]



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