Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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確率5パーセントの美女
人生には、やることなすこと、うまくいかないときがある。

しかし、うまくいくときもある。

昨日、武蔵野に越してきてはじめて、新規の客を開拓した。
病院のホームページのフラッシュの部分だけを作る仕事だ。

「疑うわけじゃありませんけど」と、30歳くらいの男性の事務員が、申し訳なさそうに言った。
「どの程度のものができるか、うちのパソコンで、試しに作ってみていただけませんか」

疑うわけではないが、疑っているようだ。

「病院のロゴの上にマウスポインターを置いたら、何かが出てくるアニメを試しに作っていただけますか」
そう低姿勢で指示して、事務員は「できたらお呼びください」と言って、応接室を出ていった。

病院のパソコンは、ウィンドウズのノートパソコン。
入っているフラッシュのバージョンは、MXだった。
イラストレータのCSバージョンも入っていたので、それで下書きをした。

5文字の病院のロゴに、それぞれ診察券や白衣、赤ん坊などを割り振り、ポインターが乗ったら、ゆっくり回転して出てくるように設定した。
何度か動かして、一番いい動きを選び、張り付けた。
しかし、それだけでは面白くないので、音が出るように設定した。

いつもバッグに入れてあるUSBメモリには、音源も入っている。
WAV形式のものとAIFF形式のもの。
ウィンドウズはWAV形式なので、その中から、赤ん坊の泣き声と川のせせらぎの音を選んだ。

赤ん坊が顔を覗かせた時は、赤ん坊の泣き声。
そのほかは、川のせせらぎの音が鳴るように設定した。
しかし、それだけでは、まだ面白くない。

だから、ロゴの一部にポインターが行ったときに、ランダムで「ダースベーダーのテーマ」が鳴るという遊びを入れてみた。

35分後。
できましたよ、と呼びに行ったら、「ええっ、もう!」と、事務員は缶コーヒーを飲む手を止めて、驚いていた。

「確認させていただきます」と、丁寧な言葉で応対しながら、事務員がマウスを動かした。

「おお!」
「なに? 音まで出るんですか? そこまで、していただけるとは」
と、大げさに驚き、ダースベーダーのテーマが鳴ると、「ダンダンダンダダダダダダ」と、手を叩いて喜んでくれた。

ということで、仕事を無事ゲットした。
いい一日の始まりである。

病院からの帰り道。
自転車に乗っていたら、胸にいれたiPhoneが震えた。

桶川の得意先のフクシマさんだ。
また、つまらねえ仕事か! と心の中で毒づいたが、予想に反して、フクシマさんは仏のような慈悲を私に下さったのだ。

「今月のお支払いなんですがぁ、あまりにも額が少ないのでぇ、申し訳なくてぇ〜、先月急ぎでMさんにやっていただいたのを〜、締めが3日過ぎていますがぁ、前倒ししてお支払いしようと思うんですがぁ、どうでしょうかぁ〜」

なんという思いがけない慈悲。
私の心は、感謝の気持ちで一杯でございます。

先月の請求額のままだと、我々一家4人がガストで2回食事をし、帰りにイトーヨーカ堂でスイカを半分買ったら消える程度のものだった。
しかし、請求を前倒ししていただくと、ペットのコジマで、ミニチュア・ロング・ダックスフンドを買えるくらいの額になる。ついでに、ケージも買えるかもしれない(犬を飼う予定はないが)。

これは、大きい。

だから、私は「フクシマさまぁー!」と、iPhoneに向かって叫んでいた。

そして、さらにフクシマ様は、嬉しいことをおっしゃるのだ。
「ヒラサワさんの仕事、入りましたぁ〜」

ヒラサワさんの仕事とは、郷土史の自費出版のことである。
ヒラサワさんは、30年にわたって調べ上げた資料をまとめて、4年前から毎年一回本を出していた。
その仕事をフクシマさん経由でいただいたとき、私は例によって、最低限の見積もりを提示した。

しかし、それを見てヒラサワさんは、フクシマさんに言ったのである。
「これは、安すぎますよ。安すぎて信用できません。この人には頼みたくない」

そう言われて慌てたフクシマさんは、私の仕事振りをこと細かく説明し、弁明に努め、フクシマ様の努力で、何とか仕事をいただくことができたのだ。
普段の倍の報酬で、請け負う仕事。
これを、世間では、オイシイシゴトという。

では、桶川にうかがわせていただきます。
いつが、よろしいでしょうか?

「いや、この間のサイゼリアにしましょう。途中、吉祥寺で美女を堪能しますので」

おバカ!
いや、おバカさま。

いいことは、続く。

アパートに帰る途中、公園を通る。
少々のどが渇いたので、水分補給をしようと思って、公園に立ち寄った。
タテ約130メートル、ヨコ約100メートルの大きさの公園。

公園の半分のスペースが、山のように盛り上がっていて、芝が敷き詰められていた。
木が多いので、日が出ているときは、自然な模様を作る日陰が、あちこちに存在する。
蒸し暑い時も、どこかしら涼しさを感じさせる作りだ。

そんな自然を感じさせる空間の中で、ベンチに座って、ペットボトルのアクエリアス(85円の特売!)を一気飲みした。
汗が幾筋も背中を伝うが、心地よい汗だ。

飲み終わって、ホッと息を吐いたとき、短パンの後姿が目に入ってきた。
白い長袖のTシャツと白い短パン。
短パンの下から、日本人離れした長い脚が覗いている。

身長は、170センチくらいか(外人という可能性もある)。
栗色のキラキラ光る長い髪。
太ももに執着する変態おじさんの目を釘付けにするほどのインパクトが、その後姿にはあった。

太ももワールドカップがあったら、確実にベスト4に入れるに違いない。

その短パンの女性が、ゴミ袋を手に持って、ゴミを拾っているのだ。
しかも、一人で。

まわりを見渡しても、誰もゴミを拾っていないから、その女性は、自分の意志でゴミを拾っているのだろう。
美しい光景だ。
そして、後姿も美しい。

後姿が美しい女性を見たとき、スケベな男たちは、みな期待する。

きっと、美人に違いない、と。

だが、男なら誰でも経験があると思うが、たいていは95パーセントの確率で、夢は無惨に打ち砕かれる。
振り返ったら、森三中の大島のようなお顔がついていたりするのだ。
まあ、それはそれで、大変味わい深いルックスだとは思うが。

短パンの女性はゴミ拾いに夢中で、なかなかこちらを向いてくれない。
ベンチに座って、わずかばかりの期待を胸に秘め、短パン娘が振り向くのを私は待った。

しかし、振り向かない。
意地でも、振り向かないと決めているのか?

そう思ったとき、盛り上がった芝生の向こうに東屋があるのを見つけた。
そこなら、真正面から短パン娘を見ることができるのではないか。

そう思い、移動を始めた(スケベなオヤジだなあ)。
あの完璧な後姿なら、顔は香里奈が望ましい。
それは5パーセント以下の確率だろうが、ありえない確率ではない。

などと勝手なことを思い浮かべていたとき、横を通り過ぎる私の気配に気づいたのか、突然、短パン娘がこちらを向いた。

驚いた私は、手に持ったバッグを落としそうになった。

香里奈・・・・・ではなかったが、美人だった。

若い頃の山口智子を思わせるような、キリッとした雰囲気の美女だった。
97.5点・・・・・は、つけてもいいのではないだろうか。

いやあ、今日は、本当に得した。

気分がハイになった私は、東屋のベンチに座り、保冷剤とともにタオルで巻いた発泡酒をバッグの底から取り出して、プルトップを開けた。

ウキウキ・・・・・、パコッ!

それほど大きな音ではないと思ったが、短パン娘が、もう一度私のほうに、素早く顔を向けた。
音が聞こえたのかもしれない。

すると、短パン娘が、体を伸び上がるようにして、丸く作った右指を口の近くにあて、張りのある声を響かせた。
「ここは、ゴミ箱がありませんから〜、ゴミはぁ、お持ち帰りくださ〜い!」
そして、そう言ったあとで、微笑んだ。
白い歯が、きれいだった。

5パーセントの確率の美女に出会った喜び。

今日は、間違いなく、いい日だった。



この話、次回に続きます。




2010/06/27 AM 07:36:15 | Comment(2) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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