Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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公園で拾った白夜行
朝一番で、大宮の印刷会社に、仕上がりイメージを持っていった。

24ページの小冊子を両面プリントして中綴じ製本をすると取りあえず立派な本になる。
素人にホチキスの中綴じは難しいのだが、コツをつかめば、不器用な私でも綺麗にできる。
そのコツは、教えませんけどね(嫌なやつ)。

帰り道にある大宮第三公園に寄って、家から持ってきた朝メシを食おうと、自転車で公園内のベンチを探した。
公園内にベンチは沢山あるが、どれも鳩やカラスのフンがこびりついている。
だから、なるべくフンの少ないベンチを物色した。

その中で木の枝が張り出していない、鳩のフンの飛びにくい場所を発見した。
これなら、フンはこびりついていないだろう、と推測したベンチに行ってみると、フンは背もたれの左隅にある一箇所だけだった。

よし、本日の朝メシ場所は、ここに決定。
自転車を止め、バッグを籠から下ろした。
そのとき、目に入ったのが、ベンチに置かれた分厚い文庫本である。

セピアでコラージュした画像に浮かび上がる文字。
「白夜行」

東野圭吾の有名なミステリーだ。
4、5年前に図書館で借りて、読んだ記憶がある。
薄いダークなイメージのクライムノベルである。

読み終わったとき、松本清張が生きていたら、これを読んで悔しがっただろうな、と勝手に想像した。
抑制の効いた文体と無理を感じさせない心理描写、情景描写。
読後感は重たいが、不思議な余韻を与えてくれる作品だった。

その「白夜行」がなぜ、ベンチに置き去りに?
忘れたのだろうな。
おそらく、慌てていたのだろう。

分厚い文庫本を手にとって、パラパラとめくってみた。
すると、本の間に紙片が挟んであるのを見つけた。
手帳の切れ端のようだ。

その紙に、青いボールペンで文字が書かれていた。
細い文字で書かれた文章を読んでみた。

「これを手にした方。
読み終わったので、所有権を放棄します。
活用していただけると、うれしいです」


変わったことをする人だ。
筆跡からすると、女性だろう。

何も書かずに置いておくと、忘れたと思われるから、「所有権を放棄します」と書いた。
読むのも自由、読まずに誰かにあげるのも自由。
捨てるのはもったいないから、誰かが「活用する」ことを望んで置いていったのだろう。

面白いな。

そこで、ご希望通り、私が活用することにした。
一度読んだ本だが、二度読めば、また新しい発見があるかもしれない。

読む前に、バッグから朝メシを取り出した。
普通のおにぎりの倍以上のボリュームがある握り飯が二つ。
具は、大量のネギ味噌と、自家製の塩辛が入ったもの。

飲み物は、シジミのエキスだけの味噌汁を携帯用魔法瓶に入れて持ってきた。
それを飲みながら、握り飯を頬張る。
そして、文庫本を読む。

引き込まれた。

話の展開がわかっていても、その卓越した文章力が、文字を追うことをやめさせてくれないのである。
気が付いたら、一気に2百ページを過ぎ、第三章まで読み進んでいた。

時計を見ると、11時半。
今日は、急ぎの仕事がないので慌てて帰ることはないが、三月中旬は、まだ寒い。
ベンチには、春の陽光が当たっていたが、体を芯から暖めるほどではない。

帰ることにした。
そして、自転車を漕ぎながら、最初に「白夜行」を読んだ時のことを思い返した。

これをもし、テレビか映画でやるとしたら、ヒロインは絶対に柴咲コウだな。
目で意思を表現できる人しか、この役はできないな、と思った。
そして、男の主人公は、多少、年は行っているが、本木雅弘だな。
表情を変えずに、ことばだけで表現できる男優は限られる。彼こそ適役だ、と思った。

しかし、その後、「白夜行」がテレビ化されたが、配役は、綾瀬はるか山田孝之だった。
私は、そのドラマを見ていないので、コメントできない。
評判が良かったかどうかも、わからない。
私のイメージとは、だいぶ違うが、どちらもいい役者さんなので、もしDVDになっていたら、いつかツタヤで借りて観てみようと思う。

でも、やっぱりヒロインの柴咲コウは、私の中では譲れないな。
柴咲コウの唐沢水穂(ヒロイン)を絶対に見てみたい。
そして、相手役は、今なら小栗旬だろうか。
年齢的には、本木雅弘より、こちらの方が合っていそうだ。

お互い、暗く沈んだ情念を心の奥底に澱ませて、陽の光を避けるように、白夜の中を、もがきながら行く二人。
笑顔さえ、氷のように冷たく痛々しい「はぐれびと」。

見てみたいなあ。
柴咲コウと小栗旬の「白夜行」。
運命に抗いきれずに、薄絹のような闇の中を懸命に這い進んでいく、この二人の演技を見てみたいなあ。

いや、しかし・・・・・、とまた別のヒラメキが。

ヒロインは、沢尻エリカでもいいかもしれない。
邪(よこしま)な心を隠して、いい人を演じる役を、彼女にやらせてみたい気がする。
はまり役ではないだろうか。
すると、相手役は、小栗旬ではなく二宮和也か藤原竜也の方が合うかも。
非情なまでに犯罪者に徹する役は、彼らにとって新境地になるかもしれない。

いいな。
うん、いいかもしれない。

いやいや、しかし、柴咲コウも、やっぱり捨てがたい。
ああ! どうしよう!

そんな妄想に耽りながら、昨日5百ページ近くまで読み進んでしまいました。

そんな私に、中学2年の娘が舌打ちをしながら言った。

「おまえ、今日の晩メシ、手を抜いたな!」

はい、申し訳ありません。

すべては、「白夜行」を置いていった人が、悪いのでございます。



2010/03/20 AM 08:36:56 | Comment(3) | TrackBack(0) | [こんな本読みました]



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