Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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暴れん坊
「急落」とか「続落」という枕詞(まくらことば)をつけられたら、「ああ、支持されていないんだな」と、ほとんどの人が思う。
逆に「依然として高支持率」という枕詞が付いていたら、勝ち馬に乗りたい、と世間の人は思うだろう。

枕詞なしに、「支持率40%」という見出しだけだったら、誰も「へえ」としか思わない。

そして、「ぶれている」と、新聞や週刊誌の見出しのサイズが大きくなるたびに、たとえ少々のぶれでも、みんながぶれているんだなと思ってしまう。
「エリカ様」と書いたら、誰でも彼女を尊大な女王様だとイメージする。

それをバンドワゴン効果という。

それは、自分の思い通りに話を誘導するためには、かなり効果的な手法だが、私は好きではない。
私はむしろ「勝ち馬」を避けるタイプである。
そして、そんな意図的な表現を見ると、むしろ表現者の裏を読もうとしてしまう「ひねくれもの」だ。

ただ、この「ひねくれもの」は、「ほめる」ということに関しては、無条件に頷いてしまう癖がある。
ひねくれものは、「粗さがし」が嫌いだ。

悪いことをした人は、それなりの罰を受けるのは当然のことだが、それが世間の「風向き次第」で、悪としての烙印を押されるのは、理不尽だと思っている。

これは、かなり古い話だ。

私が中学二年の時のことだ。

学年に一人や二人は必ずいる「暴れん坊」。

教師も持て余して、まわりからも眉をひそめられる存在。

あいつは、何をやるかわからない男だぞ。
あいつには、近づくな。
何をされるかわからないからな。

事実、無茶な行動をしていた男だったが、犯罪を犯していたわけではない。
むしろ、普通に見えるやつらが、駄菓子屋での万引きの成果を吹聴したりしていた。
いつの世も、要領のいいやつだけが、世論を味方にする。

教師も、外見上の「暴れん坊」だけを目の敵にして、「影の悪いやつ」は、ほったらかしである。

そんなとき、砂場で、「影の悪いやつ」をボコボコにしていた「暴れん坊」を止めたことがある。
「影の悪いやつ」は、「暴れん坊」に蹴られながら、鼻水を垂れ流して泣いていた。
その泣きっぷりが、あまりにも見事だったので、つい止めに入ったのだが、よく見ると、「暴れん坊」の蹴りは、かなりおとなしい蹴りだった。

蹴ってはいたが、かなり手加減をしていたのが、止めに入る途中でわかった。
それを見て、「ああ、こいつもわかってるんだな」と、感心したことを今でも鮮明に覚えている。
それに対して、大げさに反応することで、世間を味方につける方法を取る小賢しいガキ。

「本気で蹴る価値のないやつ」というのが、世間には、いると思う。
「影の悪いやつ」は、まさしくそんなタイプだった。

蹴る価値はないが、蹴らないと「悪さ」がエスカレートしていく。
だから、とりあえず蹴ることによって、「暴れん坊」は、それに歯止めをかけたのだろう。

ただ、世間というやつは、そうは見ない。

乱暴で、どうしようもないやつだな。
「暴れん坊」が、「暴れん坊」でいることを、表面の行動だけでイメージを固定してしまうのである。

あいつには、何を言っても無駄だよ。
父親がいないんだから。

父親がいないというのは、まったく関係ないことなのに、それが世間を納得させる理由となって、学校全体に「ひとつの空気」を形づくるのである。

中学2年の三学期、春の花が芽を出しはじめた頃、「暴れん坊」が、目黒川の橋の下で泣いている姿を見た。

どうした? と聞いたら、「猫が死んだ」と彼は答えた。
目からは、大粒の涙が溢れ出ていた。

お前が飼っていたのか、と聞いた。
「いや、ノラ猫だが、俺の友だちだった」と、彼は答えた。

「暴れん坊」は、泣き疲れて、膝を抱えていた。
私はそんな彼を、私の家に連れていった。

家には、私の祖母がいる。
教育者だったひとだ。

祖母は、「暴れん坊」をひと目見て、彼の置かれている立場を理解したようである。

「あなたは、優しくていい子だね。でも、わかってもらえないのかな」

「暴れん坊」は、祖母に頭を撫でられながら、泣いていた。

そのあと、祖母がホットケーキを作ってくれた。
「暴れん坊」は、それを「うまい!」を連発しながら、4枚も食った。

中学3年の4月12日。
祖母が死んだ。

暴れん坊・イイヅカは、祖母の棺に取りすがって泣いてくれた。
祖母には、一度しか会ったことがないのに・・・。

毎年4月12日には、私の実家に、イイヅカから花が届く。

イイヅカは、あれ以来、ホットケーキを食ったことがないという。

暴れん坊・イイヅカとは、今も友だちである。



2010/03/18 AM 06:34:20 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]



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