Macでお仕事?
Mac歴22年。独立して15年。日に日に減っていく仕事……。そんな売れないデザイナーのひとりごとです。
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ロマンスカーで行く1泊2日箱根の旅
池袋のインターネットカフェ。

インターネットカフェに入るのは、3度目だ。
だから、まだ雰囲気に馴染まない。
落ち着かない。

暗いし、静かすぎる。

なぜ、こんなところに入ってしまったのか?
「3時間パック980円を今なら780円で!」の看板に釣られたこともある。
しかし、ことの発端は、池袋の得意先でのやり取りだった。

4年の付き合いのイベント企画会社。
その会社から受ける私の評価は、最低ランクである。
デザイン料が、安い。悲しいほど、安い。

しかし、仕事をいただけるだけでもありがたい。
どんな仕事でも、いただけるなら喜んでもらう。
そのつもりで、打ち合わせに行った。

新しいレストランのメニューが4点。
急ぎの仕事だが、それほど難易度は高くない。
だから、その仕事は私に回ってきたのだろう。自分の実力と評価は、自分が一番よく知っているのだ。

4年の付き合いのある担当者は、いきなりこう言った。
「今回、少し単価を安くしてもらえませんか」

少しとは、どれくらい?
もう少し具体的に言っていただけませんか?

「まあ、3割くらい安くしてもらえたら・・・」

3割は、少しとは言いませんね。
即座に交渉決裂。

私の場合、いつも最低限の単価で仕事を請け負っている。
これは、私のプライドが維持できるギリギリの範囲の単価である。

たとえば、世間のデザイン事務所が今回の仕事を請け負うと、おそらく「新幹線で行く京都豪華冬の旅3泊4日」の旅行が楽に行けるだろう。
しかし、私の場合は、「ロマンスカーで行く1泊2日箱根の旅」が、かろうじて行けるくらいか。

それを今回は「はとバスツアー横浜中華街日帰りの旅」にしろ、と担当者は言うのである。
それはないですよ、ヒグチさん。

それでは、私のプライドは保てません。
私は、せめて一泊旅行がしたいのです。

「しかしね、Mさん」とヒグチさんは、少々凄みのきいた声を出す。
「今の時代、仕事がもらえるだけでありがたいと思わなくちゃ。みんな、仕事を貰おうと苦労してるんだ。だから、ないよりはいいんじゃないの」
そして、低い声で「ねえ」と念を押す。

ヒグチさんの言っていることは、もちろん正しいご意見だが、それはまともな単価で仕事を請け負っている人にのみ当てはまることだ。
私の場合、これ以上単価を下げることは、プライドの崩壊につながる。
残念ながら、そのご意見は、受け入れられません。

そんなやり取りがあって、私はインターネットカフェに逃げてきたのだが、ただ逃げてきたわけではない。
おそらく、また依頼の電話がかかってくると予測したのである。

ヒグチさんが他を当たっても、私と同じ単価で、同じように確かな仕事をする業者はいない、と私は自惚れたのだ。

おそらく3時間以内に、彼はもう一度電話をしてくるに違いない。
私は、そう思って彼の会社のそばで待機することにしたのだ。

しかし、インターネットカフェに入っても、何もやることがない。
今さらインターネットでもないだろうし、漫画も読みたいものがない。
映画も面倒くさい。ゲームは苦手だ。

見事にすることがない。

そこで、受付で毛布を借りて、「15分前になったら、起こしてください」と言って、横になった。

眠った。
頭を揺さぶられて、目が覚めた。

え? 普通、起こすとき頭を揺さぶるか? 肩じゃないのか、と思ったが、そんな小さなことで怒っても仕方がないので、機嫌よく目覚めた。
インターネットカフェは、意外と寝心地がいい。
新たな発見である。

インターネットカフェを出て、すぐ仕事場に電話をかけ、留守録を聞いた。
「Mさん、至急連絡ください。仕事お願いします」というヒグチさんの声が聞こえてきた。

電話をかけてきた時刻は、11時6分だった。
交渉決裂したのが、10時10分過ぎだから、思ったより早く敵は降参したようである。

今の時刻は、午後1時20分過ぎ。
再び訪問するには、いい時間である。

本日2度目の訪問。
先ほどの交渉決裂にはお互い触れずに、1時間弱で打ち合わせを済ませた。
単価の話は、一切なし。

どうやら、「ロマンスカーで行く1泊2日箱根の旅」は、確保できたようである。


2009/01/19 PM 01:49:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | [Macなできごと]



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