Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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松雪泰子似の美女とランチ
以前、横浜元町の得意先に行った話を書いた(こちら)。

それを読んだ友人たちから、「おまえは十分怪しいやつだが、あんなことを書くと、もっと怪しいやつに思われるぞ」とのご忠告を受けた。
確かにそうかもしれない。
しかし、私が怪しくなるのは、友人ノナカがいる時だけである。
彼と一緒のときだけ、妙な化学反応が起きる。

だから、ノナカが悪いのだ。

ということで(?)、横浜元町の得意先に行ってきた。
前回書いたが、白髪染めを使って、顔が歪んだ。
女優の松雪泰子似の美人に会うには、この顔を何とかしなければいけない。

だから、頭のてっぺんから首までを10時間ほどかけて冷やした。
それで、何とか歪みの90パーセントは治った。
ほっとした。

松雪泰子似の特上の美人。
前回請けた仕事の最終チェックをして、「ご苦労さまでした」のお言葉をいただいた。
心が、解放された。

本来なら、これで終了である。
これでしばらく、松雪泰子似とは、また縁がなくなるだろう。
淋しいな、と思いつつ席を立とうとした時、「お昼をご一緒にどうですか」と、その美しい口で言われた。

耳鳴りか?
妄想か?

あり得ませんよ。
こんな美人から、お昼のお誘いなど。

妄想、妄想・・・・・と心の中でつぶやいた。
しかし、目の前には、透けるような肌の美しい笑顔が。

「オッヒルデスカァ」
声が、裏返ってしまった。

鞄の中には、どこかの公園で食おうと思って作ってきた弁当があった。
しかし、それは夜メシにしよう。
この涼しい季節、腐ることはないであろう。

得意先の近くの元町っぽい(?)店に入った。
それほど広い店ではないが、空間がうまく利用されていて、テーブルとテーブルの間が、広く取られていた。
なんか、落ちつく。

しかし、美女を前にすると、ケツがしびれた感じになる。
腰が浮ついた感じだ。
俺の人生ではじめての経験ですよ。
こんな得上品とお食事をするのは。

そして、この美女は、さらに私を居心地悪くさせる言葉を、その美しいお口で発するのである。

「Mさんのブログ、毎回楽しく拝見させていただいてます」

赤面。

ということは、「松雪泰子似の特上の美女」という表現もご存知ということ・・・?

ど、ど、ど、ど、どうしましょう。

激しく赤面。

しかし、松雪泰子似は、こちらの心がとろけそうな笑顔で、私を見つめるのだ。
そこで、私は思った。
ブログを書くものとして、こんなおいしい場面を書かずにおられようか。

書いたって、この美女なら、きっと許してくれる。
(本当に、お許しください)

松雪泰子似が、笑顔のまま言った。
「Mさんのブログに、異星人さんが出てきますよね。あれを読んで、ああ、私の母にそっくりだな、って思ったんです」

ランチのミックスフライグリルが運ばれてきた。
盛り付けが、元町風(?)でおしゃれである。

「私の母は、50代後半ですから、まだ認知症とまではいきませんが、異星人さんと性格は、そっくりですね。
だから、何かわかるんです」

細く長い指で、フォークとナイフを持つ様子は、まるでドラマのヒロインのようだった。

「他人に厳しく、自分に甘い。そして、打たれ弱い。
いつも何かに対して毒を放っていなければ、安心できないタイプなんですよ。うちの母も」

フライを口に入れるとき、その美しい口を大きく開けるのだが、少しも下品にならない。
口をあけたときの鼻の皺が、魅力的だ。
美人は、得だな。

「異星人さんは、『伝言ゲーム』が、できないんじゃないですか」

伝言ゲーム?

「同じ内容の話を人に伝えるゲームです。この場合は、本当はゲームではなくて、日常会話での伝言のことですけど」

ああ、確かに、ヨメさんに聞くと、若い頃から人の話を自分独自に解釈して、それを周囲に伝えてしまい、大騒ぎになったことが何度もあったようです。

「私の母もそうなんですよ。
普段は、私宛の電話は、用件を聞かなくてもいいって言い聞かせているんですが、先日こんなことがありました。
私がいない時、上司から電話があって、母が伝言を受けたんです。
『お得意様が、品川のプリンスホテルに泊まることに決まった』という、簡単な内容です。
でも、母は私にこう言うんです。
『品川さんが、品川で事故にあった』
信じられませんよね。全然話の内容が違うんですから」

でも、俺には、よくわかる。

「つい最近の話ですが、母が体が熱っぽいといって、お医者さんに行ったんです。
そして、蒼ざめた顔で帰ってきて、こんなことを言うんです。
『医者が、風邪なのかインフルエンザなのかわからないって言ってるの。私は変な病気に罹ってしまったようだよ』
でも、私が電話で確かめると、『インフルエンザではありません。普通の風邪だと思います』って、看護士さんは言ってました。
話が、まったく逆に作られてしまうんですね。
万事がこんな感じで、私はもう慣れっこになってしまいました」

それも、わかる。
しかし、ここで私の体験を詳しく述べることは、話が重複することになるので、私は大きくうなずくだけで済ませた。

ただ、ひとつだけ、松雪泰子似に変な質問をしてみた。

異星人が言いました。
「向かいに住む女子高生が、歩きながら煙草を吸っていたのよ。それも何本も。いったい親御さんは、どんな教育をしてるのかしらねえ」

これは、どういうシチュエーションでしょうか。

「歩きながらですね。つまり、何かを食べていたということかしら」
松雪泰子似は、かなり鋭いところをついてきた。
悩ましげな顔で、目を宙ににさまよわせる。
美人は、当然のことだが、考えに耽っている時も美人である。

「ああ、フライドポテトですね!」

正解です!

女子高生は、ただ歩きながらフライドポテトを食べていただけなのだ。
異星人は散歩帰り、私は仕事帰り。
駐車場前の道を歩く女子高生を同じような角度で見ていても、それが、異星人にかかると、彼女は不良少女になる。

冤罪はこんなところから作られて、音速で噂は団地中を駆け回る。
これを「悪意」と言わずして、何と言う?

眉根を寄せて、松雪泰子似が大きく首を振る。
そして、ため息。。
あまりの美しさに、ドキッとした。
めまいがして、食後のコーヒーカップを落としそうになった。

そして、松雪泰子似が、さらにこう言う。
「そうは言っても、私は漫才のボケをひとり抱えているようなものですけど、それは血が繋がっているから、笑っていられるんですよね。
こんなことを言ったら、失礼かもしれませんけど、Mさんは、血が繋がっていない異星人さんを、よく受け止めていると私は思います」

いかん。
涙が出そうになった。

異星人の件で、初めて人に褒められた。
そこまで言わなくても、という非難のほうが多かったからだ。
嬉しかった。
そして、思った。
俺はもしかしたら、誰かに褒めてもらいたかったのかもしれない、と。

自分で無理矢理押し込んでいた感情が、何気ない言葉で浮かび上がってきて、私は少し狼狽した。
コーヒーをこぼしそうになった。

ハッハッハッ、何をおっしゃいます。
ハハハハハ、アハッ!

笑いで紛らわすことしか、できなかった。



2009/10/29 AM 06:48:27 | Comment(3) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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