Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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同情するなら・・・
友人ススキダの仕事場。

ススキダは、昨年夏までは、横須賀の自宅マンションを仕事場にしてきたが、この誰もが不況に喘いでいる時代に、どんな悪事を働いたのか、事業を拡大しているらしい。
彼は、横浜の関内に事務所を借りて、東京・横浜を忙しく行き来しているという。

そこで、どんな悪さをしているのか、見に行ってきた。
6階建ての共同ビルの2階。
広さは、7坪だという。
一人で仕事をするには、十分すぎるほどの広さに、テーブルが二つ。応接セットが一つ。大きなキャビネットが二つ。
そして、偉そうな顔をした男がひとり。

「この間の、ワインのレポート。仕事に使わせてもらったからな」
その仕事に関しては、こちらに書いた。
ワインを飲みながら、半分泥酔状態で投げやりな文章を書いた。
全部で1800文字。
ススキダは、私の文章のほとんどを無修正のまま、仕事に使ったという。

おまえ、プロなんだから、少しは自分なりに工夫したらどうだ? そのまま使うなんて手抜きだろう?

「最後の一行は、俺が書いたよ。でも、今回は、それでいいんだ。今回のワインは、お前の軽薄な文章が合ってたのさ。
俺の重厚で気品ある文章は、このワインにはもったいない。お前の薄っぺらでリズムのある文体が丁度いいんだよ」

今回の場合、ススキダが私にくれた報酬の額は、私が考えていた額の倍だった。
だから、あまり文句は言えない。

それ以上、何も話すことがなく、二人して鼻毛を抜いていた時、ススキダ夫人がお使いから帰ってきた。

「ああ、Mさん。お久しぶりです」
身長150センチ前後の小柄な天使が、笑顔満開で言う。
「あ〜ら、Mさん。だいぶ痩せましたね。ちゃんと食べてます? 寝てます? 手抜いてます?」

寝るのと手を抜くのは得意だけど、食べるのは下手かな。
「ちょっと病人みたいな雰囲気ですよ。ストレスかしら」と言いながら、ススキダ夫人は、いきなり私の両方の指を包み込むように握ってきた。

?????

最初は指の付け根を握り、次に指先を握った。
そして、うなずきながら言う。
「指先が冷えてますね。これは、軽いストレスかもしれませんね。人間は、ストレスを感じると血流が悪くなる人がいるんですよ。
もちろん全部の人がそうなるわけじゃありませんけど、Mさんみたいに絶えず運動している人の指先は本当は血流がいいはず。
だから、この指先の冷たさは、ストレスから来ている可能性があります」

ススキダ夫人は、元ナースだったのである。

「そう言われてみれば、確かにやつれたような気がするな。もともと貧相だから、最初は気付かなかったが、けっこう痩せたような・・・」
そう言って、ススキダが部屋の隅から体重計を持ってきた。
体脂肪や筋肉の割合なども測れる最新式のものらしい。

「乗ってみろ」
偉そうに、ススキダが言う。

やだ! もし高圧電流が流れていたら、俺は即死だ! そんな危険なものに俺は乗れない。まずは、お前が乗れ。お前が測って、無事だったら、俺も測る。

「アホか」と苦笑いを浮かべながら、ススキダが乗った。
最初に年齢と身長を記録するものらしい。

ススキダの身長は174センチ。
腹が少々出てはいるが、醜いというほどではない。50歳前ということを考えたら、普通の体型と言っていいだろう。

体重71キロ。体脂肪率20.5パーセント。あとは、色々な数値がゴチャゴチャ。
メタボとは言えない。いい物を食って楽している割には、健康的な数値と言っていいだろう。
これも、ひとえにススキダ夫人のコントロールのおかげである。
野獣は、いいパートナーを持ったと言える。

私も乗ってみた。
測るためには、靴下を脱いだ方がいいらしい。
だから、小指の部分が穴のあいた靴下を脱いだ。

そして、私の足を見て、ススキダがしみじみと言う。
「はじめてだな。人の足を見て、可哀想だと思ったのは」

私の右足の3本の爪が紫色に変色している。
そして、左足は2本。つまり、爪が死んでいるのである。
それに加えて、右足のかかとの皮膚が割れて、血が滲み出ていた。

ススキダが、もう一度言った。
「かわいそうに・・・」

同情するなら、金をくれ!(古すぎる?)

測定結果。
体重54.7キロ。体脂肪率10.1パーセント。

54.7キロォ! 去年の11月は58キロあったぞ。何故そんなに減った! 俺はダイエットはしていないのに!

「おまえ180センチあったよな。それで、この体重はまずいだろう」

いや、最近は年をとって縮んできたから、179.6センチだ。

「そんなことはどうでもいい!」

「Mさん。お昼ごはん食べました?」
愛らしいススキダ夫人の天使の微笑み。

いえ、まだです。

「じゃあ、ネギトロ丼でも作りましょうか。手っ取り早くカロリーのあるものを摂るには、丼ものが一番なんですよ」

いただきましょう! ぜひお願いします。

「こいつに、高級なトロの味がわかるかな」
ススキダが言ったが、無視。

出来上がった丼が三つ。
その中でも、一番大きく盛り上がった器を私の前に置いたススキダ夫人。
可愛い! 40過ぎには見えない愛らしさである。

それにひきかえ、この極悪人は・・・。
二分で食い終わりやがった。

私とススキダ夫人は、ゆっくり優雅に食べた。
美味かった。
そして、天使がこんなことを言うのだ。

「トロ、まだ残っていますから、お持ち帰りになられますか?」

なられます、なられます!

トロのほかに、サバやサンマ、焼き鳥などの缶詰セットを(持参の)エコバッグに詰めてくれた。
「これ、ススキダが小腹が空いたときに食べてるものなんですよ。彼は缶詰が大好きなんです」

ほー、缶詰が好き? 貧乏くせえやつだな。こいつ、缶詰食って喜んでるのか。貧しい。実に、貧しい!
(かわいそうに・・・)

そして、缶詰で膨らんだ私のエコバッグを見て、ススキダがつぶやく。
「かわいそうに・・・」

同情するなら、仕事くれ!

「わかったよ。やるよ。本当におまえのこと、可哀想になってきた。ハァー、なんか切ないなァ・・・」

大きなため息をついて、私に哀れみの目を向けるススキダ。

同情でも何でもいい。
仕事があれば、生きていける。

そう・・・、同情でもいいんです。
だから、仕事を・・・・・。


2009/02/09 PM 01:09:43 | Comment(2) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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