Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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2009年秋・・・家出
連休は、明るい家出。

家出先でブログを書く。

いい年をした男が、家出した理由を知りたくありませんか?
まあ、知りたくなくても、書くつもりだが。

金曜日午後、すかいらーく改めガストで、仕事の打ち合わせをしていた。
昨年開拓した浦和の企画事務所の担当者とである(そのことに関しては、コチラに書いた)。

担当者は、女性。
いままでに4回仕事をいただいたが、彼女は、4回ともジャージ姿で現れた。
飾らない人のようである。

本来ならば、私が先方に出向かなくてはいけないところだが、その日は仕事場を離れることができなかったので、申し訳ないが来ていただいたのだ。
今回もジャージだ。

この女性担当者の説明能力は、かなり高い。
的確にポイントを抑えて説明するから、一般的な打ち合わせ時間の半分以下で終わることが多い。
忙しいときは、「では、よろしく」で終わるが、少し時間に余裕があるときは、「雑談しませんか」と言われて、20分程度雑談をする。

今回も、仕事の説明は10分もかからずに終わって、珈琲を飲みながら、雑談をした。
東京オリンピックの話だ。

「オリンピックの開催国は、同じ国ばっかりですよね。あれって、大国を利用してIOCが、金儲けをしようとしているだけなんじゃないですか」
同感です。

そんな話をしていた時、信じがたいことだが、「あのぉ、よろしいですか」と話に割り込んできたオバさんがいた。
同じ団地に住むヤマシタさんだ。

ヤマシタさんの旦那とは、ジョギング仲間だった。
そして、同じフリーランス。
いつも一緒に走るというわけではないが、年に数回、同じ時間帯に偶然遭遇することがあった。
そんなときは、並んで走って、ジョギングが終わったら、近所の公園で発泡酒を飲みながら、30分程度話をした。

ヤマシタさんは、フリーのライターだが、私の仕事とクロスすることはないので、仕事上の付き合いは、まったくなかった。
ただ、お互いフリーランスということもあって、話は合った。
しかし、今年の2月に、ヤマシタさんが右足の靭帯を傷めてジョギングができなくなってからは、たまに団地の路上で挨拶をする程度になった。

そのヤマシタさんの奥さんが、仕事の打ち合わせ中に、無神経にも割り込んできて、私の隣に有無を言わさずに、座ったのだ。

女性担当者は、そんなヤマシタさんの態度に、当然、呆気に取られていた。
常識的な思考の持ち主なら、普通そんなことはしない。

しかし、ヤマシタさんは、何か決意に燃えたような眼差しをして、私を見据えるのである。
「Mさん、こんなことを言っては、なんですが」

「こんなこと」と思っているのなら、言わなければいい。
それに、先ずは、常識を身につけることを考えた方がいい。

しかし、それは、怪しげな決意に燃えたオバさんには、無駄なことだった。

「おばあちゃんを悲しませないでくださいませんか。
身体が悪いのに、弱った足で買い物に行って、Mさんご家族の食事の支度をしているそうじゃないですか」

???

「そんなおばあちゃんを置き去りにして、ご家族で温泉旅行に行ったり」

???

「奥さんを朝昼働かせて、Mさんは、毎日ブラブラして、パソコンで遊んでいたり、定職に就こうとしないそうですね」

???

「確かにいま不況ですが、真剣に探せば、いくらでも仕事は見つかりますよ。諦めてはいけません。
それなのに、若い女性とノンビリお茶を飲んでいるなんて、私は見かねて、つい声をかけてしまいました。
おばあちゃんを、これ以上悲しませないでください。お願いします!」

思わず、女性担当者と顔を見合わせた。
戸惑いながら、交わす目と目。

こんな時は、笑ったほうがいいのか。
怒った方がいいのか。
無視した方がいいのか。

悩んだ。

しかし、目の前の女性担当者は、賢い人だった。
バッグから自分の名刺を取り出して、ヤマシタさんの前に置いたのだ。
そして、自分の身分を明らかにし、仕事の原稿をヤマシタさんに示して、「Mさんに、仕事をお願いしてたんです」と、理路整然と説明をした。

ついでに、担当者は、私が以前彼女に渡した私の名刺を取り出して、ヤマシタさんの前に置いた。
「この方は、大変信頼できるデザイナーさんです。なにか勘違いをされてますね」

しかし、ヤマシタさんは、「でも、おばあちゃんがね」と、しつこく繰り返す。
そして、女性担当者の言葉の真偽を確かめるように、彼女の顔を無遠慮に見つめた。
彼女の顔に、「うそ」を探そうとしていたようである。

だが、世の中に「思い込み」ほど、強いものはない。
サルをブタだと思えば、それは、ブタなのだ。
脳内麻薬が、サルの存在を抹消するのである。

それは、彼女にとって、簡単なことだった。

私たち家族は、15年近く、いまの団地に住んでいる。
ヤマシタさんは、私の記憶では、6年前に引っ越してきたと思う。
私とヤマシタさんとの付き合いは、4年くらいか。

だから、同じフリーランスという境遇は、お互い理解しているものと思っていた。
奥さんだって、そのことを知っていたはずなのだ。

しかし、声を震わせて、ヤマシタさんが言う。
「会合に来ると、いつもおばあちゃんは、泣いて訴えるんですよ」

知らなかった。
迂闊だった。
ヤマシタさんの奥さんは、我が家の異星人と同じ宗教で結ばれていたらしい。

4年の付き合いよりも、1年足らずの付き合いの老人の言葉を信じる、心やさしき人。
ヤマシタさんの奥さんは、そんな人なのだろう。

それを知って、私は、自分の置かれている状況が、まったく自分でコントロールできないことに気づいて、パニックになってしまったのである。

これは、説明しても無駄だ。
俺を取り巻く環境は、確実に悪化している。
俺は、挽回不可能な悪意の中に身を置いているのではないだろうか。
それなら、俺は、異星人のそばにいるべきではない。

そう思って、わずかな身の回りのものだけを持って、私は、家を出てたのだ。
行き先は、鴻巣の同業者の事務所。
ここのマックの環境は、私が全ての段取りを整えたから、私の仕事場と同じである。
だから、仕事がしやすい。

事務所に、しばらく泊めてくれないかな。

同業者は、私の身の上話を真剣に聞いてくれたうえで、快諾してくれた。
浦和の急ぎの仕事も、いま順調に進んでいる。
夜は、事務所の隅に、応接用の大きめのソファがあるので、毛布を借りて、そこで寝ている。
シャワーも使える。

頼みもしないのに、2万円貸してくれたので、メシは、オリジン弁当でバランスのいいものを食っている。
昨日は、銭湯に行って、羽を伸ばした。
同業者が、居酒屋で奢ってくれた(感謝)。

家族が心配するといけないので、中学2年の娘には、電話で事情を話しておいた。

娘に、「おい、いる場所を教えたんじゃ、家出になってないだろうが!」と笑いながら、突っ込まれた。
そして、言われた。

「でも、アタシは、おまえを応援するからな。気が済むまで戦え。戦うんだ! バカオヤジ!」

娘の、その言葉だけが、いま、救いである。



2009/09/20 AM 07:24:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]



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