|
|
● 親失格、ついでに人間も |
|
世の中には、困った親がいるものである。
私のことだ。
新学期が始まった。 当然のことながら、中学2年の娘は、学校に行った。 吹奏楽部の部活は、新学期以前から始まっていた。
娘の担当は打楽器。 新学期前日。いつものメンバーと練習をした。 合間に、おしゃべりをした。
おしゃべりをしていた時、娘は少し考えごとをしていたらしい。 だから、言葉を返すのが、少し遅れた。 「なんだよ、K。人の話聞けよ」と、友だちから頭を軽く叩かれた。 「ゴメンゴメン」
次の話題に移ったとき、娘が冗談を言いながら、友だちの頭を軽く叩いた。 それからは、話の途中で、たまに3人でお互いの頭を軽く叩きあった。 叩く真似だけのときもあった。
その光景を、遠くから顧問の先生が見ていた。 しかし、注意はされなかった。
次の日、友だち二人が、家の用事で部活を休んだ。 練習前、顧問がみんなの前で、前日の娘たちのじゃれあいを注意した。 名前は言わない。 ただ、それが娘たちのことを指していると、誰もがわかる言い方だったという。
「中学生にもなって、3歳児みたいなことをして、私は見ていて恥ずかしくなりました。悲しくなりました。今日は、教える気になりません。練習パートを自習しなさい」
そんなことを言って、顧問は部室を出て行ってしまったという。
残された部員たちの間に、気まずい空気が流れた。 特に、娘のまわりに。
当事者のなかで、娘だけが、練習に出てきていた。 せめてあと一人、仲間がいれば、その気まずさも緩和されたことだろう。
ひとりは、つらいよ。
ぎこちない空気のまま、自習が続く。 それぞれが気ままに音を鳴らしている。 しかし、どんなときでも、お調子者はいるものである。
1年生のお調子者が、重い空気を吹き払おうと、他の1年生の頭を譜面で叩いたらしい。 それで、空気が一変した。 場が、明るくなった。
1年生同士が、譜面を使って、頭を軽く叩きあう。 つまり、じゃれあっている。 それを見て、全員が笑っている。
いい雰囲気になってきた。 だが、その笑い声を聞きつけて、顧問が戻ってきたのである。 1年生のひとりが、ノートで人の頭を叩こうとしているところだった。
「何を馬鹿なことしてるの!」と、顧問が怒る。
そして、娘が、名指しで言われたのだ。 「あなたが馬鹿なことをするから、みんなに馬鹿がうつったのよ!」
モンスターペアレントは、それを娘から聞いて、電話で顧問に確認した。 もちろん、低姿勢で。 一応、騒動の元は、娘なのだから。
「すべては、おたくの娘さんが悪いのです」 硬い声で言われた。
確かに娘の行動は、子どもじみていて、無神経だったかもしれない。 だが、友だち同士の行為としては、ごく自然なものだったと、私は思っている。 それは練習の合間の、友だち同士のじゃれあいなのだ。 目くじらを立てるほどのことではない。
それに、注意するなら、翌日ではなく、その場でするのが教育というものではないですか。 その場で注意していれば、翌日の騒ぎはなかったのでは?
名指しで非難するほどのことではない、と私は思いますよ。
それに対して、顧問は、会話を断ち切るように、ひと言。 「私の教育方針にケチをつけないで!」
電話を切られてしまった。
仕方ないので、担任に事の仔細を説明して、顧問と話し合いの場を作ってくれるように頼んだ。
それに対して、担任。 「無理だと思います。教師も人それぞれですから」 一方的に電話を切られてしまった。
そんな対応をされて、私は頭に来て、子どもを休ませてしまったのだ。
明日は、全員休み!
私のその一言で、ヨメは花屋のパートを休み、大学一年の息子はアルバイトを休んだ。 そして、家族全員で、お台場へ。
ファミリーレストランで豪勢に食事をし、ゲームセンターで太鼓の達人を、鬼のように叩いた。 外は、時折、小雨が降っている。 厚い雲の下、砂浜を歩き、適当な場所に腰を下ろして、ビール(発泡酒ではなく)を飲んだ。
沖を絶え間なく船が行き来している。 ヨットも見える。 それを指差しながら、子どもたちが、はしゃいでいる。
デジカメで、景色を撮りまくっている。
暗くなった。 「帰りたくねえ!」 娘が、海に向かって叫ぶ。
晩メシも外食。 ラーメンを食った。餃子も食った。 ビール(発泡酒ではなく)を飲んだ。
帰りたくねえな。 今度は、私がつぶやく。 帰りに、少しだけ、夜の銀座をぶらついた。
子どもに見せる景色ではないのだが、まあ、これも教育のひとつですよ。
家に帰ったのは、12時寸前だった。 「あっ! ガラスの靴を忘れた!」 家に入る前に、まったく同時に、娘とふたり、同じことを言った。
笑いあった。
次の日の朝。 ヨメはパート。息子はバイト。 娘は、学校・・・・・、のはずだった。
しかし、全員、見事に遅刻。 だって、いつも彼らを起こす役割の俺が、寝坊してしまったのだから。
悪い、悪い!
まったく、俺は困った親だ。
|
2009/09/04 AM 04:54:38 |
Comment(0) |
TrackBack(0) |
[子育て]
|
|
|
|
(C)2004 copyright suk2.tok2.com. All rights reserved.
|