Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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三つのありがとう
いい日は、続く。

先日、いま使っているジョギングシューズの底が抜けたら、ジョギングを止める、と宣言したことがある(コチラ)。

その後、立て続けに、宅急便が我が家に届いた。
極道コピーライターのススキダとWEBデザイナーのタカダ君(通称ダルマ)、そして先日我が家にやってきたハゲ(シバタ)からだった。

中を開けてみると、三つとも、ジョギングシューズだった。
ナイキ製一つとアシックス製が二つだ。

ナイキは、ススキダ。
しかし、ススキダというよりも、この心配りは、ススキダの奥さんのものだと断言できる。
ススキダも気配りのできる男だが、照れ屋だから、送りたいと思っても、彼は送らないだろう。

小泉今日子似のススキダの奥さん。
40過ぎなのに、あの可愛らしさは、一体なんだ!

ススキダの奥さんを見るたびに、私はススキダを絞め殺したくなるのだが、まだ小伝馬町の牢屋には入りたくないので、寸前のところで抑えている。
殺意を胸に秘めながら、ススキダにお礼の電話をかけた。

すると、「えっ? ジョギングシューズ? 俺は・・・・・知らんな」と言われた。
やはり、ススキダ夫人の心配りだったようだ。

天使のような奥さんに、ありがとうございます、と言っておいてくれ。

「ときどき鬼になるがね」

一生極道よりはマシだろう。


次は、ハゲ。

会社を辞める決心をしたハゲは、雑事に忙しくて電話に出る暇はないかもしれない。
そう思ったが、二回のコールで本人が出た。

ヒマなのか?
退屈なんで、ハゲー・ダビットソンのプラモデルでも組み立てているのか?

「フィットネスジムから帰ってきたばかりだから、疲れてソファに横になろうとしたところだ」

何? フィットネスジム? 
それは、増毛に効果があるのか?

「今さら、どうでもいいわい!」
なぜか、ハゲがむくれた。4、5本、抜けたかもしれない。

なぜだろう。わけがわからん。
これ以上、怒らせるとまずいので、私は早めに電話を切ることにした。

靴を送ってくれて、ゾウモウありがとう。
これで、より一層ジョギングにハゲむことができるよ。

向こうから、切った。


最後は、ダルマ。
天才WEBデザイナー。
しかし、その容貌は、お笑いコンビ「」の太った方に、そっくり。
奥さんは、笑顔百点の「微笑みの天使」トモちゃん。

ススキダのところと同じく、ルックス的なギャップが激しい。

まずは、奥さんのことを聞いてみた。

もう、安定期に入ったかな。

「はい、6ヶ月目に入りましたので」
幸せを声だけで表現したらこうなる、という見本のような幸福感あふれる声で、ダルマが答えた。

お礼を言う前に、一つだけ言っておきたいことがある。

銀河高原ビールが、飲みたいな。

数あるビールの中で、私は銀河高原ビールが世界で二番目に好きだ。
ただ、高価なので、自分では一度しか買ったことがない。
金持ちのダルマに、数ヶ月に一回、送ってもらっている。
それを、嬉しいことがあったときだけ飲むのだ。

ただ、嬉しいことがあまりない淋しい日常を暮らしている私にとって、それを消費するには数ヶ月かかる。
それを知っているダルマは、頃合いを見計らって、銀河高原ビールを送ってくるのである。
それが、今回、思いがけないW杯日本代表の決勝トーナメント出場で、底をついた。

「師匠、師匠も徹夜したクチですね。俺もトモちゃんと抱き合って喜びましたよ」

抱き合わなくても、いいだろう。

「じゃあ、どうすればいいんですか?」

壁に頭をぶつけて、血だらけになるとか。
時には、そんなワイルドな喜び方をしてもいいんじゃないか。

「・・・・・・・わかりました! 銀河高原ビール、送ります」

なんか、拗ねてしまったようだぞ。
俺、何か気にさわるようなこと、言ったか?

危険な空気になってきたので、靴ありがとう、奥さん大事に、と早口で言って、電話を切った。


目の前にある、三つのジョギングシューズ。
それを見つめていると、ありがたくて、涙が出る。

彼らは、私からジョギングを取ったら、抜け殻になってしまうことを知っているのだ。
だから、私のブログを見て、すぐに送ってきた。
その気配りに対して、あふれるほどの感謝の意を込めて、私は彼らにお礼を述べた。

それは、非の打ちどころがないほど、心のこもった「ありがとう」だったと思う。

そして、今あらためて言わせてもらいたい。

ススキダ、ダルマ、ハゲ。

ありがとう。
ありがとう。
ゾウモウありがとう。



2010/06/29 AM 06:34:00 | Comment(7) | TrackBack(0) | [日記]

確率5パーセントの美女
人生には、やることなすこと、うまくいかないときがある。

しかし、うまくいくときもある。

昨日、武蔵野に越してきてはじめて、新規の客を開拓した。
病院のホームページのフラッシュの部分だけを作る仕事だ。

「疑うわけじゃありませんけど」と、30歳くらいの男性の事務員が、申し訳なさそうに言った。
「どの程度のものができるか、うちのパソコンで、試しに作ってみていただけませんか」

疑うわけではないが、疑っているようだ。

「病院のロゴの上にマウスポインターを置いたら、何かが出てくるアニメを試しに作っていただけますか」
そう低姿勢で指示して、事務員は「できたらお呼びください」と言って、応接室を出ていった。

病院のパソコンは、ウィンドウズのノートパソコン。
入っているフラッシュのバージョンは、MXだった。
イラストレータのCSバージョンも入っていたので、それで下書きをした。

5文字の病院のロゴに、それぞれ診察券や白衣、赤ん坊などを割り振り、ポインターが乗ったら、ゆっくり回転して出てくるように設定した。
何度か動かして、一番いい動きを選び、張り付けた。
しかし、それだけでは面白くないので、音が出るように設定した。

いつもバッグに入れてあるUSBメモリには、音源も入っている。
WAV形式のものとAIFF形式のもの。
ウィンドウズはWAV形式なので、その中から、赤ん坊の泣き声と川のせせらぎの音を選んだ。

赤ん坊が顔を覗かせた時は、赤ん坊の泣き声。
そのほかは、川のせせらぎの音が鳴るように設定した。
しかし、それだけでは、まだ面白くない。

だから、ロゴの一部にポインターが行ったときに、ランダムで「ダースベーダーのテーマ」が鳴るという遊びを入れてみた。

35分後。
できましたよ、と呼びに行ったら、「ええっ、もう!」と、事務員は缶コーヒーを飲む手を止めて、驚いていた。

「確認させていただきます」と、丁寧な言葉で応対しながら、事務員がマウスを動かした。

「おお!」
「なに? 音まで出るんですか? そこまで、していただけるとは」
と、大げさに驚き、ダースベーダーのテーマが鳴ると、「ダンダンダンダダダダダダ」と、手を叩いて喜んでくれた。

ということで、仕事を無事ゲットした。
いい一日の始まりである。

病院からの帰り道。
自転車に乗っていたら、胸にいれたiPhoneが震えた。

桶川の得意先のフクシマさんだ。
また、つまらねえ仕事か! と心の中で毒づいたが、予想に反して、フクシマさんは仏のような慈悲を私に下さったのだ。

「今月のお支払いなんですがぁ、あまりにも額が少ないのでぇ、申し訳なくてぇ〜、先月急ぎでMさんにやっていただいたのを〜、締めが3日過ぎていますがぁ、前倒ししてお支払いしようと思うんですがぁ、どうでしょうかぁ〜」

なんという思いがけない慈悲。
私の心は、感謝の気持ちで一杯でございます。

先月の請求額のままだと、我々一家4人がガストで2回食事をし、帰りにイトーヨーカ堂でスイカを半分買ったら消える程度のものだった。
しかし、請求を前倒ししていただくと、ペットのコジマで、ミニチュア・ロング・ダックスフンドを買えるくらいの額になる。ついでに、ケージも買えるかもしれない(犬を飼う予定はないが)。

これは、大きい。

だから、私は「フクシマさまぁー!」と、iPhoneに向かって叫んでいた。

そして、さらにフクシマ様は、嬉しいことをおっしゃるのだ。
「ヒラサワさんの仕事、入りましたぁ〜」

ヒラサワさんの仕事とは、郷土史の自費出版のことである。
ヒラサワさんは、30年にわたって調べ上げた資料をまとめて、4年前から毎年一回本を出していた。
その仕事をフクシマさん経由でいただいたとき、私は例によって、最低限の見積もりを提示した。

しかし、それを見てヒラサワさんは、フクシマさんに言ったのである。
「これは、安すぎますよ。安すぎて信用できません。この人には頼みたくない」

そう言われて慌てたフクシマさんは、私の仕事振りをこと細かく説明し、弁明に努め、フクシマ様の努力で、何とか仕事をいただくことができたのだ。
普段の倍の報酬で、請け負う仕事。
これを、世間では、オイシイシゴトという。

では、桶川にうかがわせていただきます。
いつが、よろしいでしょうか?

「いや、この間のサイゼリアにしましょう。途中、吉祥寺で美女を堪能しますので」

おバカ!
いや、おバカさま。

いいことは、続く。

アパートに帰る途中、公園を通る。
少々のどが渇いたので、水分補給をしようと思って、公園に立ち寄った。
タテ約130メートル、ヨコ約100メートルの大きさの公園。

公園の半分のスペースが、山のように盛り上がっていて、芝が敷き詰められていた。
木が多いので、日が出ているときは、自然な模様を作る日陰が、あちこちに存在する。
蒸し暑い時も、どこかしら涼しさを感じさせる作りだ。

そんな自然を感じさせる空間の中で、ベンチに座って、ペットボトルのアクエリアス(85円の特売!)を一気飲みした。
汗が幾筋も背中を伝うが、心地よい汗だ。

飲み終わって、ホッと息を吐いたとき、短パンの後姿が目に入ってきた。
白い長袖のTシャツと白い短パン。
短パンの下から、日本人離れした長い脚が覗いている。

身長は、170センチくらいか(外人という可能性もある)。
栗色のキラキラ光る長い髪。
太ももに執着する変態おじさんの目を釘付けにするほどのインパクトが、その後姿にはあった。

太ももワールドカップがあったら、確実にベスト4に入れるに違いない。

その短パンの女性が、ゴミ袋を手に持って、ゴミを拾っているのだ。
しかも、一人で。

まわりを見渡しても、誰もゴミを拾っていないから、その女性は、自分の意志でゴミを拾っているのだろう。
美しい光景だ。
そして、後姿も美しい。

後姿が美しい女性を見たとき、スケベな男たちは、みな期待する。

きっと、美人に違いない、と。

だが、男なら誰でも経験があると思うが、たいていは95パーセントの確率で、夢は無惨に打ち砕かれる。
振り返ったら、森三中の大島のようなお顔がついていたりするのだ。
まあ、それはそれで、大変味わい深いルックスだとは思うが。

短パンの女性はゴミ拾いに夢中で、なかなかこちらを向いてくれない。
ベンチに座って、わずかばかりの期待を胸に秘め、短パン娘が振り向くのを私は待った。

しかし、振り向かない。
意地でも、振り向かないと決めているのか?

そう思ったとき、盛り上がった芝生の向こうに東屋があるのを見つけた。
そこなら、真正面から短パン娘を見ることができるのではないか。

そう思い、移動を始めた(スケベなオヤジだなあ)。
あの完璧な後姿なら、顔は香里奈が望ましい。
それは5パーセント以下の確率だろうが、ありえない確率ではない。

などと勝手なことを思い浮かべていたとき、横を通り過ぎる私の気配に気づいたのか、突然、短パン娘がこちらを向いた。

驚いた私は、手に持ったバッグを落としそうになった。

香里奈・・・・・ではなかったが、美人だった。

若い頃の山口智子を思わせるような、キリッとした雰囲気の美女だった。
97.5点・・・・・は、つけてもいいのではないだろうか。

いやあ、今日は、本当に得した。

気分がハイになった私は、東屋のベンチに座り、保冷剤とともにタオルで巻いた発泡酒をバッグの底から取り出して、プルトップを開けた。

ウキウキ・・・・・、パコッ!

それほど大きな音ではないと思ったが、短パン娘が、もう一度私のほうに、素早く顔を向けた。
音が聞こえたのかもしれない。

すると、短パン娘が、体を伸び上がるようにして、丸く作った右指を口の近くにあて、張りのある声を響かせた。
「ここは、ゴミ箱がありませんから〜、ゴミはぁ、お持ち帰りくださ〜い!」
そして、そう言ったあとで、微笑んだ。
白い歯が、きれいだった。

5パーセントの確率の美女に出会った喜び。

今日は、間違いなく、いい日だった。



この話、次回に続きます。




2010/06/27 AM 07:36:15 | Comment(2) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

下世話な人たち
結局、徹夜してしまった。

眠いが、うれしいから、我慢する。

開幕前は、3連敗するのでは、と言われた日本代表。
それが、前評判を覆す大活躍。

ここは、素直に、日本代表を讃えたいと思います。

ワクワクさせてくれて、ありがとう。

ワールドカップは、これからさらに盛り上がる。


では、昨日スタートした参院選は、はたして盛り上がるだろうか。

日本の総理大臣は、生徒会長のようなものだ。

一年に一回、変わる。

コロコロ変わる最高ポスト。

違うのは、生徒会長は直接選挙だが、総理大臣は政党の派閥の動きで決まること。
そして、総理大臣の命運は、その場限りのネタだけで世論を誘導するメディアに握られていること。

アベさんからハトヤマさんまで、4人の世襲議員が途中で政権を投げ出したが、私には彼らに、政権を投げ出すほどの大きな失策、失点があったとは思えないのである。
開き直れば、投げ出さずに在位を全うできた人が、ほとんどではないかと思われる。

支持率が下がると、「降ろし」が表面化する。
まるで邪悪なもののけのように、四方八方から手を伸ばし、高みの人間を引き摺り下ろそうとする。

その根拠となる支持率が、怪しい。
「低下」だとか「急降下」「危険水域突入」だとか、支持率の前に「煽り言葉」を付けて、メディアが数字を装飾する。
最近では、「V字回復」という経営学で使う言葉まで使って、煽っている。
それを見た人は、数字よりも「煽り言葉」に惑わされて、「やばいんだな」あるいは、「回復したなら応援するか」と、知らないうちに誘導される。

不支持が、流行になってしまったら、下りの坂道は、もっと急になる。
転がり落ちる。

そもそも、こんなにも頻繁に、世論に支持を聞く必要があるのだろうか。
記者たちが、人の興味を惹く記事が書けないから、安易に興味を惹くことができる内閣支持を聞きまわっているとしか、私には思えないのだが。

そのほかに、あげ足取りがある。
アソウさんのときは、政策とまったく関係ない日本語の言い間違いを、まるで国賊を扱うような報道で、叩いた。
定額給付金を「バラマキだ」「人気取りだ」と批難したが、アソウさんが辞めた後に、その後の日本経済の総括を彼らが報じた記憶が、私にはない。

定額給付金を捻出するのに総額いくらかかり、それにより3ヵ月後、半年後、あるいは一年後、消費はどれくらい促進されたのか、あるいは停滞したのか。雇用は改善したのか。国内総生産に変化はなかったのか。
それらを定額給付金と関連付けて検証した報道を私は見たことがない。

子ども手当てに関しても、民主党は半分公約を守ったが、その財源の収支、そして及ぼした結果を、いつの日か総括して報道してほしい。
言いっ放し、書きっ放しでは、日記と同じだ。

メディアは、いつもその場限りで判断するから、堪え性がない。
そして、その報道に接した人間も、堪え性がない。

指導力がない、という報道があれば、「ああ、指導力がないんだ」と、素直に受け入れる。
違法なカネで私腹を肥やしている、という報道があれば、たとえ不起訴になっても、「あいつは、カネに汚い」と、8割以上の人が判断する。
「消費税10%やむなし」と、テレビでよく見かける人が言えば、「ああ、仕方ないんだ」と、大変聞きわけがいい。
「仕分け」の中身よりも、「仕分け」という言葉だけを強調した報道に接した人は、「仕分け」さえしておけば、他の「無駄」には、目をつぶる。

そして、毎日どこのメディアも同じ報道をして、彼らのイメージを固定する作業に没頭する。

おぼっちゃん。
独裁者。
無能。
ブレている。
期待はずれ。

ニュース番組などで街頭インタビューに答える人たちは、どこかで聞いたような意見を言う人が多い。
思い返してみると、それはテレビのコメンテーターのものだったり、キャスターの意見だったことに気づく。
「世論」とは言うが、人々の間から滲み出るように湧き上がる意見を、メディアがそのまま吸い上げることはない。

本来なら真っ直ぐ流れるはずの川の水を、無理矢理支流を作って、小さな洪水を起こそうとしているように、私には思える。
自分たちが誘導できない世論には、メディアは目も向けないのである。

メディアの扱いが上手だったコイズミさんは、高い支持率を得て、最終的に自民党を「ぶっ壊した」。
自民党をぶっ壊した、という点では、コイズミさんは、評価されていい。
メディアは、その尻馬に乗っただけ。

ただ、それは、もちろん結果論。

今回総理大臣に就任したカンさんは、私が勝手に想像するところ、メディアに愛想を振りまかないから、ハトヤマさんよりも短命に終わる可能性が高い。

コイズミさんは、メディアのご機嫌を取るのが上手だった。
ハトヤマさんは、下手だった。
そして、カンさんは、それ以上に頑固で不器用な気がする。

久々の庶民出身のソーリ大臣ではあるが、メディアは、自分に靡かない人は、すべて敵だと思っている節がある。

「われわれの総理大臣」を支えようという気は微塵もないようだ。

少し前のことだが、電車の中刷り広告を見ていたら、週刊文春や週刊新潮は、船出したばかりの内閣総理大臣や、その夫人に対して、例によって下世話な話題を得意気に吹聴していた(中味を読んでいないので、詳しい内容は知らないが)。

下世話な話題よりも、政策だと思いませんか。
公約に違反したなら、公約違反だけに絞って、真正面から論を挑んでほしい。

世の中に完璧な人はいない。
総理や夫人の性格や行動をあげつらうのは、ただのゴシップだ。
議論の提起ではない。

そして、まだ何もしていないのに、内閣の支持を聞く白痴的な報道も、いい加減やめてほしい。
それは、シーズンがまだ始まったばかりの段階で、オールスターの人気投票をしているようなものだ。

メディアに本当の矜持があるなら、自分にとって都合のいい識者の意見だけを取り入れるだけでなく、公平な検証を行って、真っ向から意義を唱えるべきだ。
それができないメディアは、「三流」。
そして、いつまでたっても、自分たちの報道に責任を取らないメディアも三流。

アベさん、フクダさん、アソウさん、ハトヤマさん、そして、次のターゲットのカンさん。

下世話なメディアは、下世話な話題だけで、総理大臣を葬り去る。

参院選も下世話な結果にならなければいいのだが。




寝ていないので、文章が、メチャクチャ・・・・・。

ほとんど、殴り書き(反省)。




2010/06/25 AM 06:54:07 | Comment(4) | TrackBack(0) | [メディア論]

柿の種の約束
私の朝は、いつも早い。

ヨメが、立川市の花屋でパートをしているのだが、朝の始まりが早いのだ。
6時10分にアパートを出るから、5時45分頃朝メシを食べさせなければいけない。
そのため、平日は、毎朝5時半ごろ起きる。
ストックしてある冷凍ものを温め、適当にアレンジして、バランスのいいものを作る。

ヨメがパートに出たあとは、6時45分に、中学3年の娘が起きる。
中学には8時半までに行けばいいのだが、お友だちが、同居している祖母と同じ空気を吸うのは耐えられない、少しでも早く家から逃れたい、と言っているので、その子にお付き合いして、家を早く出るのだ。

娘は、7時20分過ぎにアパートを出る。
フレンチトーストやパングラタン、明太子チーズトーストなどを日替わりで食わせて、送り出す。

大学2年の息子は、授業の始まりによって起きる時間が違う。
早いときは、7時半。
遅い時で、9時過ぎ。
朝からビビンバや牛丼などを食うことを好むので、少しヘビーなものを出して、送り出す。

その後に、自分の朝メシ、ということになるのだが、私は面倒くさがりやである。

私の座右の銘は、「テキトー」。
口癖は、「めんどくさい」だ。

自分の食うメシなんか、テキトーでいいし、面倒くさい。
だから、亀田の柿の種で済ますことが、3回に1回はある。

私は柿の種を、こよなく愛している。
娘も、柿の種なしでは、生きていけない体質だ。

だいぶ前のことだが、小学6年の修学旅行のとき、旅行から帰ってきての第一声が「柿の種、食いてえ」だった。
普通だったら、「父上、とても淋しかったでございます」と言うべきところ、いきなり「柿の種、食いてえ」ですよ。

娘にとって、それほど柿の種は、生活の一部になっていたのである。
だから、我が家では、柿の種を欠かしたことがない。
娘は、柿の種だけのものを好むが、私はピーナッツ入りを好む。
ピーナッツと柿の種の量のバランスが絶妙で、亀田製菓の気配りに、いつも感動している。

我が家では、ダンボールで作った「柿の種ボックス」に、柿の種様が、いつでも出動できる準備を整えている。

娘が、感動の面持ちで言う。
「柿の種を考えた人は、偉いな。ノーベル賞ものだな」
「柿の種があれば、戦争なんか起きないのにな」
「子ども手当ても、柿の種で支給してほしいな」(それは、困る)

得意先に行く時も、小さなパックの柿の種をバッグに入れていく。
そして、打ち合わせが終わったら、駅のホームで柿の種をポリポリしながら、発泡酒を飲むことに、私は無上の喜びを感じている。
それが、とても貧乏臭い行為だということは自覚しているのだが、私はその欲望を抑えきれないのだ。
人さまから白い目で見られてもいい、と思っている。

娘も、友だちと遊びに行く時に、必ずバッグに柿の種を入れていく。
「オヤジくさい」と言われているようだが、彼女は、まったく平気なようだ。

私の場合、メシを作るのが面倒くさくなると、気がついたら、朝昼、柿の種で過ごすことが、たまにある。
仕事の納期が迫っている時は、夜も柿の種の場合がある。

中毒、と言っていい。

日本テレビで「Mother」というドラマを放映している。

松雪泰子が出ている。
気になって、一話目から見てみたら、恥ずかしいことに、見ていて涙が出た。

ヤバイ! こんな姿を家族には見せられないぞ、と俯いて涙をこっそり拭きながら、次回からは、録画して、深夜に見ようと思った。
「Mother」の時間帯は、娘の好きなロッチが出ている「爆笑レッドシアター」を見ることが多い。
だから、「Mother」は、こっそり録画して、皆が寝静まった深夜に見るのが一番いい。

昨晩も見た。
柿の種と発泡酒をテーブルにセットして、目は最初からウルウル。
美しいぞ、松雪さん。
上手すぎるぞ、子役の子、そして田中裕子
美味すぎるぞ、柿の種。

柿の種をガリガリ、ポリポリ。

時刻は、午前1時40分。
家族は眠っているはずだった。

しかし、娘が突然和室のドアを開けて、寝ぼけた顔を覗かせた。
そして、かすれた声で言う。
「なんか、柿の種のにおいがするな・・・」

恐るべし、柿の種星人。

テーブルの上の柿の種を寝ぼけまなこで見つけ、手を伸ばす。
そして、そのついでに涙ボロボロの汚いオヤジの顔を見た娘。
何か言われるか、と恐れおののいたが、「このドラマ、泣けるらしいな」とだけ言って、娘もドラマに集中し始めた。

ドラマ後半の、子役と松雪さんの電話の場面では、堪えきれずに号泣。
娘も、意外なことに号泣していた。

柿の種をポロポリ噛みながら、声を殺して号泣する親子。

見終わって、柿の種を噛みながら、「柿の種もいいが、Motherもいいな」と、二人でうなずき合ったのだった。

そして、今夜のことは、柿の種に誓って、みんなには、内緒にしておこう、と固く約束した。

柿の種に誓った以上、約束を破るわけにはいかない。




2010/06/23 AM 06:59:20 | Comment(5) | TrackBack(0) | [日記]

タクシーで酸欠
タクシーに乗っている間中、大汗をかいていた。

普段、タクシーに乗る習慣がない。
自転車、電車、歩き、たまにバス。

私の生活では、タクシーを使う状況には、ほとんどならない。
一番最近タクシーに乗ったのは、母親が退院した時、病院から実家までタクシーで帰って以来だから、二年以上前になる。
いつ乗っても、居心地が悪い。

住んでいるアパートのオーナーが、荻窪にいる。
彼は、私の得意先でもある。
今回、引っ越してから一度もご挨拶に行っていないという非常識な自分に気づき、オーナーのもとに、ご挨拶に行くことに決めた。

荻窪までは、約10キロ。
普段なら、電車か自転車で行くところだ。
しかし、今回は歩いていこうと思った。

なぜ、歩いていこうと思ったのか。
それは、歩きたかったからだ。

埼玉に住んでいた頃は、10キロを歩こうという気にはならなかった。
それは、景色が面白くなかったからだ。

中途半端な自然と中途半端な街並。
予算があったので、ただ作りました、というような投げやりな公園の造作を見ても、私の心は動かない。
だから、自転車を漕いでいても、まわりの景色に目を奪われることはなかった。
歩くことなど、論外だ。

だが、武蔵野に越してきて、自転車に乗るのが楽しくなった。
大きな公園は、ただあるというだけでなく、子どもたちが楽しげに遊んでいる姿が、当たり前のようにそこにある。

広い公園の他に、個性的な大学が、いくつかある。
本当は「部外者以外は立ち入り禁止」らしいのだが、人としての気配を殺して入ると、百%フリーパスでキャンパス内に潜り込めた。
変なオッサンの闖入に、誰も異議を唱えることなく、自由にお散歩ができるのである。
キャンパスを歩き回り、心の洗濯をする。

歩くのは、楽しいですよ。
ということで、梅雨の蒸し暑い空気を肌で感じながら、荻窪まで歩いた。
途中、吉祥寺で手土産を買った。
1時間40分で、オーナーの自宅に着いた。

汗はかいたが、心地よい汗だ。
オーナーのご自宅のエアコンが程よい利き加減で、かいた汗が自然に引いていった。

「わざわざ、挨拶なんてよかったのに・・・、グハハハハ」とオーナーが、豪快に笑う。

ワールドカップ、参院選などの無難な話題で盛り上げながら、30分ほど歓談した。
長居は迷惑だと思ったので、そろそろ腰を上げようかと思ったとき、オーナーに聞かれた。
「今日は、車? 電車?」

いえ、歩きです。

オーナーの表情が、一瞬固まった。
そして、「嘘だよね」と、流し目をするように、斜めに顔を傾けて、私の顔を見た。

こんな貧相で病的なビンボー顔の男が、武蔵野から荻窪まで歩けるわけがない。
しかも、梅雨独特の、この蒸し暑い気候の下で歩いたら、倒れてしまうに違いない。

オーナーの顔には、そう書いてあった。

私がハーフマラソンを軽々走ると言っても、誰も信用しない。
蒼白い顔のビンボー顔。
背だけは高いが、不健康にしか見えないアスパラ体型。
「風が吹けば、折れそう」と誰もが、私の体を気遣う。

私にとって、10キロ歩くことなど、なんでもないのだが、ひとはみな見た目の印象で判断する。

「歩いてきました」ともう一度言ったが、オーナーの眉間には、「疑惑」が貼りついていた。

「まあ、暑いからね・・・・・、体だけは、お互い、気をつけないとね」
取ってつけたような言葉で、会話を締めくくられた。

ただ、オーナーは、親切な人だった。
「じゃあ、これ、帰りに使ってよ」と言って、タクシークーポンを私の手に握らせたのだ。
5千円分のタクシークーポン。

私の辞書に、断る、という文字はない。
「いやいや、そんな・・・」「いいから、いいから」という儀式が嫌いなのだ。

久しぶりのタクシークーポン。
大昔のことだが、テレビ東京の仕事を外注で請けたとき、仕事が深夜まで及んだので、一万円分のタクシークーポンを渡されたことがあった。
神谷町から横浜の日吉まで、それがあったので、金額を心配することなく帰宅することができた。

だが、今回は、久しぶりなので、使い方を忘れた。
荻窪駅前でタクシーに乗ったが、これは、最初に提示するんだったっけ・・・、と先ず悩んだ。
いや、最初に提示しても、いくらかかるかわからないんだから、普通は最後か。

しかし、こんなビンボー顔の男が、クーポンを持っていると不審に思われないだろうか。
拾ったと思われないだろうか。

ビンボー顔と、タクシークーポンは、結びつかないんじゃないか。
俺、不審者に間違われる自信だけは、あるぞ。

緊張の極地。

そんなとき、「オランダ戦、惜しかったですね」と運転手さんに言われた。
しかし、緊張で固まった私の頭は、それを「オランダ船」だと勘違いし、「オランダの船には、乗ったことがないんですよ」と答えてしまったのだ(マジです)。

しまった! と思ったときは、遅かった。
ミラーに映る運転手さんの目が、完全に不審者を見る目になっていた。

背中から流れる冷たい汗。

はやく、武蔵野に着かないかな・・・・・?

運転手さんは、もう話しかけてこない。

気まずい空気が、私の鼓動を早め、私は車内で酸欠状態に陥った。

スーハースーハースーハー。

その息遣いも、不審者のものだった。
つり上がった運転手さんの目が、ミラーに移る。

はやく・・・・・、降りたい・・・・・。

空模様はずっと怪しい気配。

「雨、降りますかね・・・・・」と言ったが、運転手さんは、それを無視。

スーハースーハースーハー。

このままだと、俺は酸欠で死ぬだろう、と覚悟を決めた時、見慣れた道にさしかかった。
アパートまでは500メートル以上離れていたが、私は思わず叫んでいた。

ここで、いいです!

「ああ・・・、いいんですか?」と聞かれた。
私は運転手さんの顔を直視できずに、「はい、はい」と言うだけ。

そして、5千円分のタクシークーポンを運転手さんに、震える手で差し出して「つりはいいです」と、震える声で言った。

タクシーを降りたあとで、メーターを見なかったことに気づいた。

はたして、5千円で足りたのか。
いや、でも、足りなかったら、運転手さんは黙っていないだろうから、足りたのかな。

恐る恐る、後ろを振り返ると、タクシーが方向を変えて走り去るところだった。

5千円で足りたのか・・・・・な。
それとも、不審者には関わりたくないと思って、即刻逃げたか。

わからない。

全身から力が抜けた。

疲れたぁ〜。

オーナーには申し訳ないが、こんなことなら、歩いて帰ったほうがよかったか・・・。




2010/06/21 AM 07:07:07 | Comment(4) | TrackBack(0) | [日記]

井の頭公園の変人たち
梅雨の東京。

金曜日。
場所は、井の頭公園。

厚く鬱陶しい雲が空を覆っている。
いつ雨が降りだしても、おかしくない空模様だ。
強烈な暑さは感じないが、蒸し暑い。

井の頭公園の池を渡る風も、あまり心地よくない。
ボートに乗れば、多少は爽快感を味わえるか・・・、と思って隣を見たら、乗る気が失せた。

しかし、隣から思いがけず、「ボートにでも乗るか」という声が聞こえた。

知らないのか。井の頭公園のボートに乗った恋人たちは別れる、という伝説を。

「俺たちは、恋人じゃない」

違うのか? 俺はずっと、そう思っていたんだが。

「そういう趣味があったのか?」

男同士が恋愛関係になって何がおかしい?

「このクソ暑いときに、冗談はよせ」

確かに、生れ落ちたばかりのクソは熱いな。

「小学生か!」(タカトシ?)

ああ、そうだった!

「なんだ?」

俺たちは、恋人たちじゃなかった。変人たちだった。ハハハハ、字が似てたんで、つい・・・・・。

「まったく、あんたと話すと調子が狂うよ」
と極道顔コピーライターのススキダが、池の底にまで沈むようなため息を吐いて、うなだれた。

吉祥寺のレストランでメシを食いながら、仕事の話をしようとススキダが提案したが、私は即座に「もったいない」と却下した。
コンビニでサンドイッチを買って、井の頭公園で食ったほうが安い、と主張した。

しかし、よく考えてみたら、「もったいない」とは言っても、レストランもコンビニも、ススキダのおごりだった。

失敗した。

「しかし、ウチダさんは、忙しい人だな」とススキダ。

スガ君のラーメン屋プロジェクトの責任者は、一応私と言うことになっているが、経験と能力を冷静に判断すれば、リーダーは京橋のウチダ氏である。
ただ、この不況の世の中で、非常識にも彼の事務所は、好景気を謳歌していた。
だから、こちらの仕事だけに集中するわけにはいかない。

「俺、今年に入って、正月以外、一度も休みがないんだよね。いや、昨年後半も休んだ記憶がないな」
得意げに言うウチダ氏に「だから、俺に仕事を回せよ」と私が抗議すると、「いや、Mさんは、俺の相談役だから」と言って、逃げる。

いつまでたっても、無料の相談役。

「それが、Mさんの運命だよ」

運命なら、しかたがないか。
爽やかなイケメン顔にそう言われたら、諦めるしかない。

ということで、本当ならウチダ氏も今日打ち合わせに参加する予定だったが、急ぎの仕事ができて、彼は逃げた。

知ってるかい? ルックスと仕事量は比例するんだぜ。だから、ウチダ氏は、あんなに忙しいんだ。

それを聞いてススキダが、身のほど知らずにも「俺もそこそこ忙しいがね」と張り合おうとする。
そして、皮肉を込めた目を私に向けて、言った。

「ということは、一番ヒマなあんたが、一番ブサイクということになるな」

ブサイク、ヒマあり。ビンボーもヒマあり。

「おい、これじゃ、いつまでたっても、話が進まないぞ」とススキダが言うので、仕方なく仕事の話を始めた。

スガ君の義父が、体調を崩して入院中なので、義父の仕事の一部をスガ君が代行している。
スガ君は、慣れない仕事に手間取って、打ち合わせどころではないようだ。
そこで、スガ君を抜きにして、変人たちだけでプロジェクトを進行させることにした。

プロジェクトは、かなり具体的なところまで進行したが、問題が一つある。

味に関して決定権を持つスガ君の方針が、まだ決まっていないのだ。
つまり、一番大事な味が、決まっていない。

調度品やスタッフなどは、こちらで決められても、実際にラーメンを作るのは、スガ君である。
忙しい中で、試作品を作っているらしいが、まだ「試行錯誤中」だという。
それが決まらないと、ススキダがコピーを書くことができない。

しかし、いつまでも待っていられないので、とりあえず、3パターンくらい考えてみたらどうだ、とススキダに提案した。

「まあ、俺も、そのつもりでいるんだが・・・・。しかし、この際、あんたが味を作っちまったらどうだ」

俺には、ラーメンは無理だ。
イタリアンなら、百年もあれば、それなりのものが、できると思うが。

「長い!」

そうだ! イタリアンとラーメンの融合ってのはどうだ?

「融合とは?」

パーメン、だ!

「・・・・・・・・・・」

パスタとラーメンが合わさって、パーメン。パーメン2号、パー子メンもあるぞ。

「俺、帰るわ」
呆れ顔で、ススキダが、その汚いケツを上げようとした。

そこで、私はとっておきの話題をススキダに振った。

「チワワとパグをかけ合わせた犬を、何て言うか知ってるか?」

「いや」
犬好きのススキダが、話題に食いついてきた。
「チワパグ・・・・・か?」

残念!
パワワだ。

「帰る!」
短気なやつだ。



ススキダ君。
3パターンのコピーを、よろしく。


できれば、迅速に。




2010/06/19 AM 06:49:02 | Comment(2) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

担任とじゃれあう
娘の中学3年の担任は、面白い人のようだ。

先週、国語の授業で、漢字のテストがあった。
今回は、問題を解いた生徒から、授業の残り時間は、自分が持ってきた本を読書してもいいというルールだったらしい。

娘が最初に手を上げた。

「先生、終わりました」

それに対して、担任が「何を言うの! 私は、まだ終わってません!」と叫んだというのだ。

「私の人生は、これからです。まだ終わってません!」

それを聞いて、クラスの空気が、笑いで膨張した。

新学期早々には、こんなこともあった。
自分たちの担任になったベテラン教師。
中学3年の生徒たちは、自分たちの担任の年齢が気になるものだ。
それは、彼らにとって当然の興味と言っていい。

「先生は、何歳ですか?」

それに対して、担任が、最初はためらいながら、しかし意を決したように口を開いた。
「わかりました。教えましょう。私の年は・・・・・、えー・・・・・、あら? いま質問したの誰だっけ? おや? クラスの子の名前が思い出せないぞ。あらら? ここは、何組だったかしら? ごめんなさい、さっきまで覚えていたのに、わたし、突然記憶喪失になったみたい」

そうやって、誤魔化したらしい。
他のときは、「日本語わからない。モンゴル語で答える」と言ったこともあるという。
さらに、「私ハ宇宙人。地球人ノ数ノ数エ方ガワカラナイ。ダカラ宇宙語デ答エル」と誤魔化すこともあった。

最初は、生徒たちも驚いたようだ。
クラスの中には、冗談のわかる生徒だけがいるわけではない。
真面目な生徒もたくさんいるのである。

最初は、「変な先生」という受けとめ方をする生徒のほうが多かったという。

「でも、アタシは、とびっきりの馬鹿が身近にいるから、そんな冗談は屁でもなかったぞ」と、娘が威張る。

そうか、役に立ったのか。
こんな親でも、役に立つことがあるんだな。

「それしか、役に立っていないが」と、手厳しい娘。

今では、クラスの生徒たちは、先生の冗談に素早く反応して、授業は和やかに速やかに進んでいくらしい。
そして、チームワークもいい。
誰かが失敗しても、責める生徒は一人もいないのだという。

先月末の中間テストでは、娘のクラスの平均点が、一番高かった。
テスト前に、こんなことがあった。
担任は国語教師だが、一人ひとり「今回は、何点取れるかな?」と聞いたらしい。

娘は、「90点」と答えて、実際90点取った。
娘の答案用紙を見せてもらったら、隅のほうに、赤字でこう書いてあった。

「がんばったね。宣言どおりの90点。Kちゃんは、有言実行の子だね。えらいぞ」

他に、宣言より下回った子には、こんな書き込みが。
「あなたの頑張りを私は知ってるよ」

少なめに宣言して、それより高い点を取った子には、
「すごいね。でも、自分を過小評価しないで、もっと上を目指そう。君ならできる」

私は、なかなかシャレていると思うが、もちろん人によって、受けとめ方は違う。

「生徒に媚びている」
「独りよがりの感想はいらない。教師は、授業だけ教えていればいい」
「ふざけすぎだ」
「友だち感覚で接している」
そんな陰口を言う父兄もいると聞いた。

教育は、難しい。
それは、一人ひとり、相手が違うからだ。
誰にも万能な教育などはない。

あるとしたら、それは「洗脳」か「抑圧」、「支配」であって、「教育」とは遠いものになってしまう。

そして、その先にあるのは、「独裁」。

ただ、「独裁的な教師」が「優れた教師」であると思い込んでいる親も少なからずいるようだ。

「もっと叱ってくださいよ」「抑えつけてくださいよ」「力ずくでも構いませんから」
そう訴える親もいるらしい。

未熟な個性を導くのは、親の役目でもあるし、教師の役割でもある。
お互いが連携しあえれば、悪い子には育たないと、私は思っているのだが、お互いがボールを投げ合うだけでは、子どもは不安になるばかりだ。

今週の火曜日夕方。
娘と二人で、武蔵境駅前のイトーヨーカ堂で、娘のインナーフォンを選んでいる時、娘の担任が通りかかった。

常識的な挨拶を交わしたあとで、娘の短パン、サンダル姿を見た担任は、「おっと、まぶしい! 目の毒だぜ」と言った(女なのに)。

私はすかさず、担任の買い物袋から焼酎の紙パックが覗いているのを見て、「からだに毒だぜ」と言った。

さらに、娘が、私たち二人を交互に指さしながら、「すべてが毒だぜ」と言った。

三人で、ハイタッチ!

もちろん、これは教育とは言わない。
ただの「じゃれあい」である。

それを私たちは、自覚している。

だから、どうか目イルカを、いや、目くじらを立てないでいただきたい。





2010/06/17 AM 06:55:28 | Comment(8) | TrackBack(0) | [子育て]

ナヤミムヨウ
平日、午後5時になろうとしていたとき、友だちのハゲから突然電話がかかってきた。
(彼は、このブログで2回登場している。コチラコチラ

聞くと、もう調布あたりまで車で来ているという。
ハゲの声が少し緊張していた。
面倒くさいことにならなければいいのだが。

俺の家に来たいのか?

「話があるんだ」

土産は持ってきたか?

ジャックダニエルを持ってきた」

じゃあ、会おう。

一年半ぶりに会うハゲは、ハゲのままだった。
これ以上の抜け毛の進行は、かろうじて止まっているようだ。

よかった、よかった。

私の仕事部屋は、2階のDK。
洋間には、娘がいて、和室には息子がいた。

一応かたちばかりの挨拶を交わし、娘と息子はドアを閉めて、部屋にこもった。
ただ、二人とも、ドアを閉めるとき、ハゲの頭のてっぺんを見て、小さな笑いを作ることは忘れなかったようだが。

「さすが、武蔵野、緑が多いんだな」とハゲが言いながら、ジャックダニエルのボトルをテーブルの上に置いた。
むき出しのジャックダニエル。
梱包も何もしていないというのが、いい。

むき出しのジャックダニエルのボトルのテカリ具合と、ハゲの頭のテカリがシンクロして、美しかった。

私の顔を、真正面から見つめるハゲの目。
真剣すぎて、まぶしい。

まぶしいのは、他に原因があるのかもしれないが・・・。

あまり、真面目な空気は好ましくないので、フェイントをかけることにした。
私は、低い声で、ハゲに話しかけた。

俺にハゲましてほしいのか?

「いや」

ハゲしく落ち込んでいるのか?

「いや」

一所懸命、仕事にハゲんだことを後悔しているのか?

「いや」

冷蔵庫にハゲン・ダッツ・アイスクリームがあるが、食べるか?

「いや」

あまり深刻に考えずに、ときには、モハゲーでもしてみたらどうだ?

グハハハハハ、バッカみたい!(隣の部屋から娘の声)

そんな私の心温まる気遣いを無視して、ハゲが唐突に言った。
「俺、会社を辞めようと思うんだ」

こちらが場を和らげようとした会話はすべて無視され、いきなり本題に入ってきやがった。

一応真面目な顔を装って話を聞くと、会社が早期退職者を募っているので、それに真っ先に手を上げたとのことだ。
早期退職を希望すると、退職金が割り増しになる。
そして、一年間は、会社に籍を置いたまま、何もしなくても給与の何割かをもらえるという。
その間の年金、社会保険は、会社が負担してくれるから、給与がカットされても負担が少ない。
オイシイ制度だ。

しかし、退職して何をする。
増毛にハゲむつもりか?

「15年前に、行政書士の資格を取った」
その資格を活かして、退職して一年は知り合いの行政書士事務所で実務を学び、それから独立したいのだという。

それは、よかった。
そこまで、計画ができているなら、何も迷わずに行けるじゃないか。

「しかし不安だ」

悩み、無用。

「おまえも資格持っていたよな」

確かに、大学を卒業して2年目に資格を取った。
しかし、一度も活用したことがない。
錆び付いて、何の役にも立たない資格だ。

「俺と共同で事務所を開かないか?」

やだ!

ハゲしく落ち込む、毛髪が貧困な男。
その落ち込み方のハゲしさに、私は思わず同情してしまい、「サポートなら、する」と答えてしまった。
共同は嫌だが、いつでも相談には乗る。手伝ってもいい。

それを聞いて、ハゲが頭丁をさらして、頭を下げた。
そして、顔を上げた時のハゲの顔は、晴れやかな顔をしていた。

晩メシ時だ。
俺が作ったハゲバーグでも食っていくか?

「ああ・・・、ハゲバーグを・・・・・頼む」

そこまで、自虐的にならなくても・・・・・・・・。





2010/06/15 AM 06:51:10 | Comment(5) | TrackBack(0) | [日記]

よかったね
引っ越してから、家族で外食したことが一度もない、とヨメが訴える。

引っ越してから、というより、今年になってから外食したことがない。
いや、もしかしたら、もう一年近く行っていないかもしれない。

もともと中学3年の娘と私は、食い物に関して執着がない。
それは気持ちが貧しい証しだとよく言われるが、「食えりゃ、何でも同じだろ」という意識だけは、変えようがない。

ただ、料理をするのは好きだ。
娘も最近は、料理に興味を持ち始めて、私のハンバーグ作りや、シチュー、餃子作りに参加したりしている。

ただ、外食は、面倒くさい。

それに、たとえば、ファミレスに行ったとしても、娘はハンバーグかドリア、私はピザが定番で、他を試そうという気にならないのだ。
それに対して、ヨメと大学2年の息子は、何でも食う。

その結果、外食料金の8割近くがヨメと息子というのが、当たり前になっている。
そして、請求金額を見て、毎回ヨメが言う。

「うそぉ! こんなに食べたの! 今月、ピンチだわ!」
(ヨメの場合は、冗談ではなく、本当にそう思っているのである)

食ったあとで、そう言われても、困る。

メニューを見れば金額が書いてあるのだから、自分が食べたものが最終的に、どんな結果をもたらすか、普通はわかるはずである。
しかし、ヨメは、毎回のように「ピンチ!」「ピンチ!」と叫ぶのだ。

その声を聞くと、食ったピザが消化不良になるので、私は外食から遠ざかるようになった。

たとえば、ヨメが友だちと2500円のランチを食ったあとで、お友だち推薦の店に寄って、バーゲン品を買ったとする。
「9500円のTシャツが4980円なのよ。だから、思わず買ってしまったの。贅沢だったかしら? 今月、大丈夫かしら?」

買ってしまったあとで、「贅沢かしら、大丈夫かしら」と言われても、私には、どうすることもできない。

だから、いつも「よかったね」と言って、済ますことにしている。

先日、ヨメが、夏物の衣類を買いに吉祥寺まで出かけ、両手いっぱいに洋服を買ってきた。
その中に、私の夏物の洋服だけはない(私は、着るものはどうでもいいと宣言しているので)。

両手いっぱいに持った荷物を私に見せながら、「買いすぎちゃったぁ〜」
そして、こんなときもお決まりの「こんなに買って、今月大丈夫かしら?」

買ってしまったあとで、そんなことを言われても・・・・・。

だから私は言う。

よかったね。

昨日、娘が、お友だちとメル友と合わせて、4人で夜カラオケに行った。
そこで、ヨメが「Kちゃん(娘)も、友だちと楽しんでいるのだから、私たちも、たまには外食しましょうよ」と提案した。

しかし、私は、ヨメの「ピンチ!」に遭遇したくないので、こう答えた。
「俺はいいから、二人で焼肉でも食ってきなよ」

二人は、嬉々として、吉祥寺に出かけていった。

私はひとり、前々から行きたかった、近くの「ほたるの里」に、出かけることにした。

そこは、6月初旬から中旬にかけてゲンジボタルが見られるというのである。
都会でホタル?
実に、興味深い。

アパートから5キロ離れた「ほたるの里」に着いたのが、午後7時45分。
あたりは、暗い。
里に行く手前に、わさび田があって、そこには数十人の人がすでに集まっていた。

ここに、ホタルが? と思って、目を凝らしたら、光が動くのが見えた。
ホタルだ!

20年近く前、裏磐梯で見た数百匹のホタルの乱舞から比べたら、いかにも地味な数だったが、30匹程度はいるようだ。

薄暗闇に光るホタル。
それは、30匹でも、幻想的で、私の目を釘付けにする自然美があった。

立ち尽くして、見とれた。

昼間は蒸し暑かったが、さわやかな微風が頬を撫でて、自分の吐く息までが、清々しく感じられた。
同じ場所にいる観察者たちも、声は出さず、ホタルの光の軌跡に、見とれていた。

心洗われる空間に身を置いている満足感に、私の心はとろけた。
東京の暗闇が、こんなにもきれいだなんて。
満たされた思いを胸に抱えて、家に帰った。

アパートに帰ったのは、午後9時過ぎ。
メシを食うのは面倒くさいので、柿ピーを主食にして、発泡酒をひと口飲んだ。
そのとき、ドアが開いて、ヨメと息子が帰ってきた。

ずいぶん、早いな。
焼肉屋が空いていたのか?

と思って、二人の顔を見たら、怒りを含んだ疲れた顔。

ヨメが言う。
焼き肉屋に行ったら、混んでいるので一時間以上かかるかもしれません、と言われた。
そこで、順番待ちリストに名前を書いて、45分後に店に行ったら、順番をとばされていたのだという。
店員に抗議したら、「席が空いたらすぐに、ご案内します」と言われた。
しかし、20分待っても、名前は呼ばれなかった。

腹が立ったので、そこは諦めて他のバイキングの店に行ったら、やはり混んでいて一時間待ちだと言われた。
食べ放題のピザ屋さんも混んでいた。

結局、吉祥寺で食べる気はなくなったので、武蔵境のイトーヨーカ堂の地下のリンガーハットで、ちゃんぽんと餃子を食って帰ってきたと言う。

「まったく! ムカツク!」

しかし、それを聞いて、私は条件反射のように言ってしまったのだ。

よかったね。

「よくない!」
ヨメと息子に、すごい剣幕で、怒られた。

俺の日本語、おかしいでしょうか?





ところで、私の唯一の趣味であるジョギング。

この5年間で2回、ジョギングシューズを買い換えた。

私の場合、年間で2000キロ以上の距離を走るから、シューズは半年でボロボロになる(単純計算すると5年なら10足が必要になる)。

このブログでも何度か書いているが、独立してから私はお小遣いゼロの人間である。
しかし、ジョギングシューズくらいは贅沢をしたい。
そう思って、一万円前後のシューズを5年間で2回(10回ではなく)、買い求めた。

だが、そのたびにヨメが、つぶやく。
「ジョギングシューズって、意外に高い・・・」

3万円、4万円、服を買いだめして「買いすぎちゃったぁ」で済ませるヨメ。
しかし、ひとの出費には容赦がない。

そして、私のボロボロのジョギングシューズ。

駆け引きが面倒くさい私は、このジョギングシューズの底が抜けたら、ジョギングをやめようと思う。

裸足で走るという選択肢もあるが、私の足の裏は、年齢の割りにキレイだ、キュートだ、セクシーだと、いつもみんなから絶賛されている。
その美しい足の裏を汚したくない。

だから、ジョギングはやめる。

そのあとは、ママチャリがパンクするまで、ママチャリとお友だちになるつもりだ。



よかったね。




2010/06/13 AM 08:06:26 | Comment(3) | TrackBack(0) | [日記]

おろしハンバーグ弁当
今年初めて、神田の得意先に呼ばれたので、昨日行ってきた。

一時の約束だった。
もちろん私は、約束の時間に遅れたことはない(電車が止まった時、遅れた時は別だが)。
12時51分に会社に着き、Sさんをお願いします、と事務の女性に告げた。

すると、「Sは、仕事の打ち合わせで外出しております」と言われた。

え! また、ドタキャン!
と心の中で舌打ちした。
しかし、まだあと9分もあった。
結論づけるのはまだ早いと思いながら、「いつお戻りでしょうか」と冷静な声で聞いた。

女優の菊川怜を幸薄くしたような顔の事務員は、「連絡を取ってみます」と、すぐに対応してくれた。

待つこと5分30秒。
1時1分前に、事務員が戻ってきて、「撮影機材のトラブルがあって、帰社するまでにあと1時間近くかかるとのことです」と言った。

そして、「大変申し訳ございませんが、もしMさんに時間の余裕がおありなら、お待ちいただけないでしょうか、とSは言っておりますが」と幸薄い笑顔で、私を見上げた。

何度も神田に足を運ぶのは嫌なので、私は「待ちます」と答えた。

一人で占領するには広すぎる4畳半ほどの応接室に通された。
ここは、何度も通されたことがある。
時計もなく、部屋の隅には、小さなキャビネット。そして、小さなカレンダーが壁に張られただけの殺風景な部屋である。

まるで、テレビドラマで見る警察の取調室のようだ。

「いい加減吐いて、楽になったらどうだ?」
カツ丼をテーブルの前に置いて、「落としのチョウさん」が、顔を近づけて言う。

黙秘権。

チョウさんが、突然、テーブルを叩く。
井の頭線の車内で、スカシっ屁をしたのはおまえだろ! 証拠はあがっているんだ。車内にニオイが充満する前に、おまえが身をよじって屁を放出する体制を取った姿をAさん、Bさんが目撃しているんだ。二人は、裁判で証言すると言っているぞ。それでもおまえは、シラを切るのか!?」

身をよじったのは、ケツが痒かったからだ。
俺は、屁はしていない。
屁をしたのは、車内で騒音を撒き散らしてラップを聴いていたトレッドヘアの男だ。

俺は、無実だ!

それを聞いて、ため息を吐きながら、首を振るチョウさん。
目の前に置いたカツ丼を、おもむろに手に取り、突然かっ食らい、上目遣いで私を睨む目の力は、イチローのレーザービームより鋭かった。

カツ丼かぁ・・・・・・・。
そう言えば、今日は昼メシを食っていなかったな(朝は、ヨーグルトだけだった)。
打ち合わせが終わったら食う予定でいたが、この分では、昼メシはだいぶ遅くなりそうだ。

・・・・・・・腹が・・・・・減った。

Guuuuuuuuuu・・・・・・。

すきっ腹に、コーヒーが沁みるぜ。

バッグの中には、常時カロリーメートが忍ばせてあるが、いくら人がいないからと言って、応接室で食うわけにはいかないだろう。
突然、応接室のドアを開けられたとき、カロリーメートを食う間抜けな顔が目の前にあったら、ひとは私のことを何と思うだろうか。

「あの白髪のオッサン、応接室でカロリーメート食べていたわよ。非常識ねえ。下品だわねえ。汚い金を食べても平気な政治家よりも下品だわ(?)」

きっと、そんな噂が、またたく間に広まって、私の支持率は限りなくゼロに近くなるに違いない(噂をまき散らすのは、週刊新潮だろうか、週刊文春だろうか)。

それは、困る。

そんな妄想と闘っていたとき、本当にドアが突然開いた(ノックしてください)。

幸薄い菊川怜だった。

幸薄い菊川さんは、全身で申し訳なさそうな空気を作って、頭を下げた。
「申し訳ありません。ただいま、Sから一時間では終わらないという連絡がありまして、もう一度Mさんのご都合を伺ってこいと言われたのですが」

それを聞いている最中に、私のおなかが、Guuuuu・・・

密室ですから、腹の鳴る音は、思った以上に響きます。
こりゃ、困った。
バツが悪いぞ。

腹が、これだけはっきり空腹を主張したら、誤魔化すことはできない。
どうしようか・・・・・・・?

しかし、幸薄い菊川さんは、幸薄そうな顔で、自然な笑みを浮かべ、慈悲深い目で私を見た。
「私もさっき、おなかが鳴ったんですよ。この会社、お昼は交代制ですから、私まだお昼ご飯を食べていないんです。Mさんもお昼がまだなら、何かお弁当でも買ってきましょうか」

いや、いや、そんなご迷惑は・・・・・。

バツが悪い思いを抱えて固辞する私に、幸薄い菊川さんは、目を細めて、また微笑む。
「近くのお弁当屋さんのお弁当、210円なんですぅ!」

嘘ですよね。

「いえ、おろしハンバーグ弁当と唐揚げ弁当の2種類しかありませんが、間違いなく、その二つは、210円です。私はお弁当を作って持ってきていたんですが、このお弁当に出会ってから、お弁当を作るのをやめました。こっちの方が経済的ですから」
そして、幸薄い顔を幸せ顔に変形させ、口に手を当てて言った。

「私、今日で5日連続、おろしハンバーグ弁当なんです。でも、飽きないんですよ。おいっしいんですよ!」
「おいっしい」は、相当力が入っていた。

じゃあ、その「おいっしい」やつをお願いします。
熱意に負けて、思わず答えてしまった。

お言葉に甘えて買ってきてもらった「210円弁当」は、確かにおいっしかった。

私が作るハンバーグより味は落ちる(負けず嫌いなので)が、210円の味ではない。
これに、ご飯がつき、ポテトサラダまで付いているのだ。

いいのか、こんなに美味しくて? こんなに安くて?

いったい、世の中は、どうなってしまったんだろう?
菅ソーリは、このことをご存知なのだろうか。

新ソーリは違うようだが、自民党的な政治家さんは、料亭がお好きだと聞く。
ニュースで、昼食会議にカレーライスを食べている場面が放映される時があるが、ニュースは、その値段までは教えてくれない。

カレーライス自体は500円だが、容器が上げ底になっていて、底には一万円札が敷き詰められていたりして・・・・・。

おろしハンバーグ弁当を210円で作れる仕組みを、私は聞きたくない。
その裏には、夢のない話が隠されているような気がする。

美味かった。
それだけで、満足しておこう。

食い終わって、5分ほどしてから、Sさんが汗を拭きながら、応接室に駆け込んできた。
「すみません。お待たせしました。でも、Mさん。私に2分の時間をください。昼を食べていないので、死にそうです。すぐに腹に入れますから」
そう言って、弁当の入った袋を左手で持ち上げて、私に示した。

了解しました。どうぞ、ごゆっくり。

無地のレジ袋に入った弁当。
唐揚げ弁当っぽい気がする。
しかし、2分は無理だろう。5分はかかるんじゃないか?

そう思ったら、2分キッカリで、Sさんは応接室に姿を現した。
唇が油でテカテカと光っていた。
本当に食べたようである。

210円の唐揚げ弁当を2分で食う。

1分間105円。
それは、はたして、高いのか安いのか・・・・・?



それ以前に、体に悪い。




2010/06/11 AM 06:49:52 | Comment(5) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

けむりの話
埼玉に住む同業者に、昨晩、酒を奢ってもらった。

「都会だぁ」
2ヶ月ぶりに会う田舎ものたちは、吉祥寺駅を行きかう人の群れを見て、歓喜の雄叫びを上げた。

一人は、バツ2のデブ・デザイナー・ハガさん、41歳。
もう一人は、一流デザイナー・ニシダ君、31歳。

彼らは、「吉祥寺は、美人遭遇率が非常に高い」という私の話を真に受けて、吉祥寺まで足を運んできたのである。

スケベな男たち・・・・・。

吉祥寺を小一時間ほど引きずりまわしたあとで、「すずめのおやど」に入った。

「俺好みの子が、10人以上いました」と、鼻の穴を広げて言うハガさん。
「僕は、4人かな」と、仲間由紀恵とナウシカを足して2で割った美人の奥さんを持つニシダ君が、照れながら言う。

シャレで言ったことが、本当になったのか・・・・・・・・・?

本当に美人が多いのなら、今度からは、私も眼鏡を新調して吉祥寺の街を歩くことにしよう。

・・・・・とは言っても、私はキレイな太腿にしか興味がないのですがね(過激な変態?)。

挨拶程度の近況報告は、つまらないので割愛。

熱烈な巨人フアンのハガさんとニシダ君の自慢話は、耳をオフにして、やり過した。
自慢話の間中、私はジョッキを愛し、「神戸牛の男爵コロッケ」を食い、「鉄鍋ギョウザ」とお友だちになり、「タイ風春巻きサラダ」に感動し、「自家製手のしピザ」と会話をした。

ジョッキ、お代わりください。

3回も愛されたら、ジョッキも満足でしょう。

その後、ウォッカトニックを飲んだが、私好みではなかったので、またジョッキを愛することにした。

「鉄鍋ギョウザ」がうまかったので、もう一度、お友だちになった。

私が、ジョッキを愛し、「鉄鍋ギョウザ」と再度お友だちになっていたとき、やっと自慢話が終わった。

そして、ハガさんが言った。
「ここ、禁煙席がないんですね」
「そうそう」と、ニシダ君がうなずく。

確かに、店内は、煙が小さくその存在を主張していた。

ハガさんとニシダ君は、ともに3年前に断煙をした。

ハガさんは、なぜか2度目の離婚を機に断煙した。
そして、ニシダ君は、子どもが生まれたのがきっかけだ(ただ、ニシダ君の場合、奥さんの前では絶対に吸わない恐妻喫煙だった)。

断煙者は、喫煙者に対して、批判的な場合が多い。
なぜなんだろう?
罪の意識が増幅されるからだろうか。
いままで煙を撒き散らしてきたことへの懺悔の気持ちが、そうさせるのか。

「世の中は、嫌煙の時代なのに、居酒屋は、前時代的だなぁ」
「無理矢理、煙を吸わされる人の身にもなってもらいたいですね」

「センセイは、元から吸わないから、不満は大きいんじゃないんですか」とニシダ君に聞かれた。

いや、そうでもないんですよ。

私は、赤ん坊のときから、煙草を吸う習慣がなかった。
しかし、父親は、一日80本以上を吸うヘビースモーカーだった。

私が育った中目黒の家の居間は、四方八方が煙草のヤニで黄色くなり、窓ガラスも黄色く濁っていた。

そして、ひどいことに、私の母親が結核の影響で肺が弱いにもかかわらず、父親は、煙草、葉巻、パイプ煙草を平然と燻らせていたのである。

日常の中に、煙があった。

大学に入ると、未成年にもかかわらず、クラスの8割以上の男が、煙草を吸っていた。
学食に、禁煙コーナーなどない時代だ。
どこに行っても、右から左から、煙が体にまとわりついてくるのである。

法律事務所に就職したら、ボスが、ヘビースモーカーだった。
彼は、裁判書類のところどころに、焼け焦げを作ることを趣味にしていた。
ボスの真似をして、事務員もくわえ煙草だから、事務所内は、いつも煙で溢れていた。

だから、俺、平気なんだよね。
吸いたいやつは、吸えばいいと思うよ。

「でも、受動喫煙というのが、怖いらしいですよ」と、ニシダ君が眉根を寄せて言う。

煙草の煙を横で吸うだけでも、害があるらしい。
それは、偉い学者先生が言うのだから、間違いないのだろう。

喫煙者は、最低限のマナーは守るべきだと思う。
煙が嫌いな人は、たくさんいるのだから、その煙を撒き散らす人は、周囲に対して、鈍感でいてはいけないと思う。

昔、大学2年の息子が赤ん坊の頃、買い物の帰りにヨメと大宮のドトールコーヒーに寄ったことがあった。
店は混んでいたが、テーブル席がひとつだけ空いていた。
その席の両隣が、たまたま白人のグループだった。

それまで、煙草を燻らせていた彼らは、ヨメが抱っこした息子の存在を認めると、全員がすぐに煙草を消し、あたりに漂った煙を、立ち上がって上に逃そうとしたのである。

7人の長身の白人が一斉に立ち上がり、両手を使って懸命に煙を逃す仕草は、異様な光景ではあったが、思わず「ソーリー」と頭を下げずにはいられないほどの爽快感があった。

身についたマナーというのは、清々しい。
それは、いま思い出しても、とても気持ちのいい出来事だった。

だから、マナーは、必要である。

ただ、ここで、自分だけの特殊な例を述べさせていただく。
あくまでも、私だけです。
私は、これを常識だと強弁するつもりはありません。

煙草の煙の中で暮らしてきた日々。
自分は吸わないが、受動喫煙を散々に浴びてきた私の肺。

しかし、去年の入院時に医者に言われたことだが、私の肺は、キレイらしいのだ。

私に限らず、肺結核を患い、再発し、夫のまき散らす煙を散々に吸ってきた85歳の母親の肺も、片方の肺は存在しないが、存在するもう片方の肺は、年齢のわりにはキレイだという。

だから、80歳を過ぎて、3回の手術に耐えられたのだと思う。

それは、威張ることではないが、特殊な例として、参考になるのではないだろうか。

「なるのではないだろうか」と、ジョッキのお代わりを頼みながら、もう一度強調した。

しかし、この日のニシダ君は、シャープだった。
「Mさんちは、みんな性格が変わっているから、体も人とは変わっているんじゃないですか。参考にはならないですよ」

まあ、確かに、それは思い当たるが・・・・・・・。




2010/06/09 AM 06:38:49 | Comment(4) | TrackBack(0) | [日記]

親の顔を・・・
年輩の方の中には、困った人がいる。

先週の土曜日、三鷹の図書館に本を返しに行ったときのことだ。
武蔵野市に引っ越してきて、図書館をよく利用するようになった。
家から半径5キロ以内に武蔵野市、三鷹市、小金井市の図書館が8つもあるのだ。

埼玉では、二つだけだった。
だから、何となく嬉しくなって、図書館カードを三枚つくり、頻繁に利用している。
デザイン関係の本が充実しているので、さらに嬉しい。

土曜日、遅ればせながら借りた東野圭吾の「流星の絆」やFLASHのアクションスクリプト集など数点を返しにいこうと、図書館への道を歩いていたときのことだ。

目の前には、通りを埋める、人の波。
40代から70代の男女の群れ。
ほとんどの人がリュックを背負い、手に紙切れを持ち、時速3キロ程度のスピードで、マイペースで歩いていた。

ウォーキングの催しでも、あったのかもしれない。
皆が同じ方向に、同じ空気を発散させて、ノンビリと歩いていた。

それは、とても健康的で、のどかな光景・・・・・・・とは言えないものだった。

狭い歩道を、三人、四人が一列横隊になって歩いている団体がいて、他の人の歩行の妨げになっているケースが、稀にあった。
向かいから、ベビーカーを押したお母さんが来ても、四人のうちの一人がよけるだけだから、ベビーカーは窮屈な状態で通るしかない。
ベビーカーに限らず、向かいから来る人たちは、よけてくれない集団の時は、ほとんどが窮屈な空間を、申し訳なさそうに通っていた。

ひとり、ふたりで歩いている人のところだけ、広い空間ができるので、そこだけは人の流れがいい。
あるいは、なぜか警察署の前だけは、みな早足で通り過ぎていく。

普段は声高に常識を振りかざす大人たちが、集団になると、我がもの顔で通りを占領する。
集団の魔力は、怖い。

そんなことを思っていたら、向こうからシルバーカーを押した70代の女性が、弱い足取りで歩いてくるのが見えた。

我がもの顔集団は、どうするだろう。
さすがに、相手はご老人だ。
誰かが声をかけて、道を大きく開け、ご老人を通すのが、常識ある大人の態度だろうと、私は思った。

しかし、道は大きく開かなかった。
一人あるいは二人分、空いた空間に、まるで飲み込まれるようにして、ご老人はシルバーカーを押すしかなかった。

ご老人にとっては、行けども行けども、人の波。
途中で長く途切れることはあるが、横に広がった我がもの顔集団の列は、かなり先まで続いていた。

ただ、私も、我がもの顔集団と同じ人種だった。

道をあけてください。

そう言う勇気が、なかった。
押し寄せる威圧感に、シルバーカーを押すご老人の姿を見ても、なすすべもなく何もできない無力感。
言い訳になるが、私も集団心理に、完全に飲み込まれていた一人だった。

人の波に紛れながら、図書館にたどり着いた。
だが、突然聞こえてきた、場違いな声。
決して大きな声ではなかったが、静かな図書館では、それさえも響く。

「トイレを借りたいんだけど」

ウォーキング途中の人が、帽子を取り頭を下げる常識的な態度で、他の人の応対に忙しい職員に近づいていくのが見えた。
そして、また言う。
「トイレをね、借りたいんだけど」

見ると、壁には、トイレの場所を示す紙が貼ってあった。
職員に聞かなくとも、その場所はわかったと思うが。

「図書館では、私語は慎んで、あるいは、低い声で」
普通の状態なら、彼らは、他人にそう言って嗜める立場だと思うのだが、ウォーキングで、アドレナリンが出ているからだろうか、まわりが見えなくなっているのかもしれない。

その後も、「トイレは?」「トイレに寄っていこうかね」の声が、数回聞こえた。
そして、「うちのほうの図書館の方がキレイだな」「暑いね。冷房効いてないね。ケチだね」などという会話も聞こえてくる。

図書館での私語は、できるだけ、やめましょう。

帰りは、往きほどではないが、我がもの顔集団が、まだ楽しげにウォーキングを満喫していた。
それぞれの集団は、かなり前後の間隔が空いていたにもかかわらず、なぜか一列横隊は、変わらなかった。
ウォーキングは、一列横隊が、原則なのだろうか。

彼らを避けるため横道を通って、家路に向かう途中、商店街があった。
その商店街で、大きなゴミ袋を持ってゴミを拾っている家族がいた。

今日は、クリーン・デイか? とあたりを見回したが、いるのはその一家族だけ。
30代のご夫婦と、5歳くらいの男の子と10歳くらいの女の子。
4人が、笑顔を浮かべながら、ゴミを拾っていた。

「これもゴミだよね」と言いながら、父親に焼き鳥の串を高々と上げて聞く、笑顔の男の子。
缶を拾い上げる笑顔の女の子。

家族で率先して、いつも商店街のゴミ拾いをしているのだろうか。
いかにも楽しそうだ。

我がもの顔集団を見たあとだから、なおさらその姿が、輝いて見えた。

「楽しそうだね」と私が話しかけると、「うん」と笑顔で返す男の子。
それを見た母親が帽子を取って、私に頭を下げてくれた。

それを見て思った。

ウォーキングに夢中の40代から70代の男女たち。

あなたたちの親の顔が見てみたい。
そして、子どもの顔も見てみたい。

いったい、どんな教育を・・・・・・・。

一瞬、そうは思ったが、そんなことを言える立場ではなかったことに気づいた。

俺も、我がもの顔集団に、飲み込まれた一人だったのだ。

それに、私は最近思うのだ。
親は、子どもにとって、ただ「いるだけでいい存在」なのではないか、と。

私の子どもたちは、こんなひどい親でも、私よりはるかに「できのいい人間」に育っている。

笑顔でゴミを拾う子どもたちと同じように、私の子どもたちも、自分のするべきことがわかっているように思える。

だから、私の子どもたちの「親の顔」は、見ないでいただきたい。




2010/06/07 AM 07:08:08 | Comment(4) | TrackBack(0) | [子育て]

頭のいいやつ、そして、いいやつ
「Mさんは、頭がいいねえ」「物知りだねえ」と言われることが、まれにある。

そのたびに、心の中で舌打ちをする。
からかっている、としか思えないからだ。

「頭がいい」と言って、本気で喜ぶ人は、よほど素直な人だ。

友人の京橋のウチダ氏。
彼こそ、頭のいい人間だと私は思っているが、口に出して言ったことは一度もない。
「頭がいい」と言ってしまったら、彼の本質を見誤ることになる、と思うからだ。

彼の場合、人間ができている、という表現が一番当たっているように思う。
その中の、ごく一部分を「頭がいい」が占めているだけなのだ。

昨日、チャーシューデブ・スガ君のラーメン・プロジェクトを進めるために、静岡まで足を運んだ。
運転手は極道顔コピーライターのススキダ。
そして後部座席に、イケメンのウチダ氏と貧乏顔チャンピオンの私が座った。

運転しながら、ススキダが、ガムをクチャクチャと下品に噛みながら、「Mさんはよぉ」と言った。
「あんたは、頭の良さを活かしきってないよな。無駄なことばかりに労力を使っているから、力を出し切れないんだよ。もっと省エネしたほうがいいよ」

ものごとを手際よく処理できない人間を人は「頭が悪い」と言う。
つまり、むしろ俺は頭が悪いんじゃないのか?

「でも、いつも、俺は学校の成績、良かったんだよって自慢しているじゃないか」

確かに成績は良かったが、それしか自慢できるものがないからだ。
それは、一種のシャレだ。
真面目に受け取るなよ、バーカ!

そんな私の悪態に対して、ススキダは真面目に反応する。
「俺は学校嫌いだったからな。成績悪いし、大学も五流だし、だからMさんが羨ましいんだよ。本当にもったいねえんだよな」

本気で心配してくれているようである。

他人を心底から心配できる人、それを「いいやつ」と言う。
そして、それは学校の成績とは関係なく、「人間の出来」の問題なのだ。

悔しいが、「人間の出来のいいやつ」には、適わない。
ススキダの奥さん・極妻レイコさん(小泉今日子似!)は、だからこそ、吐き気がするほど怖い顔のススキダに、ついていけるのだろう。

うらやましい。

そんな会話を締めくくるように、ウチダ氏が「まあ、MさんはMさんだから、面白いんだよな。あんたは、Mさんにしかなれないもんな」と禅問答のようなことを、爽やかな顔で言うのである。

そのウチダ氏とススキダと私の三人が向かったのは、今回のラーメン・プロジェクトのスポンサーであるスガ君の義父のお見舞いだ。
場所は、静岡。
その経緯に関しては、こちらに書いた。

スガ君の義父は、今回で4度目の入院だ。
3ヶ月間で4回の入院。

詳しい病状は、聞いていない。
スガ君に聞けば、教えてくれるのだろうが、深刻な病状であることは、言われなくてもわかる。
言われなくてもわかることを聞くのは、余計なお世話というものだ。

だから、スガ君を煩わせないためにも、雇われ人である我々は、回復を祈るだけにしておこう、と三人で決めた。
ただ、報告だけは、しておきたい。

先週私が仕事で静岡に行ったときは、具合がよろしくないということで、見舞いは遠慮した。
しかし、今週初めになると、食欲が出て、立てるまでになったとスガ君から連絡があった。

そこで、誰に言われたわけでもないが、短く話を切り上げることを三人の了解事項として、病院に足を運んだのである。

鼻に酸素吸入用のチューブを装着し、左腕には点滴。
半年前と比べると、半分近くにしぼんだ、スガ君の義父の姿を見て、私たちは立ち尽くした。
ススキダは、スガ君の義父とは初対面だが、ススキダの顔を覗くと、顎から目までが硬く強張っているのがわかった。

スガ君の義父の目には、それなりに力があったが、からだ全体から漂わせる空気は、重病人のそれだった。

それを目の当たりにして、私の顔も強張ってくるのが、否応なく自覚できた。
そして、京橋のウチダ氏も、両方のこぶしを握って、何かに耐えているように思えた。

しかし、立ち尽くしているだけでは、時間が過ぎていくだけだ。

見舞い時間は、短く。

「俺は、今回のプロジェクトの責任者だ」
唾を何度も飲み込み、震える指を意識しながら、スガ君の義父にプロジェクトの進捗状況を説明した。

情けないことに、膝が震え、声まで震えている。
話が支離滅裂にならないように気をつけながら、カラカラの唇で説明し、店舗の改装前の写真を見せ、仕上がりイメージを指差し、最後に開店予定日時と決定金額を口頭で伝えた。

私が話す間、スガ君の義父は、薄く眼を開けて一点を見つめ、微動だにしなかった。
その姿は、何かを振り絞って、懸命に座ることに集中しているように見えた。

それは、彫像を思い起こさせた。

そんなスガ君の義父の姿を目の前にして、最後まで、私の声は、震えっぱなしだった。

ススキダとウチダ氏は、一度も口をはさまない。
ただ、小さくうなずいているだけだ。

私の最悪とも言える説明を聞き終わった、スガ君の義父は、ベッドに座っていた姿勢から立ち上がろうとした。

そのとき、ススキダとウチダ氏が同時に動いて、左右からスガ君の義父の手を取った。
パジャマから出た細い手。
たった三ヶ月で、人間の手は、こんなにも弱々しくなるものなのか。

愕然とした面持ちで立ち尽くす私を一度見上げたあとで、スガ君の義父が「マコト(スガ君)をよろしく」と、小刻みに震える頭を下げた。

ハラリと垂れた前髪が、なぜか痛々しかった。
涙をこらえていたら、全身がもっと震えた。

震える声で「お大事に」と言って、私たちは病室を辞した。

廊下。
鼻をすする音。
音のした方を見ると、ススキダが泣いていた。

ウチダ氏が、「泣いてる場合じゃないけどな」と言いながら、自分も目に涙を溜めていた。

震える足で、病院の長い廊下を歩いた。
時に、どこかから聞こえる、小さな呻き声。
その廊下は、どこまでも続いているように思えた。

そんなとき、沈む気持ちを断ち切るように、声をひそめて、ウチダ氏が言った。

「Mさん、あんた、立派だったよ。最高のプレゼンだった。俺には、あの場面であそこまでは、できない。あんたは、立派にやりとげた。たいしたもんだ」

今度は、ススキダが、私の腰を強く叩いた。
足の震えが、止まった。

説明をしている間、二人はひと言も口をはさまなかった。
だからこそ、私は震えながらも自分のペースで説明ができたのだと思う。
もしも、口をはさまれたら、私は自分を見失って投げやりになっていたに違いない。

私だったらきっと、頼りにならない男がプレゼンをしていたら、でしゃばって余計なことを言っていただろう。
それが人のプライドを傷つける行為だとは、まったく気づかずに、得意気に横槍を入れていたと思う。

二人に、助けられた。

頭のいいやつ。

間違いなく、ススキダとウチダ氏は、そんな人種だ。

そして、間違いなく、いいやつだ。




2010/06/05 AM 08:01:01 | Comment(3) | TrackBack(0) | [日記]

Macはお仕事?
突然辞めた「宇宙人」の話ではなく、「異人」の話を。

「Macでお仕事?」というタイトルを振りながら、マックの話題があまり出てこない、とよく言われる。

ごもっともなご意見です。
それは、自覚しているのだが、なにせ我が家のマックは、化石と言ってもいいオールド・マック。
メインで使っているのは、G4/450MHz、サブで使っているのもG4/450MHz。

自慢できるほどのものでは、ございません。
中身は、それなりにカスタマイズしているが、仕事仕様なので、公開するほどの面白みはない。
トラブルがあったときは書いているが、最近は気味が悪いくらい安定しているので、ネタがない。

他に、仕事に関してのトラブルは、いくらでもある。
それは、それなりに大っぴらに書いていると思う。

人からは「おまえの客、変なやつばかりだな」とよく言われる。
確かに、仕事先を選んで、優雅なお仕事をしてらっしゃる方から見れば、私が見舞われるトラブルには、「信じられない」ことが多いと思う。

仕事先は、選ぶべきだ。
訳知り顔で言う方々は、賢い人生を生きていらっしゃる方だ。

私の場合、ある「大人の事情」があって、よほど怪しいと思わない限り、どんな仕事でも請けることにしている。

仕事が途絶えるのが嫌なのだ。
仕事がない状態というのが、我慢できない。

その結果、請負代金の未回収、という現象が起きるのだが、それは必然的な結果だと言える。
そのために、多大なストレスを感じたとしても、仕事がないというストレスよりはいい、と私は思っている。

ようするに、怪しかろうが何だろうが、仕事をしていればいいんですよ。

馬鹿?

それが何か?

家族には迷惑をかけているが、他に迷惑をかけていますかね?

ほっといてください。

今までも仕事上のトラブルは、ブログ上で、それなりに書いてきた。
ただ、これでもかなり抑制して書いているほうだ。

世の中には、信じられない人間がいるのである。

あなたたちは、そんな人種の存在を、ただひとこと「信じられない」「嘘だ」で済ますだろう。

しかし、新たな都市伝説を創生すると思われる異人たちがいることを、あなたたちは知らない。

たとえば、こんな異人伝説を、私は体験している(他にもたくさん体験しているのだが、長くなるのでここでは省かせていただく。いつかブログネタに困ったら、今回のように書くが)。

かなり前から、「マック出張講習」というのをしている。
マックに限らず、ウィンドウズも教えるのだが、もちろんマックの方が得意なので、マックを教えることの方が多い。

マックを、教えています。

6年前の笑い話。
「マック出張講習」の名のもとに、依頼を受けた。
マック講習の時間は、基本的に2時間。
あとは、依頼人のやる気と当方の時間的余裕によって、その時間は増減する。

「2時間もいらないですね」と言われたので、90分ということで、話はまとまった。

依頼人は埼玉県和光市のマンションに住んでいるという。
今回は、どんな人だろうか?
名前と性別はわかる。
年もおおよその見当はつく。

20代の早口の男。
電話では、せっかちな印象を強く受けた。
教えづらいタイプかもしれない、と少々の不安を胸に秘めながら、築10年前後の薄緑色のマンションのエントランスを通り、依頼人の部屋のドアフォンを押した。

ドアが開いた途端、パンパンに膨張した顔がズームイン! してきた。
20代後半の男が、いきなり親指をたてて、「イエー」と言ったのだ。

・・・・・・・・・・・・・。

不自然な「イエー」と親指の出迎えに、私は戸惑いながら「どうも」と会釈を返した。

心の中に、寒い空気が入ってきた気がした。

そして、リビングに通された私は、いきなり黒い無地のエプロンを渡された。
マックを教えるのに、なぜエプロン?

疑惑の黒い雲が、むくむくと私の胸の中で、増殖する。

男が自分でも白いエプロンをつけるのが視界に入ってきたとき、黒い雲が全身を覆って、私はめまいと吐き気がしそうになった。

まさか・・・・・まさか、ね。

しかし、男が甲高い軽薄な声で「材料は揃っているから」と言ったとき、疑惑の雲はハンマーの形をして、私の脳天を叩いた。

賢明な方なら、もう、おわかりかもしれない。

そう、マックは、マクドナルドのマックだったんですよ。

うそぉー!

いや、嘘じゃないんです。
男は、6年前、私がホームページに載せていた「出張でマック全般、教えます」という文が検索に引っかかり、それを彼なりに拡大解釈したのだ。

つまり、ホームページの前後の内容は、ことごとく無視して、男は「マック」だけに反応した。
マクドナルドのハンバーガーのレシピを教えてくれる「出張講習」だと思ったのである。

うそぉー!

ありえないー!

「マック」を「Mac」と書いておけば、間違えなかったのかもしれない。
実際、彼には、赤く膨張した顔で、こう言われた。

「『マック』って言ったら、普通は『マクドナルド』のことでしょうよ! これは、誰だって間違えるわ!」

「なんだよ! せっかく材料を揃えて、エプロンまで新しいのを買ったのに! 無駄じゃん!」

「帰ってよ! 気分悪いなあ!」

和光市で体験した異人伝説。

これを嘘だと思うのは、あなたの自由です。



関西では、マクドナルドは、「マック」ではなくて「マクド」。
彼が関西人だったら、こんな間違いは、しなかったんでしょうね。



今も、Mac出張講習、してますよ。(ネタの宝庫です)




2010/06/03 AM 07:04:37 | Comment(8) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

行ってきました
日曜日朝8時に行ったアルバイト先には、シルバーの男のパートさんが、すでに2人来ていた。

ご老人は目覚めが早い、と言ったら、失礼か。

中学3年の娘の友だちミズキちゃんのお父さんに、「お年よりは我慢強いよ。それに比べて中年のオヤジはダメだな。プライドだけが高くってさ」と、挨拶もなしに言われた。

え? それって、俺のこと?
俺は、まだ何もしてませんよ。

ミズキちゃんの家は、花農家。

東京なのに、花農家?
まあ、一度、武蔵野市、三鷹市を自転車で回ってみたら、納得できます。

テニスコート一面が優に入る大きなビニールハウスが二つと20畳くらいの小さなビニールハウスがひとつ。
そして、10メートル以上の長さの木の棚が、20列以上置かれた広いスペースがひとつ。
その横に、小さなプレハブの事務所がある。

8時11分前に着いた私は、早速オーナーであるミズキちゃんのお父さんに挨拶をし、シルバー2人に自己紹介をしようとした。

しかし、80近いと思われるご老人に、いきなり野太い声で「ここは、煙草はダメだからね!」と怒鳴られた。

あのぉ・・・・・、私は煙草を吸う習慣はないんですけど・・・。

だが、ご老人にまた繰り返し怒鳴られた。
「とにかく、ダメ! 煙草は、ご法度!」

ご法度? ここは、江戸時代か。

しかし、何も怒鳴らなくてもいいだろうに。
やる気、なくすなぁ・・・。

と、気分が萎えたが、そんな私にはお構いなしに、ご老人たちは、8時ジャストに動き始めた。
オーナーに渡された紙を見ながら、ご老人たちは、ノソリノソリと鉢植えを手にして、トトトトトとそれを運ぶ作業に、すぐに没頭した。
ビニールハウスの隅に置かれた木のパレットに、運んだものを並べ、手描きの「○○様」という黄色いボードを突き刺していく。

とりあえず、ただそれだけの作業のようだ。

見ていると、実に単純である。

それを見ていた私の横で、私の気持ちを見透かしたように「単調だろ」とオーナーが、皮肉をまぶした声で言う。
「こんな単調な仕事だから、つまらないプライドを持った中高年は馬鹿にして、次の日からは来なくなるんだよ。ここの仕事は、確かに単調で物足りないかもしれない。つまらないかもしれない。でも、この花たちは、絶対に多くの人に安らぎを与えてくれると、俺は思っている。それが想像できないやつには、この単調さは苦痛だろうが、この花たちを買ってくれた人の心が少しでも温かくなる、その場面を想像できる人には、その単調さだって、ひとつの勲章なんだよ」

勲章、というのは大げさだろうが、オーナーがプライド高き人だというのは、よくわかった。

私もオーナーから伝票をもらった。
伝票には、一番上に客先の名前が書いてある。
下が、花の名と数量。
ここの鉢植えは、花屋さんに卸すよりも、雑貨屋や八百屋、本屋など、花以外を売る商売をしている店に卸す方が多いという。

本業のほかに、「花も売って彩りを」というタイプの店だ。
聞くと、お得意先は、100店舗以上あるという。
配達はせず、相手が車で引き取りに来てくれるというから、余計な労働力はいらない。

だから、「元気バリバリの若いやつは、いらねえ」んだそうである。

一時間ほど作業してみて、わかった。
こんなことを言ったら失礼になるのは重々承知であるが、この仕事量なら、俺一人でも、5時間もかからずにできる。
実際、一時間で、ご老人たちの4倍以上の仕事量をこなした。

「中年のオヤジは、プライドだけが高くて」という以前に、少なくとも私には、仕事量が物足りない。

いいのかな、このペースでやってしまって・・・・・。

そんな不満が、私の顔に出ていたのが見え見えだったようだ。
10時前に、様子をうかがいに顔を出したミズキちゃんが、私に耳打ちをしてきた。
顔を近づけてきたとき、若い子特有のあまい香りが、鼻先をくすぐった(変態?)。

「Kちゃんのパパ。花を見てないでしょ。ここは、仕事をするだけじゃダメなんだよ。おじいちゃんたちを見てみなよ。花を見て花を感じて花を楽しんで仕事をしてるでしょ。あの人たち、花を愛する達人だと思わない? 早く仕事が終わればいい、と思ってちゃダメだよ」

それを聞いたとき、私は、大げさではなく、全身が震えた。

花を愛する達人。

中学3年の女の子が放った言葉の優雅さに、私は打ちのめされたと言っていい。

確かに俺は、花を見ていなかった。

作業伝票だけを見ていた。

それは、この仕事を「ただのしごと」だと思っていたからだ。
時間内に、与えられた仕事だけををすればいいと思っていた。

そう言われて、あらためてご老人たちを見てみると、鉢植えを持つとき、運ぶとき、パレットの上に置くとき、確実に花を見ていた。
見ていただけでなく、からだ全体で愛でているように見えた。

好きなんだ、花たちが。

愛しいんだ、花たちのことを。

そう思ったら、花の色が、突然私の脳の入口に、唐突に入ってきた気がした。

視覚いっぱいに、花の色が広がる。

そのことに気づいた私の背中をミズキちゃんが、強く叩いた。
「まあ、頑張りなよ!」
そして、小さく両手を振って、花景色の前から消えた。

花農家の娘。
彼女も、花が好きなんだな。
そして、花に囲まれた娘は、自分の父親の仕事の本質を深いところまで理解しているように思えた。
私の娘は、本当に、いい友だちを持ったようだ。

作業、再開。

今度は、少し花を楽しむことができた。
作業のペースは半分に落ちたが、もちろん誰も文句は言わない。

作業をしている間中、花が身近にあるという実感があった。
満足感もあった。

午後4時、作業が終わったとき、そんな満足感に浸っていた私の目を、オーナーが鋭い目で覗き込んだ。
そして、言う。
「一日で、わかったような気にならないでくれよな」

どこまでも、辛口なお方・・・・・・・。

そんなことは、わかってますよ。
俺には、花の達人になる才能はない。

ただ、花を楽しむ才能は、少しはあるかもしれない。
それが、嬉しかっただけだ。
(今の言葉、多少キレイごとが入っているかもしれませんが)

作業が終わって、帰り際。
歪んで汚れきった心が、清く透明に変化した私は、オーナーに頭を下げ、ご老人たちに頭を下げて帰ろうとした。
しかしまたも、ご老人に、鋭い声で怒鳴られたのだ。

「煙草はダメ!」


だから、俺は、吸わないんだって!



・・・・・・・・・・まったく。




2010/06/01 AM 06:39:20 | Comment(3) | TrackBack(0) | [日記]



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