Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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引きこもり2日目
いまだに、仕事場に、籠城中。

家事をしなくていいので、仕事は、はかどり過ぎるくらいはかどって、手持ちの仕事がなくなった。
9月30日に、ドラッグストアの仕事が入ってくるまで、暇をもてあますことになりそうだ。

メシは、ヨメが作っているが、和食なので、子どもたちの評判はあまりよろしくない。
しかし、文句を言いながらも、食べているようだ。
異星人も、「いつもと違う」と異議を唱えているようだが、我慢してもらうしかない。

私は、ロジャースで安いカップラーメン、カップ焼きそばを大量購入し、インスタント生活に浸っている。
体に悪い?
無塩トマトジュースのペットボトル(大)は、毎日1本飲んでますが・・・・・。

あとは、iTunesから流れてくる音楽に浸ったり、ツタヤで借りた「キイナ -不可能犯罪捜査官-」1〜5巻を観たりしている。
「菅野美穂さんは、キレイだな」などと、ヨダレを垂らしながら観ていることは、どうかご内密に。

籠城しているとは言っても、風呂には入る。
トイレにも行く。

昨日、朝の10時過ぎ、トイレに行ったときのことだった。
狭い家なので、我が家の場合、リビングで声を出せば、確実に声は聞こえる。

異星人が、携帯電話で、誰かと話をしているのが聞こえた。
娘と息子は、学校に行き、ヨメはパートの仕事に出かけた。
家には、私と異星人の二人だけである。

異星人にとって、籠城している私は空気のようなものだから、まったく眼中にない。
楽しそうに話しているのが、聞こうとしなくても、聞こえるのだった。

しかし、異星人は、携帯電話が使えなかったのでは、なかったろうか。

何度か書いたことがあるが、半年以上前に、固定電話の契約を解除した。
電話会社の対応に腹を立てたからだ。
だから、電話が使えない。
そのことは、私にはまったく想定の外だったが、異星人の長男、次男との通信を断絶するという事態を招いたようである。

長男、次男に対して、我が家のことを、あることないこと(ないことのほうが99パーセント)吹き込むのが、彼女のストレスのはけ口になっていた。
その機会を奪ったことは、確実に異星人の人格に異変をもたらしたようだ。

ストレスのはけ口は、誰にとっても必要である。
そのはけ口が、異星人にとって、彼女の団地応援団に向けられたのは、ある意味仕方のないことだと言えるだろう。

そこで、前回の家出のあと、私は異星人に携帯電話を持っていただくことにしたのだ。
ソフトバンクの「ホワイト家族24」。
老人でも操作が可能な携帯を選んで(もちろん異星人の意見を尊重して)、携帯を持っていただいた。

ただ、老人にも簡単に操作できる、と謳っていても、そこは人それぞれ。
機械に弱い人には、すべてが異次元の世界に感じるだろう。

「何度言えばわかるのよ! こんなの簡単じゃない! いい加減覚えてよ!」
実の娘に、教育という名の罵倒を受ける異星人。

他人に対しての批判を好んでする人間は、自分が批判されることを恐れる人が多い。
つまり、打たれ弱いのだ。
それ以来、彼女はヨメの説明に、まったく聞く耳を持たなくなった。
学習の意欲をなくしてしまったのである。

その結果、携帯電話は、ただの小さなおもちゃになった。

しかし、今は誰かと話をしているではないか。
ひそかに練習して、使えるようになったのか。

品のない行為だが、興味を持って、会話を盗み聞きしてみると、長男に私の悪口を言っているのがわかった。
それは、すべて創作落語だが、楽しそうに話をするのを聞いて、確実にストレスは発散されているな、と思った。
楽天的な見方ではあるが、その極めて独創的な創作落語が団地応援団に披露されなければ、私の立場も少しは好転するのではないか、と思ったのである。

昼過ぎ、パートから帰ってきたヨメに、「ばあちゃん、携帯電話使えるようになったんだね」と聞いてみた。
しかし、ヨメは鼻で笑ったあとで、こんなことを言うのだ。

「あれは、ひとりごと。電話をかける振りをしてるだけなの。
人から馬鹿にされるのが嫌だから、見栄を張ってかけている振りをしているだけなのよ。
毎日お兄ちゃんたちに電話をかけているけど、こっそり履歴を確かめてみたら、通信履歴はゼロ。
かけたこと、かけられたことは一度もないわ。
昔から、プライドだけは高いの。負けを絶対に認めたくない人なの」

それを聞いて、これは、遥か年上の人生の先輩に対して言うことばではないが・・・、哀しくなった。

創作落語ではなく、独り芝居だったのか。

繋がっていない電話で、自分の息子たちに、毎日話しかける老人。
思えば、今年の正月以来、彼女の息子たちは、親の様子を見に来ることはなかった。
春先に長期入院した時も、一度も見舞いに来なかった。

その結果、「私は、息子たちに捨てられた」との思いが、異星人の胸に宿ったとしても、不思議ではない。

その孤独感が、歪んだ形で、心やさしき団地応援団に向けられ、一流の創作落語が披露されることになった。

そう思うと、哀しくなるではないか。

心が、切なくなる。

異星人は、孤独なんだな。

我が家の子どもたちは、祖母に対して適当に甘えているようだが、その程度のことでは、彼女の疎外感は埋められないのだろう。

本当に、哀れだ。

しかし、だからと言って、その同情が、私の身に降りかかった災難を好転させるものでもない。

だって、一番の被害者は、この俺なんだから!

今の俺のポジションは、「パソコンおたくのプータロー」ですよ。
数多くの団地の住民が、そう思っているんです。

フリーランスになって11年。
俺が今まで、苦労して築き上げてきた「誇りある世界」が、たった一編の創作落語で、簡単に覆ったんですよ。

ふざけんじゃねえよ!

だから、いまだに、オレ、籠城中。



2009/09/29 AM 07:46:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

次は、ひきこもり
私はいま、自分が一番なりたくない人間になっている。

大人気ない、器が小さいとは思うが、そんなことさえ、もうどうでもいい、という気分。

異星人によって、団地にばら撒かれた悪意の噂は、ヨメの奔走によって解消されたかに思えた。
しかし、実情は違っていたようだ。

団地内を歩いていると、異星人の応援団によく出くわす。
「Mさん、誤解をしていて悪かったですね。ごめんなさいね」と言われた。

それを聞いて、ああ、誤解は解けたんだな、と思った。
「Mさん、田舎から梨を送ってきたんだけど、ナシ好きかしら? もし好きなら、今度お届けしますよ」

ナシは、娘の大好物なんですよ。

いい雰囲気で、会話をした。
異星人の応援団は、皮肉ではなく、いい気性の人たちばかりである。
心底から人を心配する心をカラダ全体に溜め込んでいる人が多い。
私など、絶対に到達することのできない心境まで上り詰めた人たちばかりだ。

感服する。

道で会うたびに、「誤解していて、ごめんなさいね」と頭を下げられた。

恐縮した。

しかし、4人目の応援団と出くわしたとき、自分が異次元にいるような気になった。

「Mさん、本当にごめんなさい。誤解してました。ごめんなさい」
頭を深く下げられた。

また、恐縮した。

しかし、次のことばを聞いて、私は体が大きく沈み込む感覚に陥ったのである。
「でも、Mさん。やっぱり働かなければダメですよ。一家の大黒柱なんだから、体が悪くないのなら、真面目に働いて、おばあちゃんを安心させなくちゃ」

ん?
これは、どういうことだ?
誤解は解けたんじゃなかったのか?

いったい、どの誤解が解けたんだろう?
俺の頭がおかしくなって、日本語が理解できなくなったんだろうか?

そして、その日の夜、我が家に巨峰を持って訪れた異星人の応援団が、またも理解不能なことを言うのである。
「ごめんなさいね。誤解していて。深く反省してます」
また深く頭を下げられた。

いや、もう気にしていませんから。お気遣いなく。

優しい眼差し。
穏やかな微笑み。
この人たちは、本当に「いいひとなんだな」と心底思った。

だが、いいひとの顔で、私には理解不能なことばを発せられて、私は大きく混乱したのだ。

「でも、やっぱり男の人は元気なうちは働いた方がいいですよ。
私の知り合いに、雑貨屋さんがいるんですが、人手が足りないらしいですよ。とりあえず、そこで働いてみませんか。
Mさんのように、高学歴(?)の人には不満かもしれませんが、少しでも家計の足しになれば、おばあちゃんも喜びます。
Mさんは、突発性難聴で右の耳が聞こえないとか、右目が弱視だとか言って言い訳ばかりしているらしいですが、そんなのは気の持ちようです。
両耳が聞こえないとか、両目が見えないとかだったら大変ですけど、Mさんはジョギングができるんだから、大丈夫ですよ」


理解不能。思考混乱。

これは、本当に日本語なのか。
俺が知っている、真正の日本語なのか。
俺は、あまりに性格が歪んだせいで、日本語の意味を理解できなくなったのだろうか。

目の前に存在する、やさしき微笑み。
吸い込まれそうなほど、それは、慈悲深い微笑だった。

だが、ことばの意味を正確に翻訳してみると、自分の立場が、何ひとつ変わっていないことがわかって、私は慄然としたのだ。

また、家出?

しかし、前回は人様に迷惑をかけた。
それに、冷静に考えたら、俺が家を出て行く理由がないことに、遅ればせながら気づいた。

仕事も2件、急ぎのものを抱えているし。

そこで、私は仕事場に、籠城することにしたのだ。

俺は、ここに立てこもるぞ。
メシは作らないし、洗濯、掃除、買い物もしない。
学校行事にも参加しない。
俺は、仕事だけをする。
誰も俺の邪魔をすることは、許さない!

そう宣言した。

やったれ! やったれ!
中学2年の娘が、私の手を強く握った。

家出されるより、断然いい!
大学1年の息子が、両手を挙げて、ガッツポーズを作った。

ヨメは・・・・・、「家事は、得意じゃないけど」と、消極的な賛成を表明した。

我ながらオロカだと思う。
こんなことをして意味があるのか、とも思う。
異星人には、私の意図するところは、千パーセント伝わらないだろう。

「部屋にこもって、またパソコン遊びかい・・・。
見下げ果てた男だよ。まったく・・・・・」

賢い大人なら、もっと他の方法を取るだろう。
しかし、オロカな私には、他に方法が思い浮かばないのだ。

自分に対する強い嫌悪感。

俺は、俺が一番嫌いな人間の姿に成り下がった。

ああ・・・、ヤダヤダ・・・・・・・。



2009/09/28 AM 07:02:17 | Comment(4) | TrackBack(0) | [日記]

お粗末な鴻巣事件
家出のことで、鴻巣の同業者にお世話になったので、ご挨拶に行ってきた。

こういう場合は、何か食べるものを持っていくのが世間の常識である。
しかし、見るからにメタボ気味の男にエサを与えることは、恩人のためにならないのではないか、と私は考えた。

だから、健康サンダルと健康スリッパを買って、持っていった。
どちらもLoftで、そこそこの値段で売られていたものだ。
はたして、私の誠意が、彼に伝わるだろうか。

ロフトの袋は私が使いたいので、百円ショップで買った紙袋に詰め替えて行った。
それが、最初の間違いだった。

私が、かさ張る紙袋を手渡したとき、同業者は間違いなく、「食い物」だと思ったようである。
「いやあ、そんな気を使わなくても」と言いながらも、卑しい目が、紙袋の重さを量るように、数回まばたきを繰り返した。

軽いぞ。
だから、果物ではないな。
和菓子か、洋菓子か。

まばたきのあと、目を閉じて、推理をさまよわせるメタボ探偵。
しかし、無用な期待を持たせるのは、恩人に対して失礼である。
だから、「サンダルとスリッパ」と、正直に告げた。

みるみるしぼむ期待と喜び。
同業者は、5秒間ほど、悲しき静止画像になった。

まさかこんなに落胆するなんて。
やっぱり、食い物の方がよかったか。

いつもいつも世間の常識から、かけ離れる俺・・・。
空回りする好意。

私のブログは、友人たちから「ひねくれものの、したり顔ブログ」と呼ばれている。

人生を真っ直ぐ生きてこなかった人間は、プレゼントさえも、ひねくれる。
そして、人さまにご迷惑をかける。

健康サンダルと健康スリッパは、ありえない選択だったか。

相手の落胆する姿を見て、大きく落ち込む、ひねくれもの。

気まずい雰囲気だ。
間の悪いことに、キャビネットの上の高級コンポからは、私の嫌いな大御所ロッカーの曲が流れている。

それを聴いて、イライラした。
不機嫌になった。

その態度は、感謝を表すために訪問した人間のものではなかった。
私の心に芽生えた反省の小さな波が、私に深呼吸を促した。
そして、気持ちを落ち着かせるために、ソファに腰を下ろした。

だが、否応なしに耳に入り込む大御所ロッカーの声。
深呼吸はしたが、自然と眉間に皺がよる。

そんな私の理不尽な様を見て、同業者は、我に返ったようである。
そして、彼は見事なほど慌てたのだ。

「ああ、Mさん、この人、嫌いでしたよね」
ゴメン、と頭をかきながら、音楽を止める気のいい同業者。
そして、紙袋の中身を取り出し、すかさずスリッパを履く心やさしき男。

「ああ、いいなあ! これは、いい! 履き心地、最高じゃないですか! いいんですかぁ、こんなにいいもんもらっちゃって(でもチョット痛い、と小声でつぶやく)」

スリッパを履きながら、事務所内を往復して、同業者は私に愛嬌を振りまいた。

それを見て、心が痛くなる私。

お世話になったのは、俺のほうなのに、相手に気を使わせるなんて。

さらに同業者は愛想笑いを作りながら、言葉を続けた。
「息子が、最近X JAPANに興味を持って聴いてるんだけど、俺よくわかんなくてさ。一応息子と話をあわせるために、何か聴いておこうと思うんだけど、何を聴けばいいかな。Mさん、詳しいから、教えてよ」

紅。

「え? なに?」

くれない。

「いや、ちょっと・・・・・、いきなり『くれない』って言われても、今日は何も・・・、あげるものはないな(ボケているわけではない)」

・・・・・・・・・・。

俺は、おまえと漫才をするつもりはない!

私の目が険しくなったのを見て取った同業者は、目を泳がせながら、あたりを見回した。
キョロキョロ、オドオド。

その姿を見て、また心を痛める私。

穏やかな声を作って、今度は名曲「Endless Rain」の名を告げた。

「遠藤レース・・・なに? 遠藤さんって、誰?」

まるで、台本に書かれたような掛け合い漫才ですが、これは本当にあったお話です。

笑いあった。
そのおかげで、気まずい雰囲気も解消された。

同業者ともども安堵。

そこで、本日の教訓。
「プレゼントは、ありきたりのものが、一番喜ばれる」

お粗末さまでした。


2009/09/26 AM 07:28:38 | Comment(1) | TrackBack(0) | [Macなできごと]

のりピーが日本を滅ぼす日
遅ればせながら、酒井法子さん。

酒井法子さんの話題が世間を席捲していた時、その話題に触れるのは、同じ熱病に浮かされているように思えたので、意識的に避けていた。
道徳的な意見の多い井戸端会議的話題にも、参加しなかった。

ひねくれものなので。

他にもっと、話題にすべきことがあるはずなのに・・・・・、
そう思っていた。

新型インフルエンザが流行り始めた頃、数年ぶりに、ヨメと言い合いをした。
二人の間で、議論が白熱するということは普段はないのだが、このときは結構熱く盛り上がった。

新型インフルエンザは、当時は「豚インフル」と言っていたと思う。
ニュースをつければ、豚インフルを競って取り上げ、各社こぞって、かなり不確かな情報を垂れ流していた。

深夜に、なぜか国民に大人気のマスゾエ厚労相が出現し、深刻な顔をして、「水際で阻止する!」などと吠えていた。
(知識不足を承知で言うが、マスゾエ氏は、年金問題やインフルエンザ問題で、テレビに露出していただけで、「何かを成し遂げた」わけではない。それなのに、人気があるのは、CM効果と同じで、映像の繰り返しが脳にインプットされた影響だろう)

さらに、マスメディアは、インフルエンザ報道で、識者という名の「お騒がせ屋」を座敷に呼び、推理劇を披露した。

そのとき、私はヨメに言ったのである。

たいしてインフルエンザが蔓延していない状態で、これほどの急カーブでヒステリー現象を巻き起こしていいのだろうか。
これでは、本当の蔓延期が来た時に、いつものようにマスメディアも受け手も飽きてしまって、まともな報道をしなくなるのではないか、と。

そんな私の意見に対して、、ヨメは強く否定したのだ。
「いま正確な報道をしないと、みんながインフルエンザを軽く見て、十分な対策をしなくなる。こんな非常事態のときは、報道は大袈裟な方がいいのよ」

街には、異様なほどのマスクマン、マスクレディが溢れ、パンデミックは、すぐそこに来ていると思われた。

しかし、いつのまにかマスヒステリーは収まり、マスクマンたちも街から消え去った。
インフルエンザの報道は、嵐が去るように終息した。

だが、その間も、新型インフルエンザは、世界各地で魔の手を広げていた。
当初の数倍の蔓延率で、地球を包み込もうとしていたのである。

しかし、日本のマスメディアの報道は、なぜか酒井法子さん一辺倒になった。
マスヒステリーの矛先が、「覚せい剤のりピー」に向けられたのだ。

新型インフルエンザの脅威と酒井法子さん。

比べてみれば、どちらが重要なのかは、日本以外のマスメディアなら、考えなくてもわかる。
3歳児にも、わかる理屈だ。
しかし、インフルエンザのマスヒステリーが過ぎ去ってしまった日本では、その話題は「飽きたもの」なのである。

「覚せい剤のりピー」こそ、大衆が求めている話題だ。
そんな無知で凝り固まったマスメディアの自己満足。
そして、その合間に民主党の組閣問題が、申し訳程度に割り込むだけの報道。

新型インフルエンザが世界的に蔓延しようとしている時に、この国のマスヒステリーは、見当違いのほうに舵を取っている。

いったい、新型インフルエンザで、何人の方が亡くなった?
その重みを、マスメディアは、どんな秤で量っているんだろう。

それよりも、「覚せい剤のりピー」の方が、重いというのか。

最初のマスヒステリーの頃と比べると、街には、マスクマンの数が、確実に少なくなったように思える。
最初の流行の時、「インフルエンザにマスクは有効なのかねえ。科学的根拠はあるのか」と私が疑問を投げかけたとき、大量にマスクを買い込んだヨメは「マスクしないと、絶対うつるのよ」と、マスクを手放さなかった。
しかし、本格的な流行時のいま、ヨメはマスクには見向きもしないのだ。

手洗いとうがい。
除菌・消毒用の石鹸と、うがい薬を洗面所において、家族にそれを促している。
子どもたちと私は、外から帰るたびに、必ずそれを励行しているが、ヨメと異星人は、知らんぷりだ。

インフルエンザの報道に、飽きてしまったからだろう。
かつての津波のようなインフルエンザ・マスヒステリーは、受け手の脳に間違った免疫を植え付けたようである。

「あれだけ騒いだのだから、もういいんじゃない?」
インフルエンザのことは、もう十分わかっているし・・・・・。
死者が増えているの? へぇ〜〜〜、何人?

冷静な報道はいいが、無関心な報道は、人から必然的な関心さえも奪う。

そんな状態で、インフルエンザのマスヒステリーが去り、のりピーヒステリーが押し寄せてきた日本。
医学の分野では、決して世界に引けを取っていないはずの日本。
しかし、マスメディアは、確実に世界の最低ランクに成り下がっていた。

覚せい剤も怖いが、インフルエンザは、それよりもはるかに怖い。

そんなまともな感性を持った人間が、マスメディアには、いないのだろうか。

彼らは、きっと思っている。
「バカな大衆は、インフルエンザなんかより酒井法子を求めている」
そんな大いなる勘違い、そして、思い上がり。

マスメディアは、いつの時代も、国民をミスリードする。

西暦2009年。
のりピーが日本を滅ぼした日として、この年は、歴史に大きく刻まれるかもしれない。

(ただ、ひとつ言い訳をさせていただきます。私は新聞を取っていないので、大新聞がインフルエンザに対して、どんな報道をしているか、正確な知識がありません。この意見は、大新聞の報道は前提にしておりませんので、悪しからず)



ところで、私は、酒井法子さんに関して、ほとんど知らない。
彼女は、私の視野の外側にいた存在だから、どんな歌を歌って、どんなドラマに出たのか、どれほど有名なのか、その知識がほとんどない。
ただ、彼女が、「のりピー語を駆使した有名人」だということは知っている。

その有名人が、覚せい剤を使っていたというのだから、それは当然の罰を受けるべきだろう。
しかし、誤解を恐れずに言わせてもらうが、彼女は、売人だったわけではない。
覚せい剤、麻薬の売人は悪魔だが、使っていた人間は、悪魔とは言えないのではないか、と私は思っている。
さらに、誤解を恐れずに言えば、それは微罪だ。

彼らは、ただ単に、法律の枠からはみ出て、自分を傷つけただけなのだから。
もちろん、快楽に身を任せて、他人を傷つけたのなら、その罪は、さらに重くなる。
それは、弁護する余地のない行為である。

売人、傷害行為、薬物使用。
それら全てをひっくるめて、悪であるという断じ方は、ある意味、間違いではない。
しかし、全てを同列に断じられるものでもない。

「復帰など、言語道断。断じて許さない」という常識人のことば。

だが、犯罪を犯したとしても、悔い改めたのなら、道を閉ざすべきではない。
私は、世間から断罪され罪を償った人には、それなりに機会を与えるべきだと思っている。

先日、居酒屋で酒を飲んだとき、「お掃除オバさん、雑巾がけから始めるならいいが、復帰なんてもってのほか。そんなことをしたら、世間が黙っていねえ!」と息巻く友人がいた。
彼は、ニュース番組のコメンテーターと同じ温度で、同じ言葉を叫んでいた。

ヤホー知恵袋」で検索してみた。
槇原敬之、長渕剛、美川憲一、研ナオコ、井上陽水。
彼らは、罪を償って、堂々と復帰したようだ。
そして、いまはそれぞれの分野で大きなポジションを占めている。

ヒステリー状態で、常識を振りかざす人たち。
いま、酒井さんを擁護したら、常識人やネット住民に袋叩きにあう。
だから、常識の鎧を身につけて、ただひたすら同じ道徳観を手にして、一点集中で攻撃をしている。

ひとつの方向にしか向かわない、同意見のブリザード(吹雪)は、怖いですね。
逆方向に向かおうとしても、口があけられず、息もできない。

ただ、このマスヒステリーという名のブリザードは、消えるのも早いから、ほんの少しだけ、息を止めていれば、あたりは静かになる。
そして、そのブリザードは、いつしか新たな方向に向かう。

そんな現象を見て、私は思ったのだ。
それは、虐めの構図と、どこか似ているような気がする。

つまり、マスヒステリーは、イジメ社会の根源と言えるのかも。



2009/09/24 AM 05:37:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | [メディア論]

意味のない家出
家出は、あっけなく終了。

日曜日の朝、9時過ぎ。
鴻巣の同業者の事務所で、浦和の急ぎの仕事をこなし、初稿をメールで送った。

あとは、仙台の同業者、ひと遣いの荒いイトウから頼まれたホームページ用の画像の加工が残っているが、それは、イトウにしては珍しく急ぎの仕事ではない。
鴻巣の同業者は、連休ということもあって、実家の秋田に、家族を引き連れて帰省している。
だから、事務所には、私ひとり。
熱い珈琲を飲みながら、ゆったり気分で加藤ミリヤの「Ring」を聴いていた。

珈琲を飲み終わったら、朝メシにしよう。
HottoMottoに行って、ノリ弁プラス大根サラダでも買ってこようか。
最近の持ち帰り弁当屋の弁当は、美味いからな。

くしゃみを2発。
そのとき、iPhoneが鳴った。

「おい、昨日一日、けっこう大ごとだったぞ」
主語を省いた、娘からの電話だった。

「昨日は、朝からマミーが、近所のババア連中に、真実を説明して回ってた。
マミーも、ばあちゃんの創作落語が、そこまで酷い話になっているとは、知らなかったみたいだぞ。
全部の誤解が解けたわけじゃないが、まあ、波はおさまったといっていいんじゃないか。
どうする? 家出続行か、中止か?
5秒以内に、答えろ」

そうか。
しかし、もうひとつ、解決しなければいけないことがある。
ばあちゃんの長男と次男が、どう思っているかを確かめないと、な。
創作落語のお得意さんは、あの二人だからな。
一番重要な観客の二人が、どんな態度に出るかが、一番の問題だ。

「マミーに頼むか」

いや、喧嘩を売られているのは、こっちだからな。
こっちで、けりをつける。

「短気をおこすなよ」

了解。

というやり取りがあって、まずは、長男の家に電話をかけた。
思い立った時に行動に移さないと、時間の経過とともに、やる気がしぼむ。
だから、すぐに電話をした。

相手は、いた。

いつまで、義母を預かればいいのか。
その一点にだけ絞って、長男に迫ったが、長男は「おフクロの意思次第だね」との、悠長なご返事である。

で、おフクロ様に、そのご意思を聞いてみましたか。

「ボケてるから、よくわからないよ」
「言うことが毎回違うからね。どの言葉を信じればいいのか、俺にはわからない」
「今度体調が良さそうなときに、聞いてみるよ」

遠く離れていたら、体調がいい悪いなんか、わからないのでは?

「わかるんだよ。親子だからね。血が繋がっているんだから」

血が繋がっているんなら、そちらが引き取ればいいのでは?

「ユミコ(ヨメ)だって、血が繋がってるだろ。母さんも、娘の方が、気が楽なんじゃないかな。聞いたことはないけど」

それなら、今すぐ、二人に聞いてみてくださいよ。

「かあさん、体調悪いんだよ。そんなときに、聞けないよ」
「しかし、何で体調悪いのかね。メシ、ちゃんと食わせてもらっているのかね。医者にも連れていってもらってるのかね」

・・・・・・・・・・。

私は、ホトケ。
仏にならなければいけない。
我慢、我慢。

しかし、私は、すぐに阿修羅になる。

じゃあ、おまえが、メシを食わせろ! おまえが、医者に連れて行け!

電話を切った。

すぐに、反省した。
何の解決にもなっていない。
これでは、相手の思う壺だったかもしれない。

そこで、次男への電話は、方針を変えた。

俺、いま家出中。
何で?
あなたの大事なお母様に、変な噂を団地中に言いふらされて、家にいられなくなったからですよ。
どうしましょうか。
大事な仕事があるんだけど、家出中だから、仕事ができないんです。
フリーランスは、信用商売ですからね。一度でも仕事をしくじったら、もうダメですよ。
「あいつは、信用できない」って噂が駆け回るのは、時間の問題だ。
ダメです。アウトです。
こうなったら、あなたの大事なお母様を養うことなんて、もう到底無理です。
ああ、絶望だ!

次男が、慌てている様子が、受話器から伝わってきた。
「ちょっ、ちょっと待って! 家内と相談して、かけなおすから」

一時間以上待たされた。
だが、ノリ弁を食う余裕が、時間的にも精神的にも、なかった。
だから、発泡酒を飲んだ。
つまみは、ない。
ただ、ひたすら飲んだ。

4本目を飲み終えたとき、iPhoneが音を奏でた。

「とりあえず、今日、親を引き取りに行くから」
神妙なトーンの次男の声が聞こえた。
長男よりは、まともに育ったようである。

しかし、彼はすぐに、こんなことを言うのだ。
「いま、すぐに入れる老人ホームを探している。そうすれば、あんたたちには、迷惑かけないだろ」

老人ホーム?
なんで?

5LDKの自慢の家には、自分の母親の居場所は、ないのか。
なんで、すぐに老人ホームって話になるんだ。
要するに、面倒見る気は、まったくないってことなのか。

「面倒は見るさ。こっちが老人ホームの金を払うんだからね。
ボケてるんだから、老人ホームの方がいいだろ」

一緒に暮らしてもいないのに、なぜボケてると言いきれるんだ。

「だって、ボケてるから、あんたに迷惑かけたんだろ。お荷物だから、放り投げたいんだろ」

・・・・・・・・・・。

私は、ホトケ。
我慢、我慢。

あんた、俺にボケてる人間を押しつけたのか! お荷物を押しつけたのか! ボケたから放り出したいのか!

怒り狂って、阿修羅になる未熟な男。
またまた、相手の思う壺。

家に戻って、我が家恒例の「サンデーカレー」を作った。
今回は、ブロッコリーとナス、枝豆を入れた甘口カレーである。

「やっぱ、サンデーは、カレーだぜ。これを食わなきゃ、日曜日じゃないぜ」
娘が、2杯目をおかわりした。
息子は、3杯目。

異星人だけは、カレー雑炊。

目は、「天地人」に釘付けのようだ。

その姿を見て思った。

この家出。
はたして意味があったのか?


2009/09/22 AM 07:28:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

2009年秋・・・家出
連休は、明るい家出。

家出先でブログを書く。

いい年をした男が、家出した理由を知りたくありませんか?
まあ、知りたくなくても、書くつもりだが。

金曜日午後、すかいらーく改めガストで、仕事の打ち合わせをしていた。
昨年開拓した浦和の企画事務所の担当者とである(そのことに関しては、コチラに書いた)。

担当者は、女性。
いままでに4回仕事をいただいたが、彼女は、4回ともジャージ姿で現れた。
飾らない人のようである。

本来ならば、私が先方に出向かなくてはいけないところだが、その日は仕事場を離れることができなかったので、申し訳ないが来ていただいたのだ。
今回もジャージだ。

この女性担当者の説明能力は、かなり高い。
的確にポイントを抑えて説明するから、一般的な打ち合わせ時間の半分以下で終わることが多い。
忙しいときは、「では、よろしく」で終わるが、少し時間に余裕があるときは、「雑談しませんか」と言われて、20分程度雑談をする。

今回も、仕事の説明は10分もかからずに終わって、珈琲を飲みながら、雑談をした。
東京オリンピックの話だ。

「オリンピックの開催国は、同じ国ばっかりですよね。あれって、大国を利用してIOCが、金儲けをしようとしているだけなんじゃないですか」
同感です。

そんな話をしていた時、信じがたいことだが、「あのぉ、よろしいですか」と話に割り込んできたオバさんがいた。
同じ団地に住むヤマシタさんだ。

ヤマシタさんの旦那とは、ジョギング仲間だった。
そして、同じフリーランス。
いつも一緒に走るというわけではないが、年に数回、同じ時間帯に偶然遭遇することがあった。
そんなときは、並んで走って、ジョギングが終わったら、近所の公園で発泡酒を飲みながら、30分程度話をした。

ヤマシタさんは、フリーのライターだが、私の仕事とクロスすることはないので、仕事上の付き合いは、まったくなかった。
ただ、お互いフリーランスということもあって、話は合った。
しかし、今年の2月に、ヤマシタさんが右足の靭帯を傷めてジョギングができなくなってからは、たまに団地の路上で挨拶をする程度になった。

そのヤマシタさんの奥さんが、仕事の打ち合わせ中に、無神経にも割り込んできて、私の隣に有無を言わさずに、座ったのだ。

女性担当者は、そんなヤマシタさんの態度に、当然、呆気に取られていた。
常識的な思考の持ち主なら、普通そんなことはしない。

しかし、ヤマシタさんは、何か決意に燃えたような眼差しをして、私を見据えるのである。
「Mさん、こんなことを言っては、なんですが」

「こんなこと」と思っているのなら、言わなければいい。
それに、先ずは、常識を身につけることを考えた方がいい。

しかし、それは、怪しげな決意に燃えたオバさんには、無駄なことだった。

「おばあちゃんを悲しませないでくださいませんか。
身体が悪いのに、弱った足で買い物に行って、Mさんご家族の食事の支度をしているそうじゃないですか」

???

「そんなおばあちゃんを置き去りにして、ご家族で温泉旅行に行ったり」

???

「奥さんを朝昼働かせて、Mさんは、毎日ブラブラして、パソコンで遊んでいたり、定職に就こうとしないそうですね」

???

「確かにいま不況ですが、真剣に探せば、いくらでも仕事は見つかりますよ。諦めてはいけません。
それなのに、若い女性とノンビリお茶を飲んでいるなんて、私は見かねて、つい声をかけてしまいました。
おばあちゃんを、これ以上悲しませないでください。お願いします!」

思わず、女性担当者と顔を見合わせた。
戸惑いながら、交わす目と目。

こんな時は、笑ったほうがいいのか。
怒った方がいいのか。
無視した方がいいのか。

悩んだ。

しかし、目の前の女性担当者は、賢い人だった。
バッグから自分の名刺を取り出して、ヤマシタさんの前に置いたのだ。
そして、自分の身分を明らかにし、仕事の原稿をヤマシタさんに示して、「Mさんに、仕事をお願いしてたんです」と、理路整然と説明をした。

ついでに、担当者は、私が以前彼女に渡した私の名刺を取り出して、ヤマシタさんの前に置いた。
「この方は、大変信頼できるデザイナーさんです。なにか勘違いをされてますね」

しかし、ヤマシタさんは、「でも、おばあちゃんがね」と、しつこく繰り返す。
そして、女性担当者の言葉の真偽を確かめるように、彼女の顔を無遠慮に見つめた。
彼女の顔に、「うそ」を探そうとしていたようである。

だが、世の中に「思い込み」ほど、強いものはない。
サルをブタだと思えば、それは、ブタなのだ。
脳内麻薬が、サルの存在を抹消するのである。

それは、彼女にとって、簡単なことだった。

私たち家族は、15年近く、いまの団地に住んでいる。
ヤマシタさんは、私の記憶では、6年前に引っ越してきたと思う。
私とヤマシタさんとの付き合いは、4年くらいか。

だから、同じフリーランスという境遇は、お互い理解しているものと思っていた。
奥さんだって、そのことを知っていたはずなのだ。

しかし、声を震わせて、ヤマシタさんが言う。
「会合に来ると、いつもおばあちゃんは、泣いて訴えるんですよ」

知らなかった。
迂闊だった。
ヤマシタさんの奥さんは、我が家の異星人と同じ宗教で結ばれていたらしい。

4年の付き合いよりも、1年足らずの付き合いの老人の言葉を信じる、心やさしき人。
ヤマシタさんの奥さんは、そんな人なのだろう。

それを知って、私は、自分の置かれている状況が、まったく自分でコントロールできないことに気づいて、パニックになってしまったのである。

これは、説明しても無駄だ。
俺を取り巻く環境は、確実に悪化している。
俺は、挽回不可能な悪意の中に身を置いているのではないだろうか。
それなら、俺は、異星人のそばにいるべきではない。

そう思って、わずかな身の回りのものだけを持って、私は、家を出てたのだ。
行き先は、鴻巣の同業者の事務所。
ここのマックの環境は、私が全ての段取りを整えたから、私の仕事場と同じである。
だから、仕事がしやすい。

事務所に、しばらく泊めてくれないかな。

同業者は、私の身の上話を真剣に聞いてくれたうえで、快諾してくれた。
浦和の急ぎの仕事も、いま順調に進んでいる。
夜は、事務所の隅に、応接用の大きめのソファがあるので、毛布を借りて、そこで寝ている。
シャワーも使える。

頼みもしないのに、2万円貸してくれたので、メシは、オリジン弁当でバランスのいいものを食っている。
昨日は、銭湯に行って、羽を伸ばした。
同業者が、居酒屋で奢ってくれた(感謝)。

家族が心配するといけないので、中学2年の娘には、電話で事情を話しておいた。

娘に、「おい、いる場所を教えたんじゃ、家出になってないだろうが!」と笑いながら、突っ込まれた。
そして、言われた。

「でも、アタシは、おまえを応援するからな。気が済むまで戦え。戦うんだ! バカオヤジ!」

娘の、その言葉だけが、いま、救いである。



2009/09/20 AM 07:24:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

恐怖の桶川事件 本編
朝から色々なアクシデントがあったことは、前回書いた。

結局、朝メシも昼メシも食わず、寝不足も解消されないまま、得意先の桶川に向かった。
ヨメが、私のために栄養ドリンクをボックスで買って、冷蔵庫に入れてあるのだが、私には栄養ドリンクを飲む習慣がない。

あんな胡散臭いもので、健康になるわけがないと思っている。
だから、ヨメには悪いが、まったく飲まずにいるのだが、気がつくと本数が減っている。
子どもたちも飲む習慣がないので、きっとヨメか異星人が飲んでいるのだろう。

この二人の「しゃべくり」は大変元気だから、栄養ドリンクは「トーク」に効くのかもしれない。
売れないお笑い芸人のかた、試してみてはいかがでしょうか。

腹ペコのまま、1時半に得意先に着いた。
この桶川の得意先に関しては、何度か書いた(たとえばコチラコチラ)。

おバカなフクシマさんと麻生久美子似の女子事務員のコンビは、絶妙だ。
ただ、二人の掛け合いは、ほとんどなくて、私が入ると途端に場が盛り上がるのが常だから、私こそが、おバカだという説もある。

麻生久美子似が、迎えてくれた。
営業は、いつも通り出払っているようだ。
いきものがかりのヴォーカルを3回振り回した顔の女子事務員もいない。

では、フクシマさんは?

なんと、社長に怒られていたのである。

「フクシマぁ! なんだ、この企画書は!
てめえ、何年営業をやっている!
俺は、こんな企画書の書き方を、てめえに教えたか!
こいつは、トウシロ(素人)のもんじゃねえか!
10分で書き直して来い!」

私が、この会社の社長に持っているイメージは、愛犬のマルチーズと優雅に遊ぶ姿だけである。
会社にいる間は、ほとんど愛犬のお相手をしている姿しか見たことがない。

それも、楽しそうに、幸せそうに・・・・・。

だから、この罵声は、腹に強烈に響いた。
この人、こんなに太くて、大きな声が出せるんだ。
呆気に取られた。

「10分で書き直すなんて、無理ですよ!
そんないい加減な企画書、俺は書けません!
だいたい社長は、いつも無理ばっかり言って、社員の苦労なんて、まったくわかろうとしないんだから!
みんな言ってますよ!
社長は、身勝手で、社員を消耗品だと思っているって!」

「なんだとぉ!」

果たして脳みそが存在するのか、と思われるフクシマさんだが、そのおバカさんが社長に楯突いている。
それも、社長に負けないくらいの大声だ。
このおバカさんにも、こんな一面があったのか。
人間というのは、わからないものである。

チョット見直した。

「ふざけんなよ! 俺ほど社員を可愛がっている社長はいねえぞ!
おまえらの目は節穴か!
蹴り飛ばしてやろうか、この野郎!」

本当に、蹴るつもりなのだろう。
社長は、机を大またで回り込んで、肩を怒らせてフクシマさんに迫ろうとした。
顔は、朱色に染まっている。
赤い仁王という感じだ。

それを見て、麻生久美子似が、私の前から身を翻し、意外なほどの速さで「社長、それだけは!」と止めに入った。

「社長! フクシマさん! もっと冷静に!
冷静になってください!」

麻生久美子似が、社長の前に、両手を広げて立ちはだかる。

なんか、まるで劇を見ているみたいだな。
しかし、麻生久美子似は、必死な顔をしている時も、美人だな。
変なところで感心する、おバカな観客。

「アリマさん、止めるな!
俺は、こいつを蹴り飛ばさないと、気が済まないんだ」

「おお、上等だぁ!
蹴りなよ! 蹴ってみろよ!
こんな会社、辞めてやらあ!」

「ダメです! お二人とも、それは、駄目ですぅ!」

迫真の演技だ。
素晴らしい。
このわざとらしい三文劇に、思わず私は拍手をした。

パチパチパチ・・・・・。

それを聞いて、
「え? ばれた?」
と、三人の大根役者。

振り返った時の社長の顔が、三人の中で、特に間が抜けていた。

そりゃあ、わかりますよ。
だって、部屋の隅の三脚に、ビデオが据え付けられているじゃないですか。
あれは、ちょっと不自然ですよ。

「あら〜〜〜」

詳しく聞いて見ると、10月の慰安旅行で、映像コンクールがあって、それに優勝すると10万円の商品券が貰えるらしい。

つまり、この場面は、フクシマさんが、商品券欲しさに、社長と麻生久美子似を巻き込んだ寸劇だったのである。

「本当は、Mさんが慌てて止めに入って、オロオロする姿も台本には書いてあったんですけどね」
恨めしそうに私を見る、真正おバカのフクシマさん。

私が呆れていると、信じられないことに、社長と麻生久美子似が、突然頭を下げてきたのだ。
それも、深々と腰を折って。

「Mさん、お願い!
止めに入るオッサンの役をやってくれない?
優勝したら、4等分するから!」


・・・・・・・・・・(なんだ、この展開?)。

やりましょう!

ただし、俺、今日何も食べていないので、天丼を奢ってくれたら、という条件付きで。

「よし! アリマさん。天丼の上を1人前、頼んでくれ」
社長の力強い鶴のひと声で、メシにありつくことができた。
ついでに、一番搾りも。

その後、取り直すこと、2回。
全員が満足する出来の「マルチーズ社長vs垂れ目社員の戦い」のビデオが出来上がった。

なんと、これが、恐怖の桶川事件の真相だったという・・・・・。



まったく・・・、眠いよ・・・・・・・・・・。


2009/09/18 AM 07:46:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

桶川事件、序章
寝不足は、こたえる。

急ぎの仕事を終わらせて、寝たのは午前3時過ぎ。
家族の朝食を作るため、5時に起きた。

中途半端な睡眠時間が、一番疲れる。
壊れかけのロボットのような動きで、起き出した。

子どもたちの朝メシは7時ごろでもいいのだが、ヨメが花屋のパートをしている。
花屋さんの朝は早い。
ヨメは、6時過ぎに家を出るから、朝メシは5時半ごろ食う。

そして、ヨメが朝メシを食っていると、必ず異星人が、「おなかすいた〜」と顔を覗かせるのである。
だから、まずは2人分の朝メシを作る。

ヨメは、大き目のおにぎり1個と味噌汁、そしてヨーグルトが定番。
異星人は、「毎日同じじゃ、イヤだ」と言うので、彼女には、焼き魚の切り身やおひたしなどを出す。

我々は硬い米が好みだが、異星人は入れ歯なので、柔らかめのご飯でなければ断固として拒否する。というより、硬いメシは食えない。
だから、毎回異星人の米だけ、土鍋で別炊きにする。
手間はかかるが、それ以来文句を言わなくなったので、精神的な煩わしさは、なくなった。

異星人の今日のメニューは、彼女が好きなコンニャクをおでん出汁で煮込んで、汁と一緒に、3日間冷蔵庫で保存しておいたもの。
こうすると、出汁がよく染みるのである。
それを食べる前に、もう一度煮込んで、異星人が食べやすい大きさに切り、鰹節をふりかける。
これが、美味いらしい。

私は、コンニャク嫌いなので食べたことがないが、大学一年の息子に言わせると「鬼ウマッ!」と言うことだ。
異星人も、嬉々として食っている。

他に、オクラと山芋を湯がいて細かく切り、麺つゆにくぐらせてから黒ゴマをふりかけて和える。そして、それを揚げだし豆腐にトッピングしたもの。
「なんだい、このオクラってやつ? 気持ち悪くて食べる気にならないよ」と、肉以外は90パーセントの確率で文句を言う、食わず嫌いの異星人だが、最近では、これも好物のひとつになった。

味噌汁の具は、細かく切った大根と油揚げ。食べる前に、小葱のみじん切りを乗せる。

食べながら「アタシの娘も、料理の腕が上がったねえ」とつぶやく異星人。

俺って、報われてないなあ・・・・・。

子どもたちの朝は、洋食が多い。
パンの時もあるし、サラダスパゲッティやドリア、前の晩のカレーの残り、ハッシュドビーフの残りということもある。
ヨーグルトは、必ずつける。

家族を送り出した8時過ぎ。「さあ、本格的に寝るか」と和室の戸を閉めようとしたとき、異星人の声が聞こえた。

「なんか、鳴ってるぞーーーィ!」

確かに、何か音が聞こえる。
音の方向を辿っていくと、玄関だった。
ヨメが、玄関に携帯電話を置き忘れたのだ。

誰かからメールが来たらしい。
朝早いメールだから、大事な用かもしれない。
まあ、しかし、忘れる方が悪いんだから、放っておこうか。
それに、半日くらい携帯電話がなくたって、困りはしないだろう。

俺なんか、2年以上携帯電話がなくても、生きていけたんだから(フリーランスなのに)。

しかし、これは奇人変人の私だからこそ通用する理屈である(らしい)。

今どきの常識人は、半日携帯電話が使えないと、気が狂うらしいのだ。
ストレスが溜まって半狂乱になり、酸欠状態のうえ、心肺停止に陥ることがあるらしい(本当かい!)。

仕方がない。
ヨメの働く花屋まで、届けに行くしかないか。

救急車でヨメが運ばれていないか、サイレンの音に注意しつつ、自転車を走らせた。
「緊急メール、緊急メール」とつぶやきながら、ペダルを漕いだ。

薄い生地の長袖のトレーナーとジャージのズボン。
季節は、秋。
この格好では、朝は、肌寒く感じる。

しかし、少しの辛抱である。
花屋までは、自転車で10分ほど。
たいした距離ではない。

懸命に漕いで、花屋到着。
ヨメに「わすれもの」と言って、携帯電話を渡した。

「メールが来てたよ。朝早くだから、緊急かもしれないな」
しかし、携帯の画面を覗いたヨメが、軽く言う。
「マクドナルドからのキャンペーンメールだわ」

脱力。

午前九時前。寒さに震えながら、家に帰った。
「さあ、本格的に寝るとするか」

しかし、異星人が騒ぐ。
「朝ごはん食べたら、歯茎が痛くなって我慢できないんだよ。入れ歯がおかしくなったみたいだよ」

歯医者に連れていった。
歯医者は混んでいたが、老人の緊急だということで、すぐに診てくれた。
待ち時間に寝ようと思っていたのだが、目論見が見事に外れた。

入れ歯の不調は簡単に直って、午前11時、帰宅。
「さあ、寝ようか」

しかし、「おなか減った」と異星人。
まだ昼メシには早いと思うのだが、早めにメシを食わせたほうが、こちらも早く寝られる。
その方が都合がいい。
そう思って、昼メシを作った。

大きめの昆布だけで出汁をとった湯豆腐。
具は豆腐と白菜、椎茸。付け汁は、ポン酢だ。
それに揚げナスの煮びたしとモズク酢を付けた。
ご飯は、もちろん柔らかめで。

「やっぱり、娘の作ったご飯は、うまいわぁ〜」

もう、どうでもいいや!

「さあ、寝るぞ!」

しかし、桶川のフクシマさんから、緊急のお呼びが・・・。

フクシマのやつ。
ひとの眠りを妨げやがって!

だが、これは恐ろしい「桶川事件」の序章を告げる鐘に過ぎなかった。

次回に続く。


2009/09/16 AM 07:33:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

チョット真面目な話
その国の政権が変わるというのは、歴史的なできごとである。

ただ、今回の政権交代劇は、ドラマチックと言うほどではない。
保守から革新に変わったら、それは劇的な変化だが、「保守」という名の同じ色のバトンが、違うチームに渡っただけだ。

だから、違和感がある。

このままでいくと、ハトヤマ氏が、総理大臣になるのだろう。
そして、幹事長は、オザワ氏に決まりだという。

自民党出身の世襲議員が、古巣の自民党を与党から引きずり下ろす。
もちろん、それは政策の違いが根本にあってのことだとは思うが、「政権奪取」だけが優先された寸劇に隠されて、その違いが、鮮明ではない。

無知を承知で言わせてもらうが、ハトヤマ氏が政治家として「何をなしたか」、私には記憶がない。
有名な政治家の血を受け継いだひと、という知識しかない。
そして、オザワ氏には、党を次々に壊して回ったというイメージしかない。

それぞれ政治家としてのヴィジョンを持っているとは思うが、確固たるものが私には見えない。
オザワ氏にいたっては、党を壊すこと、選挙に勝つことが趣味としか思えない。

二人とも出身は、元田中派。
オザワ氏は、自民党で幹事長までやった人である。
自民党的なものが骨の髄まで染み込んだ派閥の出なのだ。
他に、ワタナベコウゾウ氏、オカダ氏、フジイ氏なども、同派閥出身である。

民主党は、田中派の分身ではないのか、という疑念が拭えない。

田中派の分身が、自民党から政権を奪い、新たな田中派(オザワ派)を作った。
ひねくれた見方をすると、そうはならないか。

思えば、自民党は、色々なものから守られてきたお坊ちゃん政党である。

アメリカから、守られてきた。
大マスコミ(特に讀賣、産経、NHK)から、守られてきた。
そして、本来は政権がコントロールすべき相手の官僚からも、蔑視を感じるような慇懃さで守られてきた。

そんなヌクヌクとした環境の中で、保守のシンパを増やしてきた。
50年という時が、自民党ブランドを確立してきた。

そのピークが、コイズミ氏の政権時代だった。
「郵政民営化」というスローガンは、大国の政策としては極めて矮小なものだったにもかかわらず、そのおかげで自民党は膨張した。
そして、その党の本質は、矮小化した。

矮小化した自民党は、矮小化した世襲タレント(アベ、フクダ、アソウ)の登場で、国民(無条件に自民党を受け入れてきた人々)に、「郵政選挙」の熱気を冷ます時を与えた。

世襲タレントは、いま流行りの、お●○タレントと同列なのではないか。
派閥単位で人気のある世襲タレントだけが、一国をリードする指導者になれるという現実。
その結果、たった一年で放り出された、軽すぎる総理大臣という椅子。

もう、うんざりだよ!

そんな国民の絶望感に、ひっそりと、しかし巧妙に忍び寄った、元田中派。

結局は、世襲タレント軍団から、元田中派に政権が移っただけではないのか。
私の居心地の悪さは、そこから来ているのだと思う。

ただ、何もしていないうちから、「期待できない」という意見に与(くみ)するのは、ひねくれものとしては、同意しがたい。

「新人の集まりで、政治ができるのか」
「自民党の方がよかったよ」

コイズミの子どもたちだって、議員としては、ヒヨコだった。
それでも、数を恃みにして、彼らは政治家ごっこを始めた。
(何をしたかは、覚えていないが)

歪んだ郵政選挙の後、熱気に浮かされて「ごっこ」を黙認した、ブームに乗っただけのコイズミ信者。
その人たちが、新しい政権に対してアンチになる心情は理解できるが、次の予算を上げて、それを実行するまで待つのが、「賢い大人」というものである。

コイズミの子どもたちと、それを受け入れた人たちは、ぶっ壊された自民党の責も負うべきだ。
その清算が終わらないうちに先を占うのは、まったく当たらないプロ野球ペナントレースの予想順位と同じで、ただ単に責任放棄が前提にある「外野スズメ」の雑音に過ぎない。

やったことがないのなら、やらせてみる。
たとえ民主党が元田中派が権力を握った政党だとしても、彼らは田中派から身も心も離脱したのだと、とりあえず思いたい。
新しい国を作るためのヴィジョンを、抱えきれないほど手にしていると思いたい。

ただ、民主党、自民党を含めて、様々な献金疑惑があるが、それは大きな掃除機で吸い取ってもらいたいと思う。
権力を握ったら「チャラ」では、数ヵ月後に同じような「政権交代劇」が起きても、不思議ではない。
自民党に恩を売ることしか考えていなかった検察がどう出るか、楽しみだ。

私は、2大政党制は、健全な野党と選良を育てると思っている。
コイズミの子どもたちが、下野して健全な野党を作り上げたら、この4年間は、無駄ではなかったことになる。

ただ、品性下劣なメディアが唱えた「コイズミチルドレン」が、今回「オザワガールズ」に衣裳替えしたが、この下劣さにメディアが気づかない限り、これからも彼らが政権にまともな評価を与えるのは無理だろう。
下劣なメディアは、当選議員の過去を暴き立てて、得意の絶頂に思えるが、そんな下劣さが、軽い議員の座を作ることに、彼らは永遠に気づかない。

コイズミチルドレンの親方は、品のない含み笑いを残して、とりあえず舞台から消えた。
横須賀で、いかにも軽くて薄い殻を破ったヒナがいたが、私はそのヒナを長い目で見守りたいと思う。

新人は、新人。
ヒトは、ヒト。
そして、政治家も、ヒト。

ヒトは、産まれてから、立ち上がって歩くまで、時間がかかるものだ。
生後半年たって歩かないからといって、赤ん坊を責めるやつはいない。

いや・・・・・、いるかもしれないな。
悪意ある親戚どもは、「あの嫁が悪いのよ!」「あんな育て方じゃ、先が知れてるよ!」「俺が、歩き方を教えてやる!」と、自分に責任がないのをいいことに、騒ぎ立てるかもしれない。

我が家に、昨年の11月から生息する異星人は、「鳩ポッポ! 早く●●! ●●だら、焼いて食ってやる」「オカダは、イオンでぼろもうけ! イオングループ、○○れちまえ!」などと、選挙後ヘビーローテーションで歌っている(彼女は、ある政党の盲信的な支持者なので)。

●●○○のところは、露骨な表現なので、伏せさせていただきます。
なお、オ▲ワ氏に関しても歌っているのだが、あまりにも悪意に満ちているので、今回は掲載を見送らせていただきます。
(ただ、それは西■建設の献金問題を歌っているので、評価できる部分もあるが)

私の身近にいる悪意にまみれた生物。

皆さまは、くれぐれもこのようには、なりませぬように。



2009/09/14 AM 05:12:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

増殖するエイリアン
少し前のことになるが、9月6日に、恩義ある人の葬儀に参列した。

場所は、茨城県の水戸
ヨメともどもお世話になった方だったので、夫婦二人で行ってきた。

古臭い表現だが、私たちの結婚は、駆け落ち同然だった。
いま同居中の異星人が、私たちの結婚に理解を示してくれなかったので、お互い勝手に家を出たのだ(若気の至り)。

当時、私は弁護士事務所で働いていた。
ヨメは、大手の信販会社の社員だった。

その信販会社でヨメの上司だったK氏と、私が勤めていた弁護士事務所のボスが、偶然にも大学の同期だった。
ヨメは、K氏を大変尊敬していて、よく相談事を持ちかけていた。

K氏とは、駆け落ち前に、数度会ったことがある。
彼は、鋭い目をした、いかにも「切れ者」という感じの人だが、笑うと途端に目が柔和になって、相手の心を確実に落ち着かせる雰囲気を持っていた。

ヨメの母親は、ヨメが家を出た後、何度もヨメの勤める会社に電話をかけてきた。
(親だから心配するのはわかるが、一日に5度以上かけてきたこともあったらしい。それは、少し常軌を逸していると思うのだが)

K氏は、我々が勝手に家を出たというのを聞いたとき、ちょっとした茶目っ気を見せながら、こう言った。

「冷却期間が必要ですね。逃避行しちゃいましょうよ」

ここからが信じられないことなのだが、彼は我々の逃避行のすべての段取りを整えてくれたのである。
そして、ヨメの母親に対しての防波堤になってくれたのだ。

信販会社の支社が、神戸にあった。
そこにひとり欠員ができたのである。
まず、K氏は、ヨメをそこの支店に急遽、配置転換したのだ。
人事部でもない彼がそこまでの権限を持っていたのが不思議だったが、一週間も経たないうちに、ヨメに異動の辞令が出た。

そして、次が私だ。
今までの弁護士事務所に籍を置きながら、神戸の他の弁護士事務所に派遣という形で移るという、チカラ技を私のボスに対して発揮したのである。

我々がヨメの母親の前から完全に姿を消した時、彼女は会社までやってきて、K氏をなじったというが、K氏は彼女に言わせるだけ言わせて、お引取り願ったという。
それを聞いて、我々は自分たちの行動を後悔したが、K氏は「もう走り始めたんだから」と言って、私たちの尻を叩いた。

神戸で住んだのは、市内で写真屋を営むSさんの家の「離れ」だった。
Sさんは、K氏の奥さんの兄である。

離れは、1DKの平屋の家。
台所もあれば、広々とした風呂もある、快適な家だった。
我々が用意したのは、布団だけ。
調理器具や食器類その他は、Sさんが貸してくれた。

Sさんは、週に一度は、奥さんと二人で離れにやってきて、すき焼きをご馳走してくれた。
そして、彼はこんなことを我々に言った。

「Mくん、人間は、考え方が違うのが当たり前。説得なんか無意味ですよ。理解し合えない人もいるんです。だからといって、それは誰が悪いわけでもない。誰も悪くありませんよ。ただ、お互いの存在を認めることは大事です。認めることで、ひとは人にやさしくなれます」

そんなことを言ってくれたSさん夫婦は、阪神大震災のあと、水戸に住む長男夫婦の家に身を寄せた。
そして、81歳の大往生。

今回の葬儀で、かつての法律事務所のボスと再会した。
5年ぶりだった。

今年77歳のボスは、背筋が伸びて健康そうに見えたが、隠しようのない老いが、その顔を覆っていて、私を愕然とさせた。
時は、残酷である。

「Mくん、Sさんは、掛け替えのない男だったね」
はい。

そして、5年前に亡くなったK氏のことを話したとき、ボスの目から、涙があふれ出てきた。

二人して、抱き合って泣いた。
ヨメも泣き崩れた。

この一週間、どこか心に厳かなものを抱えながら、仕事をしていたような気がする。
それは、去って逝ったひとへの感謝の気持ちかもしれない。

合掌。

ここで話が終われば、この話は、綺麗なもので終わっただろう。

しかし、終わらないのですよ。
綺麗な話のまま、終わらしてくれないのだ。

葬儀のため、ほぼ一日家を空けた。
その日は、子どもたちに朝メシを食わせてから、出かけた。
昼飯は、冷凍庫にあるものを適当に温めて食うか、コンビニで好きなものを買って食え、と二人にお金を渡しておいた。
もちろん、異星人の昼食も用意しておいた。

「もし、バアちゃんの身に何かあったら、すぐに知らせろ。スガワラさんに頼んであるから、我々が帰るまで面倒を見てくれるはずだ」
そう言い残して、家を出た。

そして、感謝の気持ちを胸いっぱいに膨らませた一日が終わった。

しかし、一週間近い時がたったいま、悪意の噂が、我々を取り巻いていた。
「家族だけで温泉旅行よ。私ひとりだけ置き去り。自分たちだけ、美味しいものを食べて、いい思いして、平気なんだからね。まったく自分勝手なもんだよ、あの二人は!」

え? なんで、そうなるの?

普通、喪服を着て、旅行はしない。
我々に、そんな趣味はない。

私の姿を見つけて、「おばあちゃんも連れて行ってあげればよかったのに」
親切顔で言う、近所のご隠居さん(異星人の信者仲間)。

いや、私たちは、お葬式に行ってたんですよ。
「あらあら、オホホホホ」

最初から、信じる気は、ないようである。

「Mさん、ダメだよ。おばあちゃん一人残して、日曜日に家族で温泉行ったんだって? しかも、おみやげも買ってこなかったって? そりゃ、可哀想だよ。ダメだわ」
声が、やたらでかい70歳過ぎのおじいさん。

「えらいわよねえ。あの歳で家族みんなの三食のご飯作ってるなんて(大嘘です)。それなのに、ひとり置き去りじゃ、泣きもするわよ」
団地の上の階の信者仲間(推定45歳)。

私のまわりに、異星人が増殖している。


2009/09/12 AM 07:24:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

東方神起、椎名林檎
東方神起を初めて聞いたとき、鳥肌が立った。

おそらくJ-WAVEでだ。
グループ名を聞いたとき、面白い名前だと思った。

これはスゴイぞ、と思った。

しかし、そのとき、彼らが「韓国のス●○プ」と紹介されたことに、違和感を持った。
こんなにうまいのに・・・・・。

受け入れられるかな、とも思った。
カラオケ感覚の歌だけが流行る風潮の中で、密度の濃いハーモニーは、時代に合わないのではないか、と。
だから、最初、認知度は低かったと思う。

その後、倖田來未とコラボした曲があった。
それを、当時小学校6年の娘に聴かせたことがある。

声がセクシーだろ?
(小学6年の女の子に向かって言うことばか?)
「ああ、セクシーだな」

クールだろ?
「クールだ! ポップだ!」

娘は、それ以来、東方神起を気に入って、私より詳しくなった。
彼らのことを熱く語るときの娘の目は、異様に熱を持っている。

東方神起の解散報道があったときには、少し落ち込んだ。

「アタシはまだ東方神起のライブに行ってないんだぞ! いま解散されては困る。とにかくコンサートに行きたい。韓国でもいいぞ! おまえ、何とかしろ!」

よし、わかった!
俺が解散させない。
俺の力で、解散を止めてみせる。

「いや、そういうことじゃなくて。とにかくライブに行きたい。何とかしろ!」

う〜〜ん、それは、ちょっと・・・・・。

完全に、軽蔑の目で見られた。

娘の携帯電話の中に入っている曲は、偏っている。

東方神起、椎名林檎東京事変

娘が小学2年の時、椎名林檎の「罪と罰」を聴かせた。

「なんだこれ! スゴイじゃないか!」
一発で、椎名林檎が好きになったようだ。

普通、小学校2年の子が聴く音楽ではないのだが、娘は「他にも聞かせろ」と言って、「無罪モラトリアム」を貸すと、自分専用のCDラジカセで、くり返し聴いていた。

「『丸の内サディスティック』いいな。『モルヒネ』は、すごいが、よくわからん」

アルバム「勝訴ストリップ」の中の「病床パブリック」を聴いて、「わからんが、いいぞ!」と興奮する娘。

アルバム「加爾基 精液 栗ノ花」の中の「葬列」を聴いて、「椎名林檎は神だわ」とつぶやく娘。

こんな小学生って、怖くありませんか?

今では、私より椎名林檎に詳しい娘は、私に対して、「もっと椎名林檎を勉強しろよ」と偉そうに説教する。

「『東京事変』は、世界一の音楽ユニットだぞ! もっと、真面目に聴け!」

それは、3年前まで、私が娘に言っていたことばである。

完全に立場が逆転している。
東方神起や椎名林檎に関する知識は、もう娘には、敵わない。

完敗だ!

しかし、洋楽だったらどうだ。
ジミ・ヘンドリックスのギターこそ、神の領域だぞ。

「ああ、『ブードゥー・チャイル』は、カッコイイな! あれは、確かに神だ。ジミヘンのギターが脳髄に響いてくるゼ」

そうか。
彼女は、私の言ったことを、ちょっとしたことでも逃さず、すべて覚えているのだな。

そう思ったら、迂闊なことは、言えない気がした。
親が何気なく言っている言葉や行動を、子どもは確実に記憶しているということだ。

もしかして、ジャニス・イアンのことも?
「ああ、椎名林檎の『17』は、ジャニス・イアンの歌に影響されて作ったんだろ?」

・・・・・・・・・。

ニルバーナは?
「独特な音楽観を持った3人組のユニットだろ? メンバーのカート・コバーンは、自殺したんだっけ? たしか椎名林檎も歌ってたよな」

恐れ入りました。

子どもの吸収力は、驚異的だ。
親は、よく考えてから子どもに、ものを言わなければいけませんね。

すみません、師匠。「三文ゴシップ」の中で、一番のお勧めは何でしょうか?

「『労働者』かな? あれは、林檎ワールド全開だからな」

ありがとうございました!


2009/09/10 AM 05:01:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | [子育て]

偏見オヤジ
ジョギングをしていた。

9キロを走って、「あと1キロ、いってみるか」と、ギアチェンジをしようとしたとき、前方100メートルに、自転車の集団が見えた。
遊歩道の幅は、2メートル程度。
よくは見えないのだが、私の目には、3台の自転車が一列になって道をふさぐように、ゆっくり移動しているように見えた。

何の根拠もないが、30代の奥さんが二人、20代が一人、と見た。

走りながら思った。
彼女らは、ひとの迷惑というものを考えたことがあるのだろうか、と。
憤りが胸の奥から、こみ上げてきた。

2メートルの幅に、3台のママチャリ。
3人は、ペダルを漕ぎながら、楽しそうに話しているように見えた。
しかし、その窮屈さは、私の感情を確実に苛立たせた。

その無神経さに、腹が立つ。
後ろから人が来ることなど、まったく考えない、その想像力の欠如に、さらに腹が立つ。

私たちだけが楽しければいいわ。
他の人のことなんか、知ったこっちゃない!
ああ、おしゃべりは、楽しいわ!

まったく、人間性を疑う。

まともな大人なら、まわりの人間のことを考えて、周囲に気を配るものである。
それが、最低限のマナーではないのか。

なんだ、こいつら!
もし、こいつらに子どもがいるとしたら、こいつらは、子どもに一体どんな教育をしているのだろうか。

自分さえよければいいのよ。
人のことなんか構っていたら、人生ちっとも楽しくなんかないんだから。

そんなことを身をもって教えているのだろうか?

先日、朝の満員電車に乗っていたら、大きなベビーカーを畳みもせずに乗ってきた若夫婦がいた(最近は、どんな時でも畳まないのが常識らしい)。
車内は、身動きできないほど混んでいたが、無理矢理「平気な顔をして」乗ってきたのである。
思わず顔を覗き込んだ。

30歳前後の夫婦だった。
外見は、普通。
別にチャラいわけではない。

クスリもやっていないように思える(偏見?)。

そのとき、その奥さんのほうが、車内を見回して、トゲのある声で突然言い出したのだ。

「ねえ、なんで今日はこんなに混んでいるの? なにこれ!? いったい何なの?」
不機嫌丸出しの言い方である。
それに対して、旦那は、舌打ちを返すだけだ。

何で混んでいるかって?
教えてあげよう。
それは、おまえたちが、でっかいベビーカーを持って無理矢理乗ってきたからだよ!

ばーか!

先日、近所のすかいらーくで仕事の打ち合わせをしていたら、50年輩の奥さん方8人が入ってきて、隣のテーブルに席をとった。
そして、その集団は、オーダーをするのを完全に忘れて、すぐに会話に没頭し始めたのである。

その会話のほとんどが、人の悪口だ。
そして、ボルテージが上がっているから、声がやたらでかい。
大変に、うるさい。

夫の悪口。隣人の悪口。芸能人の悪口。政治家の悪口。
「ねえ、ハトヤマの顔って、キモくない?」

おまえの顔の方が、キモいよ。

悪口に没頭する、醜い集団。
オーダーは、一体どうしたんだ。
ここは、悪口を言わせるために、あんたたちに場所を貸しているわけではないのだぞ。
まずは、オーダーだろう? オーダーをしろ!

ウエイトレスが、たまりかねてオーダーを取りに来たが、奥さん方は、鬼のような形相で、「まだ決まってないわよ!」と逆ギレ。
そして、言うのだ。
「なによ! せっかくひとが楽しんでいるのに、台無しだわ!」

クソババア! 死ね!

ウエイトレスに代わって、そう罵倒してやりたかったが、その中に、同じ団地の棟の住人がいることに気づいて、かろうじてその誘惑を抑えた。

前を行く3人のチャリンコ集団も、あいつらと同類に違いない。

まったく、非常識なやつらだ!

そう思いながら走っていた。
そして、彼女らの姿が、どんどん近くなってくる。

無礼者! 道をあけろ!
そう言ってやろうと、息を大きく吸った。

しかし、そのとき会話が聞こえた。

「あともう少しだからね。もう少しで、シマダさんちよ。パンクして大変でしょうけど、我慢してね」

?????

よく見ると、3人は並んで走っていたわけではなく、一台が1メートルほど先行していた。
その先行した一台の自転車の後輪を見ると、パンクしていた。
ガタガタガタと不規則にタイヤが回る音がしている。

「あと200メートルよ、頑張ってね」

?????

後ろについた二人が、懸命に前の奥さんを励ましているところだった。
パンク奥さんは、ハンドルをふらつかせながらも「ありがとう」と言葉を返していた。

・・・・・・・・・・。

戸惑いながら、3つの自転車の後ろをついて走った。
そのとき、前を行く3人は、私の存在にすぐ気づいた。

「ああ、ごめんなさい。シマダさん。後ろから人が来たわ。ちょっと止まりましょ」

3人が自転車を止めて、道をあけてくれた。
それだけでなく、3人のうち、2人が帽子をかぶっていたが、2人とも帽子を取って、頭を下げてきたのだ。

それを見て、「ああ、どうも」としか言えなかった俺。

早とちりなオレ。
偏見にまみれたオレ。
まったく、どうしようもない男だ。


2009/09/08 AM 05:06:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

フリーランスの現状
先月末の話である。

病院に、自分の定期健診の結果を聞きに行ってきた。
今年の4月に19日間入院した時、退院時に医者から「半年間は、毎月1回検診に来るように」と言われていたからだ。

自分で感じる体調は、良くもないが、悪くもない。
検査結果も、そんな感じだった。
「油断したら、元通りですからね」
太宰治似の医師から、そう釘を刺された。

病院を出て、iPhoneで外注先に電話をしようとした。
しかし、「この携帯は使えません」と言われた。

またかよ!
また、ヨメが料金を支払い忘れたらしい。

このパターンは、よくある。
ガスを止められたことがある。水道、電気、電話も止められたことが、過去に数回ある。

「ガハハハハ、忘れちまった!」
自分のミスは、必ず笑って誤魔化すヨメ。
しかし、彼女は、人のミスに関しては、容赦がない。

毎回のように、速射砲のような罵倒の言葉が、その口から風速100メートルで、発射されるのである。

「俺も、忘れちまった。ワッハッハッハッハ」
一度でいい。
そんな人生を送ってみたい。

いつも書いているように我が家はド貧乏だが、今月は、携帯料金が支払えないほど困窮してはいないはずだ。

我が家の場合、仕事柄、3回に分けて、得意先から入金がある。
私は、毎月それを帳簿を見ながら、振り分けている。

優先順位の一番は、外注費である。
次が、家賃。
その次が、光熱費や通信費、借金返済だ。
そして、教育費(子どもの小遣いを含む)。
仕事の経費は、その月の仕事内容によって、取るときもあれば取らないときもある。
(しかし、仕事の経費の優先順位が最後のほうだなんて、フリーランスとして、これでいいんだろうか)

これらは、用途に応じて、違う通帳に毎月移し代えている。
その方が、管理がしやすいからである。

そして、残った中から、私が3万5千円を貰う。
と言っても、これは私の小遣いではない。
そのうちの1万円は、スイカにチャージしておくものだ。
これは、得意先に行くときの交通費としてだ。

ただ、ひと月1万円で足りたことは、一度もない。
足りなくなったときは、ママチャリの出番だ。
どんなに遠くても、移動はママチャリでする。

ある会社の大田区大森の支社に呼ばれたときも、ママチャリで行った。
片道50キロ。
往復100キロを8時間かけて漕ぐのである。
当たり前のことだが、ママチャリは、長時間の移動には向いていない。
構造上そんなふうに、できていない。

ケツが痛くなる。膝も痛くなる。心が折れる。
時にパンクする。
しかし、それしか手段がないと思えば、漕ぐしかない。
池袋にママチャリの旅。表参道にもママチャリの旅。

ケツの皮が、すりムケる。

残りは2万5千円。
これでひと月に費やす食材や、調味料、洗剤、シャンプーなどの備品を揃える。
調味料だけはケチりたくないので、いいものを買う。

だから、食費は、ひと月2万円を超えることはない。
アホな友人からは、「それは、嘘だろ! 5人家族で、そんな安くて済むわけがない」と見当違いの非難を浴びる。
しかし、バカどもの雑音は、放っておくことにしている。

収支が大きく余ったときは、仕事用の通帳に移し代える。
5年前までは、新品の軽自動車が現金で買えるくらいの蓄えがあったが、私の母が年に3回手術した3年前に、それはすべて吐き出された。

2年前は、大口が1件倒産し、他に2社が危ない状態になって、入金が滞った。
それ以来、マイナス成長が続いている。
今年は、私の入院や、台所の火事、異星人の入院騒動もあった。

それは、悲惨な状態だ。

外注費と、仕事の経費以外の通帳は、そのままヨメに渡す。
そのほかに、少しあまる金がある。
それは、現金でヨメに渡す。

その金額は、ブランド品が買えるほど誇らしいものではないが、毎月しまむらユニクロで、洋服や靴を何点か買うことはできる。
私だったら、餃子の王将で、百食近い量の餃子を食うだろう(ギャル曽根か!)。

だから、今月の携帯電話料金が払えないということはない。

携帯電話の料金くらい払ってくれよ!

病院を出た途端、血圧が上がるオレ。

しかし、怒っていても解決にならないので、とりあえず外注先に電話。
バッグの中には、こんなときのために、テレフォンカードが忍ばせてある。
絵柄は、なぜか「モーニング娘。」(しかも、かなり前のメンバー)。

しかし、だからと言って、私はモーニング娘。のファンではありませんよ!
いやいや、本当ですって! ホント!
(何を必死に弁明している?)

今回はじめて仕事を頼んだ外注先。
仕事は、新規開店の美容院のキャラクターデザインとロゴのデザインだ。
私の不得意分野なので、得意な人に丸投げした。

朝の9時までに、初稿をメールしてくれる予定が、まだ来ていなかった。
その確認のための電話だ。

相手が出た。

初稿が届いていませんね。

「ああ、忘れちまってた! アハハハハ」

このヤロー! おまえも、ヨメと同じ人種かい!


2009/09/06 AM 07:46:51 | Comment(3) | TrackBack(0) | [フリーランスの心得]

親失格、ついでに人間も
世の中には、困った親がいるものである。

私のことだ。

新学期が始まった。
当然のことながら、中学2年の娘は、学校に行った。
吹奏楽部の部活は、新学期以前から始まっていた。

娘の担当は打楽器。
新学期前日。いつものメンバーと練習をした。
合間に、おしゃべりをした。

おしゃべりをしていた時、娘は少し考えごとをしていたらしい。
だから、言葉を返すのが、少し遅れた。
「なんだよ、K。人の話聞けよ」と、友だちから頭を軽く叩かれた。
「ゴメンゴメン」

次の話題に移ったとき、娘が冗談を言いながら、友だちの頭を軽く叩いた。
それからは、話の途中で、たまに3人でお互いの頭を軽く叩きあった。
叩く真似だけのときもあった。

その光景を、遠くから顧問の先生が見ていた。
しかし、注意はされなかった。

次の日、友だち二人が、家の用事で部活を休んだ。
練習前、顧問がみんなの前で、前日の娘たちのじゃれあいを注意した。
名前は言わない。
ただ、それが娘たちのことを指していると、誰もがわかる言い方だったという。

「中学生にもなって、3歳児みたいなことをして、私は見ていて恥ずかしくなりました。悲しくなりました。今日は、教える気になりません。練習パートを自習しなさい」

そんなことを言って、顧問は部室を出て行ってしまったという。

残された部員たちの間に、気まずい空気が流れた。
特に、娘のまわりに。

当事者のなかで、娘だけが、練習に出てきていた。
せめてあと一人、仲間がいれば、その気まずさも緩和されたことだろう。

ひとりは、つらいよ。

ぎこちない空気のまま、自習が続く。
それぞれが気ままに音を鳴らしている。
しかし、どんなときでも、お調子者はいるものである。

1年生のお調子者が、重い空気を吹き払おうと、他の1年生の頭を譜面で叩いたらしい。
それで、空気が一変した。
場が、明るくなった。

1年生同士が、譜面を使って、頭を軽く叩きあう。
つまり、じゃれあっている。
それを見て、全員が笑っている。

いい雰囲気になってきた。
だが、その笑い声を聞きつけて、顧問が戻ってきたのである。
1年生のひとりが、ノートで人の頭を叩こうとしているところだった。

「何を馬鹿なことしてるの!」と、顧問が怒る。

そして、娘が、名指しで言われたのだ。
「あなたが馬鹿なことをするから、みんなに馬鹿がうつったのよ!」

モンスターペアレントは、それを娘から聞いて、電話で顧問に確認した。
もちろん、低姿勢で。
一応、騒動の元は、娘なのだから。

「すべては、おたくの娘さんが悪いのです」
硬い声で言われた。

確かに娘の行動は、子どもじみていて、無神経だったかもしれない。
だが、友だち同士の行為としては、ごく自然なものだったと、私は思っている。
それは練習の合間の、友だち同士のじゃれあいなのだ。
目くじらを立てるほどのことではない。

それに、注意するなら、翌日ではなく、その場でするのが教育というものではないですか。
その場で注意していれば、翌日の騒ぎはなかったのでは?

名指しで非難するほどのことではない、と私は思いますよ。

それに対して、顧問は、会話を断ち切るように、ひと言。
「私の教育方針にケチをつけないで!」

電話を切られてしまった。

仕方ないので、担任に事の仔細を説明して、顧問と話し合いの場を作ってくれるように頼んだ。

それに対して、担任。
「無理だと思います。教師も人それぞれですから」
一方的に電話を切られてしまった。

そんな対応をされて、私は頭に来て、子どもを休ませてしまったのだ。

明日は、全員休み!

私のその一言で、ヨメは花屋のパートを休み、大学一年の息子はアルバイトを休んだ。
そして、家族全員で、お台場へ。

ファミリーレストランで豪勢に食事をし、ゲームセンターで太鼓の達人を、鬼のように叩いた。
外は、時折、小雨が降っている。
厚い雲の下、砂浜を歩き、適当な場所に腰を下ろして、ビール(発泡酒ではなく)を飲んだ。

沖を絶え間なく船が行き来している。
ヨットも見える。
それを指差しながら、子どもたちが、はしゃいでいる。

デジカメで、景色を撮りまくっている。

暗くなった。
「帰りたくねえ!」
娘が、海に向かって叫ぶ。

晩メシも外食。
ラーメンを食った。餃子も食った。
ビール(発泡酒ではなく)を飲んだ。

帰りたくねえな。
今度は、私がつぶやく。
帰りに、少しだけ、夜の銀座をぶらついた。

子どもに見せる景色ではないのだが、まあ、これも教育のひとつですよ。

家に帰ったのは、12時寸前だった。
「あっ! ガラスの靴を忘れた!」
家に入る前に、まったく同時に、娘とふたり、同じことを言った。

笑いあった。

次の日の朝。
ヨメはパート。息子はバイト。
娘は、学校・・・・・、のはずだった。

しかし、全員、見事に遅刻。
だって、いつも彼らを起こす役割の俺が、寝坊してしまったのだから。

悪い、悪い!

まったく、俺は困った親だ。


2009/09/04 AM 04:54:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | [子育て]

鳥肌が立った日
不思議な出来事だった。

これは、本当に不思議な話で、あまりにも不思議すぎて、作り話だと思われるかもしれない。
でも、これは昨日、私の身に起きた実体験なのです。

友人にヘチマのような顔をしたノナカという男がいる。
この男に関しては、何度か書いたことがある(たとえば、コチラコチラ)。

このヘチマとは、お互い不思議な力で呼び合っているかのように、思いがけないところで、いつも出くわす。

今回も場所は、横浜だった。
2年ぶりに訪問した会社。
女優の松雪泰子似の美人から、仕事の説明を受けた。

打ち合わせ時間、20数分。
その間中、その美しいお顔に見とれていた、中年バカ男。
会社を出てからも、松雪泰子似から発散される、何とも言いがたい匂いを鼻で反芻しつつ、元町をぶらついた。

そこで、本日の格言。
いい女は、いい匂いがする(by 中年バカ男)。

元町をぶらついたが、元町は、私を拒否しているように思える。
オシャレな街。
歴史と新しさが混在したクールな街だが、私は確実にその空間で、浮いた存在だった。

若者たちが持つ、純度の高いエネルギーが、私にはない。
街に溶け込むスタイリッシュなものが、私にはない。
シャレた店に入って、何かを買おうにも、私には金がない。

ない、ない、ない・・・・・。

ないものだらけの私を、確実にこの街は拒んでいるように思えた。

だから、わざと胸を反らして、オードリーの春日のように、ゆったりと道を歩いた。
道行く人に、「オニガワラ!」というネタをやってもよかったが、そこまで露骨に浮きたくはない。
その欲望を懸命に抑えながら、歩いた。

元町を山下公園の方向に歩いていき、途中、横道を入る。
そして、坂を上る。

一年ぶりの「港が見える丘公園」だった。

横浜の港が一望に見渡せる場所。
そこは、小さな風が吹いている。
いつ来ても、横浜の風は、新しい清冽な空気を私のまわりに運んできて、心に溜まった澱(おり)のようなものを吹き流してくれるような気がした。

午後2時過ぎ。
台風が過ぎ去った次の日。
陽射しは強かったが、陽の照りつけるベンチの端に座った。

そして、ステンレスボトルに入れてきた熱い珈琲を飲んだ。
額から汗が噴き出してきたが、汗を心地よく感じた。

空を厚い雲が覆っている。
おそらく気温は30度を超えているだろう。
ただ、肌に届く暑さに、強烈さは感じられない。
それは、夏が最後に放出するエネルギー。
それを熱い珈琲を飲みながら、実感した。

気配を感じた。

その気配が何なのかは、説明しづらい。
肌を圧迫するエネルギーとしか言いようがない。

そのエネルギーを発散する方に顔を向けた。
女がいた。少女と言ってもいいかもしれない。
16歳、と勝手に推測した。

細い。そして脚が長い。
黒の長袖のトレーナー。左胸の下にワンポイントで花があしらってある。
長い脚は、ジーンズで隠されていたが、その細さが、際立っていた。

立ち姿がいい。
顔もいい。
肌が、見事なほど輝いている。
女優の堀北真希を少し幼くして、3Dグラフィックスでモデリングしたような感じだ。

この世のものとは、思えない。

見とれた。

普段、女性の顔を、こんなにもぶしつけに凝視することなどないのだが、目が離れてくれないのである。
しかし、少女は、そんな私の視線に対して、何の感情も表すことなく、私から少し距離を置いて、同じベンチに座った。

作りもののような横顔から、目が離れない。
魅入られたとしか思えないほど、目線が、その横顔から離れることを許してくれないのだ。

その時間は、何分だったのだろう。
憶えていない。
暑ささえも感じない、止まった時間。

時間は確実に止まっているように思えたが、そんな空間の中で、少女の顔だけが、動いた。
ゆっくりと私のほうに向いたのだ。
鳥肌が立った。

ガラス玉のような茶色の目。
透明だった。
その透明な目が私を捉える。
そして、唇が、まるで機械仕掛けのように、動いた。

「もうすぐ来ますよ」
天から降ってくるような声。
細く、か細い声だったが、その声は、直接私の脳に届いた。

鳥肌。

「すぐそこに、来てますから」

声が、再び脳に届いた。

少女は、それだけ言うと、浮き上がるように立ち上がって、私に背中を見せた。
そして、浮き上がるように、歩いていく。
たとえようのない不可解なエネルギーが、肌を圧迫する。
私は、少女の背中から、やはり目を離すことができなかった。

少女の姿が見えなくなってから、私はやっと、その呪縛から逃れることができた。
大きく息を吐く。
そのとき、後ろから肩を叩かれた。

緊張していた全身が強く反応して、私は背中を思い切り強く、ベンチの背に打ちつけた。
声も出せないほどの痛みだ。
しかし、その痛みの中で、私はなぜかヘチマの顔を思い浮かべていたのだ。

「おい! 信じられるか?」
ノナカが、私の横に座って、蒼ざめたヘチマ顔を近づけてきた。
そして、とり憑かれたような早口で言うのだ。

「元町を歩いていたら、チョー可愛くて、チョースタイルのいい女の子が、『お知り合いが、いますよ』って教えてくれたんだよ。あれって、おまえの知り合いかい? ちょっと人間離れした感じの子だったが」

それは、いつの話だ。

「15分くらい前だな」

15分前なら、おそらく少女は、私の隣に座っていた。
ただ、時間の経過が異次元的だったので、確信はない。

では、違う子が、ヘチマに声をかけたのか。
しかし、ヘチマは、こう言うのだ。

「ちょっと、堀北真希に似ていたかな。陶器の人形みたいで、気味が悪かったが、チョー可愛かった。目が釘付けになったよ。目が離れてくれないんだ」

鳥肌。

蒼ざめた顔のノナカを見る私の顔も、同じように蒼ざめていたに違いない。

世の中には、理屈では説明できないことが起こる。

信じてもらえるだろうか。


2009/09/02 AM 05:00:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | [怖い話]



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