Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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ナヤミムヨウ
平日、午後5時になろうとしていたとき、友だちのハゲから突然電話がかかってきた。
(彼は、このブログで2回登場している。コチラコチラ

聞くと、もう調布あたりまで車で来ているという。
ハゲの声が少し緊張していた。
面倒くさいことにならなければいいのだが。

俺の家に来たいのか?

「話があるんだ」

土産は持ってきたか?

ジャックダニエルを持ってきた」

じゃあ、会おう。

一年半ぶりに会うハゲは、ハゲのままだった。
これ以上の抜け毛の進行は、かろうじて止まっているようだ。

よかった、よかった。

私の仕事部屋は、2階のDK。
洋間には、娘がいて、和室には息子がいた。

一応かたちばかりの挨拶を交わし、娘と息子はドアを閉めて、部屋にこもった。
ただ、二人とも、ドアを閉めるとき、ハゲの頭のてっぺんを見て、小さな笑いを作ることは忘れなかったようだが。

「さすが、武蔵野、緑が多いんだな」とハゲが言いながら、ジャックダニエルのボトルをテーブルの上に置いた。
むき出しのジャックダニエル。
梱包も何もしていないというのが、いい。

むき出しのジャックダニエルのボトルのテカリ具合と、ハゲの頭のテカリがシンクロして、美しかった。

私の顔を、真正面から見つめるハゲの目。
真剣すぎて、まぶしい。

まぶしいのは、他に原因があるのかもしれないが・・・。

あまり、真面目な空気は好ましくないので、フェイントをかけることにした。
私は、低い声で、ハゲに話しかけた。

俺にハゲましてほしいのか?

「いや」

ハゲしく落ち込んでいるのか?

「いや」

一所懸命、仕事にハゲんだことを後悔しているのか?

「いや」

冷蔵庫にハゲン・ダッツ・アイスクリームがあるが、食べるか?

「いや」

あまり深刻に考えずに、ときには、モハゲーでもしてみたらどうだ?

グハハハハハ、バッカみたい!(隣の部屋から娘の声)

そんな私の心温まる気遣いを無視して、ハゲが唐突に言った。
「俺、会社を辞めようと思うんだ」

こちらが場を和らげようとした会話はすべて無視され、いきなり本題に入ってきやがった。

一応真面目な顔を装って話を聞くと、会社が早期退職者を募っているので、それに真っ先に手を上げたとのことだ。
早期退職を希望すると、退職金が割り増しになる。
そして、一年間は、会社に籍を置いたまま、何もしなくても給与の何割かをもらえるという。
その間の年金、社会保険は、会社が負担してくれるから、給与がカットされても負担が少ない。
オイシイ制度だ。

しかし、退職して何をする。
増毛にハゲむつもりか?

「15年前に、行政書士の資格を取った」
その資格を活かして、退職して一年は知り合いの行政書士事務所で実務を学び、それから独立したいのだという。

それは、よかった。
そこまで、計画ができているなら、何も迷わずに行けるじゃないか。

「しかし不安だ」

悩み、無用。

「おまえも資格持っていたよな」

確かに、大学を卒業して2年目に資格を取った。
しかし、一度も活用したことがない。
錆び付いて、何の役にも立たない資格だ。

「俺と共同で事務所を開かないか?」

やだ!

ハゲしく落ち込む、毛髪が貧困な男。
その落ち込み方のハゲしさに、私は思わず同情してしまい、「サポートなら、する」と答えてしまった。
共同は嫌だが、いつでも相談には乗る。手伝ってもいい。

それを聞いて、ハゲが頭丁をさらして、頭を下げた。
そして、顔を上げた時のハゲの顔は、晴れやかな顔をしていた。

晩メシ時だ。
俺が作ったハゲバーグでも食っていくか?

「ああ・・・、ハゲバーグを・・・・・頼む」

そこまで、自虐的にならなくても・・・・・・・・。





2010/06/15 AM 06:51:10 | Comment(5) | TrackBack(0) | [日記]



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