Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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まさかの展開
それは、衝撃的な出来事だった。

たとえば、彼女がいたとする。
その彼女は、とても可愛い。
街を一緒に歩いていると、ほとんどの男が振り返るほどだ。いや、女でさえも、振り返る。

笑顔のまぶしい女の子。
気配りも自然にでき、性格もよくて、誰からも愛される性格。

そんな子と食事に行き、映画を観、コンサートで盛り上がり、クリスマス・イヴを一緒に過ごした。

そして、最後は、彼女の実家に挨拶に伺うというのが、正しい交際の工程だろう。

ドキドキしながら、彼女の実家の門をくぐり、居間に通される。
欧州の上流階級を思わせるような調度品が、品よく置かれた居間だ。

彼女の両親に、はじめて会うのだ。
ドキドキが止まらない。

そのとき、彼女が言う。
「うちのお父さん、ちょっと変なの」

ん? 何が変?
どういうことだろう?

そのとき、声とともに、彼女の父親が、居間に入ってきた。
「お待たせして、悪かったね」

居間に入ってきた彼女の父親は、言葉を話す「白い犬」だった。

それぐらい、衝撃的な話だ。


先週の日曜日、4時過ぎ頃、三鷹駅前図書館で調べものをした帰りに、三鷹芸術文化センターの前を自転車で通った。
何かの催し物が終わったところらしく、年輩の方たちが、ホールからちょうど出てくるところだった。

人の波に揉まれると厄介なので、私は歩道から車道へとハンドルを切ろうとした。
そのとき、私の視界に入ってきたのが、見覚えのある女性の姿だった。

私が、埼玉にいたとき、パソコンを教えていた69歳のキシさんだ。

まさか、こんなところにキシさんが? と思ったが、キシさんは、演劇鑑賞、音楽鑑賞、落語鑑賞が好きな活動的な人である。
自分の好きな演者の催し物があったら、一人でも観に行く、と確か言っていた。

だから、ここにいても、おかしくはない。
おそらく、お気に入りの誰かの演目が芸術文化センターで催されたのだろう。

キシさんとは、今年1月以来の再会になる。

東京武蔵野に引っ越す前に、一度ご挨拶に伺おうとしたが、春休みだったので、お孫さんがキシさんの家に泊まりに来ているところだった。
「孫の世話が忙しくて」と言われたので、結局、引越しの挨拶は電話とメールで済ますという不義理をしてしまった。

ここは、挨拶をする、いいチャンスである。

私は、自転車を歩道の隅に停めて、人波をかき分け、キシさんに近づいた。
そして、声をかけた。

だが、私の声に反応して、キシさんは私を見たはずだが、そのまま歩調を変えることなく歩き去ろうとした。

私は、その態度に困惑したが、もう一度「キシさん、Mです」と声をかけた。

しかし、キシさんは、同じ歩調で人波の中を歩いていく。

どういうことだろう?
挨拶を電話とメールで済ますという不義理を働いたせいだろうか。
そんなことで怒る人ではないとは思うが、しかし怒っても不思議ではない。

私は不安になって、もう一度「キシさん」と、呼んだ。
これが最後というつもりで、大きな声を張り上げたから、まわりの人が驚いて一斉に私を見た。

キシさんも、私を見た。
そして、近づいてきて言った。
「あのぉ、私はキシではありません。ヨネヤマというものです。ただ、キシという人を私は知っています。それは、私の双子の姉ですが、もしかしたら、姉のお知り合いですか?」

双子? キシさんが、双子だった?
そんな話は、一度も聞いていない。

失礼だとは思ったが、目の前の女性の顔と体、声、洋服のセンスを測ってみた。
それは、どう考えても、キシさん、そのものだった。

しかし、双子は、似ているのが当たり前。
妹、と言われたら、不思議なことに、私の目には、彼女が疑いもなくキシさんの妹さんに見えてきた。

そこで私は、頭を下げ「申し訳ありません。あまりにも似ていたので、つい声をかけてしまいました。失礼しました」と言って、体を翻した。

知り合いの双子の妹に、こんなところで遭遇するなんて、世の中は何て狭いんだろう。
しかも、マナカナよりもソックリじゃないか。
人間の遺伝子の神秘は、計りしれないな。

今回は、勉強になった。

そのとき・・・・・・・・・、

人類の神秘に感動しかけた、そんな私の背中に向かって、笑いを含んだ声が、不思議な柔らかい圧力をもって押し寄せてきた。

「センセイ、嘘ですよ。センセイも、人がいいんだから。こんなに簡単に騙されるなんて。ホント、イチコロですね」

振り返ると、キシさんが、Vサインをして、悪戯が成功した児童のように、微笑んでいるところだった。


ビックリした!




2010/07/17 AM 06:51:56 | Comment(4) | TrackBack(0) | [日記]



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