Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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ショーユーこと
武蔵野市に越してきて、ほぼ3週間。

物足りないことが、ひとつある。

愛用していた「隠れ家」が、遠くなったということだ。

中古OA機器販売会社の事務所のパソコンをメンテナンスする代わりに、倉庫の一部を使わせてもらって、そこを隠れ家として使っていた。
だが、武蔵野市から、さいたま市見沼区までは遠い。

隠れ家を利用するためだけに、往復2千円近い交通費をかけるのは、不経済に思える。
安いカップラーメンなら、20個以上食えるわけだし。
ここは、悩みどころだ。

だが、この会社の社長を私は好きだ。
中小企業のオヤジは、独特の個性を持っている人が多いから、話をしていてイラッと来ることが、たまにある。
あえて言わせてもらえるなら、「自己中心的」な人が多い。

自分だけの価値観で、自分のまわりのものすべてを断罪するから、聞いていて「心の眉」が吊り上る。
しかし、この社長は、強い個性を持ってはいるが、周囲への気配りが行き届いた人格者でもある。
酔って絡んできても、ひとの内面に土足で踏み込むようなことはしないし、他人の悪口も言わない。

私は、他人の悪口を言わない人は、無条件でその人格を認めるという単純な性格をしている。
だから、この社長のことが、好きだ。

一ヶ月前のことである。

武蔵野市に引っ越すことにしまして・・・、と社長に告げたとき、「ウッソォー!」と大きくのけぞった社長は、私が引っ越す理由を言ったら「Mさんも苦労するねえ」と言って、8分ほど姿を消した。
8分後に姿を現した社長は、両手に持った白い封筒を私の右手に無理矢理握らせた。

そして、言った。
「全然足りないだろうけど、引越しの足しにしてよ」

中を覗くと5万5円、入っていた。
「まあ、ご縁(5円)があるように、っていうシャレだよね」と照れて頭をかく社長の目をまともに見ることができず、私は両手を両膝において頭を下げた。
社長の言う「メンテナンス、続けて頼めるよね」という言葉にも、ただ頭を下げ続けるだけ。

やっとのことで上げた顔に向かって、さらに社長が言葉をかける。
「倉庫の隅っこの『隠れ家』だっけ? あれ、残しておくからさ。気が向いたら、また使ってよ。あれは、Mさんのパワースポットだからね」

今度は上を向いて、こみ上げて来るものを必死で抑えた。

そうやって、からだ全体で力んでいたら、「ほら、来たよ」という社長の声が、耳に入ってきた。

来た? 何が?

午後6時半過ぎ。
会社のドアが開いて、聞き覚えのある声が、「まいど!」と言った。

ドアの方に顔を向けると、社長の弟が、鉢巻をして立っていた。
そして、言った。
「また、オレのラーメン、食べてもらおうかなと思って」
照れて頭をかく仕草が、社長と全く同じだった。
そして、笑顔も(カバさん顔)。

社長の弟は、事業に失敗して、屋台のラーメン屋を始めたのだが、そのことに関してはコチラに書いた。

あれから、弟さんの腕は上がったのか。
顔を見ると、以前より表情に余裕があるような気がするが・・・。

会社の前に置かれた屋台のラーメン屋は、心なしか貫禄がついてきたように思えた。
「しょうゆラーメンでいいですか」

ショーユーこと!

前回と同じく無視されたが、出来上がったラーメンは、見事なものだった。
太い麺がスープによく絡んで、口の中に広がるサッパリした油と、麺を噛んだときのスープのはじけ具合が絶妙で、私は思わず弟さんに向かって、左手の親指を立てていた。

「もしかして?!」
そう聞く弟さんの笑顔にも、どこか貫禄が感じられて、その安心感が、さらにラーメンを味わい深いものにした。

社長が言う。
「おい! 合格だよ。Mさんの顔と食いっぷりを見ればわかるよ」
社長の目が、少し涙目になっていた。

「本当に、合格ですか?」
そう繰り返して聞く、社長と弟さんの目が血走っている。
その血走ったカバ顔は、なかなか笑える。

その笑えるカバ顔に向かって、私はまた、左手の親指を立ててこう言った。
「ショーユーこと!」

・・・・・・・・・・。

ふたり顔を見合わせて、苦笑い・・・カバ笑い。

そのカバさん社長から、昨日電話がかかってきた。
「どう? そっちの暮らしには、慣れた?」

まあ、ぼちぼち・・・。

「ゴールデンウィーク中、お忙しいのに悪いんだけどさ。会社のパソコンがチョット調子が悪くなってね・・・」

つまり、メンテナンスをご希望なんですね。

「ショーユーこと!」

はいはい。
(ひとに言われると、なんかイラッとする。6針縫った膝も疼くし・・・)




2010/04/30 AM 06:45:25 | Comment(4) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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