Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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パソコンおたくプー太郎伝説・最終回
パソコンおたくプー太郎伝説というのを、以前このブログで書いた。

それは、我が家に昨年の11月から生息する異星人が流した、悪意ある噂である。

私は、いい年をして、健康なのに働きもせず、ヨメを朝昼働かせて、自分は毎日ブラブラし、家ではパソコンばかりしている情けない男である、というほのぼのとした童話(?)。

その噂は、私がパソコンを教えている69歳の弟子、キシさんのご尽力で、薄まったかに思えた。
しかし、実は、根深いところで、噂は消えることなく浸透していたのである。

キシさんも、それを実感していたらしく、「先生、提案があるんですけど」と、遠慮がちにパソコン講座が終わってから、言い出したのだ。

「おばあちゃんのお知り合いを招いて、パソコン教室を開いてみませんか。場所は、私が提供しますから」

しかし、そんなご迷惑をかけては・・・・・。

「迷惑なんかじゃありませんよ。老人の暇つぶしですから」
本当の意味での「いい人」キシさんは、眩しいほどの笑顔で、私を見上げたのである。

キシさんのお言葉に甘えることにした。

そして、昨日、キシさんの家のリビングで臨時のパソコン教室を開催した(もちろん無料)。
異星人の団地応援団と、キシさんのお友だち、総勢11名が参加した。
年齢は40代半ばから、70代後半。
その中には、私に対して執拗なほど批判的な、異星人最大の団地応援団・70代後半の男性の姿もあった。

目の前に座った16の瞳は、あまり好意的とは言えない。
キシさんとキシさんのお友だちの6つの瞳だけが、穏やかな目で私を見つめていた。

パソコンは、難しい物ではありません。
そして、怖いものでもありません。
だって、パソコンの寿命は短いですから。
これは、あなたたちの寿命より、はるかに短いんですよ。


(笑ってくれたのは、キシさんだけだった)

パソコンは、そこにあるだけでは何もしてくれませんが、可愛いやつなんです。
ペットのようなものです。
でも、本物のペットは、毎日エサを要求しますが、このペットは、電気を少し食うだけで、安上がりです。
散歩に行く必要もありません。
あなたたちの命令を大人しく、いつまでも待っているのです。
可愛いやつなんですよ。このペット君は。


(やはり、笑ってくれたのは、キシさんだけだった)

パソコンでできることは、たくさんあります。
そのなかには、例えば、こんな機能もあります。
デジカメやデジカメ機能付き携帯で、ペットやお子さん、孫たちの写真を撮ったとしますね。
そのとき、その映像を、いつまでも綺麗なまま保存してくれるのが、このパソコン君なんです。
本物のペットに、そんなことができますか?
可愛いパソコン君だから、できるんですよ。


(少し、食いついてくれたようだ)

ただ、リビングの隅に陣取った70代後半の男性は、腕を組んだまま、私をずっと睨みつけたままだった。

普段のパソコン講座の時間は、90分から120分だが、初心者の集中力は、そんなに持たないだろう、と思ったので、今回は60分にした。
60分は、すぐに過ぎる。
物足りなさそうな顔をした人もいたので、「興味のある人は、質問タイムを儲けます」と言ったら、ほとんどの人が興味深そうな目をして、手を上げた。
隅のご老人以外は。

質問のなかで一番多かったのは、年賀状の印刷とメールに関してだった。
年賀状の印刷は、手元にプリンタがないから、説明しづらい。
だから、メールに関して説明した。

ローマ字入力は、できますか?

ほぼ全員が、首を横に振った。

では、ご自分の名前を、ローマ字で書けますか?

ほとんどが、首を縦に振った。

そこで、紙に自分の名前をローマ字で書いてもらうことにした。
しかし、隅の老人だけは、腕を組んだまま「私はいい!」
完全拒否(可愛くねえ)。

ノートパソコンは3台しか用意できなかったが、みな行儀よく順番を待って、自分の名前をキーボードで打ち込んでいた。
漢字の変換に戸惑う人が多かったが、二人三人と教えるうちに、自然と理解してくれたようである。
なかなか、優秀だな、この人たち。

「あら、けっこう文字打ちって楽しいじゃない」
いい流れで、パソコン講座は、終了した。

キシさんに、感謝の意を込めて、贈り物をした。

「あら、先生、何をなさるんですか。そんなことをしちゃだめですよ」

キシさんの大好きなイッセー尾形の初期のパフォーマンスを収めたDVDだった。

それを聞くと、キシさんは・・・。
キャー!
14センチ飛び上がって、DVDの入った袋を抱きしめたのである。

なんて素敵な69歳。
なんて可愛い69歳。
失礼だが、抱きしめたくなるほど、可憐な人だ。

しかし、そんな私の温かく充足した感情を、残酷にも踏みにじる人がいた。
70代後半の男性だった。
他の人は帰ったのだが、この人だけは、残っていたようである。

彼は、無神経にも、充足した我々の会話に割って入ってきたのである。
「Mさんよ。あんたワセダの出だって言うけど、卒業者名簿を調べたら、あんたの名前はなかったぞ」

オレがワセダ?
なんだ、それ?
しかも、卒業者名簿まで調べた?
何たる、ヒマ人。

そうか、異星人は、大学といえば、東大、ワセダ、ケイオウしか知らなかったのだ。
だから、私が大学出だと聞いて、彼女が知っている適当な大学名を、団地中にばら撒いたのだろう。

(俺は、ワセダじゃないんですがね、ご老人)

しかし、老人は、胸を反らせて、勝ち誇ったような顔で、私を睨むのである。

それに対して、キシさんは、「いいえ、この人はワセダではなくて」と言ってくれたが、私は、それを申し訳なくも遮ったのだ。

もう、どうでもいい!

少しだけ感じた高揚感は、瞬く間にしぼんで、私は肩を落として家路についた。

世の中には、色々な人がいる。
人生は、日々、勉強だな。

ハァー・・・・・・・。
ため息しか、出ない。

この「パソコンおたくプー太郎伝説」は、今回で最終回です。

お粗末さまでした。






・・・・・・しかし、ノイローゼになりそうだわ、オレ。


2009/10/25 AM 07:19:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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