Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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体内時計
日本代表の夢が消え、浦和の得意先からいただいた急ぎの仕事を終えた日。

iTunesからは、マイケル・ジャクソンの「Black or white」が流れていた。

梅雨独特のどんよりした空と、湿った空気。
今にも密度の濃い水の塊が落ちてきそうな空模様。
まとわりついてくる重い水分を体で意識しながら、友人から貰ったジョギングシューズを履いた。
午後1時過ぎ。

シェリル・クロウの「All I Wanna Do」を一曲挟んで、またMJの「Black or white」が流れた。
iTunesも、マイケルに敬意を表しているのか。
しかし、言葉にできない違和感が胸にせり上がってくる。

それは、消したはずの焚き火の中で、小さく燻る火種のように、得体の知れないものを私の体のどこかに、埋め込んだかのようだった。

神がかった声のMJに別れを告げて、私はジョギングに出かけた。

私は、汗をかくのが遅い体質らしく、外気温30度の中で2キロ程度走っても、汗はかかない。
2キロを過ぎたあたりから、やっとジワジワと汗が出てくる。
もう少ししたら、汗が噴き出してきて、夏を感じられることだろう。
そう思って、いつもと同じピッチ、同じストライドで、両足を動かした。

ゆっくりしたペースで3キロ走ると、小金井公園に着く。
広い公園だ。

陳腐な喩えだが、東京ドーム何個分だろう。
だが、東京ドーム何個分と言っても、私の貧弱な脳では、その広さを判断することができない。
みんな東京ドーム何個分と言われて、本当に広さが理解できるのだろうか。
そうだとしたら、尊敬する。

小金井公園の歩道は広い。
犬を散歩させている人が圧倒的に多いが、幅が広いので、それほど神経を使わずに彼らの間をすり抜けることができる。
公園を一周したら何キロになるのか、私は知らない。
私は勝手に5キロ弱と設定して、走っている。

そして、いつものラップより早いか遅いかで、自分の体調を判断している。
蒸し暑い時期のジョギングでは、タイムは落ちる。
昨年の四月に体調を崩して入院する前の5キロのタイムは、夏は軽く流して、26分弱だった。
退院後は、28〜30分。
体力は、かなり落ちた。

今日走ってみた感覚では、あまり追い込んだという感じがしないので、5キロは28分を切るくらいか。
息は上がっていないし、追い込んだときによく感じる膝の痛みもない。
それほど、負荷のかかる走りはしなかったと自分では思っていた。

しかし、時計の表示を見て驚いた。
23分を切っていたのだ。

何かの間違いかと思った。
体感速度と5分も違うなんて、ありえない。
嘘だろ、と思いながら、ストレッチングをした。

そんなとき、「理想的な走りですね」と声をかけられた。
声のほうを向くと、50歳前後の夫婦らしき二人が、私を見ていた。

三人同時に会釈をした。

そして、男の方が白い健康そうな歯を覗かせて、高い声で言った。
「走り方が綺麗なんで、ついていこうと思ったんですが、暑くて途中でバテて諦めました。長くやっておられるんですか?」

まあ、長いといえば、長いですかね。

二人の目は、好意が宿ったものだったが、そこから発する光が健康的すぎて、私には居心地が悪かった。
俺、褒められるのに慣れていないんだよな。
こういう状況は、苦手だな・・・・・。

そんな私のためらいを無視するかのように、女のほうが、やはり甲高い声で言った。
「走っているとき、あまり足音が聞こえないんですね。私なんか、いつもバタバタ音をたてて走っていますから。だから、本当に着地しているのかと思って、ずっと足元を見ていました。なんで、足音をたてないで走れるんですか」

さあ・・・・・、何ででしょうね。意識したことないですね。

「こんなに蒸し暑いのに、それほど汗もかいていないようだし」

そうですね・・・・・、わからないですね。

答えながら、段々と俯いていく私は、はたから見ると変人だろうな。
今日は、なぜか人の言葉が鬱陶しく感じられる。
流れる汗を冷たく感じた。

居心地が悪くなったので、「もう一周行ってきます」と頭を下げ、ストレッチをやめて走り出した。

無礼なやつ、と思われたかもしれないが、心のリズムが崩れたときは、人が煩わしくなる。

まったく、いつまでも、ガキっぽいやつだな・・・、と思いながら公園をまた一周した。

タイムを予測してみた。
今回は、25分30秒くらいか。

しかし、時計は、22分11秒。

体内時計が狂っているのかもしれない。

家に帰って、シャワーを浴びたあとで、4日後初稿の郷土史の本のレイアウトに手をつけた。
集中して仕事をした。
7割がた進行したので、今日はこれくらいにしておこうと、夕飯の準備をし始めた。
しかし、包丁を手に持って、ナスを切ろうとしていたとき、中学3年の娘に言われた。

「おい! まだ、5時になってないぞ。支度には、早いんじゃないか」

え? 6時過ぎじゃないのか?

「5・じ・ま・え!」

今日の私の体内時計は、狂いっぱなしのようだ。

しかし、そんな私のつぶやきに対して、娘は、右手の人差し指を私に向け、円を描くようにして、

「いや、おまえが狂っているのは体内時計だけじゃない。すべてだ!」と断言した。

すべてが狂っている。
その娘の言葉に、大きくうなずきながら、私は麻婆茄子を作り始めた。

ひき肉を炒め・・・・・、ひき肉を炒め・・・・・?

えーと、次は、どうするんだったっけ?




実は、ボケていただけだったりして・・・。




2010/07/01 AM 06:22:04 | Comment(5) | TrackBack(0) | [日記]



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