Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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鳥肌が立った日
不思議な出来事だった。

これは、本当に不思議な話で、あまりにも不思議すぎて、作り話だと思われるかもしれない。
でも、これは昨日、私の身に起きた実体験なのです。

友人にヘチマのような顔をしたノナカという男がいる。
この男に関しては、何度か書いたことがある(たとえば、コチラコチラ)。

このヘチマとは、お互い不思議な力で呼び合っているかのように、思いがけないところで、いつも出くわす。

今回も場所は、横浜だった。
2年ぶりに訪問した会社。
女優の松雪泰子似の美人から、仕事の説明を受けた。

打ち合わせ時間、20数分。
その間中、その美しいお顔に見とれていた、中年バカ男。
会社を出てからも、松雪泰子似から発散される、何とも言いがたい匂いを鼻で反芻しつつ、元町をぶらついた。

そこで、本日の格言。
いい女は、いい匂いがする(by 中年バカ男)。

元町をぶらついたが、元町は、私を拒否しているように思える。
オシャレな街。
歴史と新しさが混在したクールな街だが、私は確実にその空間で、浮いた存在だった。

若者たちが持つ、純度の高いエネルギーが、私にはない。
街に溶け込むスタイリッシュなものが、私にはない。
シャレた店に入って、何かを買おうにも、私には金がない。

ない、ない、ない・・・・・。

ないものだらけの私を、確実にこの街は拒んでいるように思えた。

だから、わざと胸を反らして、オードリーの春日のように、ゆったりと道を歩いた。
道行く人に、「オニガワラ!」というネタをやってもよかったが、そこまで露骨に浮きたくはない。
その欲望を懸命に抑えながら、歩いた。

元町を山下公園の方向に歩いていき、途中、横道を入る。
そして、坂を上る。

一年ぶりの「港が見える丘公園」だった。

横浜の港が一望に見渡せる場所。
そこは、小さな風が吹いている。
いつ来ても、横浜の風は、新しい清冽な空気を私のまわりに運んできて、心に溜まった澱(おり)のようなものを吹き流してくれるような気がした。

午後2時過ぎ。
台風が過ぎ去った次の日。
陽射しは強かったが、陽の照りつけるベンチの端に座った。

そして、ステンレスボトルに入れてきた熱い珈琲を飲んだ。
額から汗が噴き出してきたが、汗を心地よく感じた。

空を厚い雲が覆っている。
おそらく気温は30度を超えているだろう。
ただ、肌に届く暑さに、強烈さは感じられない。
それは、夏が最後に放出するエネルギー。
それを熱い珈琲を飲みながら、実感した。

気配を感じた。

その気配が何なのかは、説明しづらい。
肌を圧迫するエネルギーとしか言いようがない。

そのエネルギーを発散する方に顔を向けた。
女がいた。少女と言ってもいいかもしれない。
16歳、と勝手に推測した。

細い。そして脚が長い。
黒の長袖のトレーナー。左胸の下にワンポイントで花があしらってある。
長い脚は、ジーンズで隠されていたが、その細さが、際立っていた。

立ち姿がいい。
顔もいい。
肌が、見事なほど輝いている。
女優の堀北真希を少し幼くして、3Dグラフィックスでモデリングしたような感じだ。

この世のものとは、思えない。

見とれた。

普段、女性の顔を、こんなにもぶしつけに凝視することなどないのだが、目が離れてくれないのである。
しかし、少女は、そんな私の視線に対して、何の感情も表すことなく、私から少し距離を置いて、同じベンチに座った。

作りもののような横顔から、目が離れない。
魅入られたとしか思えないほど、目線が、その横顔から離れることを許してくれないのだ。

その時間は、何分だったのだろう。
憶えていない。
暑ささえも感じない、止まった時間。

時間は確実に止まっているように思えたが、そんな空間の中で、少女の顔だけが、動いた。
ゆっくりと私のほうに向いたのだ。
鳥肌が立った。

ガラス玉のような茶色の目。
透明だった。
その透明な目が私を捉える。
そして、唇が、まるで機械仕掛けのように、動いた。

「もうすぐ来ますよ」
天から降ってくるような声。
細く、か細い声だったが、その声は、直接私の脳に届いた。

鳥肌。

「すぐそこに、来てますから」

声が、再び脳に届いた。

少女は、それだけ言うと、浮き上がるように立ち上がって、私に背中を見せた。
そして、浮き上がるように、歩いていく。
たとえようのない不可解なエネルギーが、肌を圧迫する。
私は、少女の背中から、やはり目を離すことができなかった。

少女の姿が見えなくなってから、私はやっと、その呪縛から逃れることができた。
大きく息を吐く。
そのとき、後ろから肩を叩かれた。

緊張していた全身が強く反応して、私は背中を思い切り強く、ベンチの背に打ちつけた。
声も出せないほどの痛みだ。
しかし、その痛みの中で、私はなぜかヘチマの顔を思い浮かべていたのだ。

「おい! 信じられるか?」
ノナカが、私の横に座って、蒼ざめたヘチマ顔を近づけてきた。
そして、とり憑かれたような早口で言うのだ。

「元町を歩いていたら、チョー可愛くて、チョースタイルのいい女の子が、『お知り合いが、いますよ』って教えてくれたんだよ。あれって、おまえの知り合いかい? ちょっと人間離れした感じの子だったが」

それは、いつの話だ。

「15分くらい前だな」

15分前なら、おそらく少女は、私の隣に座っていた。
ただ、時間の経過が異次元的だったので、確信はない。

では、違う子が、ヘチマに声をかけたのか。
しかし、ヘチマは、こう言うのだ。

「ちょっと、堀北真希に似ていたかな。陶器の人形みたいで、気味が悪かったが、チョー可愛かった。目が釘付けになったよ。目が離れてくれないんだ」

鳥肌。

蒼ざめた顔のノナカを見る私の顔も、同じように蒼ざめていたに違いない。

世の中には、理屈では説明できないことが起こる。

信じてもらえるだろうか。


2009/09/02 AM 05:00:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | [怖い話]



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