Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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幸せな時間
ショウコの父親・カネコから電話がかかってきた。

去年の12月以来の電話だ(それに関しては、こちら)。

受話器をとると、「梅雨だな」という、まったく話に工夫のないカネコの声が聞こえてきた。
返すことばもない。
だから、黙っていた。

少しの沈黙の後で、カネコが痰がからんだような声で、「まあ、あれだな」と言った。
「今日は、どうだ。時間あいてるか? 大宮まで行ってもいいぞ」

沈黙(奢ってくれるのなら行ってもいい、という無言の圧力)。

無言は、いつだって不気味なものである。
カネコは、苦笑しながら、こう言った。
「もちろん、俺の奢りだ」

時間は午後7時半、場所は大宮の串揚げ屋。
入ってみると、木目を強調した店内は、妙に明るくて、足の裏がくすぐったくなる。
要するに、居心地が悪い。

しかし、カネコは、たいして気にする風でもなく、鷹揚に「生ビール二つ」と頼んだ。
年を経ると、人間は威厳がつくらしい。
その姿は、なかなか様になっていた。
ただ、太っただけ、と言うこともできるが・・・。

串揚げ(関西では串カツ?)は、「お任せコース」にした。
高そうだったが、どうせカネコのおごりだ。

生ビールが、運ばれてくる。
ジョッキを持ち上げて、一気に半分ほど飲む。

乾杯などは、しない。
乾杯すべき大事なことはあったが、お互い照れ屋なので、それができないのだ。

目を合わすこともしない。
だから、会話も弾まない。
まったく噛み合わないのだが、私はそれでいいと思っている。
おそらく、カネコも、そう思っているだろう。

同時代を共有した友だちは、元気で目の前にいれば、それでいい。
たとえ、腹が出っ張って、芋洗坂係長に似てきたとしても、寛大な私は、許してやるのだ。

串揚げが、次から次に出てくる。
アスパラの牛肉巻きは、絶品だった。
海老も美味かった。
シンプルではあるが、茄子の新鮮な味覚に驚かされた。

ジョッキを重ねるごとに、カネコの顔が赤くなっていく。
老けた、とは思うが、それはお互いさまだろう。
白髪の数は、私のほうが圧倒的に多い。

そんな私の頭に目をやりながら、カネコが言った。
「最近、女房とゴルフを始めたんだよ」

ゴルフか、生活に余裕ができた、ということか。
羨ましいことだ。

「お前、グリーンに出たことはあるか」
ある、2回だけだが。
「お前のことだから、簡単に100を切ったんじゃないか」
よくわかったな。

「まったく、可愛げがないやつだ」と言いながら、カネコがジョッキを呷る。
そして、金子にしては珍しく肩をすくめるポーズをして、「俺も女房も、130を切るのがやっとだ」と、腹を揺すりながら笑った。

中年男の型にはまった照れ笑い。
カネコも、そんな仕草が似合う年になったのか。
白身魚の串揚げを乱暴に食いながら、そんなことを思った。

そして、照れ笑いを顔に貼り付けながら、カネコが、話を続ける。
「ゴルフは、小さい子どもでも、それなりに、できるからな」

赤い顔、全体に膨らんだ顔、からだ。
しかし、まばたきを何度も繰り返しながら言うカネコの仕草は、不快なものではなかった。

わかりやすいやつだ。
なんとなく思惑が読めてきた。

つまり・・・?

「孫が、ある程度成長したら、老いた俺たちでも、ゴルフなら一緒にできるかなって、女房と話したんだよ。だから、な・・・・・、ゴルフなんだ」

回りくどいな。
面倒くせえ、な。

それで、お前の携帯に、ショウコの赤ん坊の写メは、あるのか?

よくぞ聞いてくれた、というような、私が始めてみる笑顔で、カネコが大きくうなずいた。

どこにでもいる、赤ん坊の画像。
しかし、それは、私たちには、特別なものだった。

画像を俺の携帯に送ってくれ。

ショウコが抱いている、赤ん坊。
目を開けて、何かを見ている。
何を見ているのか。
未来なのか、今なのか。
きっと、自分を受け入れる人間すべてを、無意識に包み込むように、癒すように、彼女は、何かを見つめているのだろう。

赤ん坊を見つめるカネコ。
赤ん坊を見つめる私。

確実に、幸福な時間が、そこには流れていた。

おまえ、老けたな。じいちゃんの顔になってるぜ。
「ああ、おまえもな」

じいちゃん顔の私の今の体重、55キロ。
一昨日の夜は、餃子を56個食った。
昨日は、串揚げを28本食った。

人間は、嬉しいことがあると、食が進むものらしい。


2009/06/30 PM 12:59:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

命の光に戸惑う
ショウコに子供が産まれた。

ショウコに関しては、このブログに何度か書いたことがある。

6月12日、午前9時過ぎ。女の子。
母子ともに元気だという。

あのショウコが母親になった。
夫のマサから連絡を受けたとき、いろいろなことが浮かんできて、脳内がスクリーン化した。

6歳で私の前に現れた友人カネコの娘。
両頬に、そばかすの散った勝気な顔の女の子。
ショウコとは、友人の娘以上の濃厚な付き合いをしてきたような気がする。

海に連れて行った。山にホタルを見に行った。テニスをした。パソコンを教えた。勉強も見てやったことがある。買い物にも付き合った。ボーイフレンドを紹介されたこともある。

親父でもないのに、だ。

マサの電話報告の後、ショウコが「私もひとこと言いたい!」と、マサから受話器を取り上げた。

「サトルさん、ほめて、ほめて!」

よくやった。君は、世界一の母親だ。

そのショウコとマサが、昨日の夜、産まれたばかりの赤ん坊を見せに来た。

我が家にいる異星人の存在を気遣って、家には寄らず、わざわざ大宮のホテルに宿泊するという気の回しようだった。
広々としたツインルーム。

応接ソファに座って、赤ん坊を抱くショウコ。
そこには、退院して数日しかたっていないのに、まるで何か不思議なパワーを身につけたような、確実に進化したショウコが威厳を持って存在していた。

「ほら、あれがサトルさんですよぉ。でも、間違えちゃだめですよぉ。あなたのおじいちゃんではありませんからねぇ」

光を感じた。

ショウコから発する光。
赤ん坊から発する光。

それは、命の光なのか。

6歳のショウコが、成長して大学生になり、すぐに結婚。そして21歳の今、母になる。

これは、いったい何なのだ、と思う。

俺は、ずっと立ち止ったままなのに、ショウコは全力で駆け続けている。

強すぎる、命の光。

戸惑いだけがある。

マサが、ルームサービスでビールとピザを頼んだ。
ビールを飲み干しても、戸惑いがある。
ショウコの出産は嬉しいが、戸惑いも強い。

そんな私を見て、ショウコが言う。

「サトルさんの二人の子どもたち。いい子だよ。すごくいい感じに成長してる。私は、もちろんパパやママの影響を受けて育ったけど、サトルさんにも、すごく影響を受けてるんだ。4分の1は、サトルさんに育てられたような気がする。それをこれからの子育てに生かそうと思うんだ。今日は、それを伝えに来たんだよ」

マサが頷きながら、私のグラスにビールを注ぐ。
マサの目にも、ある種の光がある。
そして、赤ん坊を見つめるショウコの目。
大事なものを得た人間は、皆こんな優しい目になる。

ああ、言い忘れていたね。
マサ、そして、ショウコ。
おめでとう。

でも、頼むから俺を、これ以上置き去りにしないでくれ!

置き去りにされた私の体重、54キロ。
なぜ、増えない!


2009/06/24 PM 02:06:03 | Comment(1) | TrackBack(0) | [日記]

「ああ、そう」と「ああ、どうも」の違い
めでたいことなのか、どうか。

先週の金曜日、義母が、長い病院生活から解き放たれてきた。

入院費用は、友人のWEBデザイナーのタカダ君(通称ダルマ)に工面してもらう予定でいたが、何とか自力で払うことができた。

ホッとした(世間では当たり前のことだろうが、大貧乏の我が家では画期的なことだ)。

あとは、ウィークリーマンション生活をするために友人6人からかき集めた借金を返すこと。
6人、総額15万円を借りた。
そのうちの6万円は返した。
残りは、4人9万円である。

本当なら率先して返すべきだろうが、外注費というものがある。
外注費が滞ったら、誰もフリーランスなんか相手にしてくれなくなる。

外注費優先。

はなはだ勝手な理屈だが、4人への返済は来月まわしになる。
心が痛むが、お許しください。

一家4人、食費1万8千円で暮らす日々。
家に帰って来るなり、義母がこう叫ぶのだ。

「まずい病院の食事を我慢して食べたのだから、退院の日くらい、うなぎが食べたい、カツ丼が食べたい、マグロの大トロが食べたい!」

確かに、そうだろう。
長い入院生活。味気ない食事。ストレスもたまったことだろう。

しかし、退院の日、私は医者からこう言われたのだ。
「20年以上糖尿病に罹っていたのに、聞くところによると、美味いものを食べたい放題の生活をしてきたというお話。お子さんたちは、なんで自分の母親に対して、こんなにも無関心でいられるんですか。この程度の症状で済んだのは、奇跡なんですよ! もっと、自分の母親に関心を持ってください!」

はい、どうも、すみません。

なぜ、私が謝らなければいけないのか?

だから、義母には申し訳ないが、退院祝いのご馳走は「なし」ということにさせてもらった。

にんじんとヒジキの煮付け、豆腐ハンバーグ、トマトを輪切りにしたうえにタルタルソースをかけたもの。そして、薄味の味噌汁。
夕食は、それだけだった。

義母は抵抗をして、ほとんどを残したが、私は義母の健康に「関心を持った」ので、「脂っこいものが食べたい!」という義母の叫びを無視することにした。

私は、冷たい男なのですよ・・・・・。

義母は、少し認知症が進んだのか、テレビを見ていると、頻繁にひとり言を言うようになった。

「アカシヤサンマ」
「ミノモンタ」
「キムラタクヤ」
「8ジ18プン」
「明日ハ、雨ノチ曇リ」

テレビの画像に映る司会者や俳優の名前を確認するように言い、そこに映ったものをそのまま言葉にするようになった。

その行為が、何を意味するのかは、私は専門家ではないのでわからない。
ただ、無表情に絶えず声を出している、そんな祖母の姿を見て、中学2年の娘は「おばあちゃん、大丈夫かな?」と、首をかしげる回数が増えた。

ヨメが、義母が退院したことを長兄と次兄に電話で報告した。

長兄は、「ああ、そう」と答えた。
次兄は、「ああ、どうも」と答えた。

私が、「ああ、どうも」は、感謝が含まれているかも、と言うと、ヨメは鼻を大きく鳴らして、「フン!」と言った。

「どちらも変わらないわよ! 無関心という点ではね」

そんなものかな・・・・・。
子どもたちの無関心は、まだまだ続くのかな?

私の関心は、いま自分の体重だけである。

私の体重、54キロ。
面倒くさいことが増えたせいで、前回より体重が減った。

あ〜あ、めんどくせえ〜。




2009/06/23 PM 01:02:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

お人よしな私
ヤホー親父の話は、続く(厭きた?)。

前回、社長の好きな水羊羹の詰め合わせとメモ書きを置いて、ヤホー親父にさよならを告げたことを書いた。

すると、次の日、うろたえた声で、社長から電話があった。

「Mさん、『お世話になりました』は、ないでしょ! おれとMさんは、長い付き合いじゃないの。つまり、友だちってことでしょ! それなのに、あの仕打ちはひどい!」

しかしですね、社長。
こちらも、言われっぱなしというのは、癪にさわるんですよ。
機械音痴の社長には、何を言っても無視されっぱなしでしたけど、社長の会社のパソコン、無計画に数を増やしただけだから、どれも機種が違いますよね。

パソコンもモニターも全部機種が違う。
一台一台、キャリブレーションをするのも大変なんですよ。

「キャリブレーション????????」

私はそれを5回以上説明しましたが、お忘れですか?

「・・・・・?????」

たとえばほかに、マック6台のシステム環境を整えるのに、苦労したと言ったことは、頭の片隅にさえも、存在しませんか?
たとえば、6台のマックの書体をすべて統一するということなどは、どうですか? まったく、覚えていませんか?
まさか、機械を買えば、当然のように、書体が付いてくると思っているんじゃ?

「ああ・・・、言われたような・・・・・」

どの機械でもメールができて、どの機械からもプリントができるのは、機械が勝手にやってくれるとお思いですか?

「いや、それは、全部Mさんが・・・・・」

いやらしい話ですが、たとえばマック6台、ウィンドウズ2台、すべてにサポート契約がついていたら、年間どれくらいかかるんでしょうね。
私が、社長の会社で使わせていただくプリント料金は、年間せいぜい2万円弱ですが、メーカーのサポート料金って、そんなに安かったでしたっけ?(少しネチネチした嫌なやつになっていますが)

「ああ、それは、なんというか・・・・・」

これからさき、社長の会社のパソコンの調子が悪くなることはあるでしょう。
機械は生き物ですから、使っているうちに必ず劣化してくるはずです。
しかし、人間の体もそうですが、機械も、事前のケアを怠らなければ、劣化は最小限に防げるはずです。

社長も、他にすることが多くて大変でしょうが、これからは「俺パソコンは苦手なんだよ」などと逃げずに、彼らをできるだけ愛しんでください。

では、さようなら。

「いや、Mさん・・・(オロオロ)」

こちらから一方的に電話を切った数分後、社長が我が家にやってきた。

頭頂部がスカスカになった頭を玄関先で何度も下げ、「悪かった、ごめんなさい」を繰り返すヤホー親父。

両目が、泳いでいる。
不気味な汗が、頭頂部から出ている。
声が、震えている。
妖気が漂っている。

結局、社長のそんなオロオロ芸に嵌められて、また鍵を預かってしまいました。

そんな私は、お人好しでしょうか?

お人好しな私の体重、ただいま54.5キロ。
社長に、家族一同、餃子の王将でおごっていただいたせいで、体重が増えた。

これは、めでたいのか?



2009/06/18 PM 05:29:55 | Comment(2) | TrackBack(0) | [日記]

メンテナンスはボランティア?
ヤホー親父、再登場。

19日間入院して、確実に変わったことがある。
気が短くなったことだ。

14日、日曜日。夜の10時半過ぎ。
近所の印刷会社のパソコンのメンテナンスをしていた。

マック6台。ウィンドウズ2台。
この8台をメンテナンスする代わりに、印刷会社の鍵を預かり、好きなときに高速のレーザープリンターを使える許可を、その会社の社長から得ていた。

3台目のマックの調子を見ていたときのことだ。
普段は、この時間は決して顔を出すことがないヤホー親父が、会社にやってきた。

そして、赤ら顔でこう言うのだ。
「Mさん、こう言っちゃなんだがね」
近くにあった椅子をガラガラと引き寄せて、酒臭い息を吐きかけるヤホー親父。

「最近、うちも売り上げが落ち込んでるから、悪いんだけどさ、Mさんがプリントした分の料金、請求してもいいかな?」

この会社のプリンターは、早くて、しかもグラデーションと文字が綺麗だ。
だから、画像が多かったり、小さな文字が多いときは、頻繁に使わせていただいている。

しかし、使わないときは、まったく使わない。
使用枚数は、平均すると、月に20〜30枚くらいか。
30枚として、1枚50円計算なら、月に1500円。
それほど、負担にならない額である。

しかし・・・、と考える。

それなら、パソコンのメンテナンス料は、請求してもいいのだろうか。
社長に、そう聞いてみた。

「え?」
想定していなかったようである。
それは、ちょっと身勝手すぎないか?

いいですか、社長。
社長の会社には、たくさんの機械がありますよね。印刷機、フィルム出力機、断裁機、大型のインクジェットプリンター、ラミネート機、名刺専用プリンター、リソグラフ、大型のスキャナーなどなど。

私が、社長と懇意にさせていただいてから、10数年。
私は、何度も、これらの機械が調子悪くなって、メーカーに修理を頼むたびに「修理費が、馬鹿にならない」という社長の愚痴を聞かされてきましたよ。

そして、私が社長の会社のパソコンのメンテナンスをはじめて、7〜8年。
よーく、思い出してください。
マック6台、ウィンドウズ2台。
この機械が壊れて、メーカーに修理を頼んだことが、一度でもありましたか。

ないはずですよ。
これは、偶然ですか?
偶然、パソコンは壊れなかったと、社長はお思いですか?

「いや・・・、それは・・・」

マックのCD-RWの読み込みが悪くなったとき、我が家からストックしてあるCD-RWライターを持ってきて、事なきを得ましたね。
本体のメモリ不足で、大きな画像が開けなかったとき、余っていたメモリを、うちから持ってきて、画像を開けるようにしましたね。
メールの設定も、8台のパソコンのネットワークの構築も、すべて私がしましたね。

あれもすべて、請求していいんですね?

「いや・・・・・、でも、メモリは・・・、作業が終わったら、別にいらないし・・・、ねえ・・・、取っ払ってもいいんだけど・・・」

ほー、そうですか!

「それに、こうやって、深夜に機械をいじくられると、電気代ももったいないし。あー、今日は、プリントはしてないよね。わからないところで、プリントされると、俺もわからないしさ。いくらでも、誤魔化せるからね」

(怒)乱暴に、プリンターの電源とプリントサーバの電源をつける。

社長。
プリントサーバには、プリント履歴というものが残るんですよ。
いいですか、見てください。
6月14日。プリント履歴は、ありませんね。昨日の13日も、ありませんね。
一番新しいのは、12日の4時過ぎです。でも、俺は、その時間は、この会社にいませんでしたね。
だから、これは、俺がプリントしたものではないですよ。
わかりますか? よーく、見てください。

「・・・・・・・」

プリント代金自体は、たいした額ではない。
しかし、こんな一方的な言いがかりを素直に受け入れるほど、私は、大人ではない。

そこで、昨日の夜、ヤホー親父のデスクの上に、社長の好きな水羊羹の詰め合わせを置いてきた。
そして、そのそばに、手書きのメモも添えておいた。

「お世話になりました。会社の鍵をお返しします。ポストの内側にガムテープで止めておきましたので、ご確認をお願いいたします」

マック6台、ウィンドウズ2台。
偶然と幸運が続いて、この子たちが、壊れることがないように祈っています。

こんな私って、短気ですかね?

短気な私の体重、54キロ。
目標まで、あと4キロ。


2009/06/16 PM 03:51:19 | Comment(3) | TrackBack(0) | [日記]

暴れん坊将軍とご老公
ヤホー親父、ふたたび。

前々回のブログで、ユニークな社長のことを書いたが、今回は、その続きです。
このヤホー親父は、大変思い込みの強いひとだ。

「Mさんち、ずっと電話が繋がらないね。借金取りから逃げてるんでしょ。次は、自己破産かい? よく考えたほうがいいよ。借金は、いくら? 5百万かい?」

これは、冗談で言っているのではない。
彼は、大真面目なのだ。

彼の弟は、会社を経営していたが、大きな損失を出し、危ないところからも金を借りて、借金取りに終われる身となった。
取立人の電話攻勢が、あまりにも強烈なので、電話を解約し、家にも取り立てに来るので、弟は、夜逃げをした。

そして、自己破産。

電話が通じない、イコール、自己破産。
ヤホー親父の頭には、その図式しかないのである。

「大変なのはわかるけどね、短気を出しちゃだめだよ」

はい、気をつけます。

私が借金取りから逃げ回っているという、彼の思い込みを覆すのは、北朝鮮のミサイル実験をやめさせるのと同じくらい、難しいものだ。
だから、ここは、素直に頷いておいたほうがいい。

しかし、本当のところは、電話会社の対応に腹を立てて、固定電話をやめてしまっただけなのだが・・・。

台所が焼けるというアクシデントの後、ずっと電話の調子が悪かった。
繋がったり、繋がらなかったり。

そこで、当然のことながら、サポートに電話をすることになる。

「症状を具体的にご説明ください」と言われたので、細かく説明した。
電話の繋がりが、大変気まぐれであること。そうなった時期。繋がらなくなるときの前兆現象も丁寧に説明した。
そして、インターネットは、普通に繋がる、ということも。

それに対して、オペレーターは、こう言うのだ。
「ああ、そうですか。でも、見てみなければ、わかりませんね」

それは、そうだろう。
何事も見てみなければ、わからない。

しかし、「具体的に説明しろ」というのと、「見てみないと、わからない」というのは、矛盾していないか。
見なきゃわからないというのなら、すぐに見に来ればいいではないか。

「いや、症状によって、当社から伺うメンバーが違いますから」

ほー、そういうものですか?

一週間待たされて、サポートの人が、やってきた。
そして、4、5分程度いじったあとで、彼はこう言うのだ。

「ルーターを変えてみましょうかね」

で、そのルーターは?

「持ってきていません。これは、見てからでないと、判断できませんから」

俺が、あれだけ懇切丁寧に説明したのは、いったい何だったんだ!
こちらの説明で、故障箇所を予測して、代えのルーターを持ってくるのが、真のプロのサービスというものではないのか?

「しかし、すべて、見てみないとわかりませんので」

・・・・・・・・・・・・。

で、そのルーターはいつ持ってきてくれるんですか?

「わかりません。一週間になるか、二週間になるか」

皆さん。こんな応対をされて、腹が立ちませんか?

会社に電話をかけて、ルーターの在庫を確認し、次に自分のスケジュールがいつ開いているかを確認すれば、答えは、簡単に出るはずである。
しかし、この男は、あっさりと「わかりません」と言うのだ。

馬鹿の相手をすると、疲れる。

だから、固定電話は、解約した。
そんな俺って、短気ですか?

2年半ぶりに携帯電話を持つことになったので、とりあえず仕事で困ることはない。
固定電話がなくても、普段どおりの生活はできる。

ただ、ヤホー親父から、妙な疑いの目で見られることだけは、鬱陶しいが・・・。

手にしたiPhoneは、使い勝手がいいとはいえないが、私は、最低限の通話ができればいい。
あとは、iPodで好きな音楽が、聴ければいい。

そして、娘とのメール。
2年半前までは、娘と頻繁にメールをしていた。
しかし、その娘も、もう中学2年生。

「親父とのメールなんて、アホくさくて」と、拒否されるかと思ったが、絵文字・顔文字が充満したメールが、頻繁に送られてくる。

内容は、他愛ないものである。
「レッド・シアター始まるぞ。仕事やめて、テレビの前にダッシュ」
「学用品代、一万円だ。封筒に入れておけ。明日持ってく」
「友達と、スィーツバイキングに行く約束をした。小遣い増量希望」

メールのニックネームを見てみると、娘は自分を「暴れん坊将軍」と登録している。
そして、私は、なぜか「ご老公」

「暴れん坊将軍」と「ご老公」。

時代が、少しずれていることに、娘は気づいていない。

そんな「ご老公」のただいまの体重、54キロ。
昨日、昼・夜ピザを食ったおかげで、体重が増えた。


2009/06/11 AM 11:10:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

同業者を罵倒する
おまえに、何がわかるってんだ!

久しぶりに、声を荒げてしまった。

以前書いた私のブログを読んだ同業者が、ピント外れの言いがかりをつけてきたからだ。

このブログの中で、『「こんなやつからは、二度と仕事なんかもらうもんか」と絶交宣言した人間からももらった。』と書いたところ、仕事をもらった相手に、そんな言い方をするのは、礼儀に反する、と指摘されたのである。

おまえなあ、俺がそいつ(印刷ブローカーのヨコミゾケンジ)から受けた仕打ちを知りもしないで、勝手なこと言ってんじゃねえぞ!
俺が、「こんなやつ」と書くには、それなりの理由があるんだ。
それは、仕事をもらう以前の、ヨコミゾの人格の問題なんだ。
きれいごとじゃ、ねえんだよ!


ヨコミゾから仕事をもらったのは、2年間で2回。

最初は、5年前だった。
ある部品メーカーのカタログの組み版作成とそれに付属するCDのコンテンツ作成である。

仕事を請け負った以上、見積書を出す。
ヨコミゾは、「トータルがわかればいい」と言ったが、どんぶり勘定はトラブルのもとなので、細かい見積もりを出した。

そこの「ディレクターによるオーサリング」という項目が、ヨコミゾは理解できなかったようだ。

そんなわけのわからないマイナーなソフトを使って、何をしようっての?
金額を上げるために、変なソフトを使ってごまかそうとしてるんだろ?

ヨコミゾは、ディレクターも知らなかったし、オーサリングという言葉も知らなかったから、そこに書かれた金額を認めようとしなかったのだ。

私は、彼に丁寧に説明したが、私が金額をごまかしていると決め付けているから、彼はそれをまったく理解しようとしなかった。

それ以上の会話は無駄なので、私は、その仕事を断った。
しかし、断った次の日、「まあ、細かいことはいいからさ、あんたの見積もりから15パーセント引くんなら、仕事あげてもいいよ」と、横柄な口調で言ってきた。

言い方は横柄だが、相手が折れてきたのだから、私はその仕事を請けた。
2ヶ月かかって終えた仕事は、評判がよくて、最初2千部の予定が、すぐに千部増刷されたという。

次は、支払いだ。
支払日の前日、ヨコミゾから電話があった。
「増刷はしたけど、大赤字だよ。まったく付属CDに、こんなに金がかかるとは思わなかったよ」

そして、固い声でこう言うのだ。
「俺も損したんだから、あんたも一部分かぶってよ」

じゃあ、俺は何のために細かい見積もりを出したんだ?
俺は、あんたの言うとおり、15パーセント金額をやすくしただろ。
あれは、いったいなんだったんだ?

「でも、損をしたんだよ! 大赤字だ! あんたにも責任はある」

こんな馬鹿から、仕事を受けた自分の愚かさを呪った。
ため息とともに、私は「じゃあ、1割引こう」と言った。
ヨコミゾは、渋々「まだ、赤字だけどな」と言いながら、了承した。

次の仕事は、1年半後。
ヨコミゾが、フラワーフェスティバルのチラシとはがきのデザイン、ホームページの仕事を持ってきたのだ。

「前回は、大損したから、今回は安く見積もってくれよ」

知らねえよ!
俺は、あんたに損をさせた覚えはない。
あんたが、勝手に損をしたんだろ!

細かい見積もりを書いて、ファックスで送った。
総額11万5千円の仕事だ。
これで、かなりディスカウントしたつもりである。
ほかの事務所なら、3割以上高く見積もるだろう。

しかし、ヨコミゾは、こう言うのだ。
「前回の損を考えたら、10万だね。本当は、9万でもいいくらいだ」

じゃあ、ほかに頼みな。
交渉決裂。

しかし、次の日。
ヨコミゾから「あんたに、やってもらおうか」と、無機質な声で電話がかかってきた。

「11万5千円でいいんですね」と念を押すと、ヨコミゾは、小さな舌打ちとともに「ああ」と答えた。

1ヵ月半で仕事を終え、支払日がきた。
入金を確認すると、ヨコミゾからの入金は9万円だけだった。

電話で「2万5千円足りないですね」と抗議をすると、ヨコミゾは、今度は大きく舌打ちをした。

「前回、俺は大赤字だったんだよ。あの損害をバックアップするのに、どんだけ俺が苦労したと思ってるんだ!」

は!?

それは、俺に関係あることなのか?
あんたが、付属CDにかかる費用を読み違えたから、損しただけだろ?
それは、純粋に、あんただけの問題なんじゃないか?!
まして、今回の仕事とは、何の関係もない。

「俺には、あるんだよ!」
一方的に、電話を切るヨコミゾ。

馬鹿である。
ヨコミゾも馬鹿だが、こんなやつと関わった俺も、馬鹿だ。

だから、私は、ヨコミゾからの仕事の依頼を、それ以来3年間、拒否し続けた。

だが、どうしても金が要る現実に直面して、私は、ヨコミゾに「仕事をください」と言ったのだ。

声も聞きたくない。顔も見たくない相手に、頭を下げる。
その屈辱感は、当人にしかわからない。

だから、同業者を罵倒した。

しかし、それは・・・、まあ・・・、大人気ないことだ。
同業者には、こんなこと、理解できるはずがない。
理解できないから、彼は、思ったとおりのことを言うしかないのだ。
それは、罵倒するほどのことではない。

大人気ないですね。

大人気ない私の体重、ただいま53.5キロ。
ぜんぜん増えない。
目標の58キロは、はるかに遠い。


2009/06/09 AM 11:38:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

ヤホー親父と立ち食いソバ
古い話になるが、メールがずっとイカレていた。

仕事用のメールソフトは、MacOS9の古いものを使っている。
それは、5年以上も前に、開発が中止されているから、当然のことながらバージョンアップは止まっているし、サポートも受けられない化石化されたものだった。

4月27日。
そのメールソフトが、突然文字化けを起こすようになったのだ。
送信は正常にできるのだが、受信したものが、過去にさかのぼって、すべて文字化けするという不可解な現象。

根気よく原因を追究すれば、復旧は可能だろうが、今の私には、そんな根気がない。
それに、仕事が忙しくなったので、メールソフトのご機嫌を伺っている暇がない。

「このチゴトが終わったら、なおちてあげまシュよ〜」などと、遊んでやるのも面倒くさい。
だから、今も文字化けしたままで、化石は存在している。

受信ボックスには、大事なメールも存在するのだが、文字化けしてしまったら、大事もくそもない(下品?)。

勝手に文字化けしてろ!

緊急の時は、ヤホー(Yahoo)メールとゴー(goo)メールがあるので、それで間に合う。

ヤホーさん、ゴーさん、感謝しています。

と、ここまで書いて、思い出したのが、近所の印刷会社の社長のことである。
彼は、まじめな顔で、Yahooのことを「ヤホー」と言い、gooのことを「ゴー」と言う。
印刷会社の経営者でありながら、大変な機械音痴なのだ。

古い話だが、そのヤホー親父が、私の入院中に、見舞いに来てくれた。

私が入院していたのは、5人部屋という変則的な部屋。
見舞いの人や、入院中の他の部屋の人、看護士が頻繁に出入りするから、昼間はいつもにぎやかな環境の中にいた。
だから、人の訪問が認識しづらい。カーテンを閉めれば、孤独な空間に浸れるが、それは淋しいから、昼間は、いつもオープンにしている。
だから、侵入者には、気づきづらい環境だと言える。

その中で、私はひとり帳簿と闘っていた(病気と闘うのではなく?)。

今度あそこから入金があったら、その金はアチラに振り込んで、他の入金はソチラに振り込んで、余ったら、生活費に回して・・・、さらに、15日に入金があったら、これでアイツに3万円返して、ああしてこうして・・・・・。

私が、よほど鬼気迫る顔をしていたのだろうか。
「Mさん、こわいよ・・・」と、震える声で、顔を覗き込むヤホー親父。

ドラえもん体型のハゲキャラが、頬をヒクつかせながら、瞬きを繰り返していた。

ああ、どうも・・・。

「Mさん、入院してまで、金の心配してるの? それじゃ、治るものも治らないでしょ」

金がなければ、治りませんけど・・・・・。

「でも、普通そんなことは、奥さんがするんじゃないの?」

いや、それは、おそらく無理でしょう。
得意先からの入金が一日遅れただけでパニックになる人に、大事な経理は任せられません。

我が家の家計が平和で、なんの波風もない穏やかなものだったら、任せられますがね・・・。

「そう? 大変だね。じゃあ、俺、帰るわ」
高級そうなフルーツの盛り合わせを置いていってくれたが、滞在時間およそ3分の短い見舞いだった。

そして、昨日の昼。
昼飯に立ち食いそばを食おうと、大宮駅構内の馴染みの店に立ち寄ったときのことだ。
券売機の前に、ドラえもん体型のヤホー親父が立っていた。

すばやく回れ右をして逃げようと思ったが、その笑える体型に0.5秒間、目がとらわれたのがいけなかったのか、見つかってしまったのだ。

「ああ、Mさん、あんたもソバ食べるの? 俺は、いつもは、フレンチかイタリアンのランチを食べるんだけど、今日は時間がないから、5年ぶりに立ち食いソバにしようかと思ってね」

ホー、そうですか。

「ああ、おごるよ。Mさん、痩せてるからね。たくさん食べないとだめだよ。まずは、えび天ソバね、それから・・・、カレーライスも食べよう」

それは、相当なカロリーですよ(ドラえもん体型には、体に毒です)。

「いいんだよ。Mさんは、これくらい食べなくちゃ。痩せちゃって、見ていられないよ」

ドラえもん化しすぎて、私も見ていられませんが・・・。

しかし、人の好意を無にするのもいけないので、ヤホー親父の好意に甘えることにした。
目の前に並ぶ、えび天ソバとカレーライス。

健康なときなら、食欲が湧くが、今は少しつらい。
だが、そんなことはお構いなしに、ヤホー親父は、旺盛な食欲で、2つの食い物を4分44秒で完食した。

私は、5分の1も、まだ食っていない。
これは、大敵だぞ・・・。

ため息をつきながら、でかいえび天を眺めていたら、「じゃあ、俺、用事があるから、お先に」と、ヤホー親父は、逃げていった。

ドラえもんめ!

結局、二つ食い終わるのに、30分以上かかってしまった。

立ち食いソバ屋で、30分って、どうよ?

お店の人と目を合わさないようにして、こっそりと、店を出た。

ただいまの体重、53.5キロ。
目標の58キロは、はるかに遠い。


2009/06/05 AM 10:29:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

生きているZARD
その小料理屋に入ったのは、ほとんど発作的なことだった。

大学時代の友人から、6人分の名刺を頼まれ、その代金がポケットにあったことも、大きく作用したかもしれない。
いつもなら、小銭しか持っていないので、小料理屋になど入りたくても入れないからだ。

小料理屋の間口は狭い、2メートル半程度か。
中に入るとカウンターがあり、L字型をしていた。
10人入るのがやっとというほどの広さだ。

小ぎれいといっていい店内。
三隅にある間接照明が、やさしい光を作って、トゲのない空間を作っている。

午後6時前。
外は、まだ昼間といっていいくらい明るい。
客は、まだ独りもいない。

「はじめて?」と聞かれた。
50歳前後の女がひとり、カウンターの中にいた。
小料理屋だから、着物を想像していたが、カウンターの女は、白のブラウスの上に、薄いクリーム色のカーデガンを羽織っていた。

美人ではないが、表情や挙措に、日本人離れしたものを感じた。
メニューを探したが、メニューは見当たらない。

困ったな。
ポケットの中には、それほど威勢のいい札が入っているわけではない。
メニューで見当をつけて、適当に頼んで、腰を上げようと思ったが、その目論見は見事に外れた。

少し、腰が落ち着かなくなった。
ビールだけ飲んで、帰るか。

ビール、ください。

冷えたグラスと、瓶ビールがすぐに出てきた。
そして、「はい! 5百円」

えっ! 前金?

「前払いじゃないですよ、勘定は後で。で、おつまみ、適当に出してもいいですか? うちは、そういう店なのよ」

ゆっくりした口調で、優雅に聞かれたものだから、つい頷いてしまった。
高かったら、どうしよう?

ZARDの歌が、小さなCDラジカセから、控えめに流れていた。
「マイフレンド」だったと思う。

そういえば、もうZARDがいなくなって、2年がたつのか。

「はい、野菜のすりおろしを入れたさつま揚げ。わさび醤油で食べてね。250円」

そうか、一品出るたびに値段を言ってくれるのか。だから、メニューがないのか。

さつま揚げは、カツオのだしが沁みていて、わさび醤油によく合っていた。
ビールとの相性は、かなりいい。
もっと食べたくなる味だ。

次に出てきたのは、「新タマネギの串揚げ。塩をつけて食べてね。150円」

新タマネギの甘さが、口いっぱいに広がって、タマネギを見直したくなる味だ。
これも、ビールに合う。

次が、「極太うどん。ポン酢を垂らして食べてね。200円」
本当に太いうどんだ。
弾力があって、噛んでいる間中、手打ちうどんを食っているという実感に浸れる味だ。

ビール、もう一本ください。

「いいけど、ビールは、それくらいにしておいたほうがいいですよ」

余計なお世話ですが・・・・・。

次は、「湯豆腐。これは、料理って言うほどのもんじゃないけど、一応商売だから、お代は、いただきます。100円」

100円?
安い!

こんな小さな土鍋は見たことがない、というくらい小さな土鍋に豆腐が入っていて、その上にとろろ昆布が乗っているだけのものだ。
確かに、見た目は工夫がないように見えるが、薄いだしが利いていて、深い味がする逸品だった。

ZARDの歌が、流れ続けている。
「IN MY ARMS TONIGHT」だったか・・・・・。

小料理屋にZARD。
合わないような気もするが、邪魔にはならない。
むしろ、心が落ち着く気がする。

そう思っていると、女が、含み笑いのような顔で、話し始めた。

私はね、両親とも日本人なんだけど、3歳から40歳過ぎまで、カナダのトロントで暮らしていたの。
結婚も向こうで、向こうの人としたんだけど、わけあって、40歳過ぎて、日本に一人でやってきたの。
最初は、日本語、下手でね。ノイローゼになりそうなくらい下手だったけど、そのとき、街に流れるZARDの歌声を聴いて、すごく癒されたのよ。

ZARDの歌う日本語って、綺麗よね。
毎日何度も何度もZARD聴いて、日本語の良さがわかってきたら、日本語の上達も早くなった。
だから、ZARDは、私のマスター(師匠)だわね。


40過ぎまで、日本語が覚束なかったとは思えないほど、女は綺麗な日本語を使った。

ZARDの3周忌、過ぎたみたいだね。

「ああ、でも、わたし、ZARDが死んだとは思ってないから、関係ないわ」

それほど、ZARDが身近にいるということか。
陳腐な言い方をすれば、女の胸の中で、ずっと生き続けているということなのだろう。

流れている曲は、「きっと忘れない」。
できすぎた展開だが、邪魔にはならない。

腰を上げた。
「はい、1700円、いただきます」

優雅な仕草で、頭を下げられた。
少年のように刈り上げた髪の毛が、清々しくて、しばし目が釘付けになった。

暖簾をくぐって出た。
振り返って、のれんの文字を見ると、「さかい」とあった。

ZARDが、ここにも生きていた。


2009/06/03 AM 11:06:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]

ミーハーなヨメ
ミーハーなヨメの話を書こうと思う。

昔、結婚できない男というテレビドラマがあった。

阿部寛主演のコメディドラマだ。
我が家の中学2年の娘は、トリックが大好きである。

大好きゆえに、主演の仲間由紀恵を神のようにあがめ、阿部寛に多大な親近感を持っている。
だから、この二人が主演するドラマは、すべて見る。

私も見せられる。
そして、このドラマには、頻繁に犬が出てくる。
パグ犬だ。

私は、基本的に大型犬が好きなのだが、小型犬ではパグが好きである。
娘もパグがいいといっている。

しかし、ミーハーなヨメは、その時々で人気がある、ミニチュアダックスフントやトイプードル、チワワを「かわいい!」という。
そして、パグに関しては、「なに、あの顔! ブッサイクねえ!」と嫌悪していた。

娘の友達がパグを飼っていたが、「ブッサイク! あんな犬を飼う人の気が知れないわ!」と、あからさまにけなしてもいた。

しかし、ドラマを何度も見るうちに、「ああら、かわいい! ブサイクだけど、表情がいいじゃない!」と、突然趣旨を変えたのである。

なんか、釈然としない。

日曜日の夕食は、カレー。
我が家では、それを「サンデーカレー」と呼んでいる(そのまんま)。

カレーは、いろいろな種類のものを作る。
オーソドックスなもの、キーマカレー、野菜てんこ盛りのカレー、ひき肉充満のカレー、スープカレーなど、おそらく10種類以上。

そんな中で、私が気に入っているのが、厚揚げをから揚げ粉で揚げてカレーにトッピングしたものである。
これは、意外と評判がいい。
特に鶏肉嫌いの娘には、(鶏肉代わりとして)大好評だ。

しかし、ヨメは、「カレーに厚揚げ? そんなの聞いたことないわよ!」と馬鹿にする。
だから、毎回厚揚げだけ残す。

ところが、いつだったか、料理評論家の女性が、テレビで「カレーに厚揚げは、ベストチョイス」と言うのを聞いたとたん、厚揚げカレーをお替りするようになった。

釈然としない。

たぬき丼って知っていますか。
ご飯の上に、揚げ玉を大量にのせて、それに天ぷらのたれをかけたものである。

これが、かなりうまい。
わさびを少々きかせると、さらに大人の味になって、食が進む。

我が家では、これが大好きで、これをおにぎりにしたものは、子どもたちの大好物のひとつだ。

しかし、これをヨメは「貧乏くさい」と言って、嫌っていた。
どこが、貧乏くさい? 美味いんだから、いいじゃないか!

「でも、貧乏くさい!」

だが、テレビで、お笑い芸人が「これは、イチオシですよ」と言って、まったく同じものを作ると、「あら、おいしい!」と喜ぶのである。

釈然としない。

我が家の子どもは、運動神経が少々鈍い。

私はといえば、自慢ではないが(実は自慢だが)、ボーリング以外は、万能と言っていい運動神経を持っている。

ヨメが言う。
「運動神経は、遺伝するものでしょ!」

それは、違います。
運動神経が遺伝するものなら、一流アスリートの子どもは、みな一流になっている。
しかし、そんなことは、稀だ。

運動神経は、小学校入学前までの運動量で決まるというのが、私の持論である。
だから、私は息子が小さいころ、キッズ用のジムに通わせることをヨメに提案した。

だが、ヨメはひと言で斬る。
「もったいない!」
活動的なことをさせようとすると、「危ないんじゃない?」

娘ができたとき、この子こそ、運動をさせようと提案した。

「女の子は、運動神経が鈍いくらいが、可愛いんじゃない?」

だから、二人とも、ヨメと同じく、平均以下の運動神経の持ち主になってしまった。
ただ、これは、仕事優先で、あまりアウトドアライフをしてこなかった私にも責任はあるのだが・・・・・。

先日、テレビを見ていたら、幼児からの英才教育の特集らしきものをしていた。

天才は、幼児期にすべてが決まる、というような主旨だろうと思う。
その初めの部分を見て、私は、そっと席を立った。

ヨメの反応が、目に見えていたからだ。

「ああ、やっぱり、子どもは幼児期の教育が大事なのね。うちの子にも、させておけばよかったわぁ!」

テレビが終わると、私の仕事場に顔を見せたヨメは、そう言いながら、大きなため息をついた。

そして、こうも言うのだ。
「もう、うちの子は無理だから、孫ができたら、英才教育やるわよ!」

十数年来の私の持論は、ことごとく跳ね除けたにもかかわらず、たった一回テレビを見ただけで、簡単に考えを変えるミーハーなヨメ。

なんか、釈然としない。








2009/06/02 AM 10:46:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | [日記]



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